『満月の微笑み5』













 お庭には、久遠さんがのんびりと寝ていた……丸くなって
 ぴくぴくと動く耳は可愛い

「久遠さん、ただいま」

 くぅ〜と伸びをして、皆を見てポンッと人型に変身

「お帰り、蛍、恭也……と、真雪と知佳」

 何気についで程度だったりする、真雪さんと知佳さん
 ま、最初が最初だったらしいし、嫌がってるわけじゃないのだけどって那美さんが言っていた
 ただ、最初抱きしめられた時に苦しかったり、イタズラされたりがあったらしい
 ただいまって言葉を言って、軽く撫でる
 大学から帰ってきて久遠さんとなのはちゃんが居る時、何時もそうだった
 これからもそうであることを、願う……
 それでも、最近は私の方が早くいてたりもするわけだし、一日中お庭に居る時もあるから
 っていっても、日向ぼっこというよりも、恭也が盆栽、私は植木鉢に植えたってだけだけど
 ひまわりを植えるための土作りだ
 ま、どこでだって育つだろうし、ひまわりの種は多々持ってるから

「久遠、ごめんね、今日はちょっと大切な話があるから」
「そうなの……」

 残念そうに言う久遠さん……悪いことだけど、確りと言わないといけないことは言わないとね

「なのはももうちょっと先?」
「そうだね……お日様の下で寝ておいで」
「うん」

 狐姿に戻ると、また庭の所で眠りに落ちる
 縁側の縁石の上に寝始める……さすが眠そうだね

「それで、私たちはまだしばらく居ても良いのか?」
「良いですよ……知佳さんも真雪さんも蛍を気遣ってるんでしょう」
「まぁな……」
「そうだね……ま、夕飯前には帰るけどね、お姉ちゃんが夕飯の買い物を手伝ってくれるし」
「運転手兼荷物もち〜」
「嬉しそうに言うなよ」

 げんなりしながら言う真雪さん
 流石に、辛そうだ……

「そういえば、蛍の部屋ってあまりプレゼントとか少ないよね」
「大きくなって、働くようになった邪魔になるし、居候だから……それに、2人ともプレゼントって柄じゃないし」
「へ〜」
「中入れてもらった事があるのか?」

 そういって、少し感慨深げに言う真雪さん
 ま、入れたというか、勝手に入ってきた……客間兼用だから、私自身が困った

「まぁ、ちょっとね……でもさ、恭也くんとか士郎くんあたりからプレゼントありそうなのに」
「クリスマスの時に貰ったくらいですよ……その、プレゼント」
「何を貰った?」

 恭也が少し困った感じで頬を掻く
 その姿は照れてるとしか言いようが無い
 真雪さんがすっごくしつこく聞いてる……漫画家としての本能なのかもしれない

「何を送ったんだ?」
「いや、その……」
「まさか、言えないようなものを?」
「ええ〜、恭也くん、まさか」
「いや、本当に男避けで指輪を」
「士郎は何を送ったんだ?」
「あいつは、そのセットでネックレスとブレスレットを……」
「へ〜」
「どいつもこいつもラヴラヴしやがって」
「ラヴラヴってもう死語じゃあ」
「煩い」

 一刀両断……う〜ん
 でも……私指輪もネックレスとブレスレットもしてないのだけど

「でも、蛍がそんなのしてるの見たこと無いね」
「そりゃあね……だって、どちらかしたら、どちらかもってなるし
 私は、2人の喧嘩を見たいわけじゃないし……仲良くして欲しいから」
「あらあら、恭也くんも士郎くんも大変ね〜」
「いや、まぁ、士郎とは上手く言ってるし……その、お互い、好きな人を支えるのに、
 1人より2人のほうがって考えたので」
「なるほどね〜」

 納得してるし……やっぱり、私も他の人と感性が違うのだろう
 恭也や士郎もだろうし、だからこそ上手くいくって事もあるのだと思う
 愛されたいって思う反面、それが難しいことでもある
 子供の頃はそれが無償で親から子供にって与えられるものだ
 それが無いなら、それはそれで寂しいものへと変化するのだ

「紅茶要りますか?」
「いや、さっき飲んでたしね……」
「私も良いよ……蛍は?」
「良いよ、恭也も座れば?」
「ああ」

 そういって、私の隣に座る
 ちなみに、大学では私が、恭也と勇吾から護られるように居る時が多い
 1人で居ようものなら、色々と大変なのだ……4度ほどあったけど
 玩具にされた……そりゃあ、小さいし、救出されたって言う方が正しい
 大学構内でもみくちゃにされて、ふらふらとなるのだ……倒れたいって言う事は無いけど

「恭也くんも普通に蛍の隣に座るようになったんだね〜
 最初の頃を考えると、すっごく不思議だよ」
「そうなのか?」
「うん、最初の頃は、他の人が座っても『むっ』って感じの顔して、見ているだけだったし」
「ほぅほぅ」

 楽しそうですね……私はのんびりと話を聞き入っている

「それが隣に自然に座るなんて……蛍も少し避けて座ってたし」
「まぁ、知らない人が居たらそうですよ」
「ま、そうなのかもね」
「それでも、お前ら仲良くなったというか、自然体だよな」

 真雪さんに言われて、何となく納得
 確かに自然体になった気がする……気づいてないからか言われてから気づくこと

「それに、お前らの距離の取り方は確かにトライアングルだし」
「そうですね」

 とりあえず納得しておく……分からなくても、そう言う事があるって事で

「それで、恭也」
「何ですか?」
「お前、結婚指輪とか渡すのか?」
「婚約指輪ですか? 渡さないですよ」
「え?」

 知佳さんが声を出し、呆然とする真雪さん
 私は、ふぅって感じだ……元々、そう言うの期待してないし
 何ていうか、指輪のプレゼントだってすっごい驚きだ

「俺と士郎とで決めてたんですよ……絶対に、蛍が言わない限り俺たちはどちらからも
 婚約指輪を渡さない……」
「へ〜、じゃあ、どうするの?」
「俺たちが心を込めて送った指輪を渡す……まぁ、俺と士郎も覚悟を決めて、2人でオーダーメイド頼みましたけど」
「オーダーメイドって高い奴じゃん」
「まぁ」
「それを簡単に言うっていうのも話が違うな〜」
「でも、士郎も俺も、やっぱり蛍を好きですし……これくらいなんとも思わないんですよ
 好きだからこそ」
「惚気られちゃったよ」
「子供こさえておいて、それだけで済ますのがお前らの凄いところだと思うわ」

 何ていうか、私は居ずらい
 なんせ、いてると、隣で惚気てる男が1人居るのだ
 本人はクソ真面目なつもりなんだろうけど

「士郎も言ってましたからね……好きだからこそ、支えられるようになるか
 無理なら、誰か一緒に居て支えたら良いって……そんな案で良いのかって聞いたら
 蛍が良いなら良いんじゃないかって
 そのとき、俺もああそうだなぁって漠然と思ってな
 選べないなら、追い込んだ状況で吐かせたら良いんだって」
「うわ〜、何ていうか、鬼畜だよ」
「本当だね」

 すでに鬼畜な事をさせた人が言ってもね〜

「でも、知佳さんや桃子さんのせいで、私大変だったのに」

 周りはそれを聞いて、何か考え込んでいる

「大変だったって?」

 真雪さんが言葉を小さく言う

「2人から、その、迫られて、そのまま体を……」
「うそっ!? 私、そんな事言ってないよ!?
 だって、私は恭也くんの相談に乗っただけだし」
「多分、士郎の方は桃子さんに相談に乗ってもらって、それが2人の相乗になってだな
 これは、確かに思い出深い初体験だったな」
「ええ」

 本当に思い出がありますわ……何ていうか、すっごい痛かった
 ま、何とか言っても戻るものもないし……

「じゃあ、もう色々ステップアップ?」
「そうですね、色々……たった2時間ほどのことなのに、最初痛くて、逃げたくなりましたよ」
「逃げたくなるの?」
「こう、でも、2人の屈強な男に抑えられて、ずんずんって」
「うわ〜」
「聞いてると激しさが分からないが、激しかったんだろうな」
「もう、私、泣くわ失神するわで……近所に声響かないようにって
 口を抑えられたり、突っ込まれたり……」
「もう、言わないで……恥かしいし」
「そうだな」
「はい」

 私も恥かしいよ……これ以上は言うつもりもないけど

「と、とりあえず、蛍、そんな話は俺が居ないところでしてくれ」

 気恥ずかしそうに言っている

「私も恥かしいよ……知佳さんも真雪さんも辞めてくださいよ」
「すまんすまん、気になってな」
「私も〜、でも知らなかったな」

 そんな話をして、しばらくはたわいない話をしていて、士郎が帰って来た
 一緒になのはちゃんも帰ってきて、一通りの挨拶を終わらすと
 私と士郎と恭也は一緒に、ある場所まで散歩って名目で外に出た
 出来るだけ早めに帰るとは伝えたけど……晶さんとレンさんも居るし大丈夫だろう





「何処まで行くんだ?」
「ん〜、この辺でいいかな」

 声をかけられて振り返る……そして、2人に言う
 お店で言うのは少し恥かしかった

「2人を愛してる……これしか返事浮かばなかった
 ごめんね」
「は?」
「え?」

 2人が呆けて言う

「だから、私は、2人を愛してるから、どちらか一人を選べないって」

 ……こういってはなんだが、傲慢そのものだ
 私自身も自分で結論付けて、そのままそんな風に思ったものだし

「俺は別に、それを気にした覚えはないし、最初に言ったと思うのだが」
「1人を選べないなら、二人を選べって」

 それは分かっていても、ちゃんと言わないといけない事だと私は思ったから
 それは分かってくれてるのだろう
 年上2人……私は、2人からしたら、凄く年下で情けない程小さいし弱い

「それでもね、言っておかないと、やっぱりいけないと思った
 それにね、2人を大切だからこそ……私から言わないといけないと思ったの」

 私は、2人にちゃんと言わないといけない
 小さな公園でライトも無く、お月様の光が木漏れ日のように落ちてきている

「ごめんね、私がもっとはっきりしてなくて、考えが足りなくて
 もっと早くに謝りたかったけど、なんか、3人になれる機会がなかなかなくて
 その、いえなかったし」

 俯いて言う

「いや、俺たちも故意に避けていた部分があったんだ
 その、3人だけになる状態を」
「そうだと思う……答えを言われて、俺は傷つきたくなかったんだ
 蛍を好きなままで居れるとは思うけど、それさえも不安だったんだ」
「そうだ……俺たちは臆病なんだ」

 2人はそう言うけど、それでも、私には私なりの責任がある

「それに2人に我慢しててもらったこと……ごめんね」
「あ〜、でも、あの時、俺暴走してたし」
「俺もだな」

 年上として情け無いやら何やらって事だ
 それでも、私は……受け止め、受け入れたのだ
 彼らの行為を……私自身にも罪があると思った
 それだけじゃなく、2人を愛してると分かったから……

「受け止められたよ、2人の思いを……だから、良いの」
「いや、まぁ、それは嬉しいんだが……でも、俺たちで良いのか?」
「それこそ愚問だよ、良くなかったら、あの時に2人の骨抜いて、殺してでも抜け出てるよ」
「そうだな……俺らも覚悟があったから出来た事だ」
「そうだね」

 月光の下で私は、2人に小さく手招きする

「なんだ?」
「何?」

 2人して、軽く膝を屈めて、目の高さが同じになる
 2人の頬にキスをした……初めてじゃないけど、愛情を込めてって点でいえば、愛情を込めてだ

「2人とも大好きだよ」

 驚いたのか、手を頬に当てて、少しボーとしてる
 こういうのに弱いのだろうか?

「あ〜、そのありがとう」
「ありがとうな……俺らの無茶な要求というか思いに応えてくれて」

 2人とも、それを言って、私に笑いかける
 その笑顔にほっとする……大丈夫
 私は、1人じゃないし、これからは新しい家族が出来る

「明日では駄目だけど、明後日……も駄目だな
 士郎は何時休みだ?」
「俺は、明々後日だ」
「じゃあ、明々後日の夜中、一緒に出かけたい」
「うん、良いよ……お酒以外ならね」
「分かってる」
「お酒じゃないから」
「分かってるよ……」

 私はそれを言われて、微笑み返した
 大丈夫と思える言葉……私の中で変わったこと……それは、自分中心から、少し恭也、士郎中心に寄ったこと
 2人もそうだと良いなって楽観思考……それが助けになることもあるから

「さ、帰ろう……あまり遅いと皆心配するし」
「そうだな」
「蛍の用事はそれだけなのか?」
「うん、ちゃんと言っておきたかったの……二人の前で、確りと」
「そっか」

 そう言われて、ほっとする士郎
 士郎は私の方に振り返ると

「お返し」

 私の頬を手で挟んで、唇にキスしてきた
 これ、お返しじゃなくて、仕返しなんじゃないだろうか?

「ぷはぁ、久々にしたけど、やっぱ蛍の唇甘いわ」
「感想言うなよ……それに、お前だけずるいぞ」
「恭也もすれば良いだろう……」
「それもそうだな」

 私は少し物事を考えてる間に、恭也にもされた
 まぁ、もう良いのだけど……

「それに、足りないしな」
「頬にされるというのも良いが、やはり、唇の方がいい」
「エッチ」
「なんとでも言え」
「ま、俺らも男なんだし、少しは分かってくれ」
「分からないでも無いけど……後、別に溜まって処理って形でするのは良いけど
 その代わり、ちゃんと避妊はするようにね」

 2人が固まった……何?

「蛍の口から出るとは思わなかった」
「だって、2人とも、あの時は私、あれだけでおなか一杯っていうか
 攻められて昇天って言うか、本当に大変だったんだからね……お風呂とか
 それに、腰砕けてたし」
「すみません」

 初めてだったか、久々だったか分からないけど、二人にいい感じに弄ばれたのだ
 それも、私が動けないほどに……それはもう、色々と
 たった2時間、されど2時間

「いや、だけど、あの時は、ほら、シャワーで流したし」
「恭也や士郎はすっきりしたかもしれないけど、私は2人のせいで、最初ボロボロだったんだよ」

 全く、2人とも底なしだからだ
 何ていうか、持久力もすばらしいっていうか……ま、そりゃあ、2人とも剣士だし
 人とは違うだろうから、仕方ないと言えば仕方ないのだけど

「2人が子供に手を出さないなら、良いよ」
「何ていうか、それって、俺たちが出したらどうなるかってのも如実に表してるな」
「勿論……2人が、手を出したら、私は容赦なく、夫だろうとも使い物にならなくしてやる」
「分かってるさ……それに、俺は蛍以外興味が無い」
「ま、俺もだな……俺を守る事が出来ると断言できる女性なんて早々居ないさ」

 2人がそう言って、軽く笑う……ああ、だからこそ、2人が居たら
 私は大丈夫で、いくらでも力が出せそうな気がする
 3人で歩いて帰る……どちらか一方とはあるけど、こうやって3人で歩くのは初めてかもしれない
 夜の散歩も終わり……恭也と士郎の鍛錬は何時もどおり夜中もするのだろう
 私も夜中にしている事が多々ある……そして、それを想定した戦い方もあるのだ
 第一、羽に頼った闘い方はあまりしないし、そんな敵は恭也たちくらいだからだ

「家に帰ったら、ご飯食べて、寝よう……流石に一緒の部屋ってわけには行かないけどね」
「そりゃあ、そうだ……俺だって男だぞ、我慢するの大変なんだからな」
「そうだな……俺も同じだ」

 お互い、その苦労が分かるのか、頷きあってる
 私は、なのはちゃんの部屋で一緒に寝たりとか、久遠さんも籠に入ってとかはあるのだけど
 その代わり、そこから動くなって事なのだけどね……毛が飛ぶと大変だから
 私は2人の手をそれぞれ左右に掴むと、恥かしいけど、小さく呟いた

「これからも一緒に居てね」
「ああ」
「勿論だよ、蛍」

 恭也と士郎に撫でられて、背中を押される
 2人にしてもらえる優しさが嬉しくて、温かい
 2人に好かれる人で居たい……でも、難しいと思う
 だから、2人の嫌いな人にはなりたくないな……







 家に戻ると、全員が何やら相談していた
 何を相談してるんだか……?
 私たちが声をかけると、全員驚いたように私を見ている
 高町家の面々だ

「あれ? 蛍お姉ちゃん帰って来たの?」
「帰ってきたら駄目だったの?」
「違うの……お母さんたちが、帰ってこないって」
「帰ってくるよ……だって、私は今日どこかに泊って来るとか言ってないし」
「そうなんだ」
「そうなんだよ」

 なのはちゃんと話してると、2人は他の面々に何か言われてる
 忍さんや那美さんも居るのだけど、那美さん、寮は? 忍さんもお屋敷はいいのですか?
 私が関与すべきことじゃないので、あまり深くは言えないけど

「でも、連絡もないし心配するんだよ」
「ごめんね……もっと早く帰ってくる予定だったんだけどね
 ちょっと時間が掛かっちゃった」
「もう、良いけど、あまり心配かけたら駄目だよ」
「うん、分かったよ」

 なのはちゃんの言う事は理屈的にあってるので、頷いて応えておく
 それはそれで重要なことだからだ

「さ、ご飯にしてもらおうか?」
「うん、レンちゃん、晶ちゃん、ご飯は?」
「はぁい」

 レンさんが、元気に応えて走っていく……う〜ん、楽しみ
 しかし、此処の料理人は美味しいものばかり食べさせてくれるから嬉しいよ
 食べる喜びを此処で知った気がする
 美味しいものを食べるのもいい事だよって、美沙斗さんが言ってたけどね
 ご飯の準備を終えて、食べ始める
 その日、私はなのはちゃんのベットの中で眠った
 なのはちゃんと一緒に……ただ、2人して恋愛話に盛り上がった
 なのはちゃんは、好きな人を一途に思っている……その人に思いが届いてると良いな……










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