第15話 四天宝刀
* * * * *
――深夜の交差点……。
昨日の事故の痕跡が僅かに残るその場所を見渡して、雪那はそっと息を漏らした。
吐き出されたのは小さな徒労感と、それに倍する安堵の思い……。
それらが微妙に混ざり合って、微かに夜の闇を震わせ、霧散する。
そこにはもう退魔の業を背負う者の燐とした雰囲気は欠片も感じられなかった。
「……お疲れ様です」
乱れた着衣を整える彼女へと近づき、そう声を掛けると優斗は飲み物を差し出した。
姿が見えないと思ったら、そこの自動販売機まで買いに行っていたらしい。
「ミルクティーです。缶ですけど、そんなにまずくはないと思いますよ」
「いただきます」
そう言って差し出された缶を受け取ると、雪那はプルタブを起こして一口飲んだ。
……確かに、それほど悪くはない。
口の中に広がる甘さと微かな紅茶の香りに、雪那は少しだけ表情を緩める。
「それにしても、あれだけの数の霊を一瞬で強制成仏させるなんて。さすがですね」
自分もコーヒーの缶を開けながら、優斗は感心したようにそう言葉を漏らす。
心からの賞賛。だが、幼い日のように手放しで褒め称えたりはしない。
彼女が行なったその行為の意味を、今の彼は痛い程に理解していたから。
「同じ消えるなら、少しでも痛みの少ないほうが良い。そう思ったから、しただけです」
あくまで冷静に、普段通りの口調で雪那は言う。
だが、暗闇の中でその表情が僅かに顰められていたのを優斗の目は見逃さなかった。
強制成仏というのは文字通り何らかの方法で強引に相手の未練を断ち切るものだ。
それは相手を滅ぼさないまでも、決して穏やかな手段でないことは想像に難くない。
彼女の場合は自身の気界へと相手を取り込み、その清浄さを持って悪意を浄化している。
一種の掠奪とも取れる方法だが、それを行なう当人もただでは済まないだろうと優斗は思う。
雪那は雪の精霊の最高位。その彼女を取り巻く気界は彼女自身と言っても過言ではない。
心の壁を媒介とせず、直接悪意を受け続ければそれは疲れもするだろう。
「無理はしないでください。雪那さんに何かあったら李沙が悲しみます」
「ありがとうございます。でも、あなたこそ、こんな時間に家を空けても大丈夫なのですか?」
気遣うような優斗の言葉に礼を述べつつ、雪那はふと気になったことを聞いてみる。
今更ではあるが、彼には守るべき家族がいる。
それも自分や彼のような力を持つ存在ではなく、ごく普通の少女たちだ。
「対人対魔共に防犯対策は万全です。それにいざとなれば蓉子もいることですし」
何も心配することはないと言う優斗に、それを思い出しながら雪那も頷いて納得する。
確かに草薙家はその周囲を特殊な結界で覆われている。
悪意にのみ反応するそれらは、通常では考えられないほどに強固だ。
そして、あの銀狐の少女……。
あの若さですべてをコントロール出来ているかは疑問だが、潜在能力だけを見れば未知数だ。
何より、実績のある優秀なエージェントである。
李沙も並の人間相手なら負けないだろうし、そのあたりは本当に大丈夫なのだろう。
「さて、そろそろ戻りますか。あまり遅くなって心配を掛けても悪いですし」
そう言って、優斗が凭れていたフェンスから背中を離したときだった。
空気が、変わった。
まるで急激に湿気を帯びたかのように、それはねっとりと絡みついてくる。
雪那も異変に気づいたらしく、二人はほぼ同時にそれぞれの剣の柄へと手を掛ける。
優斗が飲み終わった缶をゴミ箱に向かって投げ、雪那も手の自由を確保しようとそれに習う。
二人の投げた缶が連続してゴミ箱を揺らし、それが合図となって二人は同時に駆け出した。
小太刀二刀の型を取らせて腰の両側に差していた蒼牙の一方を抜き放つと、優斗は飛来した何かを切り払う。
同時に雪那の展開した夢幻結界があたりを一瞬にして雪原へと変えた。
――眩しくはないが、白いその空間に浮かび上がる襲撃者の影。
「ほう、今のを防ぐか。さすがは青眼者、といったところか」
感心したようにそう言って姿を現したのは20代半ばの青年だった。
「……何者です」
「聞かれて素直に答えるとでも?」
「なるほど。そういうことですか」
挑発するような青年の態度に雪那は僅かに目を細めると、そっと隣の優斗へと目配せする。
優斗はそれに頷くと、改めて相手の姿を凝視した。
青年は背中に大剣を背負い、左右に紫色のローブを纏った人型を一体ずつ従えている。
人型のほうはザコとして、問題なのは青年の背中にある大剣だ。
「魔剣――ベルフェルム――。また厄介なものを持ってるな」
「あれの相手はわたくしがしましょう。あなたは他のを」
そう言うと、雪那はアカツキの柄を僅かに下へと下げて抜刀の構えを取る。
二人とも達人級の使い手だけに、相手が相当の実力者であることはすぐに分かった。
そんな相手と相対して、明確な殺意を向けられては迂闊に動く訳にもいかない。
「やれやれ、最近の若いのは気が短くていけないな。もうちっと忍耐ってもんをだな」
大げさな仕草を交えてわざとらしく肩を竦めると、青年は背中の大剣へと手を伸ばす。
それを合図に、左右の人型が同時に何かを放ってきた。
二人はそれを左右に跳んで避けると、剣を手にそれぞれが定めた相手へと走る。
優斗はまず向かって左側の人型を中心に円を描くように移動しつつ、牽制に衝撃波を放った。
それによって動きを止めた人型の側面へと一気に踏み込み、右の小太刀を一閃させる。
相手はそれに気づくことなく、胴体から上下に切断されて消滅した。
――相手が血の通わないマリオネットなら、それを切るのに躊躇することもない。
消え去った敵には目もくれず、すぐさまもう一体のほうへと肉迫し、同じように切り捨てる。
だが、そのときには既に新たな敵が彼の前にその姿を現そうとしていた。
一方雪那は短期決戦を臨むべく、自身の気を最大限にまで高めようとしていた。
相手の干渉を受けている以上、この結界もそう長くは持たないだろう。
ここは周囲に被害を出さないためにも一撃必殺を決めなくてはいけない。
彼女は軽く息を吐き出すと、足裏に溜めていた気を一気に開放する。
刹那、アスファルトを踏み抜いたような音を残して雪那の姿が掻き消えた。
青年は思わず目を見開くが、鍛え抜かれた戦士の本能は彼に声を上げる暇さえ与えない。
雪那は瞬き半分の間に相手の眼前まで迫ると、勢いもそのままにアカツキを抜き放つ。
青年はとっさに大剣を盾にして防ぐが、殺しきれずに数歩後退した。
「……っ!」
防がれたと見るや、雪那はすぐさま身を引いて二撃目を叩き込んだ。
必要最低限の動きで繰り出される連撃に、青年は最初から防戦一方だった。
優斗のほうはもっと一方的で、もはや虐殺と言っても過言ではない様相を呈していた。
とにかく際限なく沸いてくる人型を相手に、彼はたった一人で戦線を支え続けているのだ。
それも顔色一つ変えずに、平然と。
圧倒的だった。それこそどちらが化け物か分からなくなるほどに。
「……動きが単調すぎる。これじゃ、鍛錬にもならないな」
そんな感想を漏らす余裕さえある。
しかし、だからといっていつまでも付き合ってやるつもりも義理もない。
とりあえず今出現している人型をすべて倒すと、優斗は一度蒼牙を二刀とも鞘に納めた。
――破邪真空流奥義之四・絶刀……。
静かな呼吸と共に放たれる抜刀からの4連撃。それは人型の根源たる術式を正確に切断した。
同時にそれまであった嫌な空気も霧散し、代わりに精霊特有の清浄な気があたりに満ちる。
抑圧感の無くなったことを確かめると、雪那は今度こそ決着を着けるべく力を解放した。
「はぁっ!」
気合いとともに咬み合っていた刃を押して相手との距離を取る。
そして、一転して彼女が刺突の構えを取ったのを見て優斗は自身の刃を鞘へと納めた。
「くっ、なめるな!」
優斗の態度を余裕と受け取った青年は、激昂して大剣を振りかぶると雪那目掛けて突進した。
雪那は向かってくる相手を正面から見据えると、大剣の刀身部分を狙って突きを放つ。
振り下ろされた大剣とアカツキの先端が激突し、雪那は軽く後方へと飛ばされた。
――勝った。
青年がそう思った瞬間、彼の手の中で魔剣ベルフェルムの刀身が音を立てて砕けた。
「なっ!?」
驚愕に目を見開き、信じられないと言わんばかりに手の中の魔剣を見る青年。
一見、出鱈目のように見えた雪那の攻撃はすべて確実にそれを砕くためのものだったのだ。
「邪妖の刃は砕けました。さあ、大人しくなさい」
青年の額へとアカツキの切っ先を突きつけながら、あくまで淡々とした口調で雪那は言う。
衝撃で結界の壁際まで飛ばされたものの、きちんと両脚から着地した彼女には傷一つない。
対して青年にはもう武器がなく、どちらが優勢かなど日を見るよりも明らかだ。
「ククク……、ふふふ……、はーっはっはっはぁ!」
突然肩を小刻みに震わせたかと思うと、青年は目を見開いて哄笑を上げた。
いきなり笑い出した相手に眉を顰めつつ、雪那はその訳を青年へと尋ねる。
「何がおかしいのです?」
「失礼。いや、まさかこんなにすんなりとこちらの思い通りになるとは思わなかったものでね」
そう言うと彼は刃の無くなった魔剣の柄を横へと振った。
同時にそこから溢れ出した不可視の力が飛び散った破片を集束させ、再び刃を形成する。
その刀身が邪悪な黒に染まっているのを見たとき、優斗たちは確信した。
即ち、これこそが敵の狙いだったのだ。
「ベルフェルムの封印を解いてくれてありがとう。こいつはその礼だ。受け取りな!」
言葉とともに放たれた瘴気の波が至近から雪那へと襲い掛かる。
彼女はとっさに結界を張って防ぐが殺しきれず、背中から空間の内壁へと叩きつけられた。
「雪那さんっ!」
そのまま壁を伝って地面へと落ちる雪那を見て、優斗は慌てて彼女の元へと駆け寄った。
「……っ、……大丈夫です……」
「ほう、結界越しとはいえあれを受けて立ち上がるか」
優斗に肩を借りながらも立ち上がる雪那を見て、青年は感心したように息を漏らす。
「伊達に四天宝刀などという仰々しい肩書きを背負ってはいません。……っ……!」
「強がるなよ。そんな体じゃもう戦えないだろう」
「……ええ、わたくしはね」
そう言うと雪那は自分を支えてくれている少年へと目を向ける。
優斗はそれに頷いて彼女を近くのフェンスに凭れさせると、立ち上がって相手を見据えた。
「ほう、あれを見た後でまだ向かってくるか。だが、ガキだからって容赦はしないぞ」
「…………」
ニヤリと笑みを浮かべてそう言う青年に対して、優斗は無言で小太刀を抜いて構えを取る。
「それが答えか。いいだろう。なら、開放された魔剣の力、その身で味わうがいい!」
吠えて再び負の衝撃波を放とうとする青年。だが、優斗はそれを許さない。
一瞬にして相手との間合いを詰めると彼は蒼牙の特殊能力の一つ、集束を発動させたのだ。
途端にベルフェルムの刀身から溢れていた瘴気が霧散し、青年の目を驚愕に見開かせた。
半妖であるが故に、優斗は妖術も霊術も行使することが出来ない。
それらの源である妖気と霊気が彼の中に同時に存在するため、互いを相殺してしまうからだ。
だが、蒼牙は外界に存在するあらゆる力をその身に集約する能力を持つ。
それによって集められた力を元に、彼は本来使えないはずの術式を編み上げ、行使するのだ。
「……こいよ。おまえが彼女に与えた痛みがどういうものか教えてやる」
「調子に乗るなよ小僧。おまえのそれと俺の魔剣、所詮は同じものだろうが」
嘲笑を浮かべてそう指摘する青年の言葉をまったく無視して優斗は相手へと切り掛かる。
だが、その太刀筋には一切の迷いも容赦もない。
それを見た青年は小さく舌打ちして大剣を構え直すと、正面から迎え撃った。
再び生じた瘴気の波と、その瘴気から変換・凝縮された清浄な気の刃が激突する。
二人は何度も切り結び、その度に互いの力を削ぎ落としては周囲に残滓を撒き散らしていく。
だが、そんな攻防も雪那の力が弱まり、結界が消失するまでだった。
こうなってしまった以上、周囲への影響を気にする優斗は自然と全力を出せなくなる。
何より結界を維持出来ないほどに衰弱した彼女を放っておくことなど彼には出来なかった。
事情を察した相手も興醒めしたらしく、自然と大剣を鞘に納めると優斗たちに背を向けた。
「……どうした?なぜ攻撃してこない」
「ここで騒ぎを大きくするのは得策ではない。保安局の連中に見つかっても厄介だしな」
背を向けたままでそう言うと、青年は夜の闇へと消えていった。
「……済みません。逃がしてしまいました」
ぐったりとしながらも敵の去った方向を見据えている雪那へと近づき、優斗は膝を折った。
「いえ、寧ろ正解です。あれの本気が相手となれば幾らあなたでも荷が重いでしょうから」
「…………」
「帰りましょう。彼女たちが心配していますよ」
顔を顰めつつそう言って立ち上がる雪那に優斗も頷き、二人はその場を後にした。
* * * * *
――綾香市新興住宅地。
すべての事後処理を終えてかおりが帰宅したときには時刻は既に午後9時を回っていた。
「……ただいま」
若干疲れの滲む声でそう言って部屋に上がる。
だが、いつもならすぐに返ってくるはずのファミリアの出迎えが今日はない。
そのことが彼女の中で燻っていた不安を僅かに加速させた。
妖魔に寄生された同僚たちはきちんと浄化したし、自分の体内に侵入してきたものも即座に霊気で蒸し殺した。
破られた結界も更に強固なものを張り直したので今度はそう安々と侵入されはしないだろう。
しかし、敵が次もまた同じ場所を襲ってくるとは限らない。
例えば自分の留守中に自宅を襲撃されたらどうなる?
ファミリアも高い戦闘能力を持つ存在であることは先の事件で既に知っている。
だが、それでも狭い室内で複数の相手に包囲されれば無事では済まないだろう。
嫌な考えが鎌首を擡げ、かおりは慌てて頭を振った。
……落ち着きなさい。変な気配なんて少しもしなかったでしょ。
そう自分に言い聞かせつつ、かおりは改めてゆっくりとあたりの様子を伺う。
……室内に人の気配。リビングのほうね。
息を殺し、ゆっくりとそちらに近づいていくにつれ、相手の位置と大体の数が把握出来た。
そして……。
「兄さん!」
視界に捉えた人物を確認して、かおりは小さく声を上げた。
そこには彼女の兄、綺先刀夜がいつもの黒ずくめで立っていた。
刀夜はかおりの姿を認めると、無言で自分のほうにくるよう手招きした。
それに怪訝な顔をしつつ、かおりがそちらへと行くと彼は無言でソファの一つを指差した。
そこでは仕事着らしいメイド服に身を包んだファミリアが静かな寝息を立てていた。
しかも、微妙に乱れた着衣と僅かに開かれた唇が何ともいえない色っぽさを醸し出している。
「どうだ。いいものだろ」
寝ている彼女を起こさないよう小声でそう話し掛けてくる兄に、かおりは溜息を漏らす。
とはいえ、確かにこれは情欲をそそるものが……って、何を考えているのよわたしは。
自分の考えに顔を真っ赤にして首をぶんぶんと振るかおり。
どうやら疲れているせいで思考が参っているようだ。
そんな妹の様子を一瞥して、刀夜は近くのソファに腰を下ろすと徐に口を開いた。
「で、こんな時間までどこへ行っていたんだ?」
欲望に負けて手を伸ばしかけていたかおりはその声で我に返ると慌てて彼女から離れた。
「何だ、やらないのか?」
「なっ、ななな、なにをよっ!」
思わず顔を真っ赤にして叫ぶかおり。
あまりの大声に、刀夜は顔を顰めてファミリアのほうを見た。
今ので彼女も目を覚ましたらしく、小さく身動ぎしてゆっくりと目を開けた。
「見ろ、おまえのせいで彼女が起きてしまったじゃないか」
むっつりとした表情で非難めいたことを言う刀夜。だが、かおりはそれどころではなかった。
寝顔に続いて、それに匹敵するほどの威力を持つ起きかけのぼーっとした表情。
二つを続けて見てしまった彼女はもう自分を抑えることが出来なくなってしまっていたのだ。
「ファミリア〜!」
「きゃっ、な、何ですか!?」
堪らず彼女に飛びついてぎゅぅっと抱きしめるかおり。
ファミリアはそれに訳が分からず、戸惑った表情で小さく悲鳴を上げている。
そんな二人の様子を刀夜は良いものが見れたとばかりに満足そうに眺めていた。
「で、先の質問の答えを聞かせてもらえるか?」
その後もひと悶着あって、ファミリアが暖め直した食事を三人で食べ終わる頃には大分時間が過ぎてしまっていた。
今はファミリアの淹れたコーヒーを片手に夕食後の一時を楽しんでいる、はずだったのだが。
刀夜は彼にしては珍しく、楽しそうに口元を歪めながらカップを傾けている。
「だ、だから、わたしにそんな趣味はないって言ってるでしょ……」
赤くなった顔を読んでいた雑誌で隠しながら、ぶつぶつと文句を言うかおり。
そんなことをすれば却って逆効果なのだが、今の彼女にはそれに気づく余裕さえないらしい。
普段の刀夜なら、戯れにそんな妹の姿を少しばかりからかってやったことだろう。
だが、彼は表情を引き締めると、違う言葉で質問を重ねてきた。
「俺は帰宅が遅れた理由を聞いているんだが」
「あ、う、うん。そうだったわね」
自分の勘違いにまた赤面しつつ、かおりは苦笑して雑誌から顔を上げた。
「おまえのことだ、理由もなしにこんな時間まで戻らないことはないだろう」
「信頼してくれてるんだ。……わかった、全部話すから」
兄の言葉に緩みそうになる表情を慌てて引き締めると、かおりは簡単に今日一日の出来事を話した。
「……なるほど。それは大変だったな」
「まあね……」
労を労う兄の言葉に頷き、目を閉じると、かおりは一つ大きく息を漏らす。
さすがに寄生云々のあたりは恥ずかしいので省いたが、大体のことは伝えられたようだった。
「しかし、……いや、何でもない。報告の件はご苦労だった。後はこちらでやっておこう」
ごまかすようにそう言ってカップの中身を飲み干すと、彼はちょうどお盆に二人分の紅茶を載せてやってきたファミリアへとお代わりを頼む。
――これで3人、か。やはり、この地には力あるものが集うのだな。
かおりには聞かせなかった言葉を胸中で反芻しつつ、刀夜は遠い昔の伝承へと思いを馳せる。
――鍵を握るのは四つの剣。
果たしてあの悪夢に現代の彼らはどう立ち向かうのか……。
受け取ったカップを口元へと運びながら、彼は思考の渦へと沈んでいった。
* * * * *
あとがき
龍一「毎度のことですが、遅くなってすみません」
蓉子「遅れた理由は?」
龍一「忙しかったんだよ、いろいろと」
蓉子「その割りには某kanonなRPGで遊んでる時間が多かったようだけどね」
龍一「うっ、それを言われると……」
蓉子「とにかく、次はもっと早く書き上げなさいよね」
龍一「イエッサー!」
蓉子「ったく、それではここまで読んでいただいた方、ありがとうございました」
龍一「またのおこしをお待ちしております」
二人「ではでは」
新たに現われた魔剣を携える青年。
美姫 「一体、何が起ころうとしているの?」
シリアスな展開の中に、少しの潤い。
ファミリア、ナイス! う〜ん、素晴らしい。
美姫 「いや、まあ、アンタの戯言は置いておいて…」
一層の事、ファミリアだけで一話丸々……。
美姫 「えーい、やめんか、この馬鹿!」
ふがぁっ!
美姫 「ったく、折角、シリアスだったのに」
あ、あははは〜。
美姫 「兎に角、次回も楽しみにしてますね〜」
してます〜。