不破士郎にとって、不破美影は畏怖の象徴である。
母と子である以前に不破宗家の嫡男に生まれた士郎は美影のことをそう思っていた。
それは結果として宗家を継ぐのが士郎ではなく、弟の一臣であることに表れていた。物心ついた時から教え込まれた永全不動八門一派御神真刀流。特に使う小太刀二刀術の一族。その長たる者に相応しくないと、断じられていた。
だからという訳でもないが、士郎は家でじっとしていなかった。武者修行と称しては日本のみならず世界各地を渡り歩き、剣の腕を磨いた。
家が嫌いだったかと聞かれれば、首を捻りつつ嫌いだったと答える。士郎にとっては実家とはそういうものだった。強いて言えば、血に塗れた一族の宿業に息が詰まりそうだった。
そんな象徴である美影と会いたくないと思っても不思議ではない。今のように、本人を目前にすれば軽口の一つでも叩くのが精一杯だった。
―――何だよ、クソババア
口にした途端―――口にすることが分かっていたとしか思えない速度で額へデコピンを受けて、強制的に沈黙させられたのは愛嬌の範疇ではないと士郎は思う。
怖くて本人に聞いたことはないが五十路に達しているはずの美影は、妹の美沙斗と並ぶと年子の姉妹にしか見えない脅威の若造り――――を超えた若さを保持している。一臣辺りはオツムが弱いので、“氣功の力”と言われて本気で信じているが、そんなわけない。
「用件を聞きたいのか?」
「あ?――っていうか、呼び出したのそっちだろう」
「はっ………威勢だけは良いじゃないか、莫迦息子」
芸術的なまでに整った鼻先笑いに、聞き流そうとしていた士郎はこめかみをひくつかせる。
「聞きたくなければ聞いてもらうつもりもないが………話は単純なことだ。恭也に不破を継がせることになった、それだけだ」
「………耄碌して、なにほざいてんだよ。何で、恭也が不破を継ぐんだよ。一臣が継ぐなら別に良いだろうが」
「おやおや、継ぐのを蹴った莫迦息子が随分と言うじゃないか。弟は良くても、息子は駄目なのか?」
「話をすり替えんなよ。俺は恭也が継ぐ理由を聞いてんだ。ああ、先に言っておくが聞いたからって納得すると思うなよ」
この会話は何だ。罵り合いスレスレの剣呑さに、冷静な部分が疑問を呈する。
美影はこんな脈絡のない展開で話すことは無い。理屈っぽいわけではないが、一族を束ねる者として筋を通すことを重視している。だからこそ、その役目を拒否した士郎を嫡子から外した。
腹積もりがまるで読めない。これは真剣の立会と同じだ。しかし、既に読み合いで劣勢に立たされた士郎は自分から挽回することができない。もどかしさに、思わず拳を握る。
「ふんっ………悪くない選択だが、それで済まされると思ってるわけでもないな?」
「ちっ――!」
解かり切っている答え。
不破士郎は不破美影に勝てない。最初から徹底して殺害を目的とした準備を整えていれば話は別だが、そうでもなければ士郎は美影よりも技量は下だった。本家筋である御神の次期当主―――天才の名を欲しいままにする静馬ですら美影には及ばない。加齢による身体能力の低下、性差による身体能力の違い、それらを加味しても、美影は剣士としてのステージが一つ違う。
話をぶち壊しにするため殴りかかったとして、返り討ちにあるのは目に見えている。
「お前は、薄い」
「何だよそれ」
「言葉の意味の通りだ。お前は不破の宿業から逃げ出した負け犬のまま生きていたツケを払う時が来た」
「誰が―――」
「莫迦め、私も誤魔化せんような嘘で自分自身を騙したつもりか?」
「………」
言おうと思えば、どう言うこともできた。しかし、士郎は言葉が出なかった。出せなかった。
否定の言葉を連ねることができたのにしなかったのは、図星であり、そこで更に自分を騙しにかかるほど性根が腐っていなかったから。
「否定はせんよ。私も殺し来た人間の数など一々覚えていない。冷戦を知らんお前達の世代とは時代が違ったこともあるしな。」
卓越した業を持つ御神真刀流の使い手達は、戦乱の世では戦場から日常生活まで貴人を警護することで金銭を得て生活していた。総合武術である御神真刀流はあらゆる局面に対応できる技をかつては有していた。時代が下り、刀槍の自由携帯が公的機関に禁止され、銃が台頭する中で廃れて行くはずだった。
それでも尚、要人警護で生き残れたのはやはり本物だったからだ。御神の家はその性質から表舞台にこそ立たないがその筋では有名な存在として今日まで命脈を保っている。
しかし、分家である不破は事情が異なった。御神と不破は家門を途中で分けたのか、それとも元々別の一族が同じ流派を使う内に一体化していったのか現在では分かっていない。両者が決定的に違うのは、御神が殺人剣を“護る”ことに使い、その想いと技が最高域で噛み合った時に最も強くなるのに対して、不破はより凶悪な殺人剣として戦場から日常までを問わず死に花の血飛沫を咲かす、殺人集団だったこと。
厳重な警備体制が敷かれた家屋敷を強襲し、標的を護るための護衛達を標的が逃亡するよりも先に殺し、標的を血祭に上げる。時代が移っても、後ろ暗い殺人は無くならず、より深い部分で陰惨なものとして行われていた。
美影が全盛期だった頃の不破は、もっと血生臭い家だった。
依頼は東西どちらからも仕事を引き受けた。それ以外でも、代理戦争に事欠かない時代だったからこそあらゆる戦場に出没した。どこからも不要な恨みを買わず、バランスを保って敵を多く作らない。そうでもなければ生き残ることはできなかった。足を洗うには、過去の歴史が血にまみれ過ぎていた。
「それにだ。私はお前が家を嫌う理由も解かる。お前が嫡子を継ぎたくないと思っているだろうから、一臣を選んだ。家が嫌なら、変えれば良かったのにな。まぁ、それは私もしなかったことだから一概に責められんが、それ以降のお前は間違いなく薄っぺらだ」
家を変える。考えることもしなかった。確かに、それも選択の一つだった。
「莫迦言うなよ、こんだけ血に塗れた家を今更変えるなんてできるわけないだろう。できるなら、とっくに誰かがやってる」
「何とも情けない言い訳だが、言った通り私にそれを笑う権利はない。だがな―――変えることはできずとも、辞めることはできたはずだ。そんなに嫌いな家を、その家が教える凶悪極まりない殺人剣を何故今もまだ使い続ける?」
「何故って―――」
不破の剣士である自分が、不可分だから。他に生活の術を知らないから。
違う。それこそ言い訳だ。呑み込む唾を嘔吐しそうになる。血の気が少しずつ引いていく。
「家族の縁を切れとは言わん。しかし、お前には穢れた不破の剣を捨てることもできたのに、文句を垂れつつ使い続けている。幾つになっても自己欺瞞を続けるお前を、薄いと言わずに何と言う。今も後ろ暗い殺人剣を行使する私達を批判すれば、己の負け犬ぶりを誤魔化せるとでも思ったか―――半端者が」
言葉の立会で切り刻まれる。反撃すらできない。反撃できるほど、恥知らずではない。
美影の言う通り、不破の剣を捨てなかった。それにも関わらず、美影達とは違うとどこか優越感を持っていた。ただの殺人集団とは違うと思いたかった。だが、半端者である。
「俺は―――俺は、確かに言う通り半端者だ。否定する材料なんか何一つないし、屁理屈捏ねて恥を晒すつもりもない。だけど、それが恭也と何の関係がある」
「………お前の頭は飾りか?いや、それを言い出すということは本気で考えても解らないということだろうが………恭也は今年で幾つになる?」
「8つだ、と思う」
ある日、妻と思っていた女から渡された子供。歯の生え具合から判断するしかなかったが、およそ間違いはないはずだ。
「あの子は、もう駄目だ」
「………人を殺したからか?」
不破恭也は、先日初めて人を殺した。士郎が引き受けた知り合いの要人警護の最中、標的が誰であるかを見誤った士郎が、現場に駆け付けた時には全てが終わっていた。
犯人の本当の標的は、要人本人ではなく要人の家族。恭也を家に残して要人の護衛についていたが、実行犯は家を襲った。そして、恭也は八つでありながら複数人居た実行犯を一人で全員殺した。いや、正確には一人を生かしておいて、拷問の末に黒幕を吐かせていた。
―――父さん、これで片付くか?
殺人に何の躊躇いも見せていない瞳に、それが良く知る自分の息子とは思えなかった。
「俺が、恭也を連れて来たのは、正直あいつを持て余したからだ。殺人をやってのける恭也とどうやって接していいのか分からない」
「………お前も私ほどとは言わないが、人は殺してきたろう。人殺しだから接することができないことはないだろう?」
「あいつは、初めて人を殺したんだぞ?それも8歳のガキがだ。なのに、あいつは眉一つ動かさず、しかも最後には拷問までやってた………」
殺人集団と化した不破から離れたはずが、息子はその因子を受け継いでいた。
拷問の手際も子供とは思えないほどだった。相手は、もう知らない、何も喋れない、許してくれ、早く殺してくれと懇願し続けていた。生かさず、殺さず、丁寧に激痛だけを与える手管。そんなものを士郎は教えたこともない。
「莫迦め。それが、自分の薄っぺらさのツケを息子に払わせたと言っている。穢れた剣と知りながら、お前は不破の剣を恭也へ教えた。凶がった剣は心も凶げる。そんなことも忘れたのか?」
あまりにも当然の帰結。恭也を引き取った時、既に不破の家を離れていた士郎はほとんど一人で恭也を育てた。時折、不破の家へ戻ることはあったが、それでも多くの時間を士郎と接することになる。
まだ若い士郎が一人で、しかも父性的とは言い難い性質で子供に接すればそこに歪みは生じる。士郎は、物心つく前から恭也へ御神真刀流を不破の流儀で教えた。
「巡り巡って人を助ける意味での“活かす”とされる活人剣は、剣理を解した達人同士でしか成立せん、夢物語だ。どんなに綺麗事を語ろうとも、剣は総じて凶の側に属する。それは、私がお前達に口酸っぱくして言い続けたことだろう。その中でも、不破の理は殺人に先鋭化した危険なものだ。凶と対になるものを常に教え続けない限り、子供では容易く凶がるのは解り切っていた。お前は、それを自分の父親としての責任を棚上げし、思慮もなく、子供の手慰みに教えた」
故に、アレはお前の責任なのだと。
怒りも悲しみも無く、ただ息子の不出来に呆れかえった美影は言った。
「だから俺は―――」
「恥も外聞もなく、私を頼ったと言いたいのだろう。だから、それに対する答えが、恭也に継がせることだと言っているのがまだ解からんのか?」
「俺が聞きたいのはそんな答えじゃねぇ!!あいつを、まともな子供へ戻してやりたいんだよ!!」
あんな子供は間違っている。殺人を殺人とは思わずにやる恭也をこのままにしておけば、本当に殺戮の権化となってしまう。
「あまり子供を侮るなよ、士郎。お前が教え込んだものは“そういうもの”なのだと何故気付かん。子供だから何とかなるなどと甘い考えをいつまで持ち続ける。そんな身勝手な願望を恭也に押し付けることこそ恥と知れ。切り貼りできるようなものか、人の心は?恭也が人殺しを完遂するメンタリティを持ち、人を殺した事実は変わらん。今更、剣を取り上げたところで、ほんの2,3年で大の大人すら素手で殺せるようになる恭也に意味はなかろう。だから、一族という重荷を背負わせ、遅まきながら護るべきものを与えるために、あの子に不破を継がせると言ったのだ」
美影は席を立つ。愕然として、床板に両手をついて俯く士郎とこれ以上話すつもりはなかった。
これから暫くは、不破の屋敷に滞在するように言い置いてから部屋を出る。一族の者に面倒を見させている恭也に会うつもりでいた。
剣の才能。習得の早さという意味では、恭也は才能こそあるが例えば静馬や士郎には及ばない程度だ。
但し、究める意味の才能はおそらく最優だろう。そして、本人が望むかどうかは別として、正統な御神の剣士であるよりも、悪鬼羅刹に堕ちる不破の剣士である方が、剣士として大成する。
「事件の整理をしましょう」
リンディの一言から集められたなのは達は拠点にしているマンションでそれぞれのポジションについた。
家が離れているなのはが最後に到着する。先日の作戦失敗から雰囲気が明るいわけもないとは思っていたが、暗いというよりもギスギスしていた。
「さてと………みんな揃ったわね。それじゃ、早速始めましょう」
いつもと変わらないリンディの語り口調に、なのはは逆に不安を感じる。
場が多少なりとも和むはずが、そうならない。最初の戦いでなのはが受けたようにリンカーコアをやられたフェイト、そのフェイトを案じるアルフ、いつもよりむっつりしているクロノ、どうすることもできずに平常を装っているエイミィ。御雫祇でさえ、リンディの話に意識を傾けていない。
唯一、変わった様子のないセーラだけが茶請けに塩煎餅を齧っていた。とても助けにはなりそうにない。
「私達が追っている敵は“闇の書”―――古代ベルカのロストロギア。これを守護するための防衛ブログラムである守護騎士達は、現在確認しているだけで五体。その全員がAAA+以上の強敵よ」
おさらいするように記録から出したそれぞれの写真を出す。
見慣れた感じもする強敵。戦ったことがあれば語らずとも解かるほどの力を持っている。
「ここからが本題にはなるけれど、まずは新しい情報から整理していきましょう。まずは先日の戦いで、出現したバーテックスの魔導士二人」
「すいません………バーテックスって何ですか?」
「そうね、なのはさんには馴染みが無いわね」
「えっと………私もです」
写真画像に出ている二人―――ディアルムドとユアン。
地球出身のなのはと世間知らずのフェイトはこれまでの話の中で名前を聞いたことはあっても、詳しくは知らない。
「改めて説明しようとすれば難しいけれど………簡単に言えば、テロリスト集団かしらね」
「テロリスト……集団」
「管理局の活動を快く思わない者達が集まっているところと理解してもらえればいいわ。ただ、その数や戦力が尋常ではないぐらいなの。それに、違法な犯罪行為で活動資金を稼いでいる厄介な存在よ」
最大で一千万人とも言われる構成員を抱える犯罪者集団。
管理局の唱える秩序に反して、管理世界であろうと管理外世界であろうと股にかけるアウトロー。およそ犯罪と呼べるものには全て手を染め、一説には次元世界における犯罪の半分は彼らが関わっているとも言われる。
そして、彼らが実態は別としても常に掲げるのが「反管理局」のスローガン。各地で武力衝突を繰り返し、彼らとの戦闘が管理局員の殉職率トップになっている。
「バーテックスは内部に色々なグループを抱えているの。例えば、一際好戦的な武闘派“イミネントストーム”、“ストラグル”。反管理局の原理主義グループ“インディーズ”。バーテックス総帥直属の“ユニオン”。他にも細かい組織は多数あるけれど、この写真の二人が所属しているのはその中でも断トツで凶悪とされる―――“117”と呼ばれるグループらしいの」
以前に長官から呼び出された時の情報がようやく活きることがリンディは厭わしかった。
「彼らが凶悪なのは、実際に目にした通りとしか言えないわ。推定魔導士ランク―――SSSが二人」
「有体に言えば、私が二人居ることになります」
「ぅっ………」
「ぅー………」
御雫祇がばっさり切りこんだせいで、一気に全員の両肩に重しが載せられる。
管理局の生ける伝説級が二人も居る時点で負けフラグは十分だった。御雫祇が一人を抑えたとしても、残りの一人だけで全滅は必至。守護騎士達が総懸りでも鎧袖一触となったことは記憶に新しい。
「彼らの目的は具体的に解らないけれど、やはり“闇の書”を狙っていると見て間違いないわ」
「戦わずに済ませることはできないってことか………」
「でも、だからってSSSランク魔導士にこのまま戦うっていうのは、ちょっと………」
遠回しに自殺行為であると告げるエイミィの表情は引き攣っている。
「………」
フェイトは、ずっとここに引っ掛かったままの存在を口にしそうになった。
誰もが今の所その話題を避けている、ガルムの出現。おそらく一緒に現れた仲間も、全員が魔導士ランク換算でSS以上と推測される。あの人達の力を借りることができるなら、圧倒的な力の差として横たわる問題もクリアできるはずだ。
けれども、共闘を模索することを言い出せなかった。管理局の法執行者である自分達に対して、ガルムは追われる犯罪者。相容れない立場なのだ。それと覚悟して、フェイトの嘱託魔導士であることを選んだ。
ガルムがなのはの兄、恭也である以上、何度でも出現する。ガルムのみが使用可能な絶技『幻月』は、全く同一の自分を生み出す魔法ならば、何度でも出現する。今回もまた、同じように。
(私は………)
最初から解っていたことなのに、自分の浅ましさにフェイトはギュッと眼を瞑る。
言い出さなかった理由は、リンディ達がその案を受け容れないと思ったからではない。
自分で覚悟して踏み出していながら、フェイトはガルムと対立せずに済むルートを欲した。そして、ずっと願って止まなかった一緒に戦えることを渇望した。みんなが居るのに、自分自身の願いを優先する考えを口にしかけたことが苦しいほどに恥ずかしかったのだ。
「フェイト?」
「うん、アルフ」
フェイトの考えを汲み取ったアルフが手を取る。
まだ、大丈夫だと手を握り返した。ガルムと戦うことが、対立することが決まったわけじゃないと。
「戦力については、近日中に補充してもらう予定よ」
幸いにアルフ以外には気取られなかった。なのはも気付いていないことにフェイトは安堵した。
「補充って………数を揃えても無意味になるだけだ」
「それを解決できる人員と言っても………」
管理局で対等に戦えるだろうSSランク以上の魔導士は、数が限られている。
クロノとエイミィは戦力補充と言われても期待できないでいても無理からぬ話。
「正確に言えば、私達ではなく、グラーバクの方よ」
「グラーバク?」
「そう。彼らの行動を支えるグラーバクの隊長が来ることになっているわ」
隊長――ベルニッツを知るリンディは忌々しそうに言った。
今回の一件で管理局を操る得体の知れない男の登場は戦力増強と喜んでいられない。事件がよりドロドロとしたものへと深くなった。だが、リンディにとって贅沢を言ってはいられない状況になりつつある。
「バーテックスもそうだけど、“闇の書”の守護騎士達にはあのガルム一党が背後に存在することが解った以上、これからは本当に厳しい戦いになるわ」
ガルム――――その名前に、複雑な想いが交錯する。
ある者は人生において努力では乗り越えられない壁
ある者はその真実の姿が唯一無二である。
ある者はその背中に縋り、その胸に抱きしめて欲しいと願う。
ある者は狂おしいほどに希求しながら誅すべき存在。
複雑な想いを斟酌できない、敵である。そうでなくてはならない。
何があろうとも、彼は数千人を殺してきた大量殺人犯なのだから。リンディはそう考えながら、敵にまわって欲しくないと心から思う。御雫祇の事情を知らないリンディにとって、彼が明確な敵に回ればフェイトが傷つくことを避けたかった。
あれほどフェイトの幸福のために奔走していた彼が、容易くフェイトを害する側になるとは考え難い。しかし、リンディの知るガルムはあくまで大量殺人犯でしかないのだ。人殺しを安易に信じることはできなかった。
人間という生き物は長く生きると身につけたくもないスキルを自然と身に付けるようになる。
特に、子供から大人になる過程で身に付けるのは嘘という道徳上碌でもないものだ。悲しいかな、子供の頃はそんな大人になりたくないと頑なに思っていても、いざ大人になるとなりたくなかったものになっている。
「なぁ、シャマル」
「はい、はやてちゃん」
一緒に晩御飯の洗い物をしているはやての問い掛けに鼻歌で気持ち良くなっていたシャマルは、元気良く答える。
「恭兄ぃと喧嘩でもしたん?」
「――――!?」
「ほ、あ、ほ、ほ、おー!!」
盛大に手を滑らせたシャマルの代わりに、宙を舞ったお皿をなんちゃってダイビングキャッチするはやて。
投げたのはボールのつもりが、手榴弾でござったという展開にお皿の無事に安堵しながら、はやては言葉の選択を誤ったと今更後悔。
わざとらしい咳払いが聞こえたので見上げると、何事もなかったようにひょいと皿を取って洗い直すシャマル。
「まさか………ちょっと今日のシチューの味付けが失敗したことを言われたぐらいで、喧嘩なんてしてませんよ」
「そうかぁ?結構落ち込んでたみたいに見えたけどなぁ」
「ええ、まあ………でも、最近それが………」
「………アカン」
罵られる快感に目覚めかけているとか、駄目過ぎる。
ヴォルケンズを色々と駄目な感じにしている恭也だが、多分シャマルが一番重症だった。
「とまぁ、冗談はさておいて―――ホントのところを言うてくれんの?」
「本当も何も、喧嘩なんてしてませんから。第一、いつも一緒に居るのに喧嘩なんてしたら、はやてちゃんが気付かないわけないじゃないですか」
「うーん………」
そう言われると明確な根拠があるわけではなかったはやては言葉に詰まってしまう。
にっこりと本当に何事もないように微笑むシャマルに、はやてがそう思う理由は“勘”としか言えなかった。数日前の朝から唐突にシャマルも含めたヴォルケンリッター達と恭也の間の雰囲気が変わった。
具体的にどうとは簡単に言えない。あえて例えるならば、完全女子のみの女子寮の管理人に若い男が着任した時に向けられる敵意みたいなものである。もっと解り易く言えば敵視しつつ、距離を取ろうとしている。
聞けば否定するだろうが、みんな恭也との距離を空けている。
今だってそうだ。TVの前でお気に入りのぬいぐるみを抱きしめながら陣取っているヴィータは、それまでならソファに座っている恭也の腿を枕にしながらTVを見て居た。シグナムも同じソファに座らず、わざわざダイニングテーブルの椅子に腰かけてお茶を飲んでいる。ザフィーラは恭也の側のフローリングで寝そべっているが、瞑っている眼の代わりに耳はずっと恭也へ警戒するように向けられている。アストラに至っては早々に自分の部屋へ引っ込んだ。
それまで当たり前だった光景が様変わりすればはやてでなくても気付く。全員が、ザフィーラがやっているように距離を置きながらも警戒しているように見えるのだ。喧嘩と言うにはやや趣が異なる。
全員と喧嘩したとすれば器用な話だが、そもそも喧嘩する理由の方が気になる。はやての勝手な想像であるが、ヴォルケンズ女性陣は皆揃って恭也のことを憎からず思っている。下世話な言い方をすれば、恭也が多少強引に関係を迫ったとしても―――絶対に有り得ない思う自分がちょっと恨めしい―――嫌よ嫌よも好きの内で受け容れてしまうだろう。しかもザフィーラも込みとなれば、ちょっと嫌な話である。
そうなると、はやてが達したのは―――
「シャマル………一夫多妻ってどう思う?」
「は、はい?」
藪から飛んできた棒の直撃にシャマルは目を白黒させる。
「ウチは、男と女同士の合意があれば、全然OKやと思うんよ」
「えーっと、倫理的にどーかなと私は思いますよ?」
ついでに言うと9歳の女の子的にどうよ、その発言はと思う。この突飛な話は喧嘩うんぬんの続きらしいが、シャマルには理解不能な領域に入っていた。
「そんな………せやけど、シャマルかて男も好き、ライバルの相手も好きとくれば、どっちを選んでくれとは言い難くないんか?」
「え?あー、まあ、それはそうですけど………難しくないですか?」
ギャルゲーの主人公より、洗剤会社がスポンサーなお昼のドラマが好きなシャマルは現実的だった。
一夫多妻には求められるのは、女性の側の寛容さもさることながら男性の器量の大きさである。世に蔓延するハーレム物のドラマなんかだと、どうにも男が女々しいわ、ウザいわで無理過ぎる。
「でも、その辺は恭兄ぃならOKやで!」
「え?恭也さんですか?………んん?」
太鼓判をいきなり押されても、話がさっぱり見えない。一夫多妻的な話から推測すると、恭也ならばそれが可能だということになる。それはシャマルにも理解できるが、その前の喧嘩の所からの繋がりが見えない。
双方認識に隔たりがあるせいで、一向に答えへ辿りつかない。そもそも喧嘩ではないと認識しているシャマルと、喧嘩を前提にその理由は恭也が女性陣全員に手を出したことがバレて修羅場っていると思い込んでいるはやてとでは当然と言えば、当然の話である。
結局、この謎の遣り取りは認識の相違を埋められずに、恭也から早く風呂へ入るように言われて強制終了させられてしまう。
(ごめんなさい、はやてちゃん………でも、はやてちゃんと恭也さんを護るにはこうするしかないんです)
「主は?」
「寝たわ」
風呂上がりで髪の毛の水分をバスタオルで拭き取るシグナムは、廊下で鉢合わせたシャマルからの返事に頷いた。二人で居間に入ると、こっくり舟を漕いでいるヴィータとのっそり寝そべるザフィーラが居た。ヴィータは人の気配を察知すると、胡乱だった瞳をしっかりと開いた。
「はやては?」
「ちゃんと寝ましたよ」
シグナムと同じ質問に微苦笑しながらシャマルが答える。
シグナムも同じように笑うので、ヴィータは妙な顔になった。皆、思うところは同じなのだ。
「恭也はどうした?」
今度はザフィーラが寝そべった体勢から身体を起こしながら尋ねる。
それぞれ、ヴォルケンリッターだけの時間を待っての秘密の話し合いのために集まっていた。
「恭也さんは、部屋で寝ています………」
「………日に日に、起きている時間が短くなっているな」
「ええ………」
四人の間に沈鬱な空気が落ちる。
本来であれば自分達が襲撃してリンカーコアから魔力を簒奪していることを隠すためにも、こうしてこっそりとでも話し合うことは避けるべきだが、そうも言っていれらなくなっていた。
―――八神恭也が倒れたのだ
前回の戦いで、後一歩のところまで追いつめられながらも闖入者によって事なきを得た後の話。
追跡を避けるために複数の次元転移を繰り返し、足跡を消して八神家へ何とか戻ることができた。
激戦によって全員がボロボロ。それでも“帰るべき家”に戻ったことで、程度の差はあれども弛緩しかけていた。歴戦であるが故に、弛めるべきところは弛める。
騎士甲冑を解除し、服を元に戻す。見える部分の汚れも拭き取り、音も立てずに家の中に入った。
時間も遅いので恭也もはやても寝静まっている。しかし、何故かリビングの明かりがついていた。まさか恭也が待っているのではないかと思い、気まずさに顔を見合わせる。
「善し、言い訳は任せたぞシャマル」
「頼んだぞ、シャマル」
「任せたね、シャマル」
「………シャマル」
「何故に私!?」
弁舌の上手さはヴォルケンズ一の自称魔性の女は、押し付けられる責任に断固反論する。
どうせ恭也には嘘はまず通用しないのだから、一緒に大人しく怒られるべきだと主張されるも一斉に首を横にされた。
「………あの、超デコピン食らうとかマジ有り得ねぇ」
頭蓋骨を貫通して後頭部まで衝撃が走りながら、凄まじい鈍痛が長時間脳内に留まる。
恭也が使うお仕置き技の一つであり、ヴォルケンズはみんな一通り食らったことがある。シグナムもそうだが、体術のプロであるシャマルでさえ回避不能の電光石火だった。
「わ、私だって嫌ですよ!」
「貴い犠牲だったね」
「許せ、シャマル」
「………シャマル」
「それ、明らかに私が生贄じゃないですか!」
これが戦場で戦う騎士の厳しい定めみたいな顔をして誤魔化そうとする残りの四人に、シャマルが大声で反論する。そして、全員うっかりの大声に慌てて口を塞がれる。
「バッカ、はやてまで起きたらどうすんだよ!?」
「朝まで廊下で正座だろうねぇ………」
八神兄妹の愛の鞭は効果覿面である。
誰もが積極的に怒られたくないため、話がさっぱり進まずに居た。
ゴトン!!
しかし、明かりの漏れるからのただならぬ音に一瞬で全員の気配が変わる。
その音にはシグナム、シャマル、アストラの三人は聞き覚えがあった。過日、なのは達と初邂逅を果たした後―――。
「恭也!!」
真っ先に駆けだしたのは、シグナム。蹴破る勢いで居間のドアを開けて雪崩込み、他の四人も続く。
恭也とはやての二人の暖かさによって満たされる団欒の場。“家族”が集う居間には、以前と同じように見ただけで意識を無くしていることが判る恭也が倒れ伏していた。状態を一刻も早く確認し、魔法で治療可能であれば即座に動くべきなのに、守護騎士達は一歩も動かない。
「貴様ら………」
ザフィーラが毛を逆立て、犬歯を剥き出しにしながら呻く。
傍目からは怒りによる威嚇に見えるが、獣の本能が為さしめるのは脅威に対しての威嚇。
居間には、倒れた恭也の側に片膝をついた女―――エリザと、その横で自然体の立ち姿で五人を振り返るミシェール。図らずも先程の戦いで窮地を救ってくれたはずの二人。単純に味方と思っていたわけではないが、まさか八神家に乗り込んでいるとは完全な想定外だった。
いや、それ以前に五人は家族の家に土足で踏み込む二人へ沸騰しそうな怒りを、更に恭也が倒れていることで爆発させる。
「テメェらが恭を!!」
【ロケットダイヴァー】の衝撃で腕に力の入らないヴィータだったが、それでも怒りが勝った。
[グラーフアイゼン]を呼びだすと、斟酌する間もなく振りかぶる。
「吠えるな、小娘」
「んなっ………!?」
彼我の距離を突進で埋めるヴィータが急制動をかけたのは、圧倒的力の差に怯んだから―――ではない。
蹈鞴を踏む彼女の瞳は、ガンブレードの切先がひたりと芸術的までの極僅かな空隙を設けて倒れ伏したままの恭也の首筋に当てられている光景を、この上ないほどはっきりと捉えていた。
「私がその気になれば、喉を掻っ切るどころか、首から上を消滅させることができるくらいは判るな?」
「て、テメェ!!恭に触れてみろ!!ゼッテェぶっ殺す!!」
「はっ………あの程度の雑魚に手間取っていたくせに、ハッタリだけはお上手だ」
「ぐっ………」
解っている。解っているのだ。
自分達では、グラーバクの魔導士をまるで赤子の手を捻るが如く、たったの一撃で沈めた彼女達には到底及ばないことを。しかし、“家族”を傷つけられて黙って居られるほど機械的にはなれなかった。時間を懸けて醸成された八神家の一員である意識が、全滅しても退くことを許さなかった。
「それに、随分とこの男にご執心のようね………情でも交わしたのか?」
「「「んなっ!?」」」
「?」
「ザッフィー君は黙っておくんだね」
敵から向けられるにはあまりにも明け透けな言葉に、怒りとは別の理由で女性陣の顔が真っ赤になる。
解り易過ぎる反応に、エリザは肩をひょいと竦めてからガンブレードを首から外す。
「まあ、どちらでもいいけど。別に、貴女達如き、人質なんてとるまでもない。目的は果たしたし―――そうだな、“ガルム”」
守護騎士を素通りして、エリザの視線は彼女達の後―――気配を一切感じさせずに立っている黒い魔導士へ向けられている。
全く気配を感じなかったシグナムは慌てて振り返るが、黒い魔導士は動じることなく右手を差し出し、握られていた手を開く。
「リンカーコアからの魔力………しかも、凄い量があるわ」
これまでチマチマと蒐集していた量とは比較にならない。これで一気に100ページ以上埋まるほどの魔力量。
「持って行って下さい」
「何?」
黙して成り行きを見守っていたミシェールの発言に、シグナムは耳を疑う。
「最早、貴女達では蒐集を間に合わせることができません。今回は退けましたが、管理局以外にバーテックスも直接行動を起こした以上、大きな動きはできないはずです。そして、見つからないように蒐集していても間に合わない」
「それは………でも、貴女達が何故こんなことを!?どうして恭也さんを!?」
損得勘定であれば目的が見えない。それ以外でも、何のためにここまでするのか。
はやてと違い、魔法とは無縁の人生を送ってきた恭也を襲う意味はないのだ。彼の魔法資質はキッチリとシャマルが調査し、一般人より若干優秀である程度と分析している。“闇の書”によって魔力資質を隠蔽できているはやてと同じように恭也は安全なはずだった。
「難しい話ではありません。これは、警告です。私達は“闇の書”そのものはどうでもいいんです。けれど、その完成は必要としている―――貴女達なら判るはずです」
余計な詮索はしないこと。そして、こちらの望みに従わないのであれば今のように家族を直接害する。
あからさまでいて、徹底した脅迫。
「くぅ………」
シグナムは、この時ほど自分の力の無さを嘆いたことはなかった。力の不足と騎士である自分達が他者の圧倒的な力に屈服させられていることに歯軋りする。あまりの強さに朱色の雫が口の端から零れる。
「そう悔しがることはありません。貴女達は主に後ろめたい気持ちを抱かずに家族で居られ、私達が蒐集してきた魔力を受け取るだけでいいんですから」
結果を言えば、シグナム達はミシェールの言葉を呑んだ。呑まざるを得なかった。
ミシェールにしろ、エリザにしろ、自分達を叩き伏せ、目の前で恭也とはやてを嬲り殺しにできるだけの力があるのだから、逆らうことなどできなかった。思い出すだけで、自分の弱さに吐き気がするシグナムはあの時と同じように歯軋りする。
「あいつら、恭に何したんだよ………」
「解らないわ。ただ、恭也さんが重い病気を抱えているとしか私にも解らなったもの」
それが人間ならば誰にでも発生する可能性のある致死の病、脳腫瘍だとしても。
医学的知識も備えるシャマルは、その深刻さを承知している。恭也にそのことを何度も尋ねようとして、今もできずにいる。エリザ達が何かをしたせいなのかの因果は不明だが、全身を隈なく調べた結果はただ絶望だけを齎した。
「病院に入院させた方が良いのだろう?」
「そうだけど………恭也さんは、きっと首を縦にしてくれないと思うの」
「何でだよ。このままじゃ、あいつヤバいんだろう!?」
シャマルが直接口にせずとも表情を見れば、恭也の病気の深刻さを察することができる。自分達には縁のない“生命の終わり――死”が家族に迫る未知の恐怖がヴィータを焦らせる。
「それは恭也さん自身が一番よく解っているはずよ」
それでも恭也は入院する素振りも見せない。どころか、日常的には何事もないように何時も通りの振る舞いを続けている。
「呼吸をするのも苦しいはずよ………倦怠感で動くこともできないはずなのに、それでも恭也さんは………心配させまいとしているのよ?何のためにだと思うの?」
ソファに座り、自分の掌に顔を埋めるシャマルにヴィータはそれ以上何も言えず、何に向けてなのかも曖昧な舌打ちをする。理由はみんな知っている。一重に、家族のため―――長い闘病生活を送るはやてのため。
致死の病は必ず、はやてを置き去りにしてしまう。自分達が居ると胸を張って言えないことが歯痒い。
八神はやてとヴォルケンリッターは単なる魔導書の主と従者の関係を超え、はやてを母とする家族になった。しかし、子は親の心の支えにはなっても寄り掛かる先ではないのだ。はやてにとって、唯一寄り掛かって安堵を齎すことができるのは、兄である恭也以外に存在しない。
“闇の書”の完成によってはやての身体は治るだろうが、それと引き換えるように恭也がこの世を去れば、生きる気力を圧し折られる危険性だって十分にあるのだ。
「こいつには恭を救う方法は書かれてないのかよ?」
ふよふよと、闇の書の本体が中に浮いている。はやてが完全に寝入ったことを確認して、こちへ来たらしい。
「私達がアクセスできるのは、許可されたほんの極一部の、しかも元々備わっていた機能だけよ。長い歴史の中で蓄積された遺失魔法をアクセスすることも、閲覧することも、できるのは主だけなの」
「はやてなら、ってことか………」
「一縷の望みを叶えるためにも、魔導書の完成は急務というわけだな」
「そうなるわね………ただ」
エリザ達に露見すれば、どんな報復があるか分からない。恭也が狙われたのは“闇の書”の一部であるヴォルケンリッターと異なり、関係者ではあるが直接的な影響を与えない恭也なら最悪死んでも構わないからだろうと推理していた。
「なんか、俺らにできることはねえのかよ………」
ヴィータの呟きは、みんなの心を代弁していながら、“無い”という事実に打ちひしがれるには十分だった。
あとがき
恭也は人を殺したことがあるのか。
今回の冒頭は私なりのその回答です。
御神が表、不破が裏。そして、どちらにしても教えているのは徹底した殺人剣。
士郎は奔放過ぎるところはあれども良い人。けれども、良い父親だとはあまり考えていません。
片親であることは仕方ないにしても、殺人剣を教えてまともな倫理観や道徳の醸成もしないまま自分の武者修行に連れ出す。より効率的に合理的に人を殺す方法だけを教えられ、実行に移したのが幼い日に初めて人を殺した恭也でした。
不破の剣を教えられ、御神流の理念を教えられた恭也は逆を言えばそれしか知らない子供。今更それを取り上げることはできないから、美影は恭也に一族を護る使命を与えようとしていました。その前に琴絵の結婚式があったせいで全部潰えてしまいましたが。
もしも、一族全滅がなければ恭也は士郎と引き離され、美影の下で徹底した不破の英才教育を受けて、不破の家を継ぐことになります。おそらく士郎と桃子の結婚となのはの出産はあれども、高町家に恭也は居ないし、美由希も居ない………あれ?恭也って、美由希と結婚するんじゃね(いや、ない)。
そうなると間違いなく原作キャラとはまず絡まないでしょうね。フィアッセすら絡まず、なのはも恭也の存在を知らない可能性がある………あれ?これって、なのはヒロインフラグ?
そんな感じで、この妄想で他作品と色々クロスできるなーとか思った時期もありました。
美影の英才教育で十全に流派を極めていき、原作よりも遥か高みに位置する不破恭也君の出来上がりです。
正直「真剣で私に恋しろ」にでも放りこめるじゃね、こいつとか思ったりもしましたが、そんな時間ありません。原作よりも遥かにドSな恭也君なんて、もはやベッドシーンの湊景明みたいなもんですよ。
与太話はここまで。無駄に長くなりました。
“闇の書”を欲する勢力はこれで出揃い、八神恭也の病気が守護騎士達にバレる話です。総合すると。
ADVゲーム風に言うと、続々とBADエンドフラグが立ち始めてます。プロットの段階から解っていましたが、この話は最後にちょっと救いが無さ過ぎかもしれません。
StSまでは大きく話を変えるわけにもいかない枷が結構厳しいですねぇ。
そう言えば、結局原作でなのはが再起不能になりかけた事故って、何の話だったんだろうね。
と、サウンドステージは一切無視する方針の私は呟いてみる。
映画のネタ?すいません、今更拾えません。
ゆっくりと完結へ向かっていきますので、今暫くお付き合い下さい。
恭也の病気がばれた所で、どうにもできないという苦しさが。
美姫 「シャマルも言ってたように、完成した闇の書に希望を託すという結論しかないわね」
結果として、早く完成をさせようと動く事になって、エリザたちの目的が進むと。
美姫 「彼女たちならそこまで考えてそうよね」
まあ、恭也の病気を知ってたのかという部分は残るがな。
美姫 「後は冒頭のお話ね」
ああ。それとあとがきでのお話。
ちょっと面白そうと思ってしまった。うずうず。
美姫 「ドS恭也ってのも面白そうよね」
だよな。徹底した教育を施されて殺人マシーンにはならずには済みそうだけれど、逆に剣以外には無頓着とか。
いや、本当に色々と考えられるかも。とまあ、それはそれとして本編の続きも気になる所。
美姫 「次回も非常に楽しみにしてますね」
待ってます。