『An unexpected excuse』

  〜黒き妖精編〜






「俺が好きな人は……」

 少し考えてるのか、言いよどむ

「誰なんですか?」

 FCの子が1人聞く……代表者というべきだろうか

「好きな人は居るって言う事で納得してくれないか? やっぱり」

 恭也の苦しい言い訳にも近い言葉

「今は遠い場所に居るけど、同じ想いを抱き、同じ事を考えていた
 そんな人が俺の隣に立っていたんだ……その人以外を好きだとも言う気は無い」

 キッパリと言い切った恭也
 その姿はかっこいい

「そこまで言われるのでしたら……その人が本当に好きなんですね」
「ああ」
「その人と会えないのですか?」
「……今は会う気は無い
 お互いにしたいことがある……それが終れば、お互いに会おうと約束してるから」

 そう、お互いの為に約束した事
 少しの寂しさも、辛さも伴うけど、それよりも優先した事だ
 別れる寂しさと守れぬ辛さ……どちらがどれだけ重要か
 FCの人たちは納得して、戻っていった
 美由希や忍、晶、レン、那美と5人は残っていたが

「恭ちゃん、その人誰?」
「ええ、誰かしら?」

 美由希と忍の2人が聞くが、恭也は小さく首を振り

「今は遠い所に居る人だ」
「……だから、それが誰かって
 私たちの知らない人なの?」
「ああ、知らない人だ」

 恭也の言葉に、全員がそれぞれを消していく
 CSSの面々でもないという事、フィリスやリスティ、さざなみ女子寮の面々でもない事
 ただ、その誰もが、誰かと聞いておきたい

「じゃあ、1人が寂しいなら、私が」

 そんなことを漏らす那美
 だが、恭也は首を振る

「元から分かっていた別れだ……ただ、俺とその人にとっては、守るべき者が今同じじゃないってだけだ」

 納得できない答え
 でも、恭也の口を割らす理由が無い5人

「お師匠は、それで良かったのですか?」
「ああ……俺にとって、彼女にとって、それが進むべき道だからって分かっていたから」
「でも、ししょ〜は納得できてないとか無かったのですか?」
「無い」

 キッパリした答え

「俺には俺の、彼女には彼女の、それぞれの理由があるから」

 聞けない
 それは、恋する5人が思ってしまった
 もしも、自分たちが同じ状態なら、男と分かりながらも別れ、そして、それが恭也で
 誰かに聞かれたら、答えられない
 優しい女たちの優しい思い

『俺とウルカの間には、それだけの信頼と強い絆がある』

 それだけの絆を見せられて、周りは納得するしかないのだ
 恭也がこのまま年をとって、彼女が出来なくても
 いつか自分達に向けてくれるかもしれないという、小さな望みにかけて

「恭ちゃん、その人の名前聞いても良いかな?」
「言う気は無い……第一言っても、分からないのであれば変わらないだろう」

 恭也はそのまま背を向けて、校舎へと歩いていく







 その日の夕刻
 恭也は、1人墓地に居た
 高町士郎のお墓……その墓前に恭也は立ち、1人前を睨みつけるように見る

「寂しいか……」

 小さく漏れる声

「寂しくないわけ無いじゃないか……だが、お互いに覚悟していたんだ
 だから、絶対会おうと約束したんだろ」

 小さな黒い石が恭也の前にある
 ファンタズマゴリアで貰った物だ……彼女、ウルカからのプレゼント

「恭也殿」

 恭也の背中に黒い羽根の生えた女性が抱きついた

「ウルカ!? 何で此処に?」
「……スピリット隊の隊長をしていたのですが、その任務を光陰殿たちに取られたので
 どうしようか悩んでいたら、ヨーティア殿とイオ殿とレスティーナ殿が結託しまして」
「もしかして、そのままこっちに来れたということか?」
「ええ、何か色々説明はされたのですが……一度開いた道をもう一度開くのはプロセス云々があるものの
 意外と手を出せば道を伸ばすだけでいいのだから、出来るって算段らしいですが」
「ウルカ、会いたかった」
「恭也殿……手前も会いたかったです
 危うく仲間をマナの露にしてしまうところでしたし」

 どんな状態不安なんだか……情緒不安定って所か

「しばらくは、こっちに居るのか?」
「数ヶ月は此処で……それと、恭也殿を迎えにきました
 手前たちの世界で、皆恭也殿を待っておられます
 やはり、皆寂しいのですよ……光陰殿は、そういうのを持ち合わせてないようですし
 今日子殿に引かれてます」

 分からないでも無い
 そう思った恭也は、ため息を1つして

「じゃあ、俺が高校を卒業したら、そちらに行く……だから、暫く一緒に居ないか?」
「いいのですか?」
「好きな人と一緒に居ない……しかも、同じ世界じゃないのだから
 どちらかが融通を利かせないといけないだろうな
 お互いの心理的な部分をおいて」
「手前の修行不足です」
「それなら俺もだ……だが、嬉しいとも思う」
「はい」

 背中に抱きついてるウルカはそっと離れる

「恭也殿」
「どうした?」
「手前は恭也殿と離れて分かりました
 手前には恭也殿が居ないのが我慢できそうに無いです
 傍に居てください……」

 頭を下げるウルカ
 恭也はそのウルカの頭を撫で、士郎のお墓を見る

「父さん、俺の大切な人だ
 それと皆に寂しい思いをさせるかもしれないけど、行くわ
 高校卒業までは居るつもりだけど」
『ああ、行って来い、自慢の馬鹿息子』

 そんな風に聞えた気がした

「ウルカ、しばらくは一緒に居れるんだろう?
 うちに来るか?」
「いいのですか?」
「多分大丈夫だ……ウルカがよければだが」
「行きます……それに、行ってみたいですから」
「そっか」

 そして、2人は家で大騒ぎを起し
 数ヵ月後、恭也が卒業して数日後、世界を発った
 ファンタズマゴリアへと2人は帰還した
 スピリット隊隊長と副隊長として、2人はレスティーナ女王の助けとなるのだった








 おわり











 あとがき
 まぁ、この部分で書いておくと、恭也は結構皆から慕われてます
 シオン「そういえば、時間が過ぎてないみたいな書き方したけど、何で?」
 そのまんまだ
 ゆうひ「って事は、地球で過ごした時間っていうのは、あちらでは違うと」
 うん
 シオン「ハイベリアとはまた違った感じなんだね」
 そう、とってもらって良いよ
 ゆうひ「恭也は優秀な、教官と隊長って事?」
 そうだな……変な事件も少ないだろうし、そう言う事なんだろう
 シオン「だね」
 ゆうひ「でわ、また〜」
 次回は誰で行こうかな……ほなね〜(^^)ノシ 




残る最後の一人。
美姫 「ウルカ編〜」
互いに守るために剣を手にした者同士。
美姫 「道が分かたれても、互いにその道を行ったって訳ね」
うんうん。
美姫 「良いわね」
いやー、それにしても四人の妖精のお話。
美姫 「遊び人さん、ありがとうございました〜」
ました〜。
それじゃあ、今回はこの辺で。
美姫 「シオン、ゆうひもまったね〜」
ではでは。



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