とらいあんぐるハート×マリア様はみているSS









設定……
恭也は三薔薇を知っています(以上)
恭也が高校3年生の秋頃だと思ってください
一応オールエンドで完治してます(何ていうか適当だよなぁ)
というわけでレッツラゴ〜(ちょっと頭が飛んでます)







『薔薇は優雅に咲き誇る6』










「で、恭也さんは何で蓉子に手を握ってもらってるのかしら?」

 俺は部屋に入るまで手をとられていることに気づかなかった
 いや、気づかないくらいに、のんびりとしていたと言っても過言では無いだろう
 リラックスしていたのと同じだ……
 何故? いや、その前に目の前に居る女性達に言葉をかけないと
 それに蓉子さんに離して貰わないと、流石に恥ずかしくなってきた

「蓉子さん、恥ずかしいので離してもらえますか?」
「あ、はい」

 蓉子さんも恥ずかしかったのか頬を赤く染めて手を離した
 そして、俺は聖さんと江利子さんがじ〜と見てるのを見た

「別に何かあったわけでもないですし、彼女に手を出したわけじゃないですから」
「それは分かってます……だって、恭也さんから何かするときは誰かを選んだ時だと考えてますから」
「そうだね……それが私であったらいいなぁって思ってますけど」

 そう言って笑顔なのは聖さんと江利子さんだ
 何ていうか、こういう表情はいいなと思う……

「で、蓉子は何で恭也くんの手を取ってたの?」
「実は……」

 それで、蓉子さんは事の顛末を離した……
 先ほどのお手伝いさんのことまでも
 俺はいまいちよく分からないのだが、祥子さんが凄く険しい顔をしていたのが分かった
 まぁ、それでも怒る前兆みたいなのが分かるわけじゃないのでなんとも言えないのだが……
 怒ってるのかもしれないな……と、思いきや、彼女から漏れた声は切なさを帯びていた

「お姉さまたちばかりずるい」

 うっ、それは俺のせいですか?
 と、祥子さんは意外なことをしてきた
 俺の腕に抱きついてきたのだ……

「えっと、祥子さん?」

 蓉子さんとは違った感触が腕を襲う
 何と言うか言葉に詰まる想いだ……とりあえず、名前を呼んだが意味があるのか無いのか

「わっ、お姉さま、大胆」

 ただ祥子さんは俺の腕を離さなくて、そのまま抱きしめたままだ
 どうしたらいいのだろうか?
 そんなことを考えてしまう……

「しばらくだけ……ぬくもりを」

 そう言って言葉を紡いだ彼女は神聖な女性のようで……ただ、願いをこめてるかのように見える
 俺の腕を抱きしめ、何かを必死に願う幼子のようにも、願いを届けてと願うようにも……
 ただ、その姿が神聖さをかもし出している……
 俺のような男にそんなことをしていいのだろうか?

「で、蓉子、あれを見て、どう思う?」
「祥子自身がしてるんなら問題ないでしょう
 それに、これで男嫌いが治るなら良しじゃない」
「でも、目怒ってない?」
「あら、聖の目も十分に恐いわよ……江利子もね」
「え? 私? やだな〜、そんな訳無いじゃない」

 というか、俺をじ〜と見て、祥子さんを見てを繰り返す3人
 瞳子さんはそろそろ戻りますと言って、俺の腕に抱きついてる祥子さんを一瞥して帰った
 どう言えば良いのか考えてしまう……またねと軽い挨拶だけはしておいたが
 祥子さんは動かないし、無理に外すのもはばかれる
 そして……江利子さん、聖さん、蓉子さんは俺を見て楽しそうにしている

「まぁ、悪いことではないので、何も言わないが……
 そろそろ助けてくれてもいいと思わないか?」
「祥子が自分の思いを込めて抱いてるんだから良いじゃない」
「ですが……」
「それに、祥子がお願いするなんてめったに無いからね……私達からもお願い」
「はぁ〜、分かりました……」

 俺は諦めた
 胸が腕に当たってるのくらいは気づいてるだろう
 それでもお願いをされたら断るわけにはいかないからだ
 彼女たちだって女学生だし、何か間違いが起こりそうだったら止めてくれるだろう
 俺を繋ぎとめるように抱きしめている祥子さん
 どうしたら良いのだろうか?

「でも、恭也さんの腕を抱きしめるって祥子としたら進歩ね」
「本当ね……でも、祥子はさ、嬉しいんじゃないかな……ほら、自分が別と思われてる所あったから
 こう、1人の人として、女の子としてみてくれるなんてほとんど居ないしね
 小笠原として、小笠原の娘として見られるなんてかわいそうだし」
「そうは言うけど、江利子も聖もそんなの気にしたことじゃない」
「もちろん、祥子は祥子だもの」
「そうだよ〜、私が私であるようにね」

 江利子さんと聖さんのいう事は分かる
 もちろん、蓉子さんもそれは分かってるのだろう
 だから、小笠原の子として見ない人が一番だと分かったのだろう
 特別視しない人……それを俺として頼んだのかもしれないし
 彼女の少しの支えにと選んだのかもしれない
 フィアッセやティオレさんを見ても、怖気づかない俺なら問題なしではあるだろうが
 皆には驚かれたが……ゆうひさんと出会った時もだが……

「確かに、名前とか苗字とか色々な意味合いを持つし、俺にもその経験はあります
 今でも過去の苗字は出しませんし……ですが、俺はそんなことで他の人を見たくないです
 それに友人も……だから、フィアッセであれ、ティオレさんであれ、同じなんですけどね」
「フィアッセ? ティオレさん?」
「ああ、光の歌姫と世紀の歌姫ですよ」
「えっと……フィアッセ・クリステラとティオレ・クリステラのこと?」
「はい」
「知り合いなの?」
「まぁ……知り合いというより家族ぐるみで付き合いがあって
 それで、仲良くさせてもらってるだけです」
「まさか、フィアッセ・クリステラと付き合ってるってことは?」
「フィアッセに失礼ですよ……それに俺はフィアッセと釣り合いませんよ」

 俺はそういって苦笑いを浮かべる
 彼女は家族みたいなものだ……姉や妹みたいな存在
 それは高町家に住んでいる者がほとんどだ……それに、友人にも恵まれてると思う

「そうですか? 十分釣り合いが取れるかと……ルックスとかも」
「いえ、無理ですよ……それに、俺を好きになる人なんて早々居ませんよ
 だから、フィアッセがそんなこと言うわけないですよ」

 そう言って俺は笑顔を向ける
 そして、3人は何故か苦笑いを浮かべる
 どうかしたのか? というか、おかしなこと言ったか?

「恭也さんは気づいてないのですね」
「え?」
「いいんです……気づかないほうが幸せなこともありますから」

 祥子さんがそう言ってまた顔を俺の腕に埋める
 小さなおでこが俺の肩に当てられる……胸が腕を包む
 祥子さんはどうかしたのだろうか? それに……

「そうですか、なら良いんですけど」

 でも、幸せなことって何だ?
 気にしても仕方ないか……わからない所だし

「で、恭也さんは何時までその体勢で居るのかな?」
「祥子も、何でその格好でいるのかしら?」
「ふむ、確かにそれについては俺も聞こうとしたのだが、何故か気に入られてしまったらしい」
「……それは否定しないんだね」
「なのはもこういう感じでしたから」
「なのはちゃんも?」
「ええ、甘えるという時はべったりなんですよ……
 妹みたいでいいかなと……親愛みたいで
 俺はそれでも良いかと思って」
「なるほどね……ま、私達の愛情もそういうものだし」
「そうね」
「確かに……でも、この格好を祐巳ちゃんに見せたら面白そうね」

 祥子さんがピクリと動いた
 そして、しぶしぶなのだろう、ゆっくりと離れた

「お姉さま、それは如何いう意味でしょうか?」
「祥子はもうちょっと妹のことでも大胆になってほしいなと思って……」
「……恭也さんに甘えるみたいにですか?」
「そうよ……でも、甘えるだけなら誰でも出来るなら
 恭也さんとは釣り合わないと私は思う……たまには包むくらいしないと」
「そうですね……恭也さんは物理的に守ってくれます
 もちろん、精神的にも……だから、私は恭也さんを守りたいと、包み込みたい
 愛したいと思ったのですしね」
「そういうことよ」

 む〜、何故か告白が3人から4人に増えてしまった
 というより、俺がもててる?
 異常事態だ……世界の終わりが来たのだろうか?

「恭也さん、どうかしましたか?」
「いえ、いきなり女性4人に告白されて、世界の終わりとかが来たのかと考えてしまって……」

 俺の言葉に江利子さんと聖さんが困った顔をしている
 そして、その言葉を聞いた、蓉子さんと祥子さんは顔を見合わせてため息をつく

「鈍感というよりも、罪ですね」
「あら、祥子……そのおかげで恭也さんが居てくれるんなら良いじゃない」
「それは否定しませんけど」
「恭也さんは私達が惚れるくらいかっこよくて、安心できる人ってことだよ
 だからね、恭也さんはもっと自覚を持って欲しいかな……」
「……自覚ですか?」
「そ、本当はモテルってことを……」
「はぁ……でも、告白なんてされたの初めてですし」
「直球で言われたのがでしょう? 手紙なら山ほどあるって聞いてるし」
「まぁ、週に5通から10通くらいで……全部返事も何も送ってませんし
 事情が事情ですから、お断りしてましたが、こう直球で言われると
 どう反応していいか分からなくて……」

 俺の言葉に聖さんがため息をついてる
 どうかしたのだろうか? というより、俺はそれを良しとして良いのだろうか?

「ま、今は私達のこと考えてくれてるみたいだし、嬉しいよ」
「そりゃあ、断るにしろ、良いですよというにしろ、ちゃんと返事をしたいですから」
「うんうん、恭也さんが言うなら、私はそれで良いから」
「ありがとうございます」
「お礼なんて良いですよ……私達は勝手に恭也さんが好きだと思ってるのと同じですし
 その返事をもらえるだけで感謝ですよ」
「そんな……でも、本当に俺が選ぶんですよね?」
「そうですね……誰を選ぶか……出来れば私を選んで欲しいですけど」
「祥子、それは言わない方がいいわ……恭也さんをあまり悩ませたくないの
 誰が必要か……恭也さんにとっては誰が一番好きな人かを選んでくれたいいだけだから」
「そうですね」

 それぞれが俺を思って、俺を見ていてくれる
 それに俺が応えるのは俺も彼女たちを見ていって、彼女達の面を見ていく
 彼女たちの活躍を見ていくしかないのだと思う……そして、俺自身で見つけた答えを……
 文化祭の時に言おうかと思っている
 今は、彼女たち4人を見ていくしかないと……

「でわ、コレが台本になります」
「へっ?」
「ほら、祥子の王子様役……祐巳さんも入るけど
 それで、ダンスの相手ですよ」
「そういえば、言ってましたね……本気でするんですか?」
「お願いできませんか? お姫様役は私がしても構わないけど」
「黄薔薇さま、それは私の役ではなかったのですか?」
「祥子、役する気になったの?」
「祐巳を諦めたつもりはありませんから」

 そう言って祥子さんは笑顔になる
 それが一番だろうと俺は頷いてしまった
 人間多少の貪欲があっても良いと思う……
 俺は守りたい人にたいしては貪欲だ……彼女たちの貪欲な所を見てないだけかもしれないけど
 それでも、そういうのも見てみたいと思う
 残り、数日だが、それまでに俺は……彼女たちの好意を見ていくしかない
 その中に俺の思うところがあれば応えられるはずだ
 誰かに相談なんて出来ないことだけど、俺は彼女たち全員を気に入ってるし
 家族みたいに好きなんだと思う……彼女とは違う意味での好きだと……思ってる部分もある

「勉強終わりましたけど、恭也さん時間大丈夫ですか?」
「あっ」

 俺はそういわれて、時計を見る……しばらく固まった
 大分時間が過ぎていて、もう難しい時間だ……困ったな

「恭也さん、今日は泊まっていってください
 薔薇様方にもお姉さまも泊まって行きますし、朝にお送りしますから」
「えっと、お言葉に甘えても良いですか?」

 俺はそれを受け入れることにする
 今の時間だと電車が走ってはいるが、間に合わないだろう
 送り迎えの車に乗れば別だが、難しいことに変わりは無い

「すみません、家に連絡しておきますね」
「はい」

 俺は廊下に出ると、一度携帯を取り出す
 着信が何件か入ってる……全て家からだった
 あ〜、そういえば、勉強してくるとしか言ってなかったな
 通話ボタンというものを押して、携帯を耳にあてる

『もしもし』
「もしもし」
『恭也!!?』
「ああ、かあさんか……ふむ、今日は帰れない
 明日の朝に帰るから……それと、美由希に今日の鍛錬は相手できないからと言っておいてくれ」
『って、あんた今どこに居るのよ?』
「東京のホテルだが……」
『東京!! 何でそんなところで勉強なんてしてるのよ!!?』
「かあさん、声が大きい」

 俺は携帯を耳から離す
 流石に耳が少し痛い
 ホテルというのは嘘だが、許してくれるだろう

『それはごめんなさい……で、如何いうことかしら?』
「だから、知り合いの方に勉強を見てもらってるんだ
 それで、学力が上がると思うから……その大学に行かないとダメってかあさん言ってたから
 それを守るために頑張ろうと思ったんだ……とりあえず、明日には帰るから
 それと、しばらく土日は俺居ないから……」
『ちょっと、待ちなさい……なんで土日まで居ないのかしら?』
「その方たちの都合に合わせて俺が動くからだ」
『本当? 何か妖しいわね……』

 と、ドアが開く……

「あっ!!」

 慌てた様子で扉を閉じる
 先ほどのは祥子さんだったな……ぐあっ、時間が大分たってるのか?

『女性の声……恭也……もし、誰かとねんねになったなら、ちゃんと責任はとりなさいよ
 私は応援してあげれるけど、他の皆が如何出るか分からないから』
「かあさん、如何いう意味だ?」
『さあね……で、恭也は勉強するから、しばらくバイトも手伝いも出来ないと』
「ああ」
『ま、恭也がそういうなら良いわ……
 それにかあさんとしては心配してたのよ、明確な意思も無いままに大学受けさせていいものかどうか?
 でもね、貴方の口から受けると聞いた以上は手伝わないと悪いでしょ』
「ありがとう」
『ま、しばらく泊まりに関しては何も言わないから……なのはが心配するでしょうし
 他の皆には上手く言っておくわよ……
 それと、女性が近くに居るなら、桃子さんに紹介してほしいな〜』
「そのうち機会があれば、嫌でもするだろうな」
『え?』
「それにかあさんは知ってる人たちだ」
『ええっ?』
「じゃあ、お休み」
『え、ええ』

 俺は電話を切ると、扉がそ〜と開かれてるのを見る
 多分聞き耳を立ててたのだろう
 祥子さん、蓉子さん、江利子さん、聖さんが居る
 気になったのかもしれない

「かあさんですよ……だから、そんなに警戒しないでください
 それに、祥子さん以外は会ってるでしょう」
「あっ、そうですね」
「本当だね……」
「そうでした」

 そしてお互いに部屋割りを聞くと……

「えっと、恭也さんは隣をお使い下さい
 私達は、こちらで4人固まって寝ますので」
「はい、分かりました……でも、和室をいいんですか?」
「ええ、どうぞ」

 祥子さんに言われて、そのまま布団がひかれていく
 お手伝いさんが何故か居て、してくれてるのだ……少し悪いかなと思いつつ御礼を言うと
 顔を赤くして出て行く……

「隣は一応、電気を消して置いてください
 俺は夜目がありますから、平気ですし」
「分かりました……」
「でわ、お休みなさい」
「ええ」

 全員がお風呂に入って、それぞれが部屋の中へと入る
 そして……翌朝に俺は帰るための準備をして、すぐさま寝るのだった
 といっても気が抜けるわけもなく……時が過ぎるのを待つのだった
 ただ隣の部屋のことも気がかりだが、俺も一応、1人の男なんだが……困った
 隣の部屋の物音や気配に集中するが……こういう時は耳がいいのが悔やまれる
 その、規則正しい寝息が聞こえるのだ
 たまに寝言も……その中に俺の名前が出ればびくっと驚くのは仕方ないのではないだろうか?
 そして、俺にとっては辛い夜が始まった









「きょうやさん」
「ん〜」
「恭也さん」
「く〜」








 誰が何の夢を見てるのか分からないが、困った
 と、隣からの声がはっきりと分かる
 何で隣が襖なんだ?
 というよりも、こう俺に声をかけられると落ち着けん!!











 翌朝……俺は朝日が昇ると同時に起きて、すぐさま部屋を出る
 顔を洗うためにだ
 一応、鏡をチェックしてクマが出来てないか見てみる
 今日の授業は全て睡眠に当てよう……そうしないと持ちそうに無い

「というよりも、今日は朝の2時間目からだから、かえる途中の電車の中でも眠れるな」

 俺は言葉に出して言うと、少しだけ気が楽になった
 まぁ、遅れても問題の無い授業というのはあるものだし、朝から居なくても平気というのは良い事だ
 自分が楽になって……

「鍛錬は禁止されてるから止めておこう」

 以前、フィリス先生のいう事を無視してしたら、速攻でバレて……
 思い出すだけでも恐ろしい整体が待っていた
 あれは、痛いというよりも、体が砕けるかと思った
 俺は軽く外を見る……晴れてるな
 晴天と取れるほどの天気

「おはようございます」
「あ、おはようございます」

 お手伝いさんだ……多分、朝食とかもあるのだろう
 そして、俺が歯磨きをしていると出て行った
 大変な仕事だな……
 俺は適度に体操をして、リビングの方へと行くと蓉子さんと江利子さんが居た

「おはようございます」
「ごきげんよう、恭也さん」
「おはよ〜、朝早いんだね〜」
「ええ、まぁ……でも、蓉子さんたちだって」
「私は朝にちょっとした体操をするからよ……それに恭也さんが起きた気がしたから」
「私もだよ」

 なるほど……ちょっとした物音で起きたんだな
 まぁ、立ち上がった地響きみたいなものは響くのかもしれないからな
 此処なら無いとは言い切れない……眠っているから気づくという事もあるのだ

「そういえば恭也さんは今朝早くのに乗って帰るんだっけ?」
「ええ、そのつもりです」
「そっか……じゃあ、お見送りは私と江利子だけになりそうね」
「本当に……」

 聖さんは起きるときは起きるが、寝るときは寝るようだ
 そして、祥子さんは……朝が弱いらしい……
 簡単に言うなら起きないという事なのだろう

「でわ、今日はお願いします」
「まぁ、駅までだったら、送ってもらえると思うわ……祥子が起きてれば」
「大丈夫ですよ、蓉子様、江利子様」

 そう言ってドアを開けて、入ってくるお手伝いさん

「一応、車の準備はしてますし、それぞれ出る時間もあるだろうからと
 先に清子様がおっしゃってくれたんです」

 なるほど、それで車の準備か……

「あいにく、融様たちはお戻りにならず、そのまま仕事が忙しいらしいです」
「そうなのですか……お世話になったのに、何も言わないというのも悪いかと思ったのですが」
「大丈夫ですよ……お嬢様や清子様がお話になるでしょうから」

 そういうものなのだろうか?
 まぁ、話が出来ないのは残念だが、仕方ないだろう……
 パーティに出た、あれの影響なのかもしれないし、少し困ったな

「さてと、じゃあ、玄関までになりそうですね」
「ええ、でも、ありがとうございます
 しかも時間まで割いてもらって……俺も助かります
 これからも勉強のほどお願いします」
「はい」
「そんな改まって言わなくても……でも、私も蓉子も良い復習になるしね」

 そう言って助けてくれる彼女たちには感謝をたくさん上げたい気分になる
 それに、俺なんかのために助かってるとしか言いようがほかに見当たらない
 そして時間になって、聖さんも起きてきて、祥子さんは起きれないみたいなので
 そのまま俺は玄関まで見送ってもらい、海鳴に戻るのだった










「恭也!!」
「忍か」

 俺は確認みたく声をかけられた友達に声をかけ返す

「あの美女たち誰よ!?」
「美女たち? 蓉子さん、聖さん、江利子さんのことか?」
「そうよ……しかも、前も会ってたでしょう」
「そうだな」
「で、お店で会ってるのをたまたまノエルの映像に入ってたから気づいたのよ
 誰よ、あの子たち!!」
「俺達と同い年の方たちで俺に勉強を教えてくれてる家庭教師のお三方だ」
「へ〜〜〜、私じゃあ不満って言うの?」
「分かりにくいから……」
「ぶ〜〜〜」

 うっ、怒られてしまった……しかし、何と言えばいいのやら

「まぁ、いいわ……でも、これ以上ライバルが増えないことを祈るわよ」
「ライバルって?」
「だから、恋のライバル!! この……」
「ああ、そっか……一応、彼女たちは俺に告白したぞ
 俺は保留したが」
「えっ!! な、那美と美由希ちゃんとフィアッセさんに連絡しないと」

 そういって忍は壊れたかのように携帯を使い始めた
 困ったな……まだ昼時で時間があるから、きそうだし……
 と、美由希と那美さんが走ってきた

「恭ちゃん、どういうことだよ!!?」
「そうですよ」

 そう言って呼吸を整えながら話す2人
 まぁ、それはいいのだが、上級生のクラスに来るのは恥ずかしくないのか?

「あの人たちが俺のことを好きだと言って、俺はそれに応えないほうが良いと思い
 断ろうとしたのだが、却下されたので、考えさせてくれと言ったんだ
 それにその方たちのことを知らないしと言ったら、
 知って欲しいし、知らずに振られるのも嫌ということで
 俺がそうなったのだ」

 そういって、俺は教室から出る

「恭也、どこに行くの?」

 呼ばれたので振り返る

「電話だ」

 そういって、携帯を取り出す
 静かな所でないと周りの音で声が聞こえなくなるかもしれないからだ
 ちなみに着信はかあさんからみたいだ
 かあさんの携帯の電話番号とかあさんと浮き出ている液晶がある

「もしもし」
『恭也!!』
「どうかしたのか?」
『そ、それが……その、あんた、学校をふけてこっちに来られない?』
「はっ?」
『良いから、来なさい……学校には言っておくから』
「どうかしたのか?」
『う〜〜、どうかもなにも!! いいから来なさい!! 来なかったら
 あんたの今日から夕飯は全て桃子さんスペシャル!!
 甘い物尽くしにするんだから』
「分かった、分かったから、落ち着け」

 俺は電話を切ると、すぐさまかばんを持つ
 机の中のものも適度に入れていく
 勉強のためだ

「ちょっと用事が出来たので早退する……赤星伝言頼む」
「了解」

 赤星に頼むのが妥当だと思った
 藤代さんに頼むのもいいのだが、彼女は違うクラスだからダメだ
 前同じクラスで俺のことを気にかけていた唯一の人だったような気がする
 赤星と同じくらい仲のいい奴だ
 美由希たちが何か言い出したが、とりあえず、授業が始まるから戻れといって
 俺は歩き出した
 急いでといわれてるので、途中でランニングペースに変えた

「しかし、あれだな……かあさんが慌てて電話をかけてくるなんて珍しいな」

 1人で呟いて店近くで止まる
 すると店の中には黒服が居た……すぐに窓のところから消えて、バックヤードの方へと回る
 何があった?
 家族に手を出してくるとはいい度胸だ……
 気配を消す……視線は送らない
 車とか無かったから安心していたが、違うみたいだな
 困ったな……無理をしたら、また怒られるかもしれない
 店の裏から入り、先ほどの人員の配置などを考える
 見える範囲内で何とかするというのは難しいものだ
 だから……相手を探す
 居た……誰だ?
 かあさんがなにやら話してるくらいだが、問題は苦笑いだというところだろう
 大丈夫なのか?
 俺は中に入る前に黒服1人を捕まえる
 この時に1人減ればすぐ気づくが、今は……

「むぐ〜」

 暴れる奴の後頭部を殴り、意識を奪う
 そして、数人の意識を刈り取り、後ろの扉に捨て置くと……
 中へと入る

「やっ、恭也くん」

 知ってる人だった……というか、融さんだった
 あれだけ黒服に囲まれていて店が動いてる理由がやっとわかった
 松尾さんが笑って、俺を見ていた理由も気づいた
 そういえば、家族に手を出したことで頭に血が上っていたからな

「さすがだね〜」

 融さんはそういいながら、俺を見る
 かあさんは苦笑いを浮かべている

「えっと、どういうことでしょうか?」

 俺はそういって融さんを見る
 かあさんは俺を見て、かなり困った表情をしている

「ん〜、何ていうか……はっきり言うと、君、これから家が雇うから」
「はっ?」
「だから、小笠原財閥というか、小笠原という企業が君の身柄を全て買うから」
「……如何いうことでしょうか?」
「真面目な顔になったね……少し間抜けな顔も良いけど
 そういうのの方が似合うよ」
「ありがとうございます」

 相手は座っている状態なので、俺は椅子を進められるまで座るわけには行かない
 多分、この人が来た理由は……

「ほら、祥子とか、蓉子さんとかの事でね……
 大学とかの方は蓉子さんと同じ大学に入れるように手配してるから」
「如何いうことでしょうか?」
「護衛に着いて欲しいという事だよ……
 なぁに、祥子がパーティとかに出るときだけで良いからね
 先に護衛って言ったけど、護衛という言葉を履き違えないようにね」
「え?」

 俺は不思議そうに融さんを見る
 どういうことだろうか?
 その意味を……

「男達による祥子争奪戦を繰り広げるだろうから、そのあたりを適当に収拾つけて欲しいんだ
 ほら、あの子男苦手なのに、近づかれるから怒るし……
 でも、我慢するしでね……悪いなぁって思ってたんだよ」

 そんな風に思ってたなんて知らなかったな
 というよりも、融さん自身は気にしてても止められない立場なんだろう
 だから、俺に頼みに来たという事か……

「娘達も頼みに来るだろうけど、君には僕の口からはっきりというべきだと思ったんだ
 幸いお父様も君を気に入っている
 だから、問題なしだよ……で、頼めないかな?
 もちろん招待状と武具の装備は認めるから」
「分かりました……でも、俺なんかがいいんですか?」
「あはは……やっぱり君は面白い
 だから、僕もお父様もお気に入りと言える部類だ
 その年でそれだけの力と精神を手に入れてるんだ……
 僕でも君みたいに鉄壁さは持ってないよ」

 融さんはそういって1人の黒服を呼ぶ

「この人が僕のガードのリーダーだけど、単体戦力で勝てるかと君は聞かれたら
 間違いなく君は勝てるだろう……さっきの腕前といい
 僕は気づいていたけど、黙ってたしね
 人が減れば、多少は空気が変わるものだしね」
「そうですね」

 気づいてると思っていたが、俺と見抜いてるとは……さすがという所か

「加藤君、どうかしたのかい?」
「いえ、あの、質問良いですか?」
「ええ」

 俺はそう言って少しだけ待つとおずおずと言った感じで話し出した

「不破士郎さんって方ご存知ですか?
 というより、不破恭也さんですか?」

 かあさんが驚いた声をあげる前に俺はかあさんの口を塞ぐ
 何かもごもごいってるが気にしない
 俺は先に加藤さんという方をじっと見る
 俺から視線を外すことなく、俺の視線に耐える

「何で、不破という苗字を知ってるんですか?」
「ずっと前、10年ちょっと前でしょうか……士郎さんが隊長で護衛をしたことがあったんです
 で、そのとき、俺は子守りを頼まれたんです
 それが、不破恭也だって……あまりなつかなかったし、ちょっと遊んだ程度だから
 そんなに覚えてないかもしれないけど、士郎さんにあまりにも似てるから」

 そうだったな……俺は父さんに似ている
 持っている雰囲気は全く違うものの、それでも背丈や顔などは親子だとわかるものだ
 悪く言うなら、高町家で唯一、俺は誰とも知った顔ではないという事だ

「知り合いになるのかい?」
「いえ、ただ……もしも、士郎さんの知り合いで、何か教わっていたら……
 俺は彼に護衛の隊長を勤めさせてもいいと進言するところです」

 そういって俺を見る……融さんもだ
 かあさんは黙ったまま俺を見ている

「確かに俺は不破恭也です」
「だ、だったら……引き受けてくれないか!?
 まだ学生の君に頼むのには過酷なことなのは分かっている
 でも、君なら……君なら」
「加藤君、落ち着きたまえ……それは恭也くんが決めることだ」
「は、すみません」

 そういって後ろに下がる
 その様子は落胆も見受けられる
 ただ、寂しいというわけじゃあ無さそうなので平気そうだ
 かあさんが加藤さんの所に行った

「あの、加藤さん、すみませんが……士郎さんについて教えてくれませんか?」
「え、あ、はい、俺の知ってる限りでよければ」
「お願いします」

 そういって話し始めた
 俺は融さんの目を見る
 期待と頼み事を引き受けてもらえないかという不安の目だ

「融さん、俺は……学生ですし、彼女たちのように輝いてる人を守りたいと思えるような
 普通の人です……だから」
「ああ、だから、頼みたい……加藤君があそこまで頼むんだから
 君はその資質を持った人間なんだ……
 それに、どちらにしても君は小笠原の人間とかかわりがあるのは確かなんだから」
「それは……否定しませんが」
「だったら、祥子たちの恋の成就に多少父親がでしゃばってきても良いと思わないかい?」
「そうですね」

 俺はふっと笑顔を浮かべてしまう
 そうだ……この人がいう事は確かなのだ
 かあさんと加藤さんは話があったのか、いろいろと話している
 父さんが亡くなっていることも話してるだろう

「士郎さんのことは残念だけど、君には君の出来る事がある
 違うかい?」
「ええ……ですが祥子さんの未来を考えたら」
「大富豪の娘としての生き方があるとか言うなら、君なんかを祥子は好きにならない」

 はっきりとした断言

「さ、どうする?」
「高校卒業までは此方に居て良いんですよね?」
「もちろん……ま、勉強を教えてもらうっていう名目で、小笠原傘下のホテルなら
 いくら使ってくれてもいいし、家に来るのも大歓迎だ」
「分かりました……それと、ありがとうございます」
「なぁに後押しだよ……リリアン女学園はそれなりに名門だからね
 君はそんなことを気にしないだろう……祥子を祥子としてみてくれる
 というわけだ……さてと、時間は?」
「貴方様のせいで、今日は夜までぎっしりになりました」
「……マジ?」
「マジです」

 融さんはうるる〜と涙を流す
 その様子に加藤さんは苦笑いを浮かべる
 毎度のことなので気にしないでとかあさんと俺に言う秘書さん
 といっても男の人なので秘書というより執事に近い
 そして、嵐は去った……俺の選択肢を増やして……










 つづく










 あとがき
 というわけで、長いな
 シオン「あんたのせいでね」
 どうしようか?
 ゆうひ「そうね」
 いや、くそマジでヤバイってコレ
 シオン「話が段々と大きくなってくるし、とらハのキャラないがしろだし」
 言うな!! 自分がもっとも気にしてることを!!
 ゆうひ「というわけで、また〜」
 ほ、ほなね〜



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