『三日月の表情6』

















 とりあえず、1つだけ言わせて……ご飯とかあるのも分かるし、普通に出てきたのが美味しいのも認める
 でもね、お願いだから、私を挟んで喧嘩しないで……

「だから、これは俺のだっただろうが」
「ふっ、俺は知らないな」
「父さん意外に誰が取るんだよ」
「さぁ」
「この大食の愚者」
「誰が愚者だ、誰が……それを言うなら、若年寄に言われたくない
 第一、18歳の体は意外と食べ物を欲するんだから仕方ないだろう」
「はっ、俺との戦いで受けたダメージが抜け切らないんじゃないのか?」
「閃使えるからっていい気になるなよ……防がれたくせに」
「あれは、父さんが……罠なんて卑怯なことを」
「ふん、卑怯とは名ばかりの作戦といってもらいたいな……どこまで相手にダメージを与え
 自分が無傷で居られるかが勝負なのだからな」
「卑怯者め」
「なんとでもいえ、その卑怯者にすら勝てない、俺より年上の息子よ」
「何を!!」
「はっはっはっは」

 で、私が真中に居るの気づいてますか二人とも
 皆、ゆっくりと離れてる
 何気におかずなどのキープしてるあたり凄いね
 だから、ありがとう……
 お箸を私は、前に置く

「二人とも」
「お前なんぞにまだまだ負けるか」
「ふっ、父さんよりも年上か……なら、年齢らしく言う事聞きやがれ!!」

 声は全く届いてないね
 私の手がゆっくりと二人の左右へと伸び肩の骨を抜く

「うおっ」
「うがっ」

 二人とも驚きながらも、ちゃっかり、お箸とかはテーブルの上におく
 驚いてる間にもう片方の肩の腕も抜きさる
 これで、とりあえず、無駄に動かないでしょう
 鋼糸を取り出して、二人を椅子に巻きつける

「えっと、蛍さん」
「何ですか? 士郎くん」

 にっこりと笑顔

「蛍、何で俺まで」
「当たり前の処置ですが、何か?」

 にっこりと笑顔
 二人の間から前へと移動
 ご飯はとりあえず、みんなの場所へと移動

「あ、俺のご飯」
「士郎くん」
「えっと」
「恭也くん」
「あ、う」

 言葉に詰ってる……私の目には怒気が篭ってることだろう
 なんせ、怒ってるから

「二人とも、しばらくご飯抜き」
「いや、それは流石に、蛍」
「そ、そうだぞ、そんな横暴」
「喧嘩する人にあげるご飯は此処にありません」
「いや、だが」
「それとも二人ともちゃんと仲直りする?」
「これは、親子のコミュニケーションとして」
「喧嘩してるようにしか見えませんでした」
「蛍、大体分かってるだろう……父さんにどれけ苦労させられたか」

 分からないでも無いけど、それでも、私から言えることは1つ

「良いですか……皆楽しく食事をしたいの
 喧嘩なんかしてる人には、私がご飯を奪います」
「そ、それだけは勘弁を……」
「それとも、静にご飯を食べますか?
 喧嘩もせず、料理人の二人に感謝して」
「します、しますからぁ」
「ふっ、父さん弱いな」
「恭也、ご飯抜き5日ね」
「すみませんでした〜」
「お互い様だぞ、それ」

 ふぅ……目を閉じる
 何で、こう頭痛の種が増えたのだろう……士郎くんも根っこでは凄くいい人なのに
 なんで、こう私のことやご飯のこととなると見境なくなるのかなぁ

「これからは、二人ともちゃんと大人しく食べますか?」
「はい」
「全く、何で静にご飯を食べれないのかしら」
「ごもっともです」
「分かってるの?」
「はい」
「喧嘩するなら表に出て、飽きるまでしてなさい
 その代わり、怪我したら事だから、適当に手加減しなさいよ」
「勿論です」
「分かってるさ……父さんごときに後れは取らんさ」
「取りそうになってたくせに」
「ふっ、実戦経験の差で負けたんだ……そのうち追いつくさ」
「如何だろうな〜」
「全く……何を言ってるのだか……
 とりあえず、ご飯は大人しく食べる……分かった?」
「はい」
「分かりました」
「全く、恭也もお兄さんとしてるなら、なのはちゃんの見本になるくらいにしなさい
 大人しく、ある程度マナーも教えたのでしょう
 それを自分から破って如何するの!?」
「すいませんでした」
「あははは」
「士郎くんは知らないからって、笑ってないで、少しは見習なさい」
「ごめんです」
「第一、こういうのは私の役目じゃないの……」
「「すみませんでした」」

 二人とも謝るので、許す

「ほら、士郎くんも恭也から取らないで、私のを半分上げるから」
「うぃ」
「恭也も、いちいち突っかからないの」
「はい」

 なんて、世話の焼ける親友と弟子だ

「はぁ〜」

 ため息が漏れる……

「お疲れ様」
「桃子さんが怒ったほうが早いんじゃあ」
「駄目よ……私は士郎さんを愛してた
 だから、小さくなっても、士郎さんびいきしちゃうもの」

 ……この状態で小さくなってもって言うあたり、桃子さんらしい

「距離を置いたほうがいいのかな」
「そうかもしれないわね」
「でも、恭也が甘えてるように見えるんですよね
 お互いに……親子だからこそ、受け入れられるみたいな」
「そうね……」

 桃子さんの目が士郎くんを見ている
 桃子さんにとっては辛い事実……辛い現実

「桃子さん、辛いんじゃあ」
「ううん、そういうのじゃなくてね……蛍さんは気づいてないんだなぁって」
「?? 何が?」
「やっぱり、気づいてないわ……でも、そこが楽しいのかもね」

 何のことですか?
 いや、本当に分からないものなんですけど、どう言う事?

「二人とも鈍感だしね」
「?? 私はあんなに酷くないですって」
「そうかしら」

 にこにこと返してくる桃子さん
 何で、そこでそう言う答えになるのかが分からないのだけど
 しかも、笑顔だから、反対の意味合いを兼ね備えてる
 う〜ん、分からないわ……

「さてと、ご飯も食べたし、今日は動きすぎたし
 急なことで忙しかったし……そろそろ寝ますね」
「ちょっと待ちなさい」
「はい?」
「蛍ちゃん、お風呂にはちゃんと入ってるわよね」
「……ああ、そういえば、水浴びしてる時に恭也に見られて以来入ってませんよ」
「なに〜、恭也のやつめなんて羨ましい!!」

 ……士郎くんが恭也を叩いてる

「地味に痛い、辞めろ……あれは不可抗力で」
「でも、タオルの取れない位置に居て、ずっと見てたって言うじゃない」
「いや、あれは偶然で……月明かりの下になって初めて気づいたくらいだし」
「ほ〜、それまでは凝視し続けたと」
「い、いや、父さん、落ち着け……第一、その構えは危ないと」
「なぁに、痛いのは一瞬だよ……」

 あ〜、コブラツイストとか言う技が決ってる
 恭也はギブギブって士郎くんの腕を叩いてる
 でも、士郎くんは辞めるつもりないね

「いや、地味に痛いから、しかも、一瞬じゃないし!!」

 半分痛みに堪えながら言う恭也

「恭也、痛みに耐えるのも鍛錬って事で」
「いや、そんな鍛錬嫌だから」
「そうだね」
「……」

 周りは私を見ている

「ほらほら、二人ともいい加減にしないと、駄目だよ」
「むっ、そうだな……蛍が言うなら」
「いた〜」
「あ、何もしないでね」
「え?」
「ま、これくらいが一番良いかな……士郎くん、ナイス手加減」
「おうっ」

 元々士郎くんが恭也を痛めつけるのが一番早い
 手加減も最悪ギリギリで止められるから……多分私なら折っちゃうし

「これがね、気による治すって事だよ……ちゃんと覚えておいたら
 他人に使え、自分にも使えるようになるから」
「了解」

 ふわりと手の平に集まる力……目に見えない力だけど
 それでも、少しだけ熱を持っている

「つっ」
「痛み止め程度でも、多少の楽にはなれる
 それに、ある程度の血行促進などの力もあるからね……痛いだろうけど
 下手な治療よりかは効果が高いよ」
「はい」
「士郎くんは見たけど出来ないんだよね」
「才能が無いからな……ま、それくらいは仕方ないさ」
「そうだね」

 そういってにこやかに笑う
 気による治癒術……痛み止め程度……後は止血とか、他にも用途はあるけど
 それなりに気を使うことなども踏まえて考えて使う必要がある

「でね、1つ聞いて良いかしら?」
「なんだい、蛍」
「何で私の腰に手を回してるのかしら? 士郎くん」
「凄くしたかったから」
「ふぅん……このまま黄泉への片道切符を手に入れるか、離れて素直に謝るか」

 ずばっと離れて

「ごめんなさい」

 土下座……全くなんで、士郎くんはこう女性に手が早いのだろう
 私だけだから良いけど、他の人たちに被害があったなら、黄泉への切符を幾度も渡してるだろう
 そらぁもう蘇生術をしながら……

「宜しい……もう、私だから良いけど、普通の人だったら、セクハラだっけ
 あれになっちゃうんだよ……士郎くんは顔が良いんだから
 もう少し気をつけないと……夜の街で働いたらいい稼ぎ頭になるかしら?」
「勝手に夜の仕事につけないでくれ……俺は一途が売りなんだ」

 一途?

「私に手を出してるから、てっきり凄く軽いと思ってた
 私なんか相手に普通しないだろうし、お情けかなぁって」

 士郎くんは、そのまま凹んだ……見事に凹んだ
 そらぁもう、そのまま頭を床に落として……大丈夫かな、床は?

「士郎くん?」
「ううっ」

 マジ泣き?

「あれは、無残ね……というよりも、言葉の刃がさっくりと心臓に刺さってるわ」
「慰めたほうがいいのかしら?」
「士郎が、あんなに落ち込むのは楽しいわね」
「楽しいの? ティオレさん……私は慰めたいけどね……
 でも、私だと効果なさそうだし」

 何で私が見られてるの? 私のせい?
 何で、私が見られてるの?

「何で恭也にまで、見られて、そのため息は何!?」
「いや、父さんがすっごく苦労してるんだなぁって」
「現在進行形!!?」

 というか、私は本当に何か悪いことしたのか?
 でもでも、私はそこまで悪いことしてないし……なんで

「いや、でも、普通気づくだろう」
「恭也は気づいてないと思うけど」
「そうね」
「お互い様よね……他人の振り見て我が振り返れって所ですよね」

 何でそこまで言われるの……晶さん、私は何か悪いことしましたか?
 いや、私が何か悪いことしましたか……

「でもね、恭也と蛍さんは二人とも鏡写しなのよ」
「鏡写し?」
「そう……似てるわよ……二人とも
 でもね〜、何でそこが似たのか知りたいくらいにね」
「似てないと思うのだが」
「そう思うのは、恭也と蛍だけよ」

 ティオレさんに言われて、少しだけ考える
 もしも、私だとして、それだと……

「士郎くんが私を好きって事になるじゃないですか?」
「そうよ」
「そんな、ティオレさん、嘘ついても駄目ですって
 からかうために、人の心偽って教えるのは駄目ですよ〜」
「そうですよ、ティオレさん……それだと、俺が美由希やフィアッセたちから好意をもたれてるって事じゃないですか」

 いや、それは正解だけど……頷いてるし
 士郎くんも、半分泣きながらも起き上がってるし……目を腕で拭いてるし
 何も泣かなくても良いのに

「本当に気づいてないのね」
「??」
「??」

 なんなんだかなぁ……第一、好意をもたれても何も出来ない事って多々あるし
 私の場合なんかも命狙われてるところがあるから、如何しようもないし
 そんな好かれても、困るよ……

「恭也ならかっこいいとかいうなら、分かるけどね〜
 だって、元が士郎くんだし
 士郎くん、町に出たらもてもてさんだったし」
「いや、あの時蛍にも男の人たちが声をかけてただろ?」
「え、あの時って、大体が、売春しませかぁって奴だよ」
「……良くご無事で」
「あったりまえじゃない」

 ……あんなのに捕まってたら暗殺者できませんって
 それに、体売ってお金を貰うなんて、そこまで極貧じゃないし……

「何考えてるんだ?」
「いや〜、ほら、私もね、一応さ、暗殺者してたけど
 体売ってまで極貧じゃなかったなぁって」
「……極貧って」
「酷いところだと、大概子供で女なら身売り、男なら奴隷って所も多いから」
「そうだなぁ、知ってる部類で言うと、蛍の年齢まで1度も子供産んでないってのほうが珍しいし
 ある意味日本は平和というか、平穏な国だよ」
「そうだね」

 日本は平和といえば平和だ……こう、戦争からも離れてるし
 海があるからか、その分で対外諸国との問題も激烈な部類にならないのだ
 隣接しあう国だと、それはそれで問題や戦争とかも多くなったり
 暗殺も多い……どこぞの国の王位継承者とか……他にもいろいろとね

「そうね……それは分からないでもないわ
 幾度体を売ろうと思ったことか……でも、それさえも駄目だと私は思ったからこそ
 歌を頑張ろうって思ったのだし、心を伝えようって」
「私も、その生き方に憧れを抱いたのですけどね」
「嬉しいわ……少しでも、そうやって考えてくれる子が居てくれて」

 そう言って微笑みを浮かべるティオレさんには、本当に尊敬する

「ったく、恭也は何時の間にかエロエロ大魔人になってるし」
「いや、なってないって」
「だが、話に寄れば、なってることになるじゃないか
 蛍の体を隅から隅までじっくりねっとり眺めたんだろう……」
「いや、あれは、たまたまで」
「だが、見たのは確かじゃないか」

 だから、そこで私の体どうこう言わないでよ

「見られたの?」
「ええ……恥かしい限りですけど」
「あらあら、日本だとね、責任取らせて結婚なんてのもあったのよ」
「そうなんですか……でも、恭也は要らないです」
「あらあら、恭也ほどいい男性も少ないと思うわよ」
「それでも、要らないです」
「あらら、恭也言われてるわよ」

 そう言いながら、ティオレさんと私が恭也を見ると
 凹んでいた……恭也はへこんでいた

「士郎の方は?」
「ん〜、でも、女性としての幸せなんて無いと思ってましたし、士郎くんはいい人だけど
 私よりもっといい人が居ると思うから」
「例えば?」
「桃子さんとか……?」

 ん〜〜、でも、桃子さんも少しだけ苦笑いだ
 いや、まぁ、それはそれでいいのだけど……私からは何も言えないし
 士郎くんを見ると、士郎くんも凹んでいた
 何男二人へこんでるのだか……

「何で凹んでるの? しかも、恭也や士郎くんまで」
「……あれだけ言われたら凹むぞ、しかも要らないを連呼しやがって」
「だって、事実だし」
「分からないでもないけど、しかし、俺まで言われるというのは」
「む〜、でも、本当のことだし……」

 恭也は復活してそう言う

「第一、弟子としては取るけど、弟子が夫なんてごめんだし」
「……それはそれで傷つくな」
「私のプライドが許さないよ……そんなの」
「そりゃそうだ……ははははは」

 士郎くん笑ってるし

「そんなの呼ばわり」
「ほら、恭也、そんな落ち込まないで」
「そ、そうだよ……恭ちゃんにもいいところはたくさんあるんだから」
「そんなのって……そこらの如何でも良いものみたいに」

 そんなにショックかなぁ

「弟子なのに、あの言い方は許せん! 1人の師匠としても」

 あ、そっちにショックを受けてたのか

「でもさ、恭也って気に関しては、私よりヘボヘボさんだし」
「何を!! 何時か、絶対追い越してやる」
「無理だよ」
「むっ、何を〜?」

 と、士郎くんが恭也の肩を止めて一言

「いや、事実無理なんだよ……お前がどれだけの天才でも、気を扱うのに
 どれだけの年数がかかると思う?
 蛍は真の天才だったからこそ、1年やそこらで内なる気を理解し、使い
 外なる気も自分で理解し使いこなしていた……
 だがな、そんな武才と呼べる天才はほぼ居ない……何万、何億、何兆の確立だ
 俺だって内気だけは感覚はつかめて、戦いに利用できる
 だが、外気はどうしても使い切れない……その意味が分かるか?
 どれだけ外との気が分かっても、それだけじゃあ何も気を使えないのと一緒だ
 内気が使えるなら、外気も使えるなんて事じゃない……理論じゃあ難しいが、理屈で言うなら
 その二つは違うもので、それを携えるだけの器が無くては使えないんだ……
 恭也には可能性があるかもしれないが、蛍と互角に気だけで闘うなら
 かなりの年数をかけてじっくり鍛錬していかないといけない
 分かるか? これが10年の差だ……」
「10年じゃないけどね……ま、扱えるようになってからは10年か」

 士郎くんの言葉に付け足す

「恭也、確かに上を目指したいのも分かる
 だがな、気は確かにあったし、使い切れれば、切り札になりうるだろう
 だが、その切り札になるまでに、鍛錬は過酷だ……気とは己に内在する力と外の力
 己の力を利用するのなら、眠くなったり空腹になったりと、生命エネルギーを使うんだ
 分かるな、その辺りは説明されてるだろう
 だがな、それさえもコントロールできて一人前なんだよ
 その度合いを自らの意思と力でコントロールして……蛍は自らの力で
 空腹や睡眠すらもコントロールできるんだぞ……お前にそれはまだ出来ないだろう
 俺だって、それを教えてもらって、5年だ……真の天才というのは、それを瞬時にやり遂げてしまう者だ
 だが、それこそ存在しない……教えてもらうなら、敬え……
 俺を敬えとは言わないが、蛍はその意味では恐ろしいほどの実力者だぞ
 それこそ、少林寺やら他の師範たちが頭を下げるくらいの」
「えへへ〜、これでも、太極拳とかの師範たちとは顔あわせしたからね〜、えっへん」

 胸をはるけど、ない胸だし……ちょっと寂しい

「内なる気は御神の剣士は使っているけど、じゃあ、外気を使えるとなると話は別
 正直な所、難しいよ……だって、私からしたら、可能性を秘めてるってだけだし
 私みたいに自由に使えるかどうかも謎だし
 士郎くんだって、内なる気は使えるけど、外気はまだ分からない」
「ああ、これでも大分使えるようになったんだぞ」
「そうだね」

 それでも、私が師範というか教えるのは二人目かな

「じゃあ、士郎さんも習ってるの」
「ま、それなりに……教えて貰って利用価値がありそうなものだけだけど」
「士郎くんが死んだら悲しむ奴なんて居ないって言うから
 私が悲しむから、安易に死ぬことを選ばないでって」

 何故か周りが沈黙して私を見ている……どうかしたのかな?

「天然だわ」
「そうね」

 桃子さんとティオレさんの小さな呟きが聞える
 とりあえず、私はそろそろお風呂に入ってもいいのかな
 駄目かな

「それで、私、寝たいのだけど……道場の方借ります」
「そう」
「はい」
「じゃあ、お風呂に入ってから寝なさい
 入ってないでしょ」
「あ、そういえば……外の蛇口でも良いですけど
 荷物はありますし、寝巻き無いけど……裸で寝ればいいし」
「それだけは辞めておいた方がいいわ
 狼が一匹居るし」
「士郎くんは恭也たちと鍛錬してきなよ……同じ剣士同士だし、美沙斗さんも居るし
 良い鍛錬になるでしょ」
「おう」

 ……ま、これで大丈夫
 お風呂を覗かれる心配は無いだろう……覗いたら、私刑よね

「恭也、士郎くん、覗いたり、見たら、今度こそ黄泉路をしばらく歩いてもらうから」
「も、戻ってこれるのか?」
「ええ、心臓が停止しても、電気ショックの要領で生き返させるわよ」
「……覗きませんのでご安心を」
「そう」
「あ、ああ、勿論だとも」
「他の人のも覗いたら駄目だからね」
「はい」

 頷いたので、信頼しておこう
 まぁ、後はしったこっちゃないっていえば、ないし
 それに、私自身も早めに休んで体力回復を……睡魔などのコントロール
 それさえ出来るようになれば、確かに内気はコントロールできると言って過言じゃないだろう
 ま、それが最も難しいのだけどね……士郎くんも教え始めた頃は全然で
 子供心に、何でできないのかなぁ、なんて思ったものだ
 難しいことだと思わなかったし

「美沙斗さん、一緒に入りますか?」
「そうだね……」
「ありがとうございます」
「私も入るわ……早めに寝ないといけないし」
「なのはちゃんも一緒に入る」
「はぁい……お母さんと一緒なのは久しぶり〜」

 恥かしいけど、いいか……なのはちゃんは何も言わないだろうし
 私の腕や足にある斬られた痕を見ても……






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