「どうして、転送ポートなんて言う所に向かっているんですか?」

 

グレアムたちに連れられて転送ポートに向かって通路を歩いている途中、クルスは自分の前を歩くグレアムにそう尋ねた。このまま管理局の本局まで向かってしまっても問題ないように感じたからだ。

 

「理由は具体的には言えないが、管理局も全員が善人とは限らない、と言えば分かるかな?」

「・・・そういう事ですか」

 

グレアムのその答えを聞いて、クルスは少しだけ考え納得した。ようは管理局に到着しても局に所属する誰かにサンプルか何かにされるかもしれないと言うことだ。

 

(どこに行ってもそういう奴はいるんだな)

「そう言えばこんな事をしても大丈夫なんですか? しかも堂々と通路を通って・・・普通、監視カメラみたいので見つかりますよ?」

「そこら辺は大丈夫。一応細工をしてあるから見つかる事はないよ」

 

この行為に対して心配したクルスにグレアムは顔を少しだけ向け答えた。その顔には悪戯が成功した子供の様な表情が浮かんでいた。

 

 

そして、今クルスとツバサは一つの魔法陣の前に立っている。その後ろにはここまで案内してきたグレアムたちが立っていた。

 

「一応、転送先は地球の日本にある海鳴市と言うところにしているが・・・・・・」

「海鳴市・・・聞いたことのない地名ですね」

「ふむ・・・どうやら君が知っている地球とは違うようだね」

「ええ、でもかまいませんよ。もし、俺が知っている地球だったとしても知り合いはもういないだろうし・・・・・・」

「そうか・・・」

 

しばらくして、魔法陣の輝きが増した。どうやら準備が出来たようだ。

クルスとツバサは後ろに立っているグレアムたちに向き直りお礼を言った。

 

「ここまでしてくれて、ありがとうございます」

「ありがとう、おじ様」

「いや、これは私が好きでしたことだからね。気にしなくてもいいよ」

 

二人にお礼を言われたグレアムはそうかえした。

そして、クルスたちは魔法陣に向かって歩き出したが、途中でクルスだけ立ち止まり、また向き直った。

 

「あの、一つ言い忘れてたんですけど・・・・・・」

「何かな?」

「何をやるつもりかまでは分かりませんが、無茶をしないようにして下さいね」

「「「!?」」」

「ただの予感なんですけどね。それでは・・・」

 

先ほどのセリフに驚いているグレアム達を残し、顔に疑問の表情を浮かべていたツバサを促しクルスは魔法陣の発する光の中に消えた。

 

「ツバサ君から聞いていたが、本当に勘がいいのだな『大いなる者』とは・・・・・・」

 

二人が消えた魔法陣を見ながら、グレアムはそう呟いた。

 

 

 

魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings

 Act.1 いきなり戦闘!? そして出会いへ

 

 

 

夜、月明かりに照らされたどこかの森の中に突然魔法陣が現れた。しばらくしてその魔法陣は輝きを増してそして消えた。消えた後には、二つの人影――クルスとツバサがいた。

 

「どうやら着いた様だな」

「ですね」

 

周囲を軽く見回すクルスがそう言うと同じく見回していたツバサがそう答えた。

 

「さて、これからどうするかな・・・・・・」

「どうするんですか、兄様?」

 

ツバサにそう聞かれてクルスは考え始めた。

 

(さて、本当にどうしようか。この世界に知り合いがいるわけでもないし、どっかに部屋を借りようにもこの外見じゃ・・・・・・)

 

今のクルスの身体は9歳ぐらいの大きさなのだ。一応、身体能力などは元の18歳の身体と殆ど同じなのだがさすがに部屋を借りるのは無理である。

 

(ついでに言うとバイトも駄目だな・・・・・・う〜ん、本当にどうし――っ!?)

「兄様っ!!」

「分かってる!!」

 

そう言いながらクルスはツバサを抱きかかえてその場を飛びのいた。

その直後、三つの黒い何かが飛んできて先ほどまで二人がいた空間を切り裂き、後ろにあった木も切り倒していった。

 

――ズズ・・・ドスゥゥゥン・・・・・・

「「・・・・・・」」

 

二人は警戒しながら黒い斬撃の様な物が飛んできた方に目を向けた。するとその方向から黒い動物が現れた。よく見るとそれは巨大な黒猫だった。大きさは虎ぐらいあり、両の前足には人の大人の手ぐらいある鋭いナイフのような爪が生えていた。どうやら先ほどの黒い斬撃はその爪から繰り出されたもののようだ。

 

「ツバサはどこかに隠れてて」

 

そう言うとクルスはツバサに被害が行かないように彼女から離れる。

 

「で、でも兄様・・・」

「大丈夫」

 

そしてある程度離れると先ほどからこちらの様子を窺っている化け猫に向き直った。

クルスは意識を戦闘用に切り替えて、魔力を高めた。

そして――

 

「――『スピット・レイ』!」

 

自分が使うことの出来る物で発動するのに一番早い魔法を放った。だが、相手は光の弾丸が当たる直前に横に飛んでかわし、そのまま飛び掛ってきた。

 

「ミャッ!!」

「くっ!『フォース・シールド』!!」

――ガキィィンッ!

 

クルスの声と共に突き出された手の先に一瞬で光が集まり光の盾が現れた。光の盾と化け猫の爪がぶつかり合い、そして光の盾は衝撃を生み出し、化け猫を弾き飛ばし砕けて消えた。そこにクルスがまだ空中にいる化け猫に向かって掌を向けもう一度魔法を放った。

 

「『ヴォーティカル・ショット』!!」

 

掌の前に現れた直径10cmの漆黒の球体は空中でまだ体制の整わない化け猫に向かって飛んでいった。それと同時にクルスは止めをさすために少し迂回しながら化け猫に向かって駆け出す。それに対し、化け猫は空中で身体を捻りながら漆黒の球体に向かって黒い斬撃を放った。すると――

――バンッッッッ

漆黒の球体はその斬撃に当たって消え、その直後何もない空間を歪めた。

 

「なっ!?」

 

それを見てクルスは驚き動きを止めてしまう。そこにいつの間にか接近していた化け猫が爪による攻撃を繰り出してきた。

 

「シャァァァッ!」

「っ!? ふっ!!」

 

クルスは咄嗟にその攻撃に対し斥力場を纏わせた拳を当てて逸らし、同じく斥力場を纏わせた足で回し蹴りを胴体に繰り出し大きく弾き飛ばした。

 

斥力場

これも「大いなる者」の能力。魔力を消費し物と物を反発させる斥力の力場を生み出す能力。以前は攻撃を完全に逸らしたりするのには結構魔力を消費したのだが――

 

(以前より威力が上がっている?)

 

そう、以前と同じように魔力を込めて使用したのだが威力が上がっているのだ。先ほどの蹴りを食らった化け猫は大きく吹き飛び、木々の陰に入って姿が見えなくなっている。

 

(それに当たっていないが魔法の威力も上がっている)

 

先ほど使用した三つの魔法の威力も斥力場を使用した時と同じように上がっていた。どうやら魔力が上がっているようだ。でも、問題もある。

 

(だが、攻撃魔法の威力を上手くコントロールできない)

 

先ほど「スピット・レイ」を放った時は気付かなかったが、その後に放った「ヴォーティカル・ショット」を迎撃された時にそのことに気付いた。

 

(どうする、このまま魔法で攻撃してもいいが下手をすると魔法を暴発させてしまうかもしれない・・・かといって接近戦に切り替えようにも剣はあの時折れたから“月衣”に入っていないし・・・・・・)

 

月衣

「かぐや」と読む。ウィザードなら誰でも持っている個人単位の結界のようなもの。同じウィザードか敵である侵魔―エミュレイターによる攻撃以外の通常の物理的ダメージは10分の1に軽減される。また、この中(見た目は何もない空間)に物を仕舞う事もでき、ウィザードは基本的に普段はこの中に武器等を仕舞っている。

 

「兄様」

「ツバサ?」

 

どうやってあの化け猫を倒そうかと考えていると、いつの間にか側に来ていたツバサが話しかけてきた。

 

「わたしと融合して」

「融合・・・」

「わたしと融合すればあいつをかんたんにやっつけることができるよ」

「・・・分かった。でも、どうすれば・・・・・・」

「呪文を今からおしえるね。えっと、呪文は――」

 

クルスがツバサから起動呪文を教わっていると化け猫が戻ってきた。が、警戒しているのか今度はすぐには襲ってこないで様子を窺っている。

クルスはその隙に呪文を唱えることにした。

 

「いくよ、ツバサ」

「うん、いいよ」

 

すると、二人の足元に蒼銀色の一つの魔法陣が現れた。だが、その魔法陣はミッドチルダ式の物でもベルガ式の物でもなかった。

二重の円の内側に正三角形があり、その内側にも正三角形が逆さまにあるというものだった。これはクルスとツバサの製作者であるハーリーが、元々彼らのいた世界、近隣の異世界からは第八世界―“ファー・ジ・アース”と呼ばれる世界のウィザードであるためこうなっているのだ。

 

我、光と共に虚空を歩む者。この身に秘めるは大いなる力。闇を切り裂く翼と共に、魔を断つ剣をこの手に・・・。ヴァイス・フリューゲル、セットアップ!!」

「はい、主様・・・」

 

唱え終え、最後にツバサがデバイスとして返事をすると、蒼銀の光を放つ魔法陣が強く輝きだし、二人はその光に包まれる。そして、光は蒼銀の輝きを放つ光の球になった。光球は次第にその輝きを増していき、弾けた。

すると、そこには大きな白い翼でその身を隠した「何か」がいた。それを見た化け猫は本能的にその「何か」を危険と感じ、飛び掛りその爪で切り裂こうとする。だが―――

 

――ガキィィィン!

 

爪はその翼を切り裂くことが出来ず、翼が発生させている蒼銀色の障壁に受け止められてしまう。

爪を受け止めた「何か」はすぐにその翼を開いて、同時に化け猫を弾き飛ばした。そして、翼を開いた反動で舞い散っている白い羽の中、白き鎧を身に纏った一人の青年がそこに立っていた。

鎧は縁を金色で彩られ、胸の中央と両肩、両篭手、両膝には青い宝玉がはめ込まれていた。頭部も側面に小さな翼が付いた兜で全体が覆われていたが、目の部分だけが開いていて、そこから金色の瞳が覗き、後ろからは蒼銀の髪が腰まで伸びていた。

化け猫は、先ほどまでそこにいた少年とは違う存在が現れたためさらに警戒を強め、様子を窺っている。

一方、青年の方も困惑していた。

 

(な、何だ? 目線がさっきよりも高い・・・・・・もしかして、体のサイズが昔の大きさに戻ってるのか?)

(その通りです、兄様)

 

自分の状態を分析していた青年に対して彼の頭にツバサの声が響く。そう、この青年はクルスなのだ。今の彼の身体は新しい身体になる前、奪われてしまったかつての身体と同じ大きさになっているのだ。

 

(この方が兄様にとって戦いやすいだろうと思って・・・それに兄様から流れてきたイメージもちょうどそんな感じだったのでこうしてみたんですけど・・・・・・)

(まあ、確かにこの方が戦いやすいからな。別にいいよ。それで、どうやって倒せばいい?)

(今回ははじめて融合しましたから、わたしが送るイメージにあわせて戦ってください)

(ん、分かった)

「フゥゥゥゥ・・・ミャッ!!」

 

と、ちょうど念話を終えると同時に化け猫が襲い掛かってきた。それに対しクルスは地面を蹴って飛び上がると同時に飛行魔法を発動し、翼を羽ばたかせ上昇しながら後方に回避する。回避しながら舞い散った羽に意識を飛ばす。すると羽一つ一つを環状魔法陣が取り囲み、羽が魔力を帯び、蒼銀になりながら先を虎の方向に向けた。

 

「フェザー・アロー――」

 

その声と共に羽たちは輝きだし、

 

「――シュート!」

 

放たれた。

羽たちはそのまま斬撃を放とうとしていた化け猫のいる地点へ向けて横殴りの雨のように降り注いだ。化け猫は咄嗟に回避しようとしたがしきれず、いくつもの羽をその身に受けた。それでもまだ戦うつもりらしく再度斬撃を放とうとしていた。

それを確認し、クルスはツバサに武器を出してくれるよう頼んだ。

 

「剣を・・・」

(はい。フリューゲル・シュベルト)

 

ツバサの返事が聞こえたのと同時に、目の前に一振りの剣が現れた。それは細身の刀身を持ち、鍔が一対の白い翼の形をしていた。中央には水色をした宝玉がはめ込まれ、本来上に向かって開いているのであろうその翼は柄の方に閉じていた。

その剣―フリューゲル・シュベルトを右手で執った。

 

「フォトン・エッジ」

 

クルスは刀身に蒼銀の光を纏わせ、抜刀するような構えを取った。そして、今度は両足に意識を集中する。すると両膝についている宝玉が光だし、両足を中心に少し空間が歪み出した。

そして、右足を前に踏み出すと同時にその歪めて圧縮していた空間を解き放った。空間が戻る反動を利用して一気に化け猫に接近し、そのまま擦れ違いざまに斬りつけた。

 

「ミャァァァァアア・・・!!」

――ザザァァァ・・・

 

数メートル程すべりながら止まり、そして完全に止まると斬りつけた化け猫に向き直った。向き直ったクルスの目に、化け猫の身体から何か青い宝石の様な物が放出される光景が映った。

 

(兄様、封印を!)

「分かった」

 

そう言うとクルスはその宝石に近づき、剣を触れさせる。

 

(ジュエルシード・ナンバー13、封印完了)

 

青い宝石は剣の鍔の部分にある水色の宝玉に吸い込まれた。それと同時に、クルスの身体も光を放ち、光の収まったところには9歳の少年の身体に戻ったクルスとツバサが立っていた。その側には先ほどの化け猫だったと思われる猫が倒れているが、ぱっと見でも外傷がないためただ気絶しているだけのようだ。

クルスは疲れたのかその場に足を投げ出して座り込んだ。それに習うようにツバサもクルスの横に腰を下ろした。

 

「ふぅ。これでちょっとは安心して話が出来るな」

「そうですね」

「で、質問があるのだが―――」

「はい、さっき回収した物についてですね」

「ああ」

「分かりました。さっき回収したのはジュエルシードと呼ばれる物で、手にした人の願いを叶える力を持つロストロギアなんです。ただ、発動が不安定で、使用者を求めて暴走したり、周囲のものを取り込んで危害をくわえたりしてしまうことがあるそうなんです」

「なるほど。と言う事はさっきの化け猫はこの猫の願いをジュエルシードが叶えた姿だったと言うわけか」

 

そう言って、クルスは自分の隣でまだ気を失っている猫に目を向けた。すると、何かに気付いたらしく顔を少ししかめた。

先ほどぱっと見では外傷はないと言ったが、よく見ると毛の下に細かい傷の痕がいくつもある。それと首輪がないのを見るとどうやら野良のようで、先ほど述べたこととあわせると他の野良猫たちから苛められているらしい。クルスはそのことに考えがいたり、それが原因で「強くなりたい」と言う願いを持っていてジュエルシードを発動させてしまったのだと思った。

 

「それで、何でそんな物がこの世界にあるんだ?」

「えっと、どうやら遺跡から発掘して移送している途中で事故に遭ってしまって、どこかの世界にばら撒かれてしまったみたいなんです」

「そのばら撒かれた世界っていうのがこの世界と言うことか・・・・・・」

 

そこまで話を聞いて、クルスは疑問に思ったことを聞いてみた。

 

「しかし、何でそんなことまで知っているんだ」

「それはですね、兄様が目覚める前までに管理局のデータベースにちょっとだけハッキングして最近の情報だけを見て覚えたので・・・・・・」

「ちょっとだけって、もしばれてたらどうするんだ?」

「だいじょうぶですよ。そんなへましてませんから」

 

そう自信たっぷりに言うツバサを見て、溜め息をついた。

 

「はぁ・・・まあ、いいけど。それじゃ本格的に今後の方針を決めようか」

 

そして、話し合った結果、街中に出て誰か親切な人に助けてもらおうというなんとも情けない物になった。

 

「兄様・・・」

「うっ・・・し、仕方ないだろ。この世界じゃ俺の持ってるコネクション、まるっきり役に立たないんだから」

 

ちなみにどんなものがあるかというと、時々仕事の依頼を(半強制的に)してくる“世界の守護者”でロンギヌスと言う組織のトップのアンゼロット、卒業した学校でもあるイノセント(力を持たない人)とウィザードも通っている私立輝明学園秋葉原校、幼馴染、義理の妹・・・・・・元の世界なら結構役に立つがこの世界では本当に役に立たない。

 

その後、何故か月衣に入っていたテントを広げて眠りに付いた。

 

 

・・・・・・夢を見ている。

それは白と黒、二人の魔法少女がジュエルシードを巡って争っているものだった。

白い魔法少女は戦いながらも必死に黒い魔法少女に何かを訴えかけている。

黒い魔法少女はそれには答えず、いや、そんな相手に戸惑いながらも何かの為にジュエルシードを手に入れようとしていた。

そんな夢を見ている。

そう、これは夢。

でも、この夢の内容はまだ現実のものになっていないが、いずれ起きること。

自分が見る夢、特にリアリティーがあるものはそう言ったもの。

だから、これはいつか必ず起きる出来事の夢。

 

 

翌日の午後、街中にて――

 

「・・・・・・ここはどこだ?」

(兄様、だいじょうぶですか?)

「駄目っぽい・・・」

 

クルスは今、道に迷っている。

一応昼前に起きて、昨夜決めた方針の通りに人通りが多いであろう駅前を目指して歩いていたのだ。途中、地図を見つけて歩いていたのですぐに着くだろうとツバサは思っていたのだが、その考えが甘かった。彼女は知らなかったのだ。クルスの持つあるスキルを。

そのスキルの名は「超方向音痴」。

これは目的地に絶対にたどり着けないと言うもの。しかも、一度行った事のあるところでさえなかなかたどり着けないと言う厄介なものだ。

クルスは今回もそれを発揮してしまい目的地にたどり着けず、延々とこの海鳴市内(駅前以外)を彷徨い続けていたのだ。

 

ちなみに、ツバサは今はスタンバイ状態になっていて、中央に水色の宝石がはめられている一対の翼の形のペンダントという姿でクルスの首から下げられている。

 

「うぅぅ・・・腹減ったぁ・・・」

(兄様、がまんしてください)

「だってよう」

 

ついでにもう一つ問題が発生していた。クルスが空腹で今にも倒れそうなのだ。

昔はそんなに食べなかったのだが、この身体になってからはどうも燃費が悪いのだ。故に三食(しかも最低でも二人前ぐらい)しっかり食べないと身体が持たないのだ。

 

クルスはツバサと会話しながらも今朝見た夢のことを考えていた。

 

(今朝のはかなりリアリティーがあったな。たぶん、夢に出てきたあの二人がジュエルシードを巡る出来事の中心になるんだろうな)

 

彼は時々、予知夢のようなものを見るのだ。と言ってもかなり大雑把なもので、何かしら自分も関わる出来事の中心になる人物や物が出てくるだけなのだが・・・・・・。

 

(それにしてもあの子たち、ホントに“魔法少女”だったな。それに、片方の子、何か危うい感じがしてたな・・・っと)

 

横断歩道を渡ろうとしたが信号が赤になってしまったので止まった。

 

(・・・ん?)

 

クルスは何気なく向こう側を見て何かに気付いた。

 

(兄様? どうかしましたか?)

(あの子は・・・・・・)

 

クルスの視線の先には三人一組の女の子達がいた。その内の一人を見てクルスは驚いていた。服装は微妙に違うが、夢の中に出てきた少女だったのだ。

そうこうしている内に信号が青に変わったので歩き出した。向こうもこちらに向かって歩き出したが一人だけ、あの少女だけが何故か出遅れてしまう。先に行ってしまった二人に声を掛けられ、慌てて早足で追いかけようとした。しかし、何かに躓いたのかバランスを崩してよろけてしまう。何とかその場に踏みとどまることが出来、ほっとしている。だが、それがいけなかった。一台の車が信号無視をして少女のいるところに突っ込んできたのだ。

 

「なのは!!」

「なのはちゃん!!」

 

少女の友人達が悲鳴を上げる。

 

「ちっ」

(間に合え!!)

 

クルスは駆け出しながら身体を高速で動けるように変化させ、意識を加速させた。

 

スタイルチェンジ

これは人造人間の能力の一つ。様々な状況でそれに適した状態に身体を変化させる能力。

 

加速装置

これも人造人間の能力。意識を加速させ、すばやく行動できるようにする能力。

 

全てがスローモーションになっている世界で、クルスは突然のことで足がすくんで動けない少女に駆け寄り、その身体を抱きかかえて向こう岸に移動した(ちなみに所謂お姫様抱っこで)。

向こう岸につくと同時に加速装置の効果が切れ、景色が元の動きに戻る。

 

「ふぅ・・・」

「え、え、え?」

 

クルスは何とか助けられたのに安堵の溜め息をつき、自分の腕の中で突然のことでちょっとだけパニックになっている少女に声を掛けた。

 

「大丈夫かい?」

 

 

 

 


あとがき

や、やっと書けた・・・

アイリス「随分と時間が掛かったわね」

そんなこと言われても・・・

アイリス「それに予定していたとこまでいけてないんじゃない?」

うっ・・・

アイリス「確か居候先が決まるところまで書く予定だったんじゃなかった?」

だって戦闘シーンが意外と長くなっちゃったんだから仕方ないじゃないか

それに結構難しかったし・・・

アイリス「ただ単に文才がないだけでしょ」

・・・・・・それは言わないで

アイリス「そう言えば一つ疑問があるんだけど」

何?

アイリス「クルスはこのリリカルなのはの世界の魔法のことは殆ど知らないのに、どうして転送ポートのこと聞かなかったの?」

ああ、それはね、似たようなのを知ってたからなんだ

アイリス「似たようなの?」

さっき、文章でコネクションのこと書いてたでしょ?

そこに「アンゼロット」っていうのがあるでしょ? ナイトウィザードの世界に彼女が設立した「ロンギヌス」っていう組織の拠点が異空間にある彼女の宮殿「アンゼロット宮殿」にあるんだけど、そこに、地球上のあらゆる地点に転送できる“ゲート”というのがあるんだ。クルスも仕事に無理やり連れてかれたときに何回もこれを使ったことがあったから、これと同じ様な物だろうと考えて聞かなかったんだ

アイリス「なるほどね〜」

さてさて、それでは次回予告。今回は原作みたく、なのはちゃんで

 

 

次回予告

私を助けてくれた男の子。

その子の事情を聞いたお母さん達は勝手に家に住まわせることを決めちゃった!

そして、その日の夜もユーノ君とジュエルシードを集めに行ったんだけど、今回は相手が強くてちょっとピンチ。

その時、私の目の前に一人の騎士が現れたの。

 

次回、魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings

Act.2 謎の白騎士と遭遇なの

に、ドライブ・イグニッション!

 

 

アイリス「そう言えばこれ読んでくれている人ってナイトウィザードって知ってるのかな?」

ん〜・・・どうだろう? でも、クルスってあれのルールで作ったキャラだけど殆どオリキャラに近いから・・・まあいいか

アイリス「よくない!」(ガスッ)

ぐぇっ

アイリス「ちゃんと説明しなさい」

うぅ・・・(杖で殴らなくても)

じゃ、じゃあ、次回少しだけ説明します・・・今回はこれくらいにしないと長くなりすぎる

アイリス「そうね。分かったわ。それで許してあげる」

た、助かった・・・それでは

アイリス「また次回でね」

 

 

 





という訳で、迷子の迷子のクルスくんは。
美姫 「居候先となりそうな子を助けたとさ」
これもきっと運命だね。
美姫 「さてさて、ジュエルシードを巡る物語はどうなっていくのかしらね」
次回も楽しみに待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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