「修正パッチ?」

 

 

スレインは鸚鵡返しになり、手に持っていたカップをソーサーへ戻す。

 

場所はヨートゥン世界の統合派が暫定首都と定めたワートアート。

いかに戦争が激化しても、互いに世界の核となるような都市までを戦火に晒さないようにするぐらいの良識は双方にある。ワートアートも、戦火などまるで嘘であるかのように人々は暮らしている。違いと言えば、統合派の兵士が街中を闊歩し、検問が設置され、ニュースが戦況を伝える割合を増やした等、その程度でしかない。

 

暫定首都の高層マンションにある最上階。大きなプールやバーダイニングのような高価な設備を備えたペントハウスに、スレイン一行は潜伏していた。最早、戦争の帰趨が決しつつある以上、他の仲間はどうであれスレインは干渉を続けるつもりはなかった。

三人の妻―――冗談や比喩ではなく―――と、のんべんだらりと暮らしながら愚かでくだらない和平会談と、その後に締結されるであろう管理局の走狗になるという誓約書に調印する儀式を待つことにした。

 

そこに、管理局の追手を殲滅してきた恭也がふらりと訪問してきたのはほんの数時間前のこと。

今はプールサイドのパラソルの下で、差し向いでお茶をしていた。コーヒー派のスレインに対して、恭也は湯呑に緑茶を嗜んでいる。

 

 

「可能なのか?」

「・・・難しいね。ほら、ドクターユニバーサル――――君にとっては、クリストフォリ博士と言った方がいいかな?彼女は僕みたいな亜種とは違って、本物の天才だからね。夜天の魔導書を構造解析しないことには何とも言えないよ」

「スレインの使っている[R.E.D.]がオリジナルじゃないのか?」

 

 

訝しむ恭也に、スレインは片眉を上げる。

動揺しているわけではないが、以前に話した与太話を覚えていることに少し驚いていた。

 

 

「確かに、ね。僕の[R.E.D.]が夜天の魔導書のオリジナルっていうのは確かだよ。開発していた当時、全部を教えたわけではないけれど技術的には模倣してあるはずさ」

「基本構造をコピーさせたわけではない、ということか?」

「それはそうだよ。僕の使っている魔法は君らとは違って、より原始的なものだからね。根本が異なる以上は、基本構造をコピーできないし、しても意味がない。それでも形にしてしまうのが彼女の天才たる所以なんだろうけど」

 

 

その辺は素直に賞賛する。性格はアレだったけど、と。

性格や行動指針がアレなのはわざわざ思い出さずとも同意せざるを得ない。

 

 

「本人が大破壊の際にああなってしまったから、他に思い当たるのは僕しかいなかったってところ?」

「・・・そもそも、ベルカの技術で何とかなるのであればディアルムドは彼女を連れて出奔することはなかった」

「まぁ、ね・・・

 

 

答えの歯切れが悪くなる。

夜天の魔道書は元々、フォルテが製造し、かの聖王陛下に献上した“ベルカ七宝”の一つ。

トラブルシューティングを用意していないとも思えないが、魔導を究めるものとしては秘密主義の観点からあえて渡していなかったことも考えられる。むしろ、何かあった際には諦めさせるか、聖王にしかトラブルシューティングを教えていなかったのかもしれない。

大破壊以前から生きているスレインは、聖王にも直接面会したことがある。確かに彼であれば、秘密厳守の約を一度交わせば、それがベルカの滅亡に関わるものでもない限り他に漏らすことはないだろう。

 

フォルテの持つ当たり前の秘密主義と、聖王の契約遵守の精神を併せて考えれば今のベルカに夜天の魔道書を修復するだけの技術力はないと言い切ることもできる。

 

 

「期待させても悪いから先に言っておくけれど、僕に修正パッチができるかは解らない」

「製作に必要なものがあれば、できる限り俺の方でも準備する」

 

 

(恭也・・・・・・)

 

 

強い意思の光をこれまでかと灯す同志に、スレインは今までにないほどの危惧を覚える。

廃墟となった市庁舎で、モニカに語った危惧が現実ものとなりつつあるのではないか、と。

口数が多くなったわけではないし、表情も常と大して変わらないが、気配がいつもとは違う。まるで我がことのように話している。

 

スレイン自身はディアルムドと直接会って依頼を受けるのに無理はあるが、それでも恭也がここまでする謂れはないはずだ。人よりも情に篤いにしても、おかしいのだ。

 

 

「一線は、守れるかい、恭也?」

「どういう意味だ?」

 

 

言うべきか迷いながら、自分達と同じように卓を囲むモニカ、ミシェール、シモーヌの三人の妻達を順番に見てから、言うことに決めた。

 

 

「ディアルムドは、君じゃない。それを十分に理解しているのか?」

「・・・・・・何が言いたい」

 

 

間が空いた。口調も声音も、流石は恭也だけあって動揺の色など微塵もない。

だからこそ、恭也を知るスレインは動揺を窺い知ることができた。

 

 

「僕も、君から聞いた限りではあるが、ディアルムドとクロエ=ガンドアールヴの想いは重々承知しているつもりだ。どのような時代、世界においてもそれが人である限り、愛とはそういうものだと思っている。だが、それは二人の感情であって君ものではないだろう、恭也。見方にもよるだろうけど、今の君のやりようは度を越している」

 

 

自覚はあるはずだ、とスレインは予想している。

そこまで恭也は幼稚ではない。己の中にある感情が何かを見極めることができている。

だから、多分、自分がこうして言っていることもある意味では無駄なのだ。

 

 

「俺は・・・・・・あの二人に、幸せになってもらいたい、添い遂げてもらいたい。それだけだ・・・ただ、それだけですら許さない原因を取り除きたい。スレイン、俺達三人がお前に次元牢からサルベージされたあの日に結成したゲートキーパーズ本来の目的はそうだったはずだ」

 

 

大義は、道を誤り起こしてしまった大破壊の再来を未然に防ぐこと。

小義は、古代魔法文明が齎す恩恵の影で苦しむ人々を少しでも救うこと。

それは、提唱者であるスレイン自身がよく知っている。

そのためにこれまで長きに渡って戦い続けてきた。これからも変わらない。

 

 

「恭也、僕の言いたいことはもう解っているはずだ。初めに言ったように、僕が修正パッチを作れるかは解らない。もし、僕でも製作できないとなればおそらく他の誰にもできない。つまり、クロエ=ガンドアールヴは夜天の魔道書が抱えてしまったバグによって、これまでの所有者と同じように―――死ぬ」

 

 

古代魔法文明の魔法科学の全容が解明できていない現在において、覆すことができない既定事項。

大破壊以前から生きている人物は他にも居るが、魔法科学の研究者と言えばもうスレインしかいない。

 

 

「それを、救うために全力を尽くすのが俺達ではなかったのか?」

「そうだよ」

 

 

即答に近い早さでスレインは答えた。

余人ならこみ上げる衝動を抑えるために、きつく拳を握りしめるところだが恭也はそれもしない。

だから言わなければいけない。同意したのは恭也だが、自分には恭也をゲートキーパーズへ誘った責任がある。

 

 

「恭也、僕らは人類が持ち得る魔法科学の規格外―――SSSランクに到達している。僕のように次元世界が全て消滅しない限り殺せない存在も居れば、ダグラスのようにあらゆる魔法を模倣することが可能な存在も居る。だけどね、恭也。僕らは、おとぎ話に出てくるような神様じゃないんだ。できることと、できないことはそこに厳然として横たわっていて、努力で埋まらないものもある。そこを、僕らは普段から絶大な力を持っているから、勘違いしてしまい易い」

 

 

モニカには零してしまったが、本当は誰にも言うつもりはなかった。きっと、ゲートキーパーズの同志は皆同じ想いを抱いていると察していた。言わずとも解っていること。それを言わなければならない苦しさは、同志にしか解らない。

 

恭也は俯く。覗き込んでも苦悶や苦悩などは表していないだろうけれど、内心の葛藤は計り知れない。

とても人間的で、何とも羨ましい。それに関係なく、はっきりさせなくてはならない。

 

 

「恭也――――君が琥冴哭綺のことと重ね合わせているなら、手を引くんだ。碌な結果にはならない」

「――――ッ!!?」

 

 

上げられた恭也の顔には、初めて驚きが張り付いていた。

反論の言葉が発せられるはずの唇はわなわなと心の動きを表すように揺れる。

 

 

「お姉様のことは、関係ありません!恭也様は―――」

「お黙りなさい、明星」

 

 

パァン、と乾いた音が響く。

恭也の許しも得ずに実体化した[FALKEN]の管制人格である明星を、木蘭色のセミロングを揺らす[ADLLER]の管制人格である胡蝶が平手で頬を打った。

 

 

「胡蝶・・・」

 

 

最近では滅多に実体化しない胡蝶の出現に、恭也も別の意味で驚く。

それはスレイン達も同じで、付き合いが四十年近くになる今日まで片手の指で足りるほどしか会ったことがない。

 

 

「申し訳ございません、ヘル恭也。妹の戯言にございますので、どうかお聞き流しをお願い致します」

「お、お姉様――――ッ」

 

 

優雅な一礼から一転、まだ言葉を継ごうとした明星に再度平手が飛ぶ。

あまりの鋭さに避けることも適わず、また頬を張られる。

 

 

「身の程を弁えなさい」

「・・・はい」

 

有無を言わさず、視線は射竦めるように細められる。

短く返事をした明星は一礼してから、実体化を解除する。

 

「すまない、胡蝶」

「お気になさらず」

 

言って、自らの役割を果たした胡蝶も実体化を解除して、通常の管制人格へ戻った。

 

 

会話の流れが一時的に途絶えるが、スレインはもう話を続けるつもりはあまりなかった。

恭也の回答を待っているということもある。だが、明星と胡蝶の出現だけで答えはある程度解ってもいた。

 

 

「明星はああ言ってくれたが、多分、いやきっと、俺は琥冴哭綺のことを今も引き摺ってる」

 

 

浮かぶのは苦笑い。誤魔化しきれない苦しみ。

 

 

「俺という奴は、いつも肝心なものを護り通すことができない。どうしてかと自問自答を繰り返し、答えらしきものを見つけては間違っていて、を繰り返す」

 

 

高町の家に引き取られたばかりの頃だろう美由希と、まだ生まれてさえいないなのは。

結局、二人の妹を、親の不在という寂しさや辛さから護ってやることはできなかった。

 

幾多の戦場を戦い抜き、人の愚かさに慣れているはずの相棒ラリー=フォルクが、それでもなお絶望するしかなかった戦争で、発狂しかねないほどのジレンマを抱えたことに気付けず、殺し合うことになった。

 

そして、半身であるはずのデバイスの管制人格である琥冴哭綺。

彼女は数千年に渡って主である自分の手に戻ることを望みながら、果たされることはなく凌辱の果てに倒れた。最後に会えたことを感謝しながら、彼女らしい口調で「遅い」と詰った。

 

自覚はある。琥冴哭綺が復元不可能なデータ破壊を加えられ、消えていく過程を寸分違わず思い出すことができる。

琥冴哭綺を救うことできなかった。間に合わなかった。それが高町恭也―――不破恭也の、人として欠いてはならない心の“何か”を決壊させる、トドメになったのだ。

 

 

 

未来を変えることが可能であればと挑んだ、琴絵の結婚式を舞台にした御神・不破両家の滅亡。

爆弾の設置そのものを防ぐか、爆弾を解除するか、全員を避難させるか。いずれにしても救えればそれで良かった。けれども、それは果たされなかった。用意していたアバターが、管理局に捕捉され、倒されてしまっていた。

 

結局、工面したアバターが現地に到着した時には、爆弾が起爆し、一族は死に絶えていた。

タイムパラドックスを考慮することさえなく、終わった。

 

 

「届かぬ、及ばぬ、間に合わない。そんなことばかりだ、俺の人生は。だから、自分だけが不幸だと世界に対して甘えを吐くつもりはない・・・それはもう、通り過ぎた。だが、だからこそ、俺は懸命に、誠実に自分の大事なものを護り通そうとするディアルムドの助けとなりたい」

「叶わなかった、そして今も叶わない自分の願望を、彼に仮託して・・・かい?」

「ああ。言われるまでもなく、そうだ」

 

 

言い切った恭也に、スレインは何とも言えない顔をするしかなかった。

危惧した通りになっていく。止めることはできないし、そんな権利もなく、何より止めることは恭也に死ねというに等しい。

 

陳腐だが、天を仰ぐしかない。恨めしいほどの晴天で、雲がかかることもない。

 

 

「人が死ぬのを天命という・・・だが、その前に人事を尽くすことは必要だね」

 

 

スレインの言葉に、三人の妻達がハッとなって揃って顔を見やる。

零したモニカ以外の、ミシェールもシモーヌも、聞かずともスレインの内心は理解していた。ここで協力してしまえば、より恭也の傷口を広げるだけかもしれない。

 

 

「すまない、スレイン」

 

 

恭也も、解っていても止まれない。

 

 

「いいよ・・・天に唾を吐いて、痛い思いを繰り返して、それでも諦めない大バカ者。それが僕らゲートキーパーズだよ」

 

 

後日、ヨートゥン事件と呼ばれる大事件が発生し、隠蔽工作が行われる中、それでもスレインはこの日の選択を後悔することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恭兄ぃ・・・・」

 

 

名前を呼ばれて、頭を撫でててやっていた手が止まる。

 

 

「むにゃむにゃ――――」

「・・・まったく、器用な奴だ」

 

 

漫画みたいなお約束をしてくれる妹に苦笑が零れる。

守護騎士達の居ない昼下がり。病院で貰った薬を飲んだはやては、昼寝をしていた。

闇の書のページが埋まるにつれて、進む病状の悪化によって夜眠れなくこともある。代わりに鎮静剤を飲ませて、昼こっそりと寝るようにさせている。

 

 

「俺も大概、悪どい兄だな・・・」

 

 

全部承知していて、策のために利用する。

こうして側に居て、寝入ったのまで確認している。

 

 

「明星」

 

 

はやての部屋を出ると、恭也―――八神恭也は、オリジナルと同じバリアジャケットに身を包む。

闇の書も本体は守護騎士達と共に蒐集中であり、誰に憚ることもない。

 

 

「準備はできました?」

 

 

八神家のリビングには、客人が三人。勿論、はやてには内緒で。

旧知の仲である恭也は、クローズドヘルムを被った頭を上下させて応える。

 

 

象牙色のロングヘアと、清楚な容貌をした少女―――ミシェール=リードブルグ=ウィルダーは、いつも着用しているお似合いのスカートドレスではなく、袖口が広い和服のような上衣とノースリーブの衣を腰元の帯で留めたバリアジャケット姿。

 

象牙色のロングヘアと、成熟した大人の色気を持つ女性―――シモーヌ=リードブルグ=ウィルダーも普段着ではなく、右の足の付け根まで大胆に露出させるスリットの入った紅いマーメイドドレスのバリアジャケット姿。

 

 

 

「スレインには、幾ら礼を言っても足りないな・・・」

「あの人は、礼を言われても素直に受けれ入れる人ではないわ」

「そうだったな・・・」

 

 

シモーヌに言われて、恭也は屈折した同志の顔を思い浮かべる。

 

 

「エリザもこちらに来て早々だが、頼む」

 

 

恭也はシモーヌとミシェールの反対側のソファに座る女性にも、言葉をかける。

 

伸ばせば床につきそうな蒲公英色の金髪と、生まれながらにしての貴族然とした容姿の女性―――エリザヴェード=ドロワーテ=フォン=エッシェンシュタイン。

先の二人がメンバーのパートナーであるのと異なり、次元世界最高峰に位置する戦闘能力を有する十人にも満たないゲートキーパーズのメンバー。

 

 

「なに、可愛い姪っ子の頼みでもあるからな・・・無碍にはせん」

「それは重畳」

 

 

エリザも既に、白銀の鎧を基にしたバリアジャケットを纏い戦闘態勢に入っている。

元々が凄まじい美女であるため、ソファに座り、足を組んで無意識にシナをつくるだけで背筋がぞくりとなる。

 

 

「シモーヌ、頼む」

「座標は特定しているので、すぐに行きますよ」

 

 

手に持っているワンド型のデバイスのコアが輝きを僅かに変える。

同時にリビングの床一面に通常とは異なる絵画のような魔法陣が描かれ、魔力が充満する。

 

 

(まだだ・・・後一週間はどうしても必要だ・・・)

 

 

時間が要る。この体はそれまで保てば良い。

断続的に襲う頭痛と、足元の覚束なさは深刻さを増しているが、理由にはならない。

八神家での十年を、無駄にしてはならない。

 

 

はやての眠る寝室へ目線を向ける。

今更、言葉にするまでもない。自分の命では安過ぎるだろうが、引き換えにしてでも護るべき価値が確かにある。“肝心なものを護り通せない”という、致命的な業を背負う自分がどこまでできるか解らないが、泣きごとは言っていられない。

 

 

転移魔法が発動し、四人は音もなくリビングから消えた。

 

 

 

「恭兄ぃ・・・」

 

 

 

人気の絶えた八神家に、再び、はやての寝言だけが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

将棋においては、詰将棋。

チェスにおいては、プロブレム。

 

駒が配置された局面から、相手の王将(キング)をどの位置に動かしても次の攻め手によって取られてしまう“詰み”となる状況へ持ち込むことを目的としたもの。不思議なもので、文明と呼ぶものが発生した次元世界にはルールこそ異なるものの、同じような盤上の競技があり、詰将棋やプロブレムのような特定の局面を制するものがある。

 

 

 

故に、“詰み”というものは競技内容の違いこそあれども、次元世界共通の事柄になる。

 

 

 

[Mk−9999]を弾頭とするドレットノートの【ロケットダイヴァー】の出力に負けて、押し潰されそうなヴィータ。

テラとBBの足止めに成功したが、シグナムとヴィータのフォローに駆けつけるまでは間に合わないアストラ。

シャマルとザフィーラを抱えているため両手の自由が利かず、仮に利いてもディアルムドの斬撃ではデバイスごと両断されるしかないシグナム。

 

 

これこそ、詰み。

ヴィータとシグナムはこの一手で死に、一人残ったアストラは潰され、死に体のシャマルとザフィーラはトドメをさされて終わる。

 

 

 

 

万国共通の詰みを無効化する方法。

 

 

 

 

(………)

 

 

 

 

ディアルムドは、一太刀で守護騎士を殺せるこの間際になっても思考の半分を傾けていた。

 

水面。静謐で変化のない世界に、水滴が落ちた。

広がる波紋と、水面の揺らぎ。

 

合図は転移から間髪いれずに抜けだした影。

 

 

 

 

バチイィィィーーーン!!!

 

 

 

 

[グラーフアイゼン]が力負けし、【ロケットダイヴァー】に押し潰されるヴィータを白銀の鎧を纏ったエリザが左腕で支える。空いた右手のガンブレード[グリーヴァ]が、軽い一振りで【Mk−9999】を消し飛ばす。

 

刃に施された実用性が疑われるほど精緻な獅子の意匠が、破壊力を百獣の王とされる獅子の咆哮に準える。

 

 

獣の王のように力で攻撃を捻じ伏せる様を僅かな間だが、テラもBBも網膜に焼き付けさせられた。

埋めようとしても埋まらぬ歴然とした差に歯噛みする暇もなく、

 

 

 

 

―――【孤刀絶界】

 

 

 

 

「がぁっ―――!!?」

「ぬぅっ―――!!?」

 

 

 

神速の抜き打ちによる超音速の衝撃波が周囲一帯諸共、二人を戦闘区域外へ弾き出した。

直撃ではない。防御する間もなく、バリアジャケットはずたずたに千切れ、遥か彼方の泥濘に叩きつけられる。石による水切りの如く、何度も跳ねてから停止する。

 

 

(な、何をされた―――っ!?)

 

 

認識よりも先にダメージ。意識を保てているのはこれまでの修羅場のおかげだが、BBはあってはならない方向に捻じれている自分の手足を呆然と見る。

 

 

「しばらく、眠っていて下さい」

 

 

とん、と腹の上に何かが置かれた。

ミシェールが太刀型デバイス[FUGA]の鞘尻を、乗せていた。

象牙色のロングヘアと、袖口を揺らしながらミシェールの害意の籠らない言葉が落とされる。

 

直後、雨に濡れた砂漠の泥濘がBBを中心に陥没し、鞘尻を乗せられていた腹部―――内臓が圧力に悲鳴を上げる。

 

 

「―――――っぁ!?

 

 

声にならない悲鳴。内臓を潰れないようにしながら痛みで意識を打ち切る。

 

 

 

 

 

 

 

そして、同時進行で現出する。

水面に垂れた最後の雫。

 

 

驟雨を透き通る筋。

あまりに美事なまでに整った線に、吸い込まれるようにして交点が直角になるよう剣を合わせる。

予定調和。違和感など微塵もなく、吸い付いた線と線。

 

鍔競合う剣と刀。表現することが莫迦らしくなるほどの轟音。

魔力同士の干渉だけで人を殺せそうなほど凶悪な剣戟を、両者一歩も引かず、相手を退かそうと押し込む。

 

 

反転。

 

 

弐、参、肆―――。

 

連続する線を連続する線がまた直角に合わせる。幾何数学の図を描くように、どこまで精緻な線は、けれども剣と刀が織成す死を強制する、禍々しい災い。

如何に美しくとも、忌避するべきものでありながら、その完成度故に、眼を惹き、心を奪い、瞬きさえ忘れさせる。

 

見入ってしまう。魅入られてしまう。一度でも、剣を―――否、剣に限らずとも槍でも、斧でも、それが徒手空拳であっても、戦士、騎士、武士、武人、それらに類するものが憧れて止まない境地に至った、到達者。例えるならば人類未踏の地、生物を絶対的に拒まんとする地に到達した者を、何の忌憚もなく讃えることと同じだった。

 

何を以ってして分けるにしても、敵も味方も、見ている者達は動きを止めてしまう。

動けば、言葉を発せば、この境地を汚すことになるとでも言わんとするように。

 

 

軽く五十回は越える交接の末に、退いたのは“黒騎士”のディアルムド。

意識せずとも計算し尽くされた退き際は追撃への殲滅を対とした罠でもある。発射待機となっている藤黄の短槍は、絶対的な間合いの優位をそれほどまでに確立せしめる。

 

 

ディアルムドは息を一つも乱さず、自分の眼前に、守護騎士に一太刀を浴びせる間際に現出した地獄の番犬をどことなく安堵したような表情で見つめる。

 

 

「来ると、必ずこのタイミングで現れると思っていた」

 

 

黒騎士に相対するのは黒い剣士。

光刃ではなく実体の刃の小太刀を二本携え、クローズドヘルムによって頭部を完全に覆った姿。

あまりに特徴的。しかし、出現だけで場を支配するほどの黒騎士に引けをとらない存在感が確かにある。

 

 

ゲートキーパーズが一人―――“ガルム(八神 恭也)”。

 

 

ディアルムドが最も警戒する存在。立ち塞がり、己を止めることが可能な相手となればこの男をおいて他にはいないだろう。絢雪御雫祇の存在を忘れたわけではないが、彼女は少し違う。この戦いの宿業を全て知り尽くした上でなお立ち塞がり、断ち切る側にまわったガルムだからこそ狂ってしまった己を止めることができると、奇妙なことに信じていた。

 

 

だが、明言しておかなければならない。

ディアルムドは止めて欲しいわけではない。無意識に望んでいるわけではない。

糞真面目なほどに実直であるがゆえに、そうであるガルムさえも乗り越えるべき障害―――儀式として果たすつもりなのだ。

 

そして、もっと奇妙であるのは、ガルムはそれらを全て承知の上で立ち塞がっていた。

 

 

男同士の暗黙の了解。

 

 

本来であれば一瞬で全員を葬りさることのできたディアルムドが詰将棋などという回りくどいことをした理由が、ここにあった。

 

 

 

「シグナム、シャマルとザフィーラを連れて、早く退け」

「・・・・・・」

 

 

背後のシグナムは誰何をせず、ずり落ちそうな二人を抱え直す。

疑問が多過ぎる。そして、疑問を解消すべきは今ではないとも解っている。

 

 

「シグナム」

「・・・ああ」

 

 

エリザから離れたヴィータと、追撃を払ったアストラが合流する。

アストラは魔力の放出による疲労はあるが、ヴィータの方は深刻だ。エリザによって防がれたとは言え、【ロケットダイヴァー】によって、[グラーフアイゼン]は損傷し、受け止めていた手も小刻みになってはいるが、痙攣が止まっていない。

 

これ以上の戦闘は無理だ。そして、一人でも圧倒的な実力差の相手が何人も現れた今、抵抗は無意味に過ぎる。力の差に屈することは研鑽を積み上げてきた己の力に対する屈辱。だが、アストラが言ったように自分達が行っているのは力比べではない。

 

 

 

「退くぞ」

 

 

 

迷いを振り切ったシグナムに率いられ、守護騎士は追撃を受けることなく転移する。

最期に転移したアストラの視線だけが少し気配が違ったことを背中に感じたガルムは、全員の転移を確認後に、待機していたシモーヌに追跡を攪乱するよう念話で頼んだ。

 

まだ、八神家が闇の書の保有者であることを知られるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな!!奴は死んだはずだ!!」

 

 

有り得ない。クロノは半年前に叩きのめされた強敵の再登場に、叫ばずにいられなかった。

『時の庭園』での戦いの後、なのはの世界で死体も発見された。

 

 

「エイミィ!」

「残念だけど、本人っていうのがデータベースの回答だよ」

「っく!?」

 

 

遅滞なく確認されていた事実に、歯噛みするしかない。

さっきアルフに発してしまった本音によってじりじりと焦げるようだった胸の支えが、一気に苦しくなる。信じる道に立ち塞がる壁。その再出現に動揺を抑えることができない。

 

 

(“ガルム”という名前は、私の“ハイメロート”と同じだ)

 

 

リンディは、自分の義兄であるミヒャエル=ハイメロートが病院のベットで語ったことを思い出す。

ガルムという名前は、誰かが襲名していく管理局への反抗を行う者が代々受け継ぐ称号。

 

 

(クローンかどうかは分からんが、デバイスも技術も継承したほぼ同一のガルムだ)

 

 

推定魔導士ランクはSSS。

『時の庭園』でなのは、クロノ、ユーノの三人を瞬殺した時をも凌駕する。今回は格下と戦うわけではないので、最初から全力ということなのだろう。

 

 

状況は混沌としてきている。

守護騎士と彼女達の身柄を確保し、闇の書を制圧することを目的とした自分達管理局という単純な図式が大幅な転換を余儀なくされている。現に、戦場からはアースラの戦闘要員は御雫祇一人と倒れたままのグラーバクだけだ。守護騎士は撤退してしまった。

 

戦場には共に管理局と敵対するガルム一党と、テロ組織であるバーテックスだけになった。

 

戦術的には完全敗北だが、戦略的にはそうでもない。

闇の書を巡る戦い。しかし、それだけにしてはあまりに周囲の動きがおかしすぎる。おそらく隠された何かが存在することをリンディだけではなく、感じ取っていたはずだ。それをグレアムは十一年前の事件に端を発していると言っていた。

 

 

ならば、戦わずともここで事件の真相を掴む方が先決。

リンディはそう判断した。自分に言い聞かせるようにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディアルムドの瞳は、過日の出会いと色を変えていない。

変わることも期待していなかった。

 

 

「まだ、ページは埋まっていない。その段階での登場は、何の意図を以ってのことだ?」

 

 

ガルムは、納刀して話し始める。指先は緩やかに鞘を撫でる。

抜き打ちが可能とも思えない体勢でありながら、しかし一度動けば雷神の如き居合斬りが迸る。

 

 

「小手調べ、というところか。グラーバクも蠢動している。動きを起こせばリアクションもあるだろう」

「手回しの良いことだ・・・ならば、退くのか?」

「ここで先に一戦交えておくのもまた一興かとも思ったが、やめておこう」

 

 

ディアルムドが、視線を切る。相手の動きを読めなくする危険な行為だが、それでどうにかなるほど易くはない。その視線が向かう先は地上。こちらも剣と拳の交錯が止んだ、ユアンと御雫祇が上空の二人を見ていた。ディアルムドは、御雫祇を見ていた。

 

 

「私とお前が戦うにはまだ舞台が整っていない。だが、彼女は違うようだな」

「ああ・・・長く生きれば、それなりのしがらみを背負う。良くも悪くな」

 

 

かなりの距離が開いているにも関わらず、まるで真後ろから浴びせかけられるかのような視線。

殺気であれば最早気にすることもないが、性質が違う。殺気も交えながら、喜怒哀楽がごちゃ混ぜになり感情の正体を分からなくする。ただただ、強烈。どこか赤子の癇癪じみた印象がある。

御雫祇のその感情が何か。ガルム―――恭也は知っている。知っているが、知らないふりをする。

 

 

「しがらみとは、よく言ったものだ・・・」

 

 

幾ら自分が自由だと思っていても、人間という存在は思いの外そういったものに縛られている。

遥か高みに位置するはずのディルムドや、ガルムでさえ例外ではなく、むしろその力故に。

 

藤黄の槍に、紫電が纏わりつく。電気実験のように肉眼で確認できるほどの電気量。

フェイトが持つ“電気の魔力変換資質”と同じスキル。但し、出力は桁違い。

バリアジャケットなど問題にすることさえなく、黒焦げ―――どころか塵芥にしてしまうであろう。

 

 

「不思議なものだ。私は、聖王陛下への誓いも、自身で課した誓約もしがらみなどと思ったことは一度もないにも関わらず・・・人から見れば、それはしがらみに見えるのだな」

「人の評価を気にするようになったのか?」

「言葉を借りれば、良くも悪くもだな。結局人は、そうとしか捉えきれず、己の知ることでしか判断や行動を行えない。そして、更に勝手な人の評価が己を縛るしがらみとなる」

 

 

煩わしさを口にしながらもディルムドは、どことなく本当は煩わしく思っていないかのように見えた。

 

 

「だが、俺は全てを背負い切れなかった。お前はどうだ?」

 

 

返事を期待されてはいなかった。

ディアルムドは雷撃を無作為に放出した。

網膜を物理的に焼かれそうな閃光に、観測機器が狂わされ、その場の全員の視界が奪われる。ガルムのクローズドヘルムには光量の調節機能があるものの、あまり役に立たない。

 

見えずとも動いたことは分かる。ディアルムドとユアンは転移魔法で去った。わざわざ確認することもない。閃光を避けるために閉じた瞳の奥、脳の思考だけが巡る。

 

全てを背負いきれないことは、残念ながらディアルムドよりも早い時期に気付いている。ベルカ戦争で―――あの円卓で戦っていた頃の自分と、5000年の時を経た自分は間違いなく別物だ。自分のようになりたいと憧れてくれた初代の絢雪御雫祇、ラーズが生きていればいの一番に自分を倒しに来るだろう。

いや、ラーズのその想いは受け継がれている。5000年以上の間も受け継がれてきた、次元世界の守護者である“絢雪御雫祇”。その名前こそが、如実に表している。

 

赤子の癇癪じみた視線に対して、ガルムは初めて発生源へ視線を向ける。

記憶にあるメルセデス=ブロムクイストより、かなり成長していた。当時の彼女はまだティーンエイジャーであり、大人の女性となった今と変わっているのは当然だった。そして、彼女は死ぬまで今の容姿から変わることはない。

自分の顔に頓着することはないが、他人の顔の美醜ぐらいは分かる。彼女はとても美しく成長した。記憶に残る、琴絵そのままに。ヘルムを通して、視線が絡む。だが、すぐにその絡みを断ち切った。

 

 

「ガルム」

「ああ、俺達も長居するわけにいかない」

 

 

ヴォルケンリッターの救出と、自分達の存在を示威することは達した。

 

 

 

 

 

転移する四人を、御雫祇は黙して見送る。

ユアンとの戦いで握っていた小太刀は鞘に納めている。

 

 

〔挑まなくて良かったのか?〕

 

 

[斬鉄椒林正宗]から合成音で作られた声が発せられる。

 

 

「・・・私は・・・“絢雪御雫祇”なんですっ!!」

 

 

常では有り得ない苛立ちに尖った叫び。

ガルム達も去った泥濘砂漠のこの世界に、誰も聞き耳をたてる者は居ない。

 

 

〔ガルムの行いは、“絢雪御雫祇”として立ち塞がるものではないと?〕

「・・・っ!?」

 

 

[斬鉄椒林正宗]の声は止まない。機械的で、追い詰めるような壮年男性の声は御雫祇の呼吸を止める。

 

ガルムは管理局にとって特S級犯罪者として重要指名手配を受けている。

それに値するだけのことをしてきている。50年前に活動を開始してから、ガルムが殺した人の数は四桁に達している。その中には、先代の絢雪御雫祇も居る。

 

 

「今の私では、立ち塞がるわけにはいきません・・・私はきっと、“絢雪御雫祇”からただの女であるメルセデス=ブロムクイストに戻ってしまいます」

〔それを許容できんのは、自身の都合だろう。結果が全てと言うのは相応しくないが、使命感と個人の感情に揺れるのであれば、個人の感情を優先するべきだろう〕

「私にその決断は・・・・・・」

 

 

できないのだろう。

[斬鉄椒林正宗]の管制人格である『九郎』は、あえて言わなかった。言って心が折れるわけではない。本人が一番分かっていることを言うほど野暮ではない。

 

 

“次元世界の守護者”である絢雪御雫祇の名前は重いのだ。それは他ならない、その名を継ぐ当代こそが一番に感じる。周囲の期待ではなく、連綿と受け継がれてきた想いの重責があるからこそ重い。

“絢雪御雫祇”誕生の契機となった人物であるガルムによって、父である先代の絢雪御雫祇を殺されたことは、強烈なトラウマと二律背反を植えつけていた。

 

 

〔私からとやかく言うつもりはないが、いつかは決断しなければずるずると同じことを続けるだけで、何も変わりはしないぞ〕

「・・・・・・いつか、その時が来ます」

〔だと良いがな〕

 

 

漏れたぼやきで、臍を噛むほど悔しい思いをしていることなどお見通し。

何だかんだと言って、弟子となっているフェイトと同じで不器用なのだ。自分の想い一つ、真直ぐに表現できない。捻くれ者とは違うので、叱り飛ばしても変わり映えしないのが面倒だ。

 

九郎は黙ることにした。500年前に誕生してからの役割を変えるつもりは毛頭ない。

絢雪御雫祇を名乗る技量の真贋を見極めることこそが役割であって、そこに絢雪御雫祇たる精神性の判別までは含まれていない。好き嫌いで相手を選ぶことがあっても、それだけは変わらない。メルセデス―――当代の絢雪御雫祇がその力をどう使い、何を敵と見定めるのか口を差し挟むことはあっても、否定しない。

 

 

それが例え、惚れて、狂うほど愛おしい憧れの男と、存分に愛し合い殺し合いたいと願う女の業と、次元世界の敵たることを容認している流派の始祖たる人物を処断するのが正しい使命の、他者に理解し難い鬩ぎ合いであっても、否定しない。

 

そして、どちらを選んでも構わず、デバイスとして使われ続けるだけだ。

最初に、当代絢雪御雫祇と成る際に既に伝えていたのだから。

 

 

“絢雪御雫祇の名を背負って以降の決断は、全て己で全うするように”

 

 

剣士たる者の、剣を振るい、相手を斬るということの最低限の覚悟と同じであるが故に。

 

 


あとがき

 

 

恭也出陣。直接的な介入が良い結果を招くかは別にして、ですが。

八神恭也の頭の中にあるのは、徹頭徹尾“はやてが生きて、八神家として生活できること”に終始しています。それらを念頭において読んでいただければまた違うのかな、と。

 

ただ、八神家がどうしても中心になるせいで、フェイトとなのはの出番が減っているのは問題かと思い、色々と書いた部分の手直しを行っています。何せ、このアールズ16では出番ありませんし。猛省しております。

 

 

気付けば連載から二年近く。

PSPでのエースコンバットの新作・・・世界観一新どころか、現実の舞台設定って・・・。それをやるなら、別に他の同系統でもいいんですけど。単純にこのジャンルをやりたいのではなくて、“熱い”展開のある空戦ものをやりたいんですよー。

しかし、最新プラットフォームだと開発費を回収できないのかなー?利益率が悪いのは分かるんだけど。

アーマードコア5も今年発売とのことで、実に楽しみです。

 

ちなみに、これらの設定は拾いません。ただでさえオリジナル設定が増え過ぎてどうかなーって思ってますので。

 

 

 

それでは、次回・・・おそらく、アールズではなくリリカルコンバット2でお会いしましょう。




恭也が遂に動いたか。
美姫 「ガルムとしての存在を表に出した事によって、アースラ陣営はどうするかしらね」
まあ、どうするも闇の書に関して動くという点は変えようがないだろうけれどな。
美姫 「管理局側としての動きはどうなるかしらね」
かなり佳境が近付いてきている予感はするが、まだ先の展開が読めない。
ワクワクしつつ次回を待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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