『しんげつのかおり4』
「到着〜」
「はぁはぁ……誰にも会わなかったな」
会ってたら、楽しかったかもしれないのに
こいつ人の気配読んで、全部避けやがった
「ちっ」
まぁ、良いか……家の中から気配で数名居るのがわかる
2階に2人、一階に4人と1匹かな
美沙斗さんも居るのが分かるが、美由希さんの所にも1人誰か居る
後は、なのはちゃんとレンさん、晶さんだな
「ただいま」
そういって玄関を開ける
あけたのは俺……がらっと音が立つようにあける
勿論、気づいてもらうように
「ただいまです」
「ただいま」
そう声をかけて、自分の靴を脱ぐ
恭也も靴を脱ごうとして周りの視線に気づく
「きょきょきょきょきょ」
美由希さん、何が言いたいのでしょうか?
そういえば、心読んだときに気づいたけど、美由希さんは俺より2つ上なんだよな
高校3年生らしい……高校生してたんだ
見た感じおばさんっぽく感じたのは言わないで置こう
美沙斗さんの方が若く感じたとかいうのも……
「すみません、先にソファまでお願いできませんか?」
腕を回して、頼み込むように言う
目の前に恭也の顔
「そこっ、何してるんですか!?」
「え、何って……頼み事」
「……那美さん、説明は後でしますから」
「分かりました」
納得してくれたようだ
まぁ、何を言っても仕方ないので言わないで置こう……うん、言わないで良いだろう
「で、何処まで飛んだのかな?」
「美沙斗さん、恭也に縛られて、立てなくされて、運ばれてきました」
「そうか……で、恭也、何があったんだい?」
「ちょっと言い争いをして、それで、もう動けないとか言ったので
この馬鹿&我侭娘を連れて返ってきた次第です」
……人を馬鹿だの我侭だの
恭也も十分に鈍感朴念仁エロだったじゃないか
「でも、俺の胸の感触頬で受けてたじゃないか
なんだったら、そのまま放り投げるなりして、放置したらいいのに」
「おししょ〜、そんな事したんですか?」
「いや、それは……こいつが動けないとか言うから」
「陽の当たる場所に放置しておけば、能力で帰れるのに?」
「騙したな!!」
「で、どこまで飛んだんだい?」
「……恭也らが鍛錬で使ってる神社」
……周りはシーンとなった
なのはちゃんが俺を見て一言
「じゃあ、ずっとお姫様抱っこされてたの?」
「お姫様抱っこ?」
「うん、お母さんが言ってた……ああやって、抱っこされるのをお姫様抱っこって言って
女性が男性にして欲しいことなんだって
なのはもそういう人に会えたら良いねって言われた」
「そっかぁ……なのはちゃんも会えると良いね〜
俺は出会えなくても良いけど」
「何で?」
「今が幸せだからかな」
「?」
なのはちゃんは純粋だから分からないのかな
「だって、なのはちゃんがこんなに近くに居るし」
「あやっ、そんな、なのはで良かったら話し相手くらいにはなるよ」
「じゃあ、お願いしようかな……恭也に泣かされて抱きつかれて縛られたんだよ」
「えっと……お兄ちゃん」
「いや、なのは、それは根本が無いから俺が悪いように聞えるだけで」
「女の人に手を上げるなんて許さんって言いながらお兄ちゃんがしてるじゃない」
「いや、これでも、こいつは二つ名まで持っているような、奴なんだが」
「ううっ、こうやって私を苛めるの……恭也ったら『お前なら避けられると思って』とか言って
人を奥義の実験台にするんだよ……すっごく怖かったのに」
「お兄ちゃん!!」
なのはちゃんが顔を赤くして怒る
恭也は焦りながら、何か言葉を探りながら言う
しばらく、女性陣から言われ続ける恭也が見れそうで何より
美沙斗さんが近くによってきて小さく聞いてくる
「どうやって閃・瞬を流したんだい? あのタイミングなら」
「ええ、普通の人なら駄目でしょうね……バリアを張ったんですよ
それを崩された時には驚きましたけど、一点突破されてしまいましたし」
「それでも、とっさの判断力は相変わらずだね……」
「あの、閃って技……突進力、威力共に凄いですよ
しかも、それを幾つも打つのは驚きました」
「それを全て防がれた恭也も辛いだろうに」
「美沙斗さんが使えない技ですよね」
「まぁね……」
苦笑いで応えてくれた
恭也の方の尋問は終ったらしい
「初めまして、滝川蛍です……神社で水浴びをしていて、恭也に裸を覗かれてしまい
そのまま此処まで連れられてきました」
「恭也さんが、そんな事を?」
「ええ、恥ずかしい限りですよ……見せてもたいしたことの無い体ですけど」
「覗いてない!! 第一あれは、誰か確かめようと」
「でも、月明かりの下でもずっと俺の体見てたじゃないか
しかも、時間稼ぎまでしてタオル取れないし」
「あの時は敵同士だったから」
「いや、あの時、お前は俺の所にタオルが無いのをいいことに視姦したんだ」
「してない」
顔を赤くしながら言う恭也
「で、胸は柔らかかった?」
「まぁ、それは……って、何を言わせるんだ」
「スレンダーボディだっただろ」
「無駄な肉は無かった感じがするって、何を聞いてる何を!?」
あ、またガーっと怒り出した
こうやってからかうの楽しいから、させてもらうけど
「あれ? 誰かに似てる」
「他人の空似でしょう……ほら、世の中には似てる人が数名は居るって」
「そうですよね」
頷いてる人
「ところで、貴女は?」
「あ、神咲那美です……美由希さんの1つ上、恭也さんの1つ下の学年で
今大学1年です」
「そうなんですか……一応、16歳なんですけど、大学に行くか高校にいくか悩んでるんですよ
バイトもして、生活費とか入れないと……しばらく此処に居てくださいって言われたし」
「へ〜、そうなんですか?」
「ええ、恭也が私を護るために、此処から行かせないって出て行かせないって」
「ししょ〜が」
「師匠、それは求婚?」
「確かに聞えようによってはそう聞えるね」
「……」
美沙斗さんの言葉に、美由希さんが小太刀を構えてる
「恭ちゃん、何か言い残すことはある?」
それは、最後の言葉、遺言ですか?
うわ〜、そんな事聞いたこと無いよ……意外と美由希さんって嫉妬深いのかな?
「美由希さん、落ち着いて……私が怒るならまだしも、美由希さんが恭也さんに怒るのは何か可笑しいよ」
「そう仕向けた人が言うと、腹立つ」
恭也はそう言って少しだけ顔を歪める
まぁ、そういわないで欲しいし、助けたのだから許して欲しいものだ
「恭也も落ち着いて……ちょっとした冗談なんだから
それに、私なんかを恭也は相手にしないって、胸もないし、ちっちゃいし
暗殺者だし……何より、龍に居た経験もあるし」
「龍って……恭也さんは良いんですか? 危険とか、大丈夫なんですか?」
それが普通の反応ですよね? 神咲さんの対応は間違ってない
それに避難を向けるつもりも無い
ただ、それはそれでやっぱり寂しいという感情が身を襲う
「良いんだよ……こいつが俺らを売るようなことしたら、俺が責任を持って殺す」
「そうだね……私もそれで良いよ」
自分が違う者へと変わったら、容赦なく殺してくれて構わない
どうせ、死ぬ時は何時か訪れる
自分は怨まれこそすれ、誰もが歓迎するような存在じゃない
「16歳だと制約が多すぎて……生活できないって言われてね」
「恭也さん、本当に」
「良い……それに、本当に悪い奴だったら、俺や美由希は本気で倒しにかかっていた
でも、敵意が凄く感じなかったんだ……で、再会してしまい聞いたら龍を抜けるための演技だったと
俺の強さを利用したと聞いてる」
「私の体術は骨を抜いたり入れたりをメインとした合気柔術……
投げや絞め、打撃なども加えた総合術だから……HGSの力に頼るほどの相手となると
ほとんど居ないんだよ……恭也と真剣勝負するなら、私は負ける
HGSの力を使ったら勝てるくらいだよ」
HGSは卑怯な力だといえば卑怯だから
他力本願にしたくないから、体術を覚えた……暗殺術とも言っていい技
技術の数々、そして世界中で殺さなければ生きていけないと思っていた
『どんな事があっても生き抜いて』……その言葉があったからこそ生き抜いた、必死に
そして、騙されていた……1度、顔見せでティオレさんの歌を聞きに行った
心に触れて、そして、世界を少しだけ知れた
そして、アルバート・クリステラを狙うのは止めた……私には狙えなかったから
そういえば、何時の間にか『俺』と『私』が混同してる
「そのHGSの力って見せてもらっても?」
「ごめん、今は疲れてて……大分力も使ったのあるけど
恭也と闘ったの昨日で、今日もちょっとごたごたしちゃってね
体力的に限界……ごめんなさい」
「いえ……でも、恭也さんと闘って互角って」
「凄いことだと思うけど」
「閃使って、追いつけませんでしたからね」
「私だって自信のある技、ぶち破られてちょっとショック受けてるんだから」
「あれは、一点突破をしたから可能だったんだ」
確かに、周囲全方位バリアの場合、一点だけに集中させての攻撃は最強だろう
それに、そう言う風に作ってあるバリアなのだから、それしか手が無いとも取れる
ただ、その判断は早かった
「俺だって、奥義を何度も抜けきられたんだぞ」
「え、恭ちゃん、奥義を防がれたの!?」
「そうだ……確実にいなされもした
体術に置いては、相手の方が一枚も二枚も上手だ……もしも鍛錬つけてもらえるならつけて欲しいくらいだ」
「別にそれくらいだったら良いけど……でも、ああいうのって武器があるなら
武器とかに頼った方がいいよ……持ってないなら別だけど」
「そうか」
「それに、ある一点の強さが最強なら、それで良いと思うし
恭也と美由希さん、美沙斗さんの3名はそれで強いのだし、いいじゃない」
そう言って、レンさんと晶さんが此方を見ている
「でも、俺らは体術派なんですけど」
「ま、習ってるものが体に馴染んでるなら辞めたほうがいいよ」
「そうですか」
「うん」
それに、あまりにも意表をついた闘い方をするために
自分の身を削る戦い方をするのだし……ある意味で、すっごく痛いから
「蛍の戦い方は、ある種の危険が伴うし
相手が、並みの人なら発狂するよ……私は少しだけ聞きかじった程度だけど
絶対に習いたくないな」
「美沙斗さんがそこまで言うなんて」
「恐ろしい」
この中で最も高い戦闘力を持ってても可笑しくない美沙斗さんが言うのだし、そうなのかもな
俺からしたら、それが普通なことだったから、出来る
出来なくなると言う事は死んだ時くらいだろう
「それにね、今日は湿布貼ってるし」
腕やらにちょこちょこと貼ってある
それが、自分の骨を繋いだときなどに生じる内出血だ
で、打撃も加わってるので、ちょっと痛いし、戦闘はさせられるし、此処から出るなって言われるし
「う〜ん、もしも普通の女性なら、『お嫁にいけない体にして、責任取ってくれるんでしょうね』とでも言うのかな」
「…………」
周りが沈黙
どうかしたのかな?
「えっと、それって」
「別に誰かのお嫁に行くなんて無理だろうし
私が結婚なんてしたら、もう、知り合いが大爆笑するだろうね」
「大爆笑って、お前知り合いって少ないんじゃないのか?」
「美沙斗さんくらいだよ」
「……笑いはしないよ」
ニコリと笑顔で言ってのける
さすが美沙斗さん……まぁ、良いけど
と、忘れる所だった
というか、これを忘れたら大変だ
「私って何処で寝たら良いの?
後、荷物置き場を」
「……あ〜〜〜」
「忘れた……超特急で掃除しますんで」
レンさんと晶さんがそのままどたどたと消えた
あ〜、凄いね……うん、掃除って聞いて、あの速さで動くんだから
「そういえば、お庭に居る子って狐だよね?」
「ええ」
「へ〜、この子が久遠さんね」
「久遠『さん』?」
軽くなでなでとなでる……逃げない
人見知りが激しいと聞いてるけど、分かってるのかもしれない
私が貴女を知っていると……
ポンと白い煙が立つと、久遠が変わっていた
「く、久遠!!」
那美さんが驚く
「急に姿を変えたら、こいつはしらな」
『いんだぞ』と続けるように言いたいのだろう
でも、私は久遠の頭をなでて、軽く耳に手が当たる
柔らかくあったかだ……妖狐でも生き物なんだな
「可愛い〜」
撫でる……いや、これは本当可愛いわ
なのはちゃんと2人居るだけで、このまま部屋にお持ち帰りして飾りたいくらいに
ぴくっと震える久遠
「ありがとね」
「きづいてたから」
「そうだね……でも、久遠はどんな姿してても、久遠でしょ」
「うん」
頷く久遠……巫女服の偽みたいなの着ながらも髪の毛が揺れた
これが久遠の人間バージョン……子供状態って所か
「ならば、良いじゃない……ねね、膝上に乗ってくれる」
不思議そうにしながらも、膝の上に体が乗る
やっぱり子供の体型だと、柔らかくて暖かく、お日様の匂いがする
「あの」
「はい?」
那美さんが困った顔をしながら聞く
「久遠のこと驚かないんですか?」
「まぁ……世の中不思議なことは多々ありますから……」
「……不思議なこと?」
「瞬間移動に見える移動方法を持つ人とか、他にもいろいろと」
「そうですね……でも、誰にも言わないで下さいね」
「勿論……私だって言われたら困ることを言ってますし
言わないで下さいね」
「はい」
「くおんもいわない」
そう言って、頷いてる2人
良かった……言われないほうが安心できる
それに、HGSは知ってる人にとっては普通なことでも、知らない人にとっては悪みたいに写る
それが全て悪いとは言わないしHGSという力は有能な人に思えてくる
でも、心は人だし、化け物と言われて傷つかない人は居ないだろう
私は、傷つく前に相手を殲滅してたから、傷つかないわ……
「部屋の方はしばらく美沙斗さんと一緒に使ってください」
「うん、それなら良いよ……ありがとうね
最初、美沙斗さんと恭也に聞いたのだけど、知らないって聞いてね
荷物は、其処に放りこんでおくよ
離れにある道場で、寝泊りして良いなら、そこに居るけどね」
「道場ですか……でも、あそこは」
「少し汗臭かったりするし、どうかと思うがな」
「気にしないし……あそこなら綺麗になってるだろうし」
道場は掃除などを確りしないと大変なのだ
使えるなら使えた方が良いような気がする
「でも、朝は冷えるし、夜も冷えるし、夏場は暑いし、冬場は冷えるよ」
「ん〜、大丈夫だよ……意外と頑丈に出来てるし」
「それに、寝るだけだから場所選べないし、美沙斗さんの手を煩わせるのも悪いし」
「そうですか……じゃあ何か要りますか?」
「ん〜、毛布とか?」
「毛布だけで良いんですか?」
「今の時期なら丁度良いんじゃないかなって」
秋がきて暑さが過ぎれば、後はのんびりと出来ることだ
しかも、少し1人になりたい
色々な事がありすぎて、整理がしきれてない……
「それまでの間に、部屋とか考えたら良いじゃない
ま、ほら、居候だし、場所は選びませんって……屋根裏あるなら屋根裏でも過ごせるし
他にも押入れとか物置とか」
指きり数えると、何故か私を見ている、何故に?
「女性なんだし、もう少し気をつけようよ」
「ん〜、でも、私、そういう生活しか知らないから……」
「……知らないって」
「本当に、普通の生活知らないし
買い物はデパートでカード一枚あれば終ってたし
普段の買い物も万単位で使ってたけど、それもあまりする事なかったし
年に1度あれば良い方だから……年間で何千万、何億って稼いでたし」
「それだけ人を殺したのか?」
「まさか……護衛の人を無視して、ターゲットのみを殺すつもりで挑んでたよ
無駄に殺して、依頼主を脅しても楽しくないし
殺すのを楽しんでいたなんて事は無い
だから、抜けたんだよ」
そう、抜けると言い切ったのは私
それに、抜けた方が良いと思ったのだ
正義とかでは無いけど、それでも、私が出来る事がそれくらいだったから
「もう、これ以上人を殺めなくて良いなら、其方の方が良い
ま、護衛が出来るかどうかは謎だけどね」
「そうなんですか」
「うん、私はもっぱら攻撃型……誰かを護るのも如何したら良いか分からないから」
バリアで包んで護るくらいか
ま、そのバリアも破られた……一点突破の剣士に
拳銃でも弾いたバリアがその様なのだから、痛いことこの上ない
「教えてもらえば」
「出来るかもしれないし、出来ないかもしれない
それに、私は災いの元となる可能性も秘めてる……今は大人しく養生しておくに越したことは無いの」
「そうですか……すみません」
「いえいえ」
この人は本当に良い人なんだな
那美さんという女性……やさしく、慈愛に満ちているから
「今日は道場で寝させて……1人で寝たいし」
「分かりました……じゃあ布団とかを其方に運んでおきますね」
「ありがとう、助かるわ」
お布団だけで良い……荷物は必要最低限をどうにかしたら良いし
晶さんが持っていってくれるみたいだ
疲れてるのが良く分かる……体力不足かな
結構自信あったのに、走ろうかな……武術を扱う者には足腰の鍛錬は欠かせない
「よくよく見たら、うちらより背が小さいし」
「そうだな」
「おししょ〜って幼女好き?」
「そう言うわけじゃないのだがな」
でも、そう見えるあたり、恭也って多分、保護欲が強いんだろうね
しかし、御神の剣士としての力は護るためが最も強く現れるって聞いたけど
それを実感するとは思わなかった……ま、生きてるだけマシなのかもしれないけど
「そういえば、ティオレさんに誰が連絡取ったんですか?」
「フィアッセが連絡入れたと」
なるほどね……ティオレさんって、憧れを持ってる人
あの人の優しさを感じて、龍がしていることを本当に良いか悩みだした
そして、色々な人といっても、美沙斗さんと出会い、決意した
美沙斗さんが抜けたというのは、風の噂程度で聞いた
元々、美沙斗さん自身が復讐の牙となるには優しすぎるような気がしてたし
「じゃあ、今ごろは……イリヤさんが困惑してるんじゃないか?」
どんな感想だろう
恭也は苦笑いで言うし
「お布団運んできましたから」
「ありがとうね……晶さん」
「でも、年齢で言ったら、高校1年でしょう」
「まぁ、そうなんですけどね……あまり興味が無いというか、飛び級使って大学受けたいなぁって」
「えっと、何でか聞いても良いですか?」
こういう風に聞かれたら、どう応えよう
何ていうか、個人的にはからかいたいけど……
「変な応え方だけど、恭也が此処に居ろって言ってくれたし……
ほら、恭也が傷ついてたら護れる人が傍に居た方が良いでしょ」
「……護れる人って?」
「私……これでも、体術だけでなら、美沙斗さん、美由希さんと同じくらいだよ
小太刀持ってても、もって無くても……それに、能力使えば、相手が何か分かれば対応が取れるし」
「でも、恭ちゃんがそれを許すかどうか」
「俺は要らないぞ」
「ほら」
分かってるよ……でも、それに賛成する人が一人居る
「私は良いと思う……それに、蛍なら間違いなく恭也を護れるだけの力を備えてる
いや、正確に言えば、恭也を動かさないで相手を殲滅する術をというべきだな」
美沙斗さんの一言には重みがあるなぁ
此処だと年長者は敬うとかそう言うのがあるのかもしれない
「そういうこと……同じ場所に立って歩いてはいけないけど、私だったら相手を殲滅くらいはね出来る
恭也を倒そうとする人がそろそろ出てくるでしょうし」
「え!?」
「龍にそう言う動きがあるというのは、美沙斗さん所も気づいてるでしょ」
「ああ……それで、その一人目が蛍だったというわけだね」
「はい」
……だからこそ、私は逃げた
相手が本気でかかるなら、間違いなく私は死んでいただろう
迷いがあるからこそ、私は殺されなかった……殺せと言いながらも、死なせないという事
同じ意味の中でありながら、同じ意味ではないように
「次は誰が来るか分かるか?」
「無理だね……でも、予想できるなら、今度のコンサートまでに体調は万全に整えた方が良いかも」
「何故?」
「龍は次、間違いなくCSSのコンサートを狙う
そして、恭也を呼び出す餌とする……目的は恭也の命……
コンサートの人は囮……確定だよ」
「……なるほどね……此方も、策敵班には伝えておくよ」
「お願いします……早々しっぽは出さないでしょうけどね」
「それでも、言うに越したことはないだろう」
そう言って、ふぅと一息つく
剣士の3人と私のあわせて4人が玄関を見る
インターフォンがなって玄関を開けてもらう……開けたのは美沙斗さん
そして、驚いたのも美沙斗さん……なんでこの人が此処に?
「ティオレ・クリステラ……」
「エリスまで」
「ごめんなさいね……フィアッセがどうしてもって言うから
で、信じてあげたいのだけど、顔を直接見たかったの
声を聞いて、感じたかったの」
この人の行動には驚かされる
「音速ジェットに乗ったの初めてだったよ」
「エリスさん、大丈夫!?」
「全然」
ティオレさんの体は大丈夫なんですか? すっごい元気が良さそうに見える
「初めまして、元龍の暗殺者……末端で人を殺していたキリングドールこと滝川蛍です」
「初めまして……あなたが……フィアッセからあらかた聞いてるわ
うん、大学の方には圧力かけておくから、恭也と一緒に通ってくれて良いわよ」
「ありがとうございます」
「ティオレさん、それで良いんですか!? 元」
「それ以上は駄目よ、エリス……この子も被害者なの」
私はそのままエリスさんの前に立つと、頭を下げた
「ごめんなさい」
「え?」
「私が悩みを抱えてなかったら、悩んで時間を延ばさなかったら
士郎とマクガーレンさんが死ぬことなんて無かったのに……私のせいです」
「ちょ、待ちなさい! 何のことよ、それは」
「そうね、私も興味あるわ」
事のあらましを簡単に話した
「でも、あなたは私たちを殺したくないから動かなかった」
「そうよ……悪いのは貴方じゃないわ」
そうは言うけど、それでも……私が迷って無かったなら、まだ生きていたかもしれない
士郎という人とマクガーレンという人は……亡くなって、周りの人は強くなる
でも、それでも悲しみは消えない
私が悩まずに仕事を受けていれば……
「士郎もマクガーレンも、大切な何かを護るために護衛をしていたのよ
貴方が悪いわけじゃない……自分の居た場所がそう言うところでも
あなたは断る強さを、人を殺めないようにと努力してきたのよね……だったら、大丈夫
これからは、自分より弱い人を護れるように努力していけば良いわ」
ティオレさんがそう言って、私の頭をなでる
私と同じくらいの身長のおばあちゃん……でも、エネルギッシュでおばあちゃんに見えない
ただ、綺麗な老婦人に見えて……
「ごめんなさい……」
「良いの……それに、蛍さんが悪いわけじゃない
あれは、私も」
エリス・マクガーレン……護衛会社の1つを運営しているCSSの護衛をメインで担っている
「まぁまぁ、2人とも……さてと、蛍さんにはサインをしてもらいたくて此処まで来たのよ
顔見せもあるけどね」
「あの、1つ聞いても良いですか?」
「何?」
「どうやって来たのですか?」
「そりゃあ、音速ジェット使って、もともと中国にいたから飛んできたのよ
連絡受けてからすぐに……イリヤを放置して」
恭也が呆然としてる……ティオレさんのそう言うところ良いなって思う
たかが知らない人(私)のためなのにここまで来てくれる
それがとても嬉しい
「ありがとうございます……その嬉しいです」
「笑うと可愛いわね……でも、この服は誰の?」
「あ、恭也のです……買い物には行ったのですけどね」
ティオレさんは顔をまじまじと見て
「髪の毛も長いのね……大事にしてたの?」
「はい」
「そう」
撫でられる髪の毛が少しくすぐったい
「恭也、このままだと、あれだし、中に入らせてね」
「ああ」
エリスさんの言うとおり中に入って、話をすることに
ずっと玄関だったし……
「ま、この子はまだ子供みたいな部分と大人びた部分の両方を兼ね備えてるんです
色々とあって」
「そうなの……じゃあ、美沙斗、少しだけ詳しく話してくれるかしら?」
「ええ」
「私はこの場所に居ない方が良いですね……道場に行ってます」
ふらつく足に気合を入れて立ち上がる
体が血を要してるみたいなものだけど……実際には疲れからだ
能力を使うのは極度の疲労に襲われる
道場まで着くと、そのまま布団の上に倒れる
緊張した〜、それに……疲れた
もともと疲れを癒さないといけないのに、この状態は良くない
ドアのノック音が聞えて、布団の上でうだごろしてる所へとあけて入ってくる
「こら、一声かけてから入りなさい」
「ああ、悪い」
「全然悪いとか想ってないだろう?」
「そんなことは無いが」
何ていうか、こいつも変わった人だから……男として見た方が良いのだろうが
普通、女性が寝てるかもしれないところに来るか?
しかも、16歳の小娘とは言え、声かけられることも多々あるんだぞ
「で、何か用事?」
「いや、何か考えてるようだったから」
「話でも聞いてくれるのか?」
「まぁ、そんなつもりだが」
どっちでも良いのだけど、どうするかな……何を言っても追い返せないだろうし
ばっちりお茶を持ってきてるし……確信犯だ
で、紅茶だから、尚更だな
「ま、いいけど」
「そうか……ほら、ティオレさんからのお土産だ」
「ありがと」
貰えるものは貰っておこう……一口大のカステラみたいなの
美味しそう……
「頂きます」
「お前、何で俺がここに来たのか理解してるんだろうな」
「してるよ」
「じゃあ、先に話せ……それまでお預けだ」
「私犬じゃないよ」
「分かってる」
「ま、いいよ……単に緊張とかもあるけど、本気であんたと戦って疲れがピークなんだ
もともと体力に自信があるわけじゃないし、羽根の展開が多すぎて体がもうガクガクで寝てないと辛い
誰かさんのせいといえばせいだけどね」
「それでも展開しようと思えば展開できるというわけか」
「ま、そんな所……それに、ここだったら、私1人が亡くなっても平気でしょ」
「もし、龍が来たら死んでもいいというわけか」
「此処なら、私だけ狙われても、周りに気を使わなくていいから」
「なるほどな……もしも、俺らが盾に使われたらとか考えなかったのか?」
「その点は恭也たちの力を信じてるんだよ……これでも、龍の中ではかなりの腕だと感じてたし」
恭也は頷いて、こちらを見る
カステラと紅茶を渡される……動いた後は甘い物というのは良い物だ
それに、こうやってのんびりと出来るのも、此処ならではだろう
だから、恭也ものんびりできる
今は美沙斗さんという人も居るし、安全度で言えば、トップクラスだろう
「それで、お前は疲れもあるから、そこで横に寝そべってると」
「ま、こんな姿さらす方が珍しいよ、陵辱された上にこんな痴態まで見られるなんて
もともと行けるかどうかも怪しいけど、お嫁にはいけないね」
「いや、それは如何かと想うが、一応、ティオレさんが大学の方は手を打ってくれたみたいだからな」
「そうだね」
「で、お前の体は寝たら治るのか?」
「心配してくれてるんだ」
「そりゃあな」
頬を小さく掻いて言う
そんな不安そうな目しなくても大丈夫だよ
「恭也と闘った怪我とかそういうのは少ないから大丈夫だよ……」
「いや、そうじゃなくても」
「それに、精神的な疲れもあるから、だから寝ないとね」
「あまり寝てないのか?」
「そうだね……」
暗殺者がそうほいほいと寝れるか
「1つだけ聞いて良いか?」
「何?」
「小さな頃から、そう言う生活だったのか?」
「そうだね……元々それを目的として作られた物
結局そのあたりだったよ……幾人もの暗殺者が送られてきた
そして、何度も死線をくぐった……幾度も死ぬと想ったことか
でも、生きて、相手を殺している自分が居た
全員敵意を持っていたし、周りは傲慢な奴らばかりだった
心を読み、相手を知るうちに自分の嫌さに気づいた
自分が此処でこうやって、この人たちを殺していって良いのか?
でも、結局答えを見つけることできなくて……そのまま、周りを壊し、殺していった
結局、俺は相手を殺す意外の方法を知らなかった
だから、ティオレ・クリステラという人の生き方、在り方に尊敬を抱き、敬った」
恭也は私を見ている
「ティオレさんがお前を大切に思ってくれてるだろう」
「そうだね……あの人の優しいところは凄く嬉しかったし、気持ちがあったかくなる」
「じゃあ、如何して逃げるようなまねを」
「傷つけてしまうから……私の過去は消えない
だから、傷つけた心は周りに話すことで少しでも解消される
私は悲しい顔を見たくない……だから、逃げた」
理由が理由だ……情け無いなといわれても仕方ない
「しかし、よく話すな」
「お前は信頼置ける人だと思うからだよ……私なんかが頼って嫌な顔してないし
心の底から疑ってるなら、ずっと縛ってるなんなりしたらいいのにしなかった
家にまで誘うときている……お人よしめ」
「そのわりにノリノリだったじゃないか」
「元々悪戯が好きなだけ……それにからかうのは嫌いじゃない」
「なんてはた迷惑な性格だ」
苦笑いで言う恭也
「そういえばさ」
「なんだ」
「エリスさんって恭也が好きなの?」
紅茶を噴出した
汚いな〜
「汚いな〜」
「いきなり変なこと言うからだろ!?」
「ま、冗談だよ……仕返し……女性の秘密を根堀葉堀聞くから悪い」
「どうせ、少しだから良いだろうが」
「そうだね」
「こいつは」
「ふふっ」
笑ってしまう……このカステラ
「桃子さんとこのお土産?」
「ああ、らしい……でも、どうして私が二つも食べないといけないの?」
「俺が食えない」
「まさか、それを私がたべろと」
「ああ」
「太らせて食べる気ね」
「んなわけあるか!?」
「冗談だよ……皆が心配するしそろそろ戻ったら
寝るし……これ以上居たかったら居ても良いけど、襲わないでね」
「誰が襲うか!」
ま、それだけ元気なら大丈夫だろう
お布団に横になる……疲れがピークなのが分かってる
「おやすみ」
「あ、ああ」
そのまま寝入る……というか、もう限界と幾度目かの呟きが頭に浮かんで消えた
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