『An unexpected excuse』

  〜塚本 八雲 続編2〜








 それは雪の降る冬休みの時
 恭也は一人部屋にこもって勉強をしていた……そこそこに暖かい海鳴にも厳冬の厳しさが舞い降りていた
 時は12月……大学受験が控え、1月後半からは慌しいときが流れるだろう

「ふぅ」

 恭也のため息……あの、秋の文化祭からだいぶ時がたった
 桃子やフィアッセからだいぶからかわれたので、恭也の家には来にくい八雲
 それについては何も言わない恭也
 それでも、たびたび訪れるのは、恭也を病院に連れて行くためだ
 なんだかんだで八雲は恭也の無茶なところを知っていて、家族も上手く利用してるように

「恭也〜、電話よ〜」

 家の方へと連絡が恭也に直接入る事はめったに無い
 ただ、たまにはあるのだろう。呼ばれて恭也は手をついて立ち上がる
 電話の受話器を持って皆がじーと見ている視線を気にする

「はい、もしもし、代わりましたけど」

 恭也はそう切り出して電話の相手からの声を待つ
 そして、しばし恭也は困った顔になった

「……分からないわけじゃないが、それでも俺が居なくても良いんじゃないのか?
 …………分かった。じゃあ、明日、そちらに行かせて貰うよ
 …………体は大丈夫だから……迎え行くからって……分かった」

 冬休み第一日目……入ったばかりの夜に恭也へと電話の相手
 それは、八雲だった
 電話を切ると楽しげな顔をしている桃子とフィアッセ
 恭也はため息をつくと

「明日、ちょっと息抜きとプレゼント選びに出てくる
 着いてくるなよ。凄く困るから」

 そういって、恭也は部屋へと戻っていった
 なのはは上を向いて、すぐ近くにあるクリスマスを思い返す
 ああ、そっか。もうそんな時なんだなぁと納得
 数日しかないし、お母さんである桃子もこのごろ忙しないのだから、そうなのだが
 なかなか浮かばないのは、ツリーなどの飾りつけをしてないからかもしれない

「じゃあ、晶ちゃん、レンちゃん、明日一緒にクリスマスツリー飾ろう」
「そうやね」
「ああ、良いよ」

 レンと晶はなのはの言葉に頷く
 そして、それぞれもバイトやら色々と予定が入っていく
 恭也はそのことを知らないが、それでも恭也に会う事は無いだろう





 翌日、恭也と八雲は朝の10時に高町家の前で会っていた
 着いてくるなって言うのはこういうことなのだろう……桃子とフィアッセは居ないし
 晶やレンたちもそれぞれにすることがある。美由希は、バイトに借り出された

「じゃあ、行こうか」
「すみません、今日はわざわざ」
「いや、ちょっと頼みがあるんだが」

 そういって、恭也は昨日の電話を思い返す

『プレゼントを渡したいのですけど』

 それで真っ先に浮かんだ姉や友達より、気になる播磨より恭也へと先に連絡した
 先輩であり、三年生だから忙しい時期だが、恭也も渡りに船となったのだ
 なんせ、なのはも小学生だから、幼子じゃないしという事もありどういうプレゼントしたら良いか悩んでいた
 勉強の傍らの悩みなので、あまり考えも浮かばず
 そして、皆に聞いて顔に出たら困るというのもあり、八雲に聞くことにしたのだ
 最後の最後の考えだったが……そのため、恭也も連絡をしようと思っていた
 ただ、電話をして、八雲の姉である天満が出てきたらどうしようなどと考えてはいた
 デパートまで行くと二人はどちらから先にと話し合った通りに行く

「まずは、私の方からで良かったのですか?」
「ああ。だが、俺も大したことを言えるわけじゃないんだが
 それにプレゼントなら何でも喜んでくれるんじゃないのか?」
「いえ、その違う人の考えもほしいなって」
「そうか」

 お互いに頷いて、簡単な言葉だけで進んでいく
 クリスマスフェア中のデパートは人が多いが、二人はお互いを見失わないし
 そこそこに近い
 周りはそんな二人に振り返る
 それはそうだろう。遠くから見ても、近くで見ても美男美女のカップルなのだ
 二人とも言葉は少ない
 クリスマス前の一時、恋人同士で……という風に見えてる

「これはどうだ?」
「確かに姉さん喜びそうです」

 小さな星型がついたネックレス
 八雲は渡すプレゼントとは、姉へのプレゼントなのだ

「さっき雑誌に載っていたのに近いものがあったし、似合うと思う」
「そうですね。姉さんも喜んでくれると思います」

 値段は少々張る

「半額くらいは出しても構わないかな?」
「え?」
「俺もプレゼントを何か考えないといけないが、あまりそういう事に考えが無いからな」
「それなら分かりました。私も少々厳しいところでもありますし」

 半額ずつ出して、八雲のプレゼントは決まった
 そして、次になのはたちのプレゼントだが、八雲はバックに入れるとなのはたちのプレゼントを選ぶ

「美由希と晶、レンは簡単に決まったんだがな
 どうも、なのはだけが決まらないんだ」
「なのはちゃんですしね」

 微妙に考えて、二人はそのまま色々と模索していく
 微妙な年齢のために、何を送って良いか悩むというのが恭也と八雲だった
 大人っぽい部分を持っているからこそ、なのはの事を考えると悩む

「直接聞いても良かったんじゃないですか?」
「これは個人的なものだから」

 恭也が今回買うのは本当に個人的なことなのだ
 なのははちゃんと桃子にしっかりと言っていたわけだから、自分が買う必要は本来は無い
 だが恭也が送る理由にはちょっとしたものが含まれてる思いがある
 八雲もその理由を聞いて、一緒に探すことを了承したのだ

「あ、これなんてどうですか?」

 八雲が差し出したのは、リボンと髪飾り

「似合いそうだな。確かリボンは気に入ってたし」
「じゃあ、これで」
「ああ」

 すぐさま買い物は終わる。お互いに相談相手というよりも決める背中を押してほしいという感じだ
 そのことに気づいてはいても、言わないあたりは気配りさんである
 買い物したものをバックに入れていく
 恭也はついでにと、美由希やレン、晶のも買っていった

「恭也さんのプレゼントは無いんですか?」
「俺はもうそういう年齢でもないから」

 八雲にそういって、恭也は八雲に小さな包みを差し出す

「??」

 首を傾げる八雲に恭也は言葉少ないが、はっきりと言った

「ちょっと早いがクリスマスのプレゼントだ」
「はい?」

 不思議そうに包みを見る

「お礼もかねてというところが悪いが、まぁ、大して気にしないで貰ってくれ」
「えと」
「貰ってくれないと、この後、これをどうしようか考えてしまうのだが」
「じゃあ、その」

 受け取る八雲に恭也はほっとした顔を浮かべる
 買ったは良いが、その後送るのにあえなかったらどうしようなどという思いもあるのだ

「ありがとう」
「いえ、こちらこそ」

 デパートの買い物客が多い中渡しては目立つ
 だが、そんな様子を見せること無く、二人はデパートを出る

「時間余ったな」
「そうですね……もう少しかかると思いましたけど」
「それじゃあ、少し散歩でもしようか?」
「ついでに昼食も食べてしまいませんか?」
「ああ、そうだな」

 お互いに歩いてデパートから離れる
 距離は近く、それとなく気遣いする恭也

「あの、恭也さん」
「ん?」
「後で少しだけ時間くれませんか?」
「ああ、時間はあるし構わないぞ」





 昼も近くの美味しいお店という場所で食べて、二人はのんびりと歩いていく
 そして、八雲についていった先は園芸のお店
 盆栽なども置いてあり、興味があるかのように恭也は見つめる
 八雲も恭也のそんな様子を見ながら、花を買うと

「あ、恭也さん、これどうですか?」

 一つの盆栽を指差す八雲

「ああ、良いものだと思うが」
「すみません、これもお願いします」
「はい、かしこまりました」

 恭也が今度は首を捻る

「クリスマスプレゼントとはちょっと違う感じがするんですけど、これ、その貰ってください」
「え、だが」

 盆栽はそれなりの高さがある

「本当は私が選べたら良いのですけど、恭也さんの方が詳しいし」

 博学の八雲をもってしても、盆栽の奥深さについていけないのだ
 そのために、八雲はいつもと違う手をとったのだ

「その駄目でした?」

 少しうつむいて言う八雲に恭也は八雲の頭を軽く撫でる

「ありがたく、受け取らせてもらうぞ」
「はい」

 顔を上げた八雲は小さく笑顔になる
 恭也が受け取ってくれた事が嬉しかったのだ
 確かにクリスマスプレゼントとしてはちょっと変だが
 恭也は少し嬉しそうに感じたのだ
 心の声は見えないが、それでも、恭也の優しさは分かる

「伊織は元気か?」
「姉さんとたまに騒いでますけど」
「そうか」

 恭也は商店街のペットショップで猫缶を買うと、八雲に渡す

「伊織にも何か買ってやらないとな」
「……そうですね」

 八雲の姉思いと恭也の妹思い
 どちらも似てるからこその、どこか似たような思い

「一度家に戻って良いか? これをもちながら歩くのは少し」
「あ、そうですね。その後翠屋に行きませんか?
 確か、クリスマスの新作があるって」
「ああ、じゃあ、置いたらすぐ出るか
 冬休みだし、人が途切れないからな……フル稼働してるだろうからな」

 恭也の言葉に、慌しく動き回る店員さんの姿がすぐさま頭に浮かんだ
 確かに、あそこは大変そうだと八雲は考えていた
 恭也はこの時期は毎度なので慣れているのだった




 翠屋の忙しさの横で、恭也と八雲はコーヒーとケーキを頼みお茶していた
 手伝ってという言葉を、即座に断り、恭也と八雲の周りはのんびりした空気が流れる

「入らなくて良かったんですか?」
「店長が入るなって命令されたからな……入ったら無理やり戻されかねない」

 そういって、恭也はにやりと笑う

「俺は良いから、食べてくれ」
「はい」

 恭也は少し嬉しかった……甘い物を食べてる八雲はそれとなく笑顔なのだ
 小さな笑みを浮かべて食べてることから甘い物が嫌いとかじゃないくらいは理解できるから
 お互い表情の変化が乏しい分に大変なのだ

「少し休憩したら、手伝いませんか? 姉さんにはメールしておきますし」
「八雲が良いならだな。店長の説得は任せてくれ」
「それじゃあ、もう少しだけ」

 お互いに体を休めるかのように、本当にのんびりとしている
 だが、目は店員さんを追ってるし忙しいのは目に見えて分かってるのだ
 ケーキを食べ終えて、紅茶などを飲み終えると清算をする
 多くの荷物が無い八雲も手伝うこととなり恭也の手助けの元簡易に説明されて接客をこなす
 恭也も言われた分、飲み物を全般に動かしていく
 フィアッセや美由希、バイトの面々のおかげで、フォローもばっちりだ





「ありがとう」
「いえ、その、あの後、デザート貰いましたし」

 翠屋のシュークリームを貰ったのだ
 現物支給というわけじゃなく、八雲にって恭也が貰ったのだ
 ただ、その後時給分のお金も貰い、二人は歩き出す
 ピークを過ぎて少しだけ休憩を取っている桃子が受け渡したのだ

「じゃあ、また」
「はい」

 塚本家の前で恭也と八雲は別れる






 ただの小さな買い物
 でも、二人の初デート……それは二人の気づかぬうちに終わっていたのだった










 つづく(凄く多分で)










 あとがき
 まぁ、書いてみました
 シオン「最近不調だそうで、私たちの出番が減ってます」
 ゆうひ「そうなんよ」
 ……すみませんでしたm(_ _)m
 シオン「土下座で許すと思ってんのかぁ、ああん!」
 かはぁ!!(顔を蹴飛ばされた)
 ゆうひ「で、不調って?」
 体と精神的にって所かな……あの、痛いので傷口触らないで
 シオン「ねとねと〜」
 血が出てるからです……クリスマス書いたし
 ゆうひ「次は、天満たちが居ない間のちょっとしたことを書く?」
 相変わらずの八雲の状態ってのも良いかも知れない
 シオン「状態?」
 ほら、八雲と恭也って進展ないから、他の野郎たちからしたらって奴
 ゆうひ「確かにそろそろ進展ほしいね」
 自分もそう考えてるけど、スクランでも変化ないのに難しい気がする
 シオン「おぃおぃ」
 難しい……でも、お互いに意識はしてるんだよ。突発というか、継続はさせない方向で
 ゆうひ「なるほどね。難しい所に入ったんやね」
 うぃ、そのつもり
 シオン「つもり〜。どういう事?」
 受け取り方では、そういうのが全く無いように思えたりもするからかな
 ゆうひ「微妙な……でわ、また〜」
 ほなね〜(^^)ノシ



ほんわか。のんびり。
美姫 「少しずつ進展している感じよね」
うんうん。いやー、良い展開だな。
美姫 「この後、どうなっていくのかしらね」
ともあれ、今回も投稿ありがとうございました。
美姫 「ました〜」



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