『満月の微笑み3』













 私の言葉の爆弾に幾人かが納得して頷いてる
 それにより、激化しそうなことなのだけど、私は冷静に言っていた

「それでも、恭也が私以外に相手したいってなら、私はそれでも良いと思ってる
 だって、元々私はそんな人並みの幸せを受け入れられるほどいい人でも無いし
 もしも、他のみんなの幸せが抱かれるためにあるなら、それでも良いけど、実際は違うと思う
 恭也の心、優しさが自分だけに向いて欲しいわけでしょ……だったら、私は何も言えないし
 恭也がお慈悲で抱くよってなら良いんじゃない」
「それは宣戦布告ととってもいいわけね? 私たちが恭也に体を迫ろうとも」
「恭也が私を捨てるなら、私はそこまでって事で良いんじゃないの?」

 サラリと言ってのける
 恭也は驚いて私を見ている
 私が嫌いなら、最初から相手にしないだろうし、恭也は多分、逃げない
 もし、相手が私を選ばないなら、私はそのままだ
 それに、自分に魅力があるとか思ってないし、他の人の方がはるかに魅力があるだろう
 それでも、恭也が私を選ぶのはお互い立てる位置が同じだから
 一番近いのはエリスさんだろうけど……今回はエリスさんも加わってるし

「それにね、私1つだけわかった事があるんだ」
「わかったこと?」

 ティオレさんが聞いてきた……周りもそれには興味があるのか、見てきた

「私は、恭也と士郎が好きだって事
 愛してるっていう言葉で表せるならそれは、あってると思う
 間違いじゃない……でもさ、不誠実かなって」

 私はそう言って少しだけ照れてしまっていた……恥かしいといえば恥かしい

「それに、ずっと考えてた……子供が出来る予感もあった
 それでも、言わないと分からないって分かってたし、私みたいな能力を持ってない限りわからないこともある
 だからね、私は、言おうと思ってた……もしも、私が身篭ったら、2人には確りといおうって
 皆にも確りと伝えないといけないって」

 そう、私は言わないといけない
 皆から恭也という人を、士郎という人を奪うのだから

「私は2人だけしか好きにならないと思う……多分、他の人が私に思いを寄せても
 全く相手にしないと考えられるの……もしも、2人に好きな人が出来て
 私から離れても、私は子供と共に一緒に生活していく……それくらいの覚悟があるし
 私は、恭也と士郎の子供なら、愛していけるし、好きだからこそ、生活も一緒にしていく」
「蛍ちゃん」

 桃子さんが、感動したかのように名前を出す
 それでも、私は止めたくない……歯止めの利かない思いだから

「私は、恭也と士郎を拘束したいわけじゃないし、好きだけど、愛してるけど
 だからこそ、2人には、2人の思いもあるし、心変わりもあったりするかもしれない
 今のこの一時だけは、大事だと思えるから」
「そう」

 周りは私の言葉に聞き入っている

「だから、私は、2人を愛し続けられる自信もある」

 でなければ、私は今までの間でどこかで挫折し、そして、途中で考えてただろう
 日本人的発想ならば、一夫一妻制だけど、もしも、此処が海外なら、普通に逆もありえるんじゃないだろうか
 そう、多夫多妻制ということも考えられるのだから
 そんな思考にいきついてる私は、すでに日本人じゃないのかもしれない
 それに、2人を愛してるとは言ったものの、私はそれが本当に良いのかどうか悩んでいる部分がある

「悩みはある……それでも、私は2人を愛してる」
「蛍……そこまで2人を」
「傷付けたくないってのもある……それでも、私が思ったのは、二人のことが本当に好きなんだって事
 家族以上に思ってしまった時点で思いは、全て恋愛へと向かったんだと思う
 わかったのは最近だけど、それでも、私としては間違ってない」

 そう、私としては間違ってない
 そう思えるからこその言葉……油断ならないとも思うし、間違ってたら悪いなってのも考えられる
 でも、私には、それだけ間違ってて言われても、負けないという思いがあった
 その部分は否定されても、私が2人を愛してるというのは変わらない

「蛍が此処まで言い切ってくれたのよ、士郎も、恭也も何か言ってあげないと」

 ティオレさんがそういって、背中を押す
 2人がそれぞれに何を思ったかわからない
 私の突然の告白に驚きというのもあるだろう

「俺も、蛍を愛してるぞ」
「俺もだ……蛍だけを愛し続ける時間もあるから」

 2人は私の思いを受け継いで応えてくれる
 それは本当に嬉しいことだった

「確かに、多夫一妻はよくないかもしえれない
 だがな、蛍が本当に悲しむことだと思うし、蛍のことを愛してるから許せる」
「そうだな……俺も、恭也じゃなかったら、許せないけど
 恭也だったら良いと思っている……蛍に無理に1人を選ばせて悲しませるより
 2人を選んでもらって、安堵してもらう方が、俺たちも安心できる」

 断言する、恭也と士郎……その思いは本当に嬉しくて
 目の前が歪む

「あれ? 嬉しいはずなのに」

 手で拾い上げる涙は、幾つもの涙の流れた跡になる
 私は、本当に大切な物を見つけた……離れたくない場所を……

「嬉しくても涙は流れるものなんだよ、蛍」
「知佳さん」

 私の頬の涙をハンカチを当てて拭うと

「本来の役目は私じゃないけどね……恭也くんと士郎くんの役目
 でもね、姉として一言だけ言わせて」

 凄い決意を秘めた目
 なんだろう?

「私より先に妊娠するたぁ、如何いう妹じゃい、姉不孝者〜」

 …………思考がついていかなかった
 いや、そう言われてもって思いが先立った
 それでも、私は嬉しかったという思いもあったのだけど

「まぁ、知佳さんの言う事は置いておいて」

 知佳さんが移動させられていった
 連れて行ったのは、何気に松尾さんだ
 気配り上手め……恭也と士郎の2人が左右の涙を拭ってくれる
 その優しい手が私の涙を抑えてくれる
 気づいた言葉を出した私は、弱い……いや、実際、私自身がこんなに弱いんだと気づいたのだ
 もしも、今恭也と士郎が居なくなれば、私は、間違いなく落ち込む

「じゃあ、蛍はどちらも選べないというのね」
「はい」

 ……そう言う事だ……どちらか一方を立ててとか
 どちらか一方だけを愛するなんて出来そうに無い

「決まりね……恭也と士郎もそれには納得してる
 それに関しては私からは何も言わないわ……即したのが私たちだものね
 桃子もそうでしょう?」
「ええ、そうね……まさか、こんな早くに襲うとは思ってなかったけど」
「ううっ、姉として先を越されて複雑だよ〜」

 そうは言うけど、私もかなり複雑だ……言い出しっぺには相応の罰だ
 ま、私もすっごい痛かったけど……初めての痛みで、最初はもう大変痛かった

「ちょ、ママはそれでいいの?」
「美沙斗母さんまで」
「桃子さんも」

 そう言って、それぞれが親たちを見る……私は、恭也と士郎に至れり尽せりの状態だ
 2人にとっては待望の子供だったのか、凄く嬉しそうだし
 士郎にとっては違う子供なのに、同じ様に喜んでいる

「ま、恭也と蛍の子だ……でも、蛍の子なら俺だって大切に思えるぞ」

 それは、不倫を認めながらも、相手を気遣う言葉
 私の血も半分混じってるから、蛍の子だろうって事
 そして、私が産み、育てるわけじゃなく、2人が手助けしてくれる
 そう言ってるのだから……

「サッカーチーム作れるくらい子供生まれたら凄いわね」
「名前幾つも考えておきましょう」
「そうですね」

 何気に大人たちは、子供の意見を無視して事を進めている
 フィアッセさんや美由希さんや忍さんたちが少しかわいそうに思えてくる

「私の体が壊れてしまいますよ」
「……そうね」
「年に1度という計算で、大体閉経が50あら60の間で高齢出産をあわせて
 えっと、総勢で20名以上はいけそうね」

 なんで、そんな生々しい計算をしてるんですか?
 第一、その計算だと、20じゃなくて、29人かそこらの計算になっちゃいます

「母さん、それは流石に」
「そう? 2人だったらそれくらい頑張りそうだから言ったのだけど
 孫がたくさんで桃子さん、嬉しい♪」

 ……死ぬ、間違いなく私はそんな事なったら死ぬ
 桃子さんは私を殺害する気だ……なんて恐ろしい

「そんな事になったら、私死ぬよ」
「冗談よ、も〜」

 桃子さんが笑顔で手をパタパタしながら言う
 何ていうか、怖い発想であるが、まぁ、大丈夫なのだろう

「それで、蛍が産むというのは本気で言ってるからいいとして
 そこのダウナー系の人たちは如何したら?」

 知佳さんに言われて見ると、確かにダウナーというかテンション低い人たちが多々居る
 まぁ、恭也が気づいてない事だけど、恭也の好きな人たちって事だ
 先ほどはっきりといわれて、それで落ち込んでいるという考えなのだけど

「痛々しいね」
「まぁ、落とせなかったら、誰かが傷つくことだものね」

 何気に、一言一言確りという
 桃子さんとティオレさんって容赦ないなぁ

「あの、何でそこまでキッパリはっきり言うんですか?」
「だって、言っておかないと困るわよ
 恭也が不倫とかしたら悲しいでしょう?」
「悲しいですけど、恭也が私の体で満足できないとか、嫌いだって言うなら
 私は所詮そこまでの人だって言ったから」
「大丈夫よ……私は恭也をそんな薄情な子に育てた覚えはないし」

 桃子さんがそう言ってにっこりと微笑む

「それに、不安抱えてるんじゃない……恭也も罪作りよね〜」
「だって、士郎だって、私を本当に愛し続けられるっていう未来への保証は無いわけですし
 それだったら、私は……別に……その、仕方ないかなぁって
 私が不誠実だったから、2人に迷惑かけたってくらいしか」

 そうとしか言えないのだ……私は、自分のことを知ってるつもりだし、わかってるつもりだから
 それこそ、2人が私が嫌いだと言えば、傷つく事はあっても、否定はしない
 私は卑怯な人だから……結局選びきれず、二人を選んだ
 2人が一緒に居てくれる光景を選んだのだ

「と言う事らしいわよ……お二人さん」
「ま、まぁ、俺らに出来る事といったら、ちゃんと言葉に表して、言うくらいしかないし」
「不安なら幾らだって言ってくれ……俺たちで出来ることなら、手伝うから」

 う〜ん、でもなぁ……シングルマザーになろうとも育てるつもりだし
 それに、2人が私を嫌うなら、仕方ないことだし……
 結局、私の責任……因果応報とも言うし、結婚してないし

「大丈夫だよ、2人が私を思ってくれてるのわかるから」
「わかった」
「蛍がそう言うなら」

 それに、大丈夫だ……だって、2人はこんなにも思ってくれてるし
 今だけは大丈夫だと思えるしね
 何度不安になって、何度安堵するかわからないけど

「蛍さん、おめでとうございます」
「あ、どうも……次はそちらの番では?」
「あはは……耕介さんが、まだ早いとか言って、全然」

 寂しそうに言う、既婚者
 槙原愛さん……耕介さんも大変だなぁ

「それでも、夜中に」
「まぁね」
「良いな……私はそういうのじゃなかったし」
「そうなの?」
「ええ」

 女性同士の夜中の会話……しかも、2人とも、どっちもどっちだから

「私は2人に攻められてしまいましたし」
「大変ですね〜、私は耕介さんだけですし、楽なんじゃないかなぁ」
「しばらくは無いから良いですけど、怖い考えですよね」
「そうね」

 何故かお互い紅茶を飲みながらの会話……しかも、どう見ても、危険
 多分○○禁って付きそうなくらいの

「それに動物病院とかもあるし」
「大変なんですね」
「そうですね……でも、楽しませてもらってますよ
 やっぱり仕事も好きだし、何事も嫌いになれないというか」
「耕介さんとも、そんな感じで?」
「ええ、まぁ、小さな頃にも幾度か会ってたのですけど……本人はすっかり忘れてて」
「それでも、思い出と約束とか?」
「うふふっ」

 微笑んで『そうなの』と付け足して言った
 何ていうか、女性らしさが多々ある人だ
 それに、可愛い人だし……耕介さんは男達となにやら会話中
 ま、男同士でも、色々あるのだろう
 ダウナー系のテンションの人たちは、母親たちに任せた

「おっ、もう、終ったのか?」

 真雪さんが入ってきてそう言う

「まぁ、それなりにですけど」
「愛と耕介も居るんだ……今日は確かデートじゃなかったか?
 知佳が料理作ってくれるって言ってるし、帰って来なくて良いからな」

 真雪さんらしいかな……

「それよりもだ、ほれプレゼント」

 そういって、真雪さんが持ってきたのは、くまのぬいぐるみ
 何故にくま?

「あの、これは?」
「私はこれでも漫画家でな……ちょっとした賞を貰ったときの貰いものだ
 といっても、誰かからのプレゼントで、持ってても使わないし
 私は、どう見ても人形ってタイプじゃないからな……前の御礼とは言えないし
 こういう少女趣味じゃない、私が持ってるより、少しは役に立てる奴が持ってたほうが良いだろう
 蛍なら、使いそうだし」

 手で持って、ぐにぐにと押す
 お人形ということで、ふにふにと弾力が返ってくる
 確かにこれはこれで、子供が喜ぶかもしれない
 私自身もぬいぐるみなんて始めてだし、ちょっと嬉しい
 テディベアとかもかなり良いのがあるのだけど、あれ、高いし

「ぬいぐるみなんてプレゼントされたのは、初めてですよ」
「そっか……ま、大切にしてくれとは言わんが、こういうので良ければいくつかあるし
 言ってくれ」
「お姉ちゃん、優しいね〜」
「いや、単なる気まぐれだよ……知佳も、もうそんな年じゃないって言うからな
 利用だよ、利用……有効利用だろ」
「そうだね……ま、良いんじゃないの?」

 そういって、貰ったくまのぬいぐるみ……大切にさせてもらおう
 それに、こういうぬいぐるみだったら、子供も喜ぶかもしれない
 愛さんの方に向き直ると

「リスティだけじゃあ、寂しいものね……耕介さんと相談しないと」

 何ていうか、夫婦としては新婚っぽく見えるけど、もう大分経ってるんだろうなぁ
 だから、愛さんとしては、結晶というか、そういうのが欲しいのかも
 最近淡白になってるとか、色々あるだろうし……
 そういうのも、夫婦生活の醍醐味なのかも……縁無さそうだけど

「ま、耕介と愛のことは置いておいて……」
「そうだね……」

 まぁ、寮住まいって聞いてるから、やっぱりそれなりに色々あるのだろうけど
 何ていうか、楽しそうな寮だ……

「しかし、16歳いや、17歳で母親か」
「……すっごく複雑ですよ」
「そうなのか?」
「だって、私まだ大学生だし」
「休むつもりか?」
「多分、後期の半ば辺りは産休を取りたいなぁって」
「それでも、出席はするんだ」
「そのつもりです」

 だって、大学生活も楽しみたいし

「勇吾さんと藤代さんも付き合ってるらしいし」
「そうなの?」
「うん、この前相談された……勇吾がだれかれにでも優しくて困ってるって」
「で、なんて言ったの?」
「そう言う場合は、逆にそっけない振りして、相手が嫉妬するのを待ったらって」
「へ〜、そう言う事いったんだ〜」
「その後は知らないんですけど、その次の週は2人とも、凄く眠そうでした」
「眠そうって……まさか」
「週末から、その日までしっぽりと濡れてたんですね〜」
「本当?」
「さぁ? 勝手な想像ですよ」
「想像なんだ」
「うん」

 そんな事を話しながら、のんびりと紅茶を飲む
 座らせてもらって、真雪さんと知佳さんと話す
 異色姉妹の会話だろう

「でも、意外と効果あるんじゃないかな……誰にでも優しいのは美点だけど
 やっぱり寂しいものがあるもんね」
「そうなんですか? 私にはサッパリ……その、優しい彼を見ているのが好きっていうか
 士郎や恭也が周りの人に優しいから、私は認めてるみたいな部分があるんですよ」
「へ〜、じゃあ、優しくなかったら、寂しいとか?」
「あ、いえ、その、そんな事無いですよ……でも、やっぱり2人が急に私だけに優しくなったりしたら
 それはそれで悪いなぁとか、悲しいなぁって」
「うわっ、惚気てる」
「ちっ」

 何で舌打ちまで……私ですか? 私が悪いのですか?

「全く、子供できたからって」
「ま、嬉しいんだろうさ……それに」

 私を見ている真雪さん

「これからだからな、こいつらは」

 そうだよね……まだ、始まり
 これからだ……真雪さんらしい、物言い

「それに、なのはちゃんに甘い二人を見ているのも、意外と楽しいものでして」
「楽しいの?」
「何度か見てると、面白いですよ……なのはちゃんに嘘を教えて怒られてたり
 喧嘩の仲裁しようとして、逆に喧嘩しだして、そのまま、4人ほどがなのはちゃんに怒られてたり
 なんていうか、どっちが年上か悩む時もありますし」

 本当に、笑わしてもらった
 なんせ、あの4人ともなのはちゃんに頭上がらないし
 最近は美由希さんも混じってるし……

「それって、人の不幸は蜜の味みたいな」
「……かもしれませんね……私、まだ、なのはちゃんに気に入られてるし」
「へ〜」

 でも、もうすぐ何かの予感がする
 中学生になるなのはちゃん……その時に何が起こるやら
 何か良い事が起きてくれると良いな







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