とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのはA's









魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜A's

第三話 はやてと恭也











 はやては知らない……夜や昼に彼女たちが魔力を集めてることを





 恭也はそのことを最初から知っていた……闇の書と呼ばれる書は実際違うものであるということも
 そんな偽りの名で呼ばれ続けていたのだから、狂うのも無理は無いかもしれない
 フェイトとリンディとクロノとエイミィが引越しし終えた頃
 翠屋でそれぞれが集まり、それぞれで挨拶などをしていた
 フェイトは渡された制服に喜びを覚えていた
 同じ学校で過ごせるとなのはたちも喜び、照れている
 もう一つ嬉しいことがあったのだが、恭也は最近出かけていないことが多い
 その言葉を聴いて少しだけ残念と思ったようだが

「恭也さん、今日はアルバイトじゃないんだ」
「ああ、恭也の奴なら、なんか朝に出かけてったぞ……何でも
 『料理習いに行く』って言って……桃子に習えば良いのに」

 そういうが恭也の言葉を借りるなら、『忙しい母さんにまかせきりは悪いだろ』ということだ
 美由希という姉が居るが、なのはの頭の中で否定した
 姉の作るものが、とてつもなく危険な物体であるということに
 すでに食べ物のカテゴリーから外れてる方が幸せだと思ったり
 恭也や士郎の言葉を借りれば、『毒の方がマシ』と言わしめるものであるのだから

「まぁ、あの子も私たちに隠し事して、料理なんて……食べさせてくれるのかしら?
 それとも彼女とか……恭也、帰ってきたらたくさんからかって、こほん、聞いてあげるからね」

 変なところで燃えている桃子を見て、士郎も楽しみにしていたりする
 テンション高い夫婦を見て、子供たちが若干びびる
 まぁ、普通に考えれば息子をからかって遊ぶだけなら良いのだが
 夫婦ともそうなのだから、誰か助けてやれよと思ったりするものなのだ
 言い換えても意味が無いと思う子供4人だった

「そういえば、恭也さんってどういう方なんですか?」

 リンディが不思議そうに聞く……ある程度は知っていても親の目からというのもある
 何より小さなことが大きな意味を持つのが情報なのだ……些細な事も見逃せない

「どういうってね……うちの稼ぎ頭?」
「あいつが入ると、客が増えるからなぁ」
「自覚は無いけどカップルクラッシャーな上に女性を落とす天才かしらね」
「後は、不思議というか急に居なくなったり、盆栽が趣味だったりする程度か」

 情報を足していくフェイトや恋する乙女たち
 ある種、親からの情報というのは侮れないものがある
 それ以前に恭也の事を容赦なく言い切った両親もよく見てるとも言える

「まぁ、もう一つ付け足すなら、ある種の天才だ……秀才でもあり、自分をしっかり持っている
 感情は出てるが、ほとんど顔に出さないようにしてる……
 女の子もそうだが、あいつの笑顔を見る前に直視は避けたほうが良いかもしれない」
「え?」
「リンディさんも気をつけてくださいね♪ 恭也ってばバツ1も作った子ですし」

 ……それって、結婚してしばらくして別れたってこと?
 なのはたちには知らない事実だった
 というより、恭也は上から下まで凄いなぁ

「あの、私は未亡人ですけど……夫が居たわけですし、大丈夫ですよ」

 にこやかに返すリンディ……それでも危険と知らないのは、知らないということが幸せかもしれない
 ただ問題はフェイトは反対するということだろうか?
 しばらく親同士の歓談してる間、なのはたちも椅子に座る

「恭也さんに会いたいね」

 アルフやユーノもついてきて遊ぶさなか、すずかとアリサはそうもらす

「なのはの家にいつか遊びにいってやるんだから」

 何故か燃えてるアリサ……単に会いたいという欲求も含まれてるが

「私も会いたいかな」

 すずかもその言葉に賛同
 最近会ってないのだから、仕方ないとも取れるだろう

「お兄ちゃんって人気あるんだ……」

 小さく呟くなのは……どこか考え込んでいる
 フェイトは言葉に出さなかったが、会いたいとは思っている

「ユーノとアルフは大人しいね」

 すずかとアリサに弄り回されてる二匹に同情する二人
 元が人のユーノは辛いものも含まれる

「うん、教育したんだよ」
「拾った当初からおとなしかった気がするけど……アルフはどうなの?」
「ん〜、私もおとなしかった気がする」
「そうなんだ」
「でも、どっかで会った気がするんだよね」

 アリサはそうもらしてみている
 どこかで会ったような気がする程度だが、気が気でないのは、アルフとフェイトだったりする
 ばれたらどうしよう……アルフ、フェイト、なのはの考えだった






 さて、その頃八神家の台所では、恭也とはやてが料理を作っていた
 教えてもらってるのは恭也で、はやてがなんだかんだと教えてる

「驚きましたよ、いきなり料理教えてくれないかって」
「いや、今までのレパートリーで不足してるかと思ってたんだが
 料理上手は仕事してたりするからな」

 桃子のことである。予断だが、このとき桃子はくしゃみを一つした

「でも、恭也さんって凄いんですね……まさか包丁でまな板を斬るとは」
「あ、あれは、はやてが驚かすからだろうが」
「すみません。でもてっきりそうやと思ってしもうて」

 ちなみに、やり取りはいたって簡単
 恭也の恋人に作るためにだねって事をはやてが言った瞬間に恭也の持つ包丁はまな板を斬ったのだ
 しかも綺麗に二つになった
 はやては気にせず料理を続けているが、そのまな板はゴミ箱へと逝った

「一人暮らしがしたいからな……まぁ、もう一つ目的があったんだが」
「目的?」
「ああ、シグナムに会いたかったんだ」
「まさか! シグナムとデート!?」
「ああ、違う違う……以前あったときにちょっと遊ぼうみたいな事を話したんだ
 俺から誘ってOKもらえるとは思ってなかったけどな」
「そうなんや……ってことは、恭也さんはシグナムを恋人に!?」
「それも違う。ただシグナムさんと自分の持ってるものが同じだったから
 もしかしたら、似たような物を違うお店で買ったのかと思って聞きたかっただけだ」
「なるほど」

 肩を並べてとはいかないが、二人で作ってる
 何でも帰ってきてくれる人が増えてから嬉しいというはやて
 今日は此処に恭也が居るのもあるのだが、やっぱり本人は気づいてなかったりする
 皆と一緒に居るみたいにリラックスしてるということに

「あ、そういえば、すずかちゃんに聞いたんですけど、犬とか猫とか洗うの得意って」
「慣れてるというだけだ……結構喜んでもらえてる
 トリマーの資格でも取るかな」
「あはは……じゃあ、ザフィーラお願いできますか? どうも洗われるの嫌いなんですよ」
「それは確かに困るな……もしかして家の中に入ったりするか?」
「ええ」
「じゃあ、尚更綺麗にしないとな」
「じゃあ、頼めます……そんな時のために、犬用のシャンプーも買ってきたのに
 うちじゃあ洗えへんし、頼んだら、必要ないって皆言うし」
「分かった。俺でよければ引き受けよう」
「ありがとう、恭也さんってほんま頼りになるわ」

 恭也とはやては仲良く作る。そして、しばらくしたらザフィーラとシャマルが帰って来た

「あ、お帰り〜」
「お邪魔してます」

 はやてと恭也が挨拶し、シャマルも返す
 ザフィーラは小さく鳴く

「じゃあ、恭也さん、ザフィーラをお願いします。
 ザフィーラ、恭也さんに体を綺麗に洗ってもらうんやで……毎回毎回外から帰ってくるし
 ちょっと心配してんねんから……のみとか結構危ないって言うてはったし」
「えっ!」

 それに驚いたのはシャマルだ
 なんせ、ザフィーラは魔法生物……確かに今は犬の形態をとってるが
 本来は人型だ……はやては知らない事だが

「そんな、恭也さんに悪いですよ」
「いえ、俺ははやてに料理教わったので、そのお礼みたいなものですし、悪くないですよ」

 恭也は丁寧に説明し、ザフィーラを器用に捕まえる
 一生懸命逃走しようとしてるのだが、恭也の方がたくみだ
 しっかりと猫のように首の所などを取る

「ほら、暴れたらあかんで……恭也さん、良いですか?」
「ああ、お風呂場で洗おうか? ザフィーラ、言うこと聞かないなら熱いお湯を掛けるぞ」

 ぴたっと動きを止めるザフィーラ。だが、またすぐに暴れ始める
 油断を誘ったようだが、恭也に油断も隙もなく……ザフィーラの洗濯が始った
 足の裏から手の裏、更に体全身をくまなく洗われていく
 しかも、恭也の手が丁寧に洗っていくし、意外と気持ちが良いのかザフィーラおとなしくなり
 落ち込んだ…………『俺は人、俺は人、いや、俺はヴォルケンリッターの騎士だ、騎士騎士』
 念話で飛びまくりの声に帰って来たシグナムとヴィータは困っていた
 洗われているザフィーラ。犬扱いである。というより、家畜だ
 そして、シャマルは止められず、仕方なくバスタオルなどを準備していく
 はやては楽しそうに恭也の背中越しにザフィーラを見つめる

『ヴィータ、シグナム、助けてくれ!!』

 切実な願い……ザフィーラ、犬扱いに気持ち良いのやら、困って良いのやら悩んでいたりするが
 やはりプライドがあるのか、頼み込む

「ふむ、此処とか丁寧に洗うと、結構喜ぶのも居るのだが」
「くぅぅぅん」

 このとき、シャマル、シグナム、ヴィータは受けた
 まず、あのがたいの良い男のザフィーラが犬型で可愛い鳴き声を聞かせてるのだ
 間違いなく本物かどうか怪しいところだが楽しんでる
 間違いなく本物なのだが、ヴィータのそんな声を聞くことは叶わない
 だからこそ、皆は爆笑を抑えた……ヴィータは大爆笑だった

「どうも水が嫌いで、われわれも手を焼いていたのだが、恭也さんだとおとなしいのよね」
「そうだな……恭也さん、どうだろう? ザフィーラをたまにで良いから洗ってやってくれないか?」
「ああ、別にかまわないが
 その代わり、はやてから料理を習っても良いか?」
「勿論、うちは構いません……何より、こんな可愛いザフィーラみんの初めてやし」
「そうか」

 恭也の手が動き、ザフィーラの声が響く
 ちなみに、『助けてください』という念話を幾度も飛ばしてるが
 全て無視されてる、八神家のもっともかわいそうな家畜扱いのザフィーラだった
 ユーノ二号ともいえる

「でも、本当、恭也さんはうまいね」
「動物好きだったのだが、買うのは駄目だって……だからかな」
「へ〜」

 恭也の言葉に皆頷いていく
 そして、シャワーを丁寧に掛けて綺麗に泡を落としていく
 ぶるぶる震えたいザフィーラ

「暴れたら駄目だぞ……まだ泡が残ってるし、何よりにおいが残るからな」

 そういわれおとなしくなるザフィーラ
 言いなりであることにヴィータたちも興味津々である……犬を洗うなんて事はしたことが無い
 尚更興味がわいたのだろう

「よし、拭いてもらえ」

 恭也は排水溝などに抜け毛を丁寧に取り、袋に入れて手をゆすぐ
 軽く浴室なども洗い出る
 恭也が濡れてないのは、それなりに水滴を避けた事とザフィーラが暴れなかったからだ
 アリサのところでは体を震わせたりする犬も居るので、服を着替えたりする
 アリサの家には何故か、着替えがあるのだ……下着から全て

『うらぎりもの』

 念話でザフィーラは言うが

『気持ちよさそうだったし』
『そうだぞ』
『まぁ、私もしてみたい』

 上からシャマル、シグナム、ヴィータの順番で言葉を返す
 それに更に落ち込むザフィーラ
 今度からは洗われないようにしないとと悩むのだった

「恭也さん、ありがとう」
「いや、これくらいならな……ザフィーラ、よくおとなしくしてたな、えらいぞ」

 恭也はバスタオルで拭いてるザフィーラを撫でて、笑顔になる
 嬉しそうに、その顔を見て、シグナム、シャマル、ヴィータ、はやてが固まる
 恭也の笑顔はそうそう見れるものじゃない
 シャマルとはやては見惚れ、シグナムは驚き、ヴィータは誰かに似てると考える
 ザフィーラに至っては、落ち込んでいた
 また洗われるのか、と

「ん、どうかしたか?」

 恭也は元の顔に戻ると、近くに居た面々に声をかける

「い、いえ……その、ちょっと見惚れただけですから」
「見惚れる?」

 首をかしげる恭也にシャマルはなんでもないと伝える

「はやてもどうかしたのか?」
「いえ、うちもちょっと驚いたんです……その恭也さんってあんなふうに笑顔になるんやって」

 はやてはそういって、楽しそうな顔をする

「破壊力抜群やし」
「破壊力?」
「いや、気にせんといてください」

 はやてにそういわれて、恭也は引き下がる
 ヴィータがザフィーラを拭いてる

「あ、ヴィータさん、そうやって拭くと思いっきり毛を握ってしまいますし、できるだけ優しく」
「え?」

 恭也の笑顔に見惚れてしまい、驚いたまま拭いていて
 『痛いぞ、ヴィータ』という念話すら無視して、拭いていたので、毛が少し抜けていた
 はげるかもしれない

「こういう感じで」

 恭也はヴィータの後ろから手を取り教えていく
 ヴィータの顔が真っ赤になるが、そんなことに気づかない
 その様子に回りは微笑ましくも、どう突っ込んで良いか悩んでいた
 ちなみに、念話で皆からからかわれてる

『何赤くなってるんだ?』
『なってね〜よ』
『ヴィータちゃんも女の子なんだね〜』
『騎士だ!』

 シグナムやシャマルに言われ放題ヴィータ

「も、もう大丈夫だから」
「ああ、そうか……大切なんだろう? なら丁寧に拭かないと、のみとか入って大変だぞ」
「え?」
「はやてがのみで病気になったらイヤだろ?」
「うん」

 はやて第一のヴィータならではの言葉

「まぁ、月に一度くらいで洗うんだ
 のみとかが入ってるかもしれないし、二週とかで洗う人もいるけどな
 俺の知り合いは月に一度、一緒にというわけじゃなく交代で洗われてる」
「凄いですね」
「たくさん犬を飼ってる人だからだな」
「へ〜」

 そして、恭也は八神家でそれなりの自由を得て、はやてと更に仲良くなるのだった

「あ、シグナムさん、明日の昼からで構いませんか?」
「あ、ああ……あれな、構わないぞ」
「すみません、いきなりで」
「いや、それくらい構わない」

 シグナムは頷く……ちなみにこのことにも念話が届いていた

『なんの約束よ!?』
『いや、以前、剣の凄腕と話しただろう?』
『ああ、じゃあ鍛錬か何かか?』
『まぁ、そんなところだ……下世話なことは無い』

 シャマル、ヴィータはそれで納得したが

『襲われないようにな……シグナムが骨抜きになったとかでは
 それこそ、我らの名折れだ』
『誰が骨抜きになるか!!?』

 ザフィーラの仕返しは三倍返しだった

『恭也に洗われ、可愛い声だしてた奴には言われたくないぞ』
『くっ』

 悲しいかな本当のことで、ザフィーラはしばらくこのことで皆にからかわれるのだが
 それは余談であるのに変わりは無い
 そして、これから先、ザフィーラが居る限り洗われるだろう
 恭也の洗う技術により、そらまた綺麗に
 ただ、ヴィータもこの時から恭也に頭を撫でられたりするようになり
 はやてと同じで気持ちよさそうに目を細めるのだった……その様子により
 ヴィータはあまりザフィーラをからかえなかった






 つづく








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