『三日月の表情2』








 恭也は棚に戻しながら、少し物言いを考えてるようだ

「あ〜、そのな、出来たらで良いんだが……体術を教えてくれないか?」
「体術を?」
「あ、ああ……出来たらで良い
 その、小太刀を失った時や武器に頼らずに闘うのに、関節技やゼロ距離の技は使えるだろう」
「まぁ、そりゃあね……私だって、それで生きてきたし」
「それで頼めないか? 簡易な物で良い……鍛錬の相手になってくれるだけでも良いし」

 どうしようかな……教えるのは構わないけど

「あのさ、恭也に1つ聞いておくけど、それに答えれたらで良い?」
「ああ」

 ……交換条件というのにはおこがましいけど

「私の攻撃は相手を再起不能にする技だよ……相手を倒し、戦意を失わすとかじゃなく
 本当に生死を賭けたものになる……だから、私が使ってるものを教わるのか
 それとも、今ある武道を総合したものを教わるか、どっちが良い?」
「教えてはくれるんだな」
「ええ」
「どちらが、強いかは答えてくれるのか?」
「どっちも長所と短所が存在するから」
「なるほど」

 恭也は納得した顔で私を見ている
 多分、分かってるのだろう……それらの長所と短所を

「お前が使ってるのは、自分の骨を抜け易くするという特訓が必要で、相手の骨を抜く作業を1つで決めないといけない
 それにより殺してしまう可能性が高くても
 で、もう1つの方は、相手を倒すことを前提にしてるから殺す可能性は極めて低く出来る
 ただ、その代わりの条件として、戦意を失わせない限り、大ダメージは見込めないって所か」

 さすが、私と戦ってたことはある
 頷いて返す

「お前が、最初闘った時、動きが読めたのはそのためだ
 どこかで見た技ということで覚えていたからな」
「……そっか……で、どっちを取る
 私からしたら、恭也には総合を教えた方が良いと思う」
「何故?」
「そんな危機的状況に陥るほど恭也は馬鹿じゃないからね」

 恭也は渋い顔をしている

「もしかしたら、するかもしれないじゃないか」
「でもね、そうなったら、止める人が出てくるよ……私だって、止めるかもしれないじゃない」
「だが」
「それにね、下手に骨が抜け易くなると、腕やら膝やらを又潰すことになりかねない
 それならば、今ある肉体を強化に使える総合が良いよ」
「そうか」

 それにね……

「鍛錬をすれば、気って概念しってる?」
「ああ、鍛錬に鍛錬を重ねたら、そう言う気というか、オーラというか力を使えるとは聞いたが」
「恭也はね、護るということで戦ってる間は無意識で、その気を使ってるの
 私もその手のことを確りとしてたから、使えるけど
 能力使ったほうが早いしとかで、あまり使わないだけだし」
「じゃあ、どうなんだ?」

 いや、どうなんだって……はぁ〜

「なんだ、そのため息は?」
「簡単に言えば、恭也はその間、凄い力を発揮してるの
 多分そういう家系なんだろうね……集中力とか、そのあたりもずば抜けてるし」
「そういうものなのか」
「で、気をもっと上手く使えるようになれば、そこの風鈴見ててみな
 今無風でしょ」
「ああ」

 私は自分の手の平に自らの力を溜めて、腰を落ち着かせて、一気に腕をアッパー気味に上げた
 チリチリチリチリーーーンとなる風鈴

「なっ!?」
「風が起きたでしょ」

 呼吸を少し整えて恭也を見る

「あれは遠当て……ま、もっとも威力は私が普段使う10分の1ほどだけどね
 本気でやれば、家を飛ばせるとかまで言われてる
 私が出来るのは、家の窓を破るくらいだよ」
「それでも、十分に凄いが」
「ま、これを会得できれば、恭也もカマイタチは出来るんじゃないかな」
「カマイタチって、あの、風の現象をか?」
「気はイメージと己の肉体の限界を超えた先でしょ
 神速という概念も似たようなものだからね……で、気を溜めて、それを剣に乗せて放てば
 カマイタチは起きるだろうって推論だよ
 気なんて様は使いようだしね……ま、その概念を普通の状態で出せるようにしておけば
 多少の怪我なんかも治りが早くなるんだよ」
「便利なものなんだな」
「でも、弱点もある」
「なんだ?」
「体力の減り方は半端じゃなくでかい……実際、恭也も感じてると思うけど
 護るために神速を使った時、かなりの体力を削ったんじゃないかな」
「ああ」
「それはね、気で体をコーティングしてその前の時より、更に早く動いてるからだよ
 神速の状態で居て、更に速く動くのには、体がついていかない……だから、気がコーティングしてるんだよ
 普通の動きの時もね……で、そのために短期決戦で終れば良いけど、運が悪いとガス欠になっちゃうんだよ」
「じゃあ、気は無尽蔵とかそういうわけじゃないのだな」
「ええ……気は、自らの脂肪燃焼を助ける代わりに、多大なエネルギー摂取を必要とする力よ
 使えるようになれば、肉体強化だけで、十分になるの
 私はそうやって生きてきたわけだし」
「なるほどな」

 そう、私はそうやって生きてきた
 片付けも終わり、私は周りを見る

「じゃあ、ちょっと実践編行こうか」
「なっ」
「驚くのも無理ないけど、見て感じてでしか気は扱えない」
「分かった」

 私は縁側に出ると、手ごろな物を探す
 小石がいくつか拾い集める
 それを、縁側に置く

「何をしてるんだ?」
「ま、見てなさいって……これが気を極めたというか、まぁ、使える人の実力だよ
 ……目を閉じていた方がいいかもしれない」
「目を閉じた方が?」
「考えるな、感じろってこと」
「ああ」
「でも、最初は見てたほうがいいかもね
 これが気の力だってことを」

 本来は医療にも使える気の力
 私は龍でそれを徹底的に教わったのだ……だからこそ、自分の骨を治すのにも使用する
 おなかすいて困るけど……

「そうだなぁ……これで良いか」

 私の周りに8つくらいの割れ物を置く
 といっても、恭也の盆栽の欠片だ

「ちょっと借りるね」
「ああ……ゴミなんだが」
「ま、再利用再利用」

 私は瞼を閉じて、呼吸を整える
 周りの力を自分のものとして扱う……外気
 そして、自分の生命力とも言うべき力を内気
 欠片は、全て1メートルほど距離を置いてある
 恭也の方は3メートルは離れてる
 大丈夫だろう……本気ではしないし

「はっ!!」

 鋭い声と拳を地面にたたきつける
 地面の感触が手に伝わる……といっても、手に地面が触れたのは先ほど
 ふわりと誰かに助けられてるが、それが何であるかは分かる

「なっ!」

 恭也は周りを見て驚いてるのだろう

「これが、気を極めたというか、気を使える者の強さだよ」
「何をしたんだ?」
「自分の中に外の気を入れて、地面を経由してダメージを欠片に与えた
 二度当てまでして」
「二度当て?」
「先ほどの拳の違いは、拳で攻撃した後に、更にダメージ浸透を広げるために、欠片に届くように
 力を加えた一撃を出していた……左右両方でね」
「なるほど……じゃあ、先ほどのが気というわけか」
「うん、ちょっとは感じたでしょ……」
「ああ、何ていうか、分かった
 お前が小さく足踏みしてるとき、俺の足に電流みたいなのを流し、動きを鈍らせていたのか」
「相手に自分の気を送り込んで相手を惑わす技なんだけどね
 まさか、跳ね返された上に、攻撃されるとは思わなかったわ」
「そうだったのか」
「そうよ」

 気の扱いは力関係がはっきりとしてる
 強い力で相手を押しやり、力により、屈服できる
 だからこそ、鍛錬をしているのに、それはそれで痛い

「ま、恭也の課題は、外気だけでもマスターすることかな」
「それが出来たら如何かなるのか?」
「ん〜、恭也が神速を使う前に、それを利用するだけで、前の倍以上の力で動ける
 早さも何もかも」
「それは、凄いな」
「と、言えれば、いいのだけど
 実際には、肉体が多少強くなる程度だよ」
「強くなる?」
「そうだね〜、簡単に言えば、肉体が壊れそうな部分を勝手に護るためにって何かしちゃうことかな」
「と言う事は、右ひざの負担が減ると言う事か?」
「それに近い」

 納得してるね……気とは、元がそういうものだ
 己の内在する力を有効活用……食物や空気によって摂取したものをって事だ
 勿論、それを行なうにはそれなりの鍛錬が必要だし、気は……
 周りに使い手が居ないと、サッパリ感覚がつかめないだろう

「それに、気は元々治癒用のものなんだよ
 戦闘に使おうって事は余り良くない……で、外気を教えるのは、恭也だからだ
 美沙斗さんにも幾度か見せたけど、使えないって言ってた
 個人の資質もあるし、私も1年はみっちりと見せておぼえさせられた……分かるね、この意味が」
「見て、感じて覚えろと」
「それに、一日に何度も使える技じゃないのもある
 それを考えてね」
「分かった」

 恭也にそれを言うと、私は縁側に座る
 やはり、これだけでも気は消耗したな……外気を取り込み、内気へと代えていけば良いが
 代替が利くものじゃない

「内なる気は、有限
 外気は無限にあるものの、入れすぎたら、自分が爆発して、死ぬ
 パンクと一緒だから」
「外気を入れすぎたら、死ぬと」
「私が言ったでしょ……骨をばら撒くのと一緒だって
 あれは、これの応用だからね……ダイナマイトと同じくらいの爆発力はあるよ」
「なるほどな」

 納得したようだ……

「結局奥の手だし、自滅技という点では駄目駄目だしね」
「そんな使い手がたくさん居るのか?」
「居ないよ」
「え?」
「私が最後の1人……外気、内気を扱えるのは中国を探せば居るだろうけど
 そう言う人たちは、大体が拳法家とかで、基本的に何もしない日々だし弟子とっても
 その外気や内気を教えても、覚え切れない人が多いから
 若い者で使えるのは私1人……龍は若い奴らには目をつけてるだろうけど
 居ないよ……内気は使える人が多々居るけど、それでも、そんな多用できる技じゃない
 外気が最も必要だけど、今使い手は私のみだね」
「そうなのか」
「私の師匠も亡くなってるしね……」
「そうか……聞いて悪い事したな」
「良いよ……でも、あの人が一番凄かったのは
 龍が襲ってきたときに護ってくれたこと……私の実力を見たいとか言って襲ってきたの
 それを本当に瞬殺……相手の何かのものを一気に殺していった
 芸術というなら、あれも芸術なのかもしれないほど鮮やかに」
「そうか」
「ま、その話は置いておいて」

 関係無いしね……それに、師匠は私に見送られて逝く事を凄く喜んでいた
 『最後に最愛なる弟子に出会える私は、幸せ者であり、お前が平和な世界に貢献してくれることを望む』そう言って
 そのとき、私は龍を抜ける決意をする
 そして、龍にそれを告げて、残り3度の仕事でってなった
 最後がCSSで、恭也とであったのだ
 最近でも、辛いとか悲しいとかあったけど、師匠は『笑顔を思い出せ』とも言ってくれた
 本当に思い出せるかどうか分からないけど、思い出せたら、1度お墓参りに行こう

「外気を使えるのはお前のみと考えて良いのか?」
「ええ……私の勘で言うけど、恭也は外気の可能性を秘めてる
 でも、それはそれで大変なことだから」
「そうなのか?」
「自然の力を自分に招き入れて、使うと言う事は
 己の内気も使うと言う事だよ……言うなれば、混合して、違う力へと変換して使うのだから
 その間に内気が少し混じるのは仕方ないということだよ」
「なるほど」

 納得して、頷いてる
 説明が大変だけど、わかりやすくていい

「本来なら、外気も最も回復に適した技だからね……私がそうやって傷を治してた
 内気の方は、あまり使わないようにしてね……」
「ふむ」
「で、最初に内気から教えて、至近距離の戦闘を教えてって平衡作業だから」
「お前はそれでいいのか?」
「…………恭也が強くなりたいなら、それで良いんじゃないの?
 私は、別に気にしてないよ」
「蛍は、俺が間違った使い方をするとは思わないのか?」

 ……ああ、なるほど

「気を確りと扱えるかどうかって事だよね?」
「ああ」
「出来るでしょうね……恭也は、『護る』ための戦いなら
 その状態を維持して戦ってる……私と同レベル以上の動きをされて、私が慌てて逃げたくらいだし」
「でも、お前の動きだって」
「まぁ、それでも力使いきってたし、それを差し引いても、恭也は上手く使いこなしていた
 後は、それをコントロールできたら大丈夫なんだから」
「分かった」
「恭也だって、守りたいんでしょ……家族や親友は」
「そうだな」
「なら、大丈夫よ」

 私はそういって、目を閉じた……破片は粉々になっていて風により土へと還った

「一応、遠当てには、いくつかの方法があるけど、覚えておく?」
「教えてくれるのか?」
「まぁ、言うだけならね」
「聞いておく」

 そりゃあ、聞いて理解できるかどうかが問題なのだ

「まず、風を作り出すが1つでしょ」
「ああ、力をそのままぶつけるのも、それと同じ原理だよな」
「ええ」

 恭也は物分りがいいね……さすが、闘ってる敵が色々あったことで

「で、次が、地面、土を使った攻撃」
「あの、拳の二度当てだな」
「ええ、気を地面に通わせて、浸透したものへとダメージを与えるって事よ」
「なるほど、それで地面が少し揺れたように感じたのか」
「ま、そう言う事」

 これで、二つ目
 もう1つは……

「遠当てとは違うのだけど、恭也たちの技で相手の中にダメージを与えるのあったでしょ」
「ああ、徹な」
「それと同じ……でも、威力は、徹と同じだから」
「え?」

 これは気との併用がなせる業
 力技だ……相手の骨だけをダメージ
 内臓だけにダメージを与える、極悪な技

「内臓や心臓を直接狙う方法……でも、これに関しては教えないわ」
「何故だ?」
「恭也の言う徹を手や足で作り出せるんだよ
 ま、肉体的にゼロ距離だから、恭也が使えたら嬉しいかもしれないね」
「なるほど……もしかして、俺が使った徹を全ていなしたのは」
「自分に同じダメージのものを体に当てれば、お互いのダメージは中で相殺される」
「そうだったのか」
「ほら、恭也が美沙斗さんと闘った時があったりして、同じ徹同士なら何にもならないでしょ」
「ああ、普通の斬撃と変わらないことになる」
「それと同じ……恭也が刀の刃を返して私に打ち込んだ瞬間、拳にそれと同じダメージを当てれば
 中心は私だけど、その私は何もないかのようにしてられるって訳
 だから、骨などの異常も無かったの……コントロールさえ出来れば、これくらいの芸当は出来るよ」
「なるほど」

 そう言って、恭也は仕切りに頷いてる
 多分、自分と戦っていた時の違和感なんだろうけど

「あれだけ攻撃をいなされ、完璧のタイミングで叩き込んだはずなのに、元気に動き回っていたから
 裏があると思ったが、そう言うことか……全て徹を込めていたのにも関わらず、その瞬間に同じ事をしていた
 そういうことだな」
「ええ……ま、私は気の扱いには長けてるし、それなりに確り努力はしてたから
 拳に当てなくても、中に気の波紋を作らせて、その技を遮断って事もできなくはない」
「なっ」
「ただ、実質的なエネルギーと力の関係だけど、そんな事したら、私の方がダメージ大きすぎるけど
 気をごっそり持っていかれるのと、それをし続けるっていう集中力が必要になる」
「なるほど……だから、拳を当てて、中に無理やり波立たせて、俺の技をいなしたのか」
「そうなるわ」

 そう言うしかないのだ……ま、恭也の徹という技は後々に響いてきていたけど
 流石に、私も羽の連続使用に、更にって事だったからね……死ぬわ、普通

「便利なものといえば、便利だが、どれもが有限
 そして、使い方を間違えれば、即死か」
「ええ」

 気というのは扱いさえ気をつければ、確かに強いものだ
 でも、それを保つ集中力、そして、一時の判断ミスで、即死だ
 気を扱うという点で最も多いのは練習中の死亡……自分にある体内の気を使いすぎて死ぬケースが多い
 これは、医療目的で使ってる人は少ないのだけど、拳法とかで使える人に多い
 外気を使えないというのがほとんどだからってのもあるけど、外気でも内気を使うし
 内気を完璧に扱えないと外気を取り込んだ瞬間に、風船の空気のように逃げ場を求めて、破裂する
 無理やり取り入れるは難しいのだ……本当に
 ブレンドして使うというのも、また一緒のことだし

「それを教えてくれるのか?」
「ま、多少だけどね……一日に1度か2度ほどだけど、見せてあげる
 それで、感覚を覚えなさい……後、膝とか怪我の治療に私が使うから」
「俺にか?」
「気での治療は受けた事ないでしょ」
「ああ」
「ならば、受けてみて、覚えなさい……それが本来の使い方だから
 中国の医療者たちが、身につけ使う技だからね」
「分かった」

 気という概念が今、この世界に無いのは理解してる
 でも、実質的に扱えるなら、良いじゃないか……

「今日はもう打ち止めだからね」
「はい」
「宜しい……気の流れを感じれれば、外気も使えるようになる
 でも、外気にはまだ触れるな」
「何故かというのは理解してるつもりだ……死ぬからだな」
「ええ、若手がすぐに死ぬのは、そのため……感じれるから、どんなのだろうで体の中に取り込もうとする
 でも、そんな事したら、すぐに死ぬわ……だって、取り込めても、それを止める方法が分からないから」
「なるほどな……じゃあ、取り込めないように止める方法が分かるまではするなと」
「そう言う事……取り込み始めたら、とめ方が分からないでしょ」
「多分な……何かコツとか方法とかあるのか?」

 ……難しいな
 でも、正直に言うしかないだろう

「自然に耳を傾け、お願いをする感じって」
「……はぁ?」

 意味が分からないよなぁ

「師匠が言ってたのよ……相手にお願いし、力を借りることを了承してもらい
 そして、相手に気に入られて力を使う
 土水火風の4つの力を借りることになる……私はその自然に好きだから、相手も好きで居てくれる」
「すきなのか? それなのに龍に居たのか」
「そのときは、如何いう意味で殺してたかなんて知らないし」
「そうか、すまない」

 宜しい……

「でもね、水も、火も、風も、土も……全てに敬愛することが一番必要なことなんだよ
 人を愛するというのとは違うけど、尊敬の念を持って節すること
 人は所詮人……それと同じだよ」
「分かった……土とか水とかに多少の敬愛を持てということだな」
「まぁね……ま、恭也は元から素質あるというのは植物を育てているという点があるから」
「まぁ、そうだな」

 そう、それは大きなものへとなる
 無理やり咲かせるという点では同じだけど、ガーデニングとかと違い
 松などは、花を咲かせるわけじゃない
 花らしきものが出ることは出るが……

「自然を育てるのは悪いことじゃない……風、土、水を使いやすくする」
「そうなのか」
「まぁ、私は師匠と居た頃は、植物育ててたし」
「何を育ててたんだ」
「……笑わない?」
「ああ」

 真面目な顔して言うので、一応信じる
 といっても、笑いそうだな

「向日葵」
「……向日葵を育ててたのか?」
「他にも、コスモスとスミレを」
「……少女趣味だったのか?」
「そんな呆然と、信じられないとか言う風に見ないでよ
 単に、綺麗だったとか色々あるんだから……向日葵の種は師匠がくれて
 他のは、咲いていたのを群生場所によって区分けて、ちゃんと育ててたんだよ
 花嫌いじゃなかったし……」
「今でも、育てるのか?」
「ううん、育てないよ」
「何故?」
「だって……私はプランターの1つでもあれば、向日葵を育てるような人だし
 植木鉢を1つ借りたい程度だよ」
「それだけで良いのか?」
「来年の春頃に向日葵の種を植えて、一本だけでも咲かせるよ」
「そうか」

 そう言って、少しだけ、考えてる恭也

「でも、そんなので良いのか? 趣味が、ガーデニングとアンティーク集めって」
「恭也にだけは言われたくないよ……散歩と盆栽と釣りと縁側でのんびりって……」
「……そういえばそうだな」
「人の事言えないんだから、言わないの」
「すみません」
「宜しい」

 苦笑いで話す……お日様の下でのんびりと出来る
 それがそれで、楽しいことだ

「恭也、今から散歩行こうか」
「別に良いが」
「じゃあ、行こう……そうだね、此処からだと墓地の方向が良いな」
「墓地って、父さんのところか」
「うん、お願いね、ガイドさん」
「はぁ〜、分かった分かった」

 そう言って、私たちは準備をする
 ま、私はその士郎さんという人を直接あったことはないし
 その頃は鍛錬に明け暮れていたはずだ……まだ、3歳くらいの年だったかな
 良く分からないけど、何か言葉をかけるのが普通だろう

「じゃあ、準備でもして行きますか」
「お〜」

 私と恭也は家に戻り準備をして家を出る
 鍵は恭也が持っているので、恭也と出かけないと、家追い出されちゃうし……







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