とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのはA's









魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜A's

番外編6 シグナムと恭也の静かなとき










 恭也とシグナムは気質が似ている……それは万人の知るところとなる事は無いが
 ただ、二人ともどこか似ているのだ
 それに気づいてても、『何処が?』と聞かれたら答えに窮するのだが




 ただ、この日は違った……恭也とシグナムは高町家の道場で面と向かい合っていた
 二人ともすでに汗だくだとかそんなことはない
 密室で二人きり……響きは良いが、一人は甲冑みたいなのを着て
 もう一人は普段着
 だが、際はあれど木刀を構えてるシグナムは相手を見つめ隙を狙っていた

「来ないのか?」

 その声はどこかあざけりのようで、でも、違うようで
 だからこそ、焦りを覚えたのは一人、シグナムである
 だが、鉄の意志でもって自制する
 此処で抑えなかったら後が危ない

「良い判断だ」

 恭也の言葉に喜びを覚えるが、すぐさま剣士としての意思が相手を倒すように考える
 はっきり言えば、シグナムは恭也と戦って未だに勝ててない
 小太刀と剣……その武器の特性などを知り尽くし考えて
 剣の勝負なら負けないと、負けられないと考えてきたのが、負けてきている
 苦手意識とかそんなのは根底に無い
 ただ、目の前の巨大な敵を倒さねばと思うのだ

「せぇぇぇぇぇい!!」

 裂帛の声、それを恭也は何事も無いかのように受け止め、左から来る剣を左手の小太刀ではじく
 今までずっと小太刀を一刀のみで恭也は戦っている
 間合いを詰めようと一歩歩み寄るが、すぐさまシグナムは離れる
 此処から近づけたら、相手の打撃が入る
 切っ先のみで相手を倒す……それか突きで貫くか
 だが、シグナムの考えを恭也は一歩後ろに下がる
 両方とも下がったことにより、シグナムの攻撃は空振りに終わり、そのまま剣を引き返させる
 だが、今度は左から右に持ち替えた恭也の小太刀により止められる
 左手が駄目だから、右手でという発想
 分からないでもないのだが、今まで左手で完璧に返されてきたのに何故今になって右手
 そう思ったシグナムは、すぐさま驚きに染まる
 恭也は止めた右手を上へと上げて、からぶらせたのだ
 言うなれば、相手の力を利用しての攻撃だ

「そんな」

 その言葉はシグナムが宙に浮いてる時に漏れた
 まさか、相手の力を利用して、足で相手の軸足を崩し、左手と右手で相手を横へと向ける
 泳いだ勢いそのままに、シグナムは落ちた
 ズターーンと音が鳴るがそこで、シグナムは落ち着いて、恭也に顔を向けるが
 その時になって顔に木刀が突きつけられてることに気づいた

「負けました」

 恭也にそういって、シグナムは悔しく思っていた
 ほんの一瞬……油断をしてるつもりはない
 だが、まだ彼の本気を見てない気がしてならない
 シグナムはそれを考えて、恭也に幾度も挑戦している……負け知らずとは言わないが
 それでも、将として勝ちたい相手だ
 はやてを任せるなら自分より強い相手にと思っているのだが、すでに決まったも同然である
 反対したいという事も浮かんでは居るが、はやてとなどと云々がある

「考え事か?」
「まぁ、そんなところだ……恭也、一度だけ本気を出してくれないか?」
「……それも強さの一つといわなかったか?」
「知っておいて損は無いだろうからな……それに、圧倒的な差だ」
「シグナム、何故そこまで」
「此処が限界だって作ると、そこまでしか上れないが
 お前みたいなのが居るなら、私は更に上を目指そうと思えるし
 まだまだフェイト・テスタロッサに負けるわけにはいかない」
「分かった……だが、一つ言っておく」
「なんだ?」
「バリアジャケットの魔力はしっかりしておけ
 バリアは張るな……張るだけ無駄だ」
「ああ」

 恭也はそういって、構える
 一刀だと思っているシグナムに恭也は本気を出す

「シグナム、何時も一刀でしてるが、俺は本来二刀流だ」

 恭也は置いてある小太刀の木刀を腰に差す

「するのは一度だけだからな……それから避けるな
 避けたら当たってしまうだろうから」

 ぴりぴりとした緊張感
 そして、シグナムは本当のこの世界の剣士を見る

「レヴァンティンも構えないほうが良いかもしれない
 当てても痛みは少ないように努力するが、これが俺がもっとも信頼してる奥義だ」

 ダンっ

 その音が響いて、シグナムは恭也から目を離さなかった
 だが、恭也はシグナムを見つめ、シグナムはその目に驚く
 恭也の目が冷たいものを秘めていたから
 言うなれば、冷えた感覚

「奥義之六 薙旋」

 シグナムは感触だけが通った
 そういうしかなかった……視覚では追いつけない中での攻撃
 何秒とかじゃなく、コンマも入る世界での攻撃
 確かに自分たちも魔法で早く動くときがある……だが、今魔法を使わずに恭也はそれだけの動きをする
 恭也の斬った部分が切れていく……木刀でも切れる恭也の恐ろしい

「なっ」

 バリアジャケットを断ち切る……しかも、全く剣とかの斬るものじゃない
 普通で言うなら叩くものなのにも関わらず
 剣風だけで斬ったのだ

「これが出来て、この世界では剣士なんだと思う
 まぁ、これを出来て、会得したものはほとんど居ないと言っていたけどな」
「剣風だけで、人の衣類すらも斬るのか?」
「違う……剣風だけで、体を斬るんだ」

 そういわれてシグナムは腕に流れる血を撫でる
 切れてるといわれて初めて、分かったのだ

「これが今の限界だ」
「ほんと、何者なんだ?」
「過去から続いてる古流剣術の使い手だ……まぁ、なんの補助なしにこれくらい出来るって事だな」
「補助なしに?」
「ああ、肉体強化とかを抜いてもらったからな
 まだまだか……」

 シグナムはその言葉に頭を抱える
 現在の恭也の限界は分かった……そして、ロストした理由も
 離れたところに出た恭也の理由
 それは、先ほどの技を使えば出来ると
 元から魔力を消すことになれ、移動で恭也の速度は速度増加の魔法と同程度かそれ以上になる
 シグナムはそれを見る事も出来てるのに……恭也の動きは見えなかった
 体がこちらに来て、腕を振った……だが、その腕を振ったのは最初しか見えなかった
 しかも、体に当たる前に戻してるのだから

「私は魔法という力の上で胡坐をかいてるからか」
「違うだろう……魔法があり、ライバルが居ないからそこまで頑張らなくて良いってだけだ」

 恭也の言葉にシグナムは驚きながらも頷いた

「俺たちは拳銃があるからこそ、それに対抗するために頑張ったからな
 先ほどの動きだって制限は生まれる」
「例えば?」
「多用すれば、体を壊す……魔法の補助なしですれば、体の一部は壊れるさ」
「だから、自動ヒーリングか」
「ああ……俺だって無理をすれば壊れるし倒れるさ」

 だが、そのために魔法を使い、今は倒れることなく動く
 まだ守りたい者たちが居るから

「しかし、凄いな……まだまだと言い切れる今を持っている」
「……そういうものか?」
「ああ」

 だが、恭也は更にもらした

「シグナム、俺は本当に今の自分に満足してないんだ
 奥義のあれだって、本来は六つの剣閃だ
 だからな、あの程度で満足してはいけない」
「四つじゃないのか?」
「四つの剣閃などはじくのは簡単だからな……この先もう一歩先を
 まだまだだがな」
「いつか魔法を使ってでも、お前の奥義を崩す」
「攻撃手段は変更するし、魔法は利かないつもりだが」
「足止め程度だ」
「なるほどな」

 先ほどの奥義の特性を考えてだ
 先ほどの突っ込んだ様子と移動した場所
 一歩目と最初の踏み切りの床が壊れていた
 恭也の脚力のために床が持たなかったのだ

「今度は違う場所で、道場を使わずしよう」
「ああ」

 二人は道場の惨状を見て、そう漏らす
 なんせ、道場が破壊されたみたいになっているのだ
 恭也の剣風でちょっと斬られたドアとか

「加減し忘れた」
「この事については、シャマル呼ぶわけにも行かないし、リンディたちに頼もう」

 そういって、恭也とシグナムは魔法により直してもらった
 恭也はお礼を述べて、二人は縁側で緑茶を飲み、話し合う

「剣士としての感覚を忘れては無いつもりだったが、初めて死ぬと思ったな」
「此処からは愚痴になるかもしれないが……俺は生まれて物心つく頃には命を狙われていた
 守ってくれたのが父さんで、そして今はもう居ない親戚の人たちだった
 美由希も義理の妹なのは、生まれが違うからだ
 親戚の人たちが俺を守るために必至に抵抗してくれたおかげで、俺は生き延びていた」
「それは」
「シグナム、俺とはやてとフェイトは似てる
 家族を一人だけにしたなのはもな」
「……ずっと一人で居た事。そして、回りに殺されるかもしれない恐怖か」
「そうだ……分からないかもしれないが
 俺は父さんとの旅の途中に幾度も殺されそうになったんだ」

 それを聞いてシグナムは驚いた
 もしもそれが本当なら、恭也は幼い頃から死と隣りあわせで
 平和と呼ばれるこの地でも、もっとも過酷と言われる幼年期を過ごしたのではと

「人を殺すとき悲しかったが、分からなかった
 ただ、親戚が殺されたとき、凄く悲しくて……日天の魔道書の暴走だ」
「話に聞いたが、それが原因だったのか?」
「ああ……その時、俺は感じたのさ……人を殺すのは簡単で生かすのは難しいと」
「そうだな」

 剣士として、殺戮者としての言葉
 人を殺すのは簡単で、倒す方が難しい

「すまないな、前の話嫌だったか?」
「まぁ、そういうわけじゃないが……シグナムなら話しても誰にも言わないと思ったからな」
「……そうだな、言えるわけがない
 聞いても変わらないだろうが、怖い事には変わりは無いから」
「そういうことだ」

 お互いに苦笑いで頷く
 そして、お茶を二人で飲みながら、最近の状態を話していく

「そういえば、またザフィーラを洗ってやってくれないか?」
「良いのか?」
「いや、まぁ、なんていうかだ……あれは男だが、何度か着替えを覗いたのでな」
「なるほどな……分かった」

 恭也も意味を知ってるのでよく頼まれてる
 ちなみにザフィーラはシャマルやヴィータの手で洗われるのは嫌がる
 勿論、はやてやシグナムも嫌みたいで、恭也の手のときは機嫌が良い
 だが、可愛い声で鳴くなどの恥辱にも耐えねばならないのだ
 毎度のごとくからかわれてるのだが

「恭也」
「なんだ?」
「ありがとう」
「え?」
「私に話してくれたのは、私が将だからっていうのもあるだろうが
 私が一番話しやすい内容だな」
「すまない」
「構わないさ……何より、私たちだって悪い事してたんだしな」
「……仕方ないさ
 言い方悪いかもしれないが、知らないで起きたことだ
 フェイトも似たようなところだったんだぞ」
「聞いてる……確か、PT事件として知られてる
 手伝ったって」
「ジュエルシードを集めていたからな」
「そうだったな……すまない、概要は聞いたのだが、テスタロッサから」
「そうか」

 恭也も頷いて返す
 二人とも何も言葉がなくなるが、楽しそうに笑みを浮かべる

「私は生まれた当初から人から魔力を集めていた。リンカーコアを喰らって魔道書を完成させようとしてた
 だから、皆私にも恨みがあるだろうな……生き物という生き物から奪いに奪いまくったのだから」
「それって、俺のとこの守護者たちも同じなんだぞ。言っておくが、これから返していけるだけ返せば
 少しなりとも変わった意見も出来てくるだろう
 はやてだって、回りの人たちだって守ってくれるさ」
「お前は守ってくれないのか?」
「守ってほしいと思ってない奴が言うな」
「そうだな……出来るなら、隣を一緒に歩きたいくらいだ」

 シグナムと恭也は話していく
 ただ、その雰囲気は良いというより、静かでみやびなものが出ているようにも見える

「で、シグナム、我が妹兼弟子が本当に失礼をして、すまんな
 美由希、すぐ来なかったらお前に手加減無用のマッサージだ」

 どたどたと出てきた美由希

「えっと、ごめんなさい……でも、ほとんど聞こえなかったのだけど」
「お前の気配が分かったからな
 全く、フェイトとなのはとすずかとアリサもこんなののようになるなよ」

 こんなの呼ばわりされた美由希に誰も何も言わない
 何か言って墓穴を掘れば、それこそ恭也に嫌われてしまうかもしれないから
 魔法で声を聞こうとしても恭也の分は届かないだろうといったのだ
 何より盗み聞きだしとも

「さて、恭也……今回は私が負けたんだ
 しかも、また戦いはじめて一分以内で……今度は何をしよう?
 前は部屋の掃除手伝いだったが」
「ああ、今回は翠屋の店員なんてどうだ?」
「ああ、分かった」

 それについて、アリサたちが聞くと、恭也とシグナムは定期的に戦い
 戦闘状態を一分以上持たせればシグナムの勝ちってことで戦っている
 だが、恭也と戦うのに粘ろうとしても、負けるシグナム
 一分持たないということなのだ……勿論強くもなってきていて伸びてはきているし
 一勝に届くかもしれない
 だが、小太刀が得物のときのみという条件をシグナムがつけたのだ
 恭也の真価は小太刀がもっとも強いからとは、本人の弁だ





 次の日、男用の制服で翠屋で働くシグナムが居たとか……女性の服は無理だと言ったのだ
 シャマルとシグナムと恭也の三人は売り上げに貢献した
 もともとパンツルックが多いシグナムは男装を取ったのだが
 似合いすぎていた……何より行動も少し男らしいので
 恭也と隣り合って話していると、ちょっとした薔薇の空気が流れた
 すぐさま女性と気づかれていて、驚かれていたが
 はやてが翠屋で二人を見つけ、帰ってきた二人を笑顔で出迎えていた
 その顔には『全て話してな』という容赦ない言葉が書かれていたようだった







 おわり








 あとがき
 シグナムの話を書こうとしたけど、どうにも難しいです
 でも、罪悪感というのにはさいなまれてると思うんですよ……小さな願いというか
 はやては好きで守りたい。だからこそ強くなろうと頑張ってるけど
 恭也みたいに戦闘するものが居るのだし、シグナムは弱いことないですが
 それは魔法を探知するというのもあると思います
 たとえば、移動速度上昇の魔法を唱えれば、その小さな魔力でも分かるんだと思えば
 気配じゃなくとも何処に居るくらいは分かるものなんです
 だからこそ魔法と戦闘能力には差が生まれてくるはずなんですけど
 説明難しいですけど、魔法と純粋攻撃には差があるということだ
 あ、でも神速が見えないのは速度計算したときに魔力反応のあるなしが影響すると考えたからだよ
 なのはたちが後ろへと動いていたけど、あれって神速と同じ速度くらいと考えられるから
 テレビで見てると一瞬なんだけど……でわでわ、ほなね〜(^^)ノシ







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