紅き月の光に照らされた荒野にて、一人の魔王が一人のウィザードとその仲間の手により滅びようとしている。

 

 

「この身体は貴様のだぞ! 私ごと消し去ってしまっていいのか!?」

 

「別にかまわない。第一、お前のようなのが入った身体に誰が戻りたいと思う? それに、今は結構この身体が気に入ってるんでね」

 

 

そう言いながら少年は自分の右手を顔の横まで上げ、そして、そのままその手を青年の姿をした――かつての自分の肉体を使っている魔王に向け突き出した。すると、その掌に光が集まりだし、それはすぐに臨界に達する。

その魔法は例え傷ついている状態だとしても、普通なら目の前にいる魔王を滅ぼすほど強力なものではない。だが、少年の掌に集まった光は普通のものを遥かに超える力を内包していた。

 

 

「お別れだ」

 

「ま、待ってく――――」

 

「――――じゃあな。『リブレイド』」

 

 

少年の言葉と共に光球は魔王へと打ち出され、目標の地点に達するとその聖なる光を解き放った。

 

 

「―――――ッッッッ!!!!」

 

 

そして、魔王は一瞬にしてその光に飲み込まれながら声にならない断末魔の叫びを上げ、消滅した。少年の元の肉体と共に・・・・・・。

 

 

 

それは小さな奇跡

本来ならあり得なかった事

 

肉体を奪われながらも戦い続け、眠りについた一人の魔法使い

眠りについた彼は遠くはなれた異世界へと飛ばされます

新たな世界で彼に平穏な日々が訪れることを願う仲間達の手によって・・・・・・

でも、その世界で目覚めた彼はまたしても戦うことになります

自分に安らぎを与えてくれる少女達のために・・・・・・

 

これは、そんな一人の魔法使いと彼と出会ったある少女達の物語・・・・・・

 

 

魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings〜・・・始まります

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings

Act.0 目覚めればそこは異世界

 

 

 

――ピ・・・ピ・・・ピ・・・

 

真っ白な広い部屋。何かの研究室らしきその部屋の中にたくさんの機器に囲まれた一つのガラスの筒が置かれていた。薄緑色の液体に満たされたその中には一人の少年が眠っていた。

 

――ピ・・・ピピッ

 

室内に一定のリズムを刻んで鳴り響いていた何かの電子音が突然そのリズムを狂わせた。それと同時にガラスの筒の中で眠っていた少年の瞼が僅かに動いた。

 

 

(ん? 今のは、夢、か?)

 

 

そう思いながら少年は目を開けた。そして、自分が何かの液体で満たされたガラスの槽の中にいるのに気付いた。

 

 

(ここは・・・?)

 

 

周りを見てみると、どうやら何かの研究室のような所のようだ。自分のいるガラスの槽の周りにある機器を見てそう確信した。

 

 

(でも、知らないところだ)

 

 

以前にも目覚めてみるとそこは研究室だった、ということはあった。そのときは、自分の意思でそうなったからそこがどこだか知っていた。だが、今回目が覚めたのは全く知らない所。

 

 

(とにかく、ここから出て確認した方が早そうだな)

 

 

そう思い、誰かに出してもらおうと周りを見回してみるが誰もいない。しばらく待ってみようと思ったが止めた。

自分の知らない所、それも何かの研究室の様な所だ。そんな所にいて、そのままもう一度眠らされ、何かされたらたまったもんじゃない。

そう思い、少年は目を閉じ、意識を拡大した。すると周囲にある全てのものから力が少年へ流れ込み始めた。

 

領域作成

 

魔法使い――ウィザードの中でも「大いなる者」と呼ばれる者の能力。そう、少年もその「大いなる者」の一人なのだ。

 

少年は自らの身体に流れ込んできた力を全て右腕に集めた。そして、その腕を後ろに大きく引き―――

 

 

「はぁぁぁあっ!」

 

――ゴンッ!

 

―――ガラスの槽の内側から正面に向けて拳を叩き込んだ。すると、

 

――ピシッ・・・

 

罅が入り、

 

――バリッ・・・バッシャァァアン・・・

 

割れた。

少年は流れ出る液体の流れに乗り、そのままガラスの槽から出る。

そして、ガラスの破片に気を付けながら立ち上がり、正面にあるドアをしばらく見て誰も来ないことを確認すると「領域作成」を解いた。

その時、ふと自分の身体を見てみると何も着ていない事に気が付く。何か着る物はないかと周囲をもう一度見回してみると部屋の左手に机が置いてあり、その上に布製の何かが置かれていた。

近づいてそれを手にとって広げてみると、どうやら服のようだった。

 

 

(勝手に着ても、いいよね?)

 

 

そう思いながら、さっそく着てみることにした。

しばらくして、少年は先ほどの服を着終え、机の側の壁に取り付けられていた鏡で自分の姿を確認していた。

 

少年の着ている服は白い半袖のTシャツにデニム地のハーフパンツ。シャツの胸元には羽が一枚、背中には一対の翼が青色で描かれていた。

 

青い髪と瞳をした少年にぴったりの服装だったが当の本人は身体を軽く動かしながら一つ疑問に感じていた。

 

 

(何で、サイズがぴったりなんだ?)

 

 

そう、何故かサイズが合っていたのだ。もしかしたら誰かが用意していてくれたのかもしれない。そう思いながら服の具合を確認していると部屋の外に誰かの気配を感じた。ついでに魔力も・・・。

 

 

(魔力? しかも複数・・・もしかして、ここはどこかのウィザードの物なのか?)

 

 

そう思いながら少年は気配の相手に警戒しながら、もしもの時のために魔法をすぐに使えるよう魔力を高めておく。

しばらくして、気配の持ち主達はドアの前に止まり、そして中に入って来た。

入ってきたのは初老の男性と若い女性が二人、あと、姿は三人の陰になっていて見えないがもう一人いるようだ。

 

初老の男性はどこかの軍か何かの制服らしきものを着ていて、肩に付いている飾りからかなりの階級の人物のようだ。どこか優しそうな雰囲気の中に混じる独特な空気からもそれが分かる。

その男性に従うように彼の少し後ろにいる二人の女性もどこか近未来的な感じがする動き易そうな軍服のような物を着ている。二人の容姿は双子なのか髪の長さが違う以外違いはない。猫耳と尻尾が付いているのを見て少年は

 

 

(人狼の親戚か?)

 

 

と、思った。それから四人とも自分に害意がないのにも気付き、警戒を解いた。

ちなみに、これはほんの一瞬の内に観察して出たことだ。伊達に10歳のころから幾つもの修羅場を越えてきたわけではない。

 

初老の男性は部屋に入ってすぐに奥にあるガラスの槽が割れているのを見て一瞬驚きの表情を浮かべたが、その後に少年が部屋に有った鏡の前から自分のことを見ているのにも気付き近づいていった。

 

 

「本当に起きていたとはね。驚いたよ」

 

 

そして、少年の前まで来ると人の良さそうな顔をして右手を差し出し、

 

 

「初めまして。私は――」

「――主様っ!!」

 

「ぅおっ!?」

 

 

挨拶をしようとしたところで少年に誰かが抱きついた。

少年は体の大きさから抱きついてきたのは少女で、先ほど確認できなかった四人目であると考えた。だが、少し引っかかることがあった。

 

 

「『主様』? 俺が?」

 

「うん!」

 

 

そう、少女が口にした「主様」と言う単語。少女に確認してみる自分のことのようだ。確かに「大いなる者」の一人である自分をそのように呼ぶ存在はいた。だが、今抱きついてきているような少女は知らない。

 

 

「ちょっとごめんね」

 

「?」

 

 

そう言って少女を自分から離して確認してみる。

少女の容姿は腰の辺りまで伸ばした銀色の髪に琥珀色の瞳、透き通るような白い肌をしていて、自分の着ているシャツと同じ柄が描かれた白いサマードレスを着ている。身長やその愛くるしい顔から「少女」と言うよりも「小さな女の子」と言った感じだ。

 

その少女をよく見てみたが、やはり知らない。なので、本人に聞いてみる。

 

 

「君は誰なんだい? 俺の事を『主様』と呼んでいるけど、俺は君の事を知らない。だから、教えてくれないかな?」

 

「あっ、そうだった。ごめんなさい。えっと、わたしのことだよね。わたしは主様のデバイスで『ヴァイス・フリューゲル』っていいます。よろしくお願いします(ぺこ)」

 

「えっと、『デバイス』?」

 

「そのことと君がどうしてここにいるのかという事は、私から説明しよう」

 

 

先ほどからのやり取りを、苦笑を浮かべながら見ていた初老の男性がそう言って話しかけてきた。

 

 

彼の話によると、どうやらここは少年がいた世界ではないようだ。少年は「ミッドチルダ」と言う世界にあったとある遺跡の中から発掘されたカプセルの中で眠っていた。そして、人造生命体を生み出すプロジェクトに関わる者の中でも非合法な事をしていた連中のサンプルになっていて、そして、今はそこから「時空管理局」と言うところの本局へ移送されているそうだ。

そして、少女が先ほど言った「デバイス」と言うのは簡単に言ってしまえば「魔法使いの杖」のようなものの事で、種類は複数あり、その中に人の姿をとることが出来る「融合型デバイス」と言うのがある。少女はその「融合型デバイス」で少年と一緒に見つかったとのことだった。

 

一通り話を聞いて少年は男性に尋ねた。

 

 

「何故この子は俺と一緒に見つかったんですか?」

 

「それはわたしが答えるね」

 

 

そう言って今度は少女が話し出した。

 

 

「えっとね、『ハーリー』って名前、覚えてる?」

 

「ああ、覚えてるよ。親友の名前を忘れる分けがないだろ?」

 

「わたしはね、父様―ハーリー様によって主様のために作られたの」

 

「えっ、ハーリーの奴が?」

 

「そうなの。『もし目覚めた時に自分がいなかったらあいつの事を頼む』って父様、わたしに言ってた」

 

「そうか、あいつが・・・・・・」

 

 

そう呟く少年の顔には嬉しそうにしながらも、どこか寂しそうな表情が浮かんでいた。

少年はしばらくの間昔の事を思い出していたようだった。

そして、少女に向き直り

 

 

「これからよろしく、え〜と・・・ヴァイス・フリューゲルって女の子っぽくないから・・・・・・ツバサでいいかな?」

 

「『ツバサ』?」

 

「そっ、ツバサ。フリューゲルってドイツ語で『翼』っていう言葉なんだ。だから、君の事はツバサって呼ぶね。いいかな?」

 

「ツバサ、ツバサ、ツバサ、ツバサ・・・・・・うん! 気に入りました! ありがとう、主様!」

 

「どういたしまして。それと、俺のことを主様って呼ぶのを止めて貰えないかな? どうも、君みたいな子にそう言われると違和感があって・・・・・・」

            にいさま

「う〜ん・・・じゃあ、『兄様』って呼んでいいですか?」

 

「兄様、か・・・いいよ、それで」

 

 

そう言って、少女―ツバサの目線に合わせ、

 

 

「それじゃ、改めてよろしく、ツバサ」

 

「はい! 兄様!」

 

 

そう言った。

 

 

 

「さて、それではそろそろ行こうか」

 

「? どこにです?」

 

 

少年がそう言うと男性は一瞬考え、そしてすぐにその答えに気が付いた。

 

 

「ああ、そういえば言ってなかったね。これから君を転送ポートまで連れて行こうと思っていたんだよ」

 

「転送ポート?」

 

「まあ、説明は歩きながらでいいかな? 時間があまりないのでね」

 

 

そして、ドアに向かおうとしてまた何かに気が付いたのか立ち止まり、少年の方に再度向き直った。

 

 

「そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前はギル・グレアム。時空管理局の提督をしている。そして、後ろにいる二人はリーゼロッテとリーゼアリアで、簡単に言うと私の『使い魔』だ」

 

「「よろしく(〜)」」

 

「あ、どうも。こちらこそよろしく。俺の名前は―――」

 

 

そこまで言って少年は何て名乗ろうかと考えた。

 

 

(『大神 和樹』という名前は一度肉体を奪われたときに捨てた。だから・・・・・・)

 

「―――クルス・・・クルス・グランド」

 

 

そして、新しい身体になったときからの名前を名乗った。

 

 

 

 

 


あとがき

 

どうも初めまして、アゥグと申します

さて、やってしまいました。ほぼオリジナルのキャラを使っての作品。私は一体何をやっているのでしょうか?

???「ほんとね」

えっ、君は誰!?

???「誰ってあなたの他の作品に出てくるヒロインよ」

え〜と・・・(こんなヒロインいたか?)

???「ふぅ。仕方がないわね。ヒントは『天使』」

「天使」・・・ってもしかしてアイリス!?

アイリス「そうよ、やっと気付いたわね」

で、でもどうしてここに?

アイリス「それはね、文句を言いに来たのよ」

な、何故?

アイリス「あなたね、他にも書いてる途中の作品があるのに何新しいのを書いてるのよ」

いやね、何となく書きたくなって・・・

アイリス「それにヒロインである私が殆ど出てないじゃない。どういうことよ」

そんなこと言われても・・・第一、君はヒロインじゃなくて主人公の過去の恋人でしかも大昔に死んで――

アイリス「・・・ヤーウェ・エロヒム・カスマリム――」

えっ!? ちょ、ちょっと何で魔法の詠唱を・・・

アイリス「――来たれ、深淵の闇、切り裂け!」

いや、待って! それ主人公の魔法! しかも何で彼の始動キー!?

アイリス「あなたが私のを考えてないからでしょ」

だからと言ってそれで無理に魔法使わなくてもっていうかそれ死ぬ!?

アイリス「うるさい。『闇の鎌』!!」

ぎゃぁぁあああっ!!!

 

アイリス「さて、作者が死んでしまったので今後は私が――」

か、勝手に、殺すな・・・(当分出す予定のないオリジナルデバイス持ってて良かった)

アイリス「あら、生きてたの」

・・・何だか性格が設定とだいぶ違ってる・・・・・・しかも誰かに似てきてるし(ボソッ

アイリス「・・・何か言った?」

いえいえ、何も!

アイリス「そう、ならいいわ」

と、言うわけで次回予告

 

次回予告

 

新たな世界にて普通の日常を謳歌しようとするクルス

しかし、着いて早々に異形のものに襲われてしまう

それはジュエルシードによって変化した動物だった

ツバサと融合し、これを撃退するクルス

そして、町を彷徨っていた彼は一人の少女と出会う

 

次回、魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings

Act.1 いきなり戦闘!? そして出会いへ 

に、ドライブ・イグニッション!

 

 

アイリス「ひねりがないわね」

うっ・・・いいでしょ。内容はそうなんだから

アイリス「まあ、いいでしょ」

よかった(もう魔法はくらいたくないし)

アイリス「それじゃあ」

次回で

 

 





投稿ありがとうございます。
さて、クルスという少年が繰り広げるこの物語。
美姫 「果たして、どんな展開が待っているのかしら」
というわけで、次回も待っていますね。
美姫 「待っています」
ではでは。



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