どうも、高町なのはです。
えと、今、私達はお父さん達が経営している喫茶翠屋でケーキを食べているんですけど、肝心のホークは止まってしまっています。原因は――
「ぱくぱくぱくぱく……」
――私の横で、ものすごい勢いでケーキを食べている男の子にあります。
彼は私の命の恩人なんですけど、その時はちょっと大人びていてカッコいいなと思ったのですが、今の姿を見ると私と同じぐらいのただの男の子にしか見えません。
あ、１０皿目に入りました。
ついでに言いますと、１皿に３個ケーキが並んでいます。
………え〜と、なぜこのような状態になっているかと言いますと、それは私が彼に助けられる所までさかのぼります。
魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings〜
Ａｃｔ．２ 謎の白騎士と遭遇なの
最近疲れていた私は信号が青に変わるのを待っているうちにぼーっとしてしまい、信号が変わりみんなが歩き出したのに反応が遅れたので慌てて追いかけました。その時、お姉ちゃんじゃないけど、何もないところでつまづいて転びそうになったけど何とか踏みとどまることが出来てほっとしていました。
でも、それがいけなかったのかもしれません。何故なら、その時一台の車が信号無視をしていたのだから……
「なのは！」
「なのはちゃん！」
私は自分に迫ってくる車に気付くと怖くて思わず目を閉じてしまいました。それで、来るであろう衝撃に身構えていると何か暖かいものに包まれ、その後に少しだけ風を感じました。
何が起きたのだろうと思い目を開けて周りを見てみると、そこはわたろうと思っていた横断歩道のさっきまで立っていた所でした。
「え、え、え？」
何が起きたのか分からなくてちょっとだけパニックになっていると、
「大丈夫かい？」
と、声を掛けられました。声のしたほうに顔を向けると私を心配そうな表情で見つめている青い髪と蒼い目をした男の子の顔がすぐ近くにありました。
（あ、ちょっといいかも……）
「？？」
そんなことを思い、ボーっと彼の顔を眺めていると私から返事が返ってこないことに彼は目をぱちくりさせて首を傾げました。
（小動物みたいな反応も何だか……）
「なのはー！」
「なのはちゃん、大丈夫ですか！？」
（アリサちゃんとすずかちゃんの声が聞こえる）
「えっと、この子の友達ですか？」
「あ、はい。そうです」
「ところで、なのはは…？」
「ああ、大丈夫、どこも怪我はしていないよ。でも……」
「？……ああ、こういうことね」
「何だかいいね、こういうのって」
「そうね…って、そんなこと言ってる場合じゃないわよ。なのは、ちょっとなのは！ いつまでそんな格好しているつもり？」
（え、そんな格好って……？）
そのアリサちゃんの声を聞いて私は自分の状態を確認してみました。男の子は背中と膝のところで私を抱きかかえる格好――マンガやドラマで見かけるお姫様抱っこをしていました。
それに気付くと、私は急に恥ずかしくなって私を抱えてくれている彼に声を掛けました。
「あ、あの〜、その〜……お、降ろしてくれませんか？」
「ん？…ああ、ごめんね」
そう言うと彼は私を足から降ろしてくれました。
「一応聞くけど、どこも怪我してないよね？」
私がしっかりと立つのを見届けてから、男の子はそう尋ねてくれました。
それを聞いて私は体を軽く動かして状態を確認しました。
（うん、どこも痛くない）
「えっと、大丈夫だと思います」
「そうか、良かった」
そう言うと彼は心底安心したという表情をしました。それから騒がしくなった周りの状態を見て、
「ちょっとここから離れたほうがいいかも知れないね」
と、言いました。
「ええ、そうね」
「それならここから少しはなれた所に公園がありますからそこまで行きましょうか？」
「確かに、あそこまで行けば大丈夫でしょうね。なのはもそこでいい？」
「えっ、う、うん。私は別にいいよ？」
「話は纏まったかな？ なら、案内お願いできるかな？ 俺、ここら辺のことよく分からないから」
「それなら私達付いてきてくださいね」
そして、私達は近くの公園まで行こうと思いましたが、
「あっ……」
――パタンッ……
歩き出そうとしたら男の子は急に倒れてしまいました。私達は慌てて駆け寄り声を掛けました。
「ど、どうしたの！？」
「は、腹が……」
「腹が？」
「腹が減って動けない…」
――ぐぅ〜……
「「「…………」」」
「え、え〜と、とりあえず何か食べて行く？」
そして、急遽、翠屋まで行くことになりました。
翠屋に着いて、お父さん達に事情を説明すると
「なのはを助けてくれたのなら何かお礼をしなきゃね」
と、お母さんが言って彼にケーキを出してあげました。
そして、今の状態にいたる、と言ったところです。
「ふぅ…ご馳走様。美味しかったです」
そんなことを考えていると食べ終わったようです。結局、食べたのは１０皿、計３０個。
……何か周りのお客さんから見られています。特に女性の方から……。
「ふふふ、そう言って貰えると桃子さん、嬉しいわ」
「あっ、俺、お金持ってないんですけど……」
「ううん、別にいいわよ」
「でも……」
「これはなのはの命の恩人に対するお礼なんだから、気にしなくていいわよ」
「そう、ですか……ありがとうございます」
そう言って頭を下げる男の子。
「それにしてもよく食べたわね……」
男の子の前に積まれたお皿を見てアリサちゃんがそう呟く。確かにアリサちゃんの言うとおりです。ちょっとお腹がすいたぐらいじゃこんなに食べられません。
「あ、あははは……実は昨日の夜から何も食べてなくて……」
それに男の子は苦笑しながらそう答えました。その答えを聞いて、今まで黙っていたお父さんが男の子に話しかけました。
「何か事情があるのかい？」
「えっと、実は俺―――」
お父さんのその問いに対して男の子はちょっと言いずらそうにしてから、
「―――記憶喪失みたいなんです」
そう、答えました。
「記憶喪失みたいって……」
「それは本当なのかい？」
お父さんはちょっと驚いた顔をして問いかけました。
「ええ、本当なんです。気が付いたら森の中にいて、それでここに来る前までのことを思い出そうとしたのですが何も思い出せなかったんです。その時に、自分の事もほとんど思い出せなくて、唯一思い出せたのが自分の名前だけだったんです」
「そうだったの……それで、名前は何て言うの？」
その話を聞いてお母さんは優しい顔をして彼の名前を聞きました。確かに私達も彼から名前を聞いていなかったので、ちょうどよかったです。
「クルスです。クルス・グランド」
「わぁ、外国の人だったの……」
「と言っても日本でずっと暮らしてたんでしょうかね。日本語以外ほとんど駄目です」
「そうなの……そう言えば日本語上手いものね。それに何となくハーフみたいな感じがするし……」
「そう、でしょうか？」
お母さんの感心した声に男の子――クルスくんは首を捻りながらそう答えました。
その時、下を向いて何かを考えていたお父さんが顔を上げてクルスくんに話しかけました。
「記憶喪失と言うことなら、宿はどうしたんだい？」
「え〜…野宿しました」
クルスくんはちょっと恥ずかしそうにしながらそう答えました。それを聞いたお父さんはお母さんに近づいて何かを耳打ちしました。それから、二人は私達に聞こえないぐらい小声で話し合っていましたが、やがてクルスくんに向き直ってこう言いました。
「それじゃあ、今日からは家に来るかい？」
「えっ、いいんですか？」
それを聞いてクルスくんはやや驚きながら聞き返しました。
「別にかまわないよ。記憶喪失の、それも君みたいな子供をこのままにしておくわけにはいかないからね。記憶が戻るまでの間だけども家にいるといい、部屋もまだ空いていることだし。どうだい？」
「ありがとうございます！ それではよろしくお願いします」
お父さんの話を聞いてクルスくんは笑顔でそう返事をしました。
「よろしく。一応自己紹介をしておこうか。俺は高町士郎。ここ喫茶翠屋のオーナーで君の隣に座っている高町なのはの父親だ」
「私は高町桃子。なのはの母親よ」
「え〜と、私達もしたほうがいいかな？ 私の名前は月村すずか。なのはちゃんの友人をしています」
「私はアリサよ、アリサ・バニングス。すずかと一緒でなのはの友達よ。それにしてもクルスってどっかで聞いたような名前ね」
お父さん達が自己紹介をするとすずかちゃん達も自己紹介をしました。あ、私もしなきゃ。
「えっと、高町なのはです。さっきはありがとう」
「いや、気にしなくていいよ…っと、俺の番だね。クルス・グランドです。皆さん、改めてよろしくお願いします」
こうして我が家に新しい住人が一人増えました。それはいいんだけど……お父さん、お母さん。クルスくんと同い年くらいで二人の娘である私の意見を聞かずにそういうのを決めるのはどうかと思うんですけど……。
そして、夕食の席でお兄ちゃんとお姉ちゃんにクルスくんを紹介することになりました。二人とも、クルスくんの事情を聞いて最初は驚いていたけどすぐに笑顔になり会話を始めました。
「初めまして、クルス君。俺はなのはの兄の恭也だ。そして、これは妹の美由希だ」
「恭ちゃん、これって何よ、これって……初めまして、私はなのはの姉で美由希っていうの、よろしくね」
「どうもご丁寧に……。先ほど士郎さんから紹介させてもらったクルス・グランドです。これからよろしくお願いします」
クルスくんの様子を見ていると何だか落ち着いていて、とても私と同い年には見えませんでした。
（あの時、私を助けてくれたときも、何だかお兄ちゃんぐらいの年上の男の人みたいだったし……そうかと思えばその後は私と変わらない年の男の子みたいだった……どっちが本当のクルスくん何だろう？）
そんな事を考えていると、リビングの方からユーノくんがやってきました。そう言えばユーノくんを紹介するのを忘れてました。
（ユーノくん、ユーノくん）
（どうしたの、なのは？）
（ちょっとこっちに来てくれるかな？）
（別にいいけど…）
私はユーノくんに念話で話しかけて椅子のそばまで来てもらいました。そして、ユーノくんを持ち上げてクルスくんに紹介しました。
「クルスくん、この子はユーノくん。最近、家で面倒を見てるフェレットなんだ。ユーノくん、クルスくんにご挨拶」
「きゅ」
（なのは、彼は？）
（実はね、車にひかれそうになってた私を助けてくれたの。でも、記憶がないみたいでそのことを聞いたお父さん達が話し合って決めて記憶が戻るまでの間、家に住まわしてあげることになったの）
（そうなんだ）
その後、夕食はいつもより少しだけ賑やかになって、クルスくんの笑顔も見れて何だか嬉しかったです。
「ふぅ〜…いいお湯だった」
そんなことを呟きながら布団に倒れ込むクルス。
ここは彼に宛がわれた２階の奥のほうにある元空き部屋。夕食の後、クルスは高町家の人々と談笑を楽しみ、その後、何故か一番最初に風呂に入らせてもらったのだ。士郎さん曰く「いろいろ疲れているだろうから今日は特別」だそうだ。
「そうですねぇ」
その呟きに実体化して水色の浴衣を着たツバサが答える。何故か彼女の髪も少し濡れている。そんな彼女を少しジト目になって見ながらクルスは口を開いた。
「何を呑気に言っている。いきなり実体化してなのはちゃんに見つかりそうになったのはどこの誰だ？」
「あは、あははは……」
そう、実はクルスが身体を洗っている時に、ツバサが「お背中ながしましょうか？」と言いながら実体化したのだ。もちろん、風呂場の中なので何も着ていません。
これにはさすがに驚き、うっかり大きな声を上げてしまい、洗面所の前をちょうど通りかかってその声を聞いたなのはが声を掛けてきたのだ。それに慌てて「何でもない」と返事を返し何とか見つからずに済んだのだ。
その後、身体を洗い終え湯船につかり、風呂から出て身体を拭いて、渡された青色のパジャマに着替えて部屋に戻ってきたのだ。ちなみにパジャマに着替えるまでの間、ツバサを見ないようにずっと目をつぶっていた。どうやって着替えるまでの一連の動作をしたかについては聞かないでいただきたい。人間、根性を出せば何だって出来るのだ。
その時の様子を思い返しながらツバサはクルスに話しかけた。
「でも、兄様。何で目を瞑ってたんです？」
「いや、さすがにまずいだろ」
「わたしは兄様のデバイスなんですから別に気にしなくてもいいのに……」
「あのな、いくらデバイスと言ってもツバサも一応女の子なんだからそれくらい気にしろよ。それに見た目こんなだけど俺だって男なんだから、その…何だ、色々あるし……一応言っとくけど５歳ぐらいの女の子に手を出すことはいくら何でもないけど、えと……」
「別に兄様だったら、わたし……」
「こらこらこらこらこらっ！！ そこっ！ 何危ないこと言おうとしているっ！！」
「え、だって……」
「だってじゃない！……この話はこれでお仕舞い。もう寝るぞ。……ツバサはスタンバイ状態でな」
「えぇ〜…何で〜」
ツバサの抗議の声を聞いて少し疲れた感じで溜め息を吐き、口を開いた。
「何で〜、じゃない。もし一緒に寝ているところを見つかったらどうするつもりだよ。唯でさえ、罪悪感感じながら嘘をついてるのに、どう言い訳するつもりだよ」
「あははは……ごめんなさい」
「はぁ……分かったら寝るよ」
「はーい」
ツバサの返事を聞いてクルスは明かりを消し、布団に入った。ツバサはスタンバイ状態になり、クルスはそれを枕元に広げたハンカチの上に置いた。そして寝ようとしたときにふと何かを思いついてツバサに話しかけた。
「ツバサ」
≪なんですか？≫
「一応、周囲を警戒できる？」
≪一応出来ますけど……≫
「なら、お願い。今夜も何かありそうだから……」
≪…分かりました。眠りながら少しだけ警戒用の機能を起動させときます≫
「ありがと」
ツバサにお礼を言うと、ツバサは今度こそ本格的に眠りに着いた。
そして、数時間後の深夜０時過ぎ……
（兄様……）
（……ツバサ？ やっぱり何かあった？）
（ええ、ジュエルシードの反応がありました）
（やっぱり……）
ツバサの報告を聞いて目を開け、布団の上で上半身を起こしどうするか考えているとツバサからもう一つ報告があった。
（それと、ジュエルシードの反応があってから少したって、なのはちゃんが家を出たみたいです）
（ん……たぶんジュエルシードを回収に行ったんだろう）
（兄様は気付いていたんですか？ なのはちゃんが魔導師だって）
（昨日の夢に出てきたんだよ、魔法少女のような格好をした彼女がね）
（なるほど、昼頃の兄様の反応はそれで……）
（それよりも、俺達も行くよ）
ツバサに念話でそう言うとクルスは布団から出て、普段着に着替えた。そして、ツバサを首にかけ窓から外に飛び降り、空中にいる間にクルスは魔法を唱えた。
「『フライト』」
クルスがそう唱えると彼の身体は光に包み込まれ、そして宙に浮いた。そのまま、ある程度高町家から離れて周りに誰もいないところに来るとそこで滞空し起動のパスワードを口にしようとした。そこで、ツバサが声を掛けてきた。
≪兄様、ちょっと待って≫
「ん、どうした？」
≪起動呪文って結構長いから簡略化してみたの。いざと言う時、困るかもしれないから……≫
「なるほど…サンキュ、ツバサ。それで、どんな風にしたんだ？」
≪最後のところだけ言ってくれればいいようにしたの≫
「分かった……ヴァイス・フリューゲル、セットアップ！」
≪はい、主様……≫
ツバサの返事と共に、クルスの足元に魔法陣が現れ強く光を放ち、クルスはその光に包まれた。しばらくして光は弾け、白い翼を背に持つ白騎士が現れた。
「さてと、行きますか」
≪はい、兄様≫
そして、ジュエルシードと魔力の気配を感じる方角へと向かって飛んで行った。
しばらく飛んでいると学校らしき建物が見えてきた。先ほどから感じている気配だと、どうやらここのようだ。それを確認し、グラウンドに目を向けてみると白い服を身に着けた魔法少女―なのはとフェレットのユーノが巨大な黒い「何か」に追いかけられ、必死に逃げ回っていた。
目を凝らしてその「何か」の正体を確認してみた。
「≪…………≫」
その正体を確認してクルスとツバサはなのは達が必死で逃げているのに無言で納得してしまった。
何故ならその「何か」の正体は、よく台所に出没する黒くてテカテカしていて一匹見つけたら百匹はいると思えと言われているアレだったからだ。
（（そりゃ逃げたくなるわな(よね)））
「………さて、助けるか」
≪兄様、見なかったことには……≫
「無理だな…と言うより早く助けてやらんとトラウマになるぞ、あれ」
そう言って必死に逃げているなのは達に目を向けると、その目にちょうど石か何かにつまずいてこけてしまったなのはの姿が映った。
それを確認するとクルスは巨大な黒いアレに向けて最速で魔法を放った。
「『スピット・レイ』！」
光の弾丸は倒れたなのはに迫っていた巨大なアレの直前の地面に着弾し、その動きを一瞬止めた。と、同時に今度は空中に舞っていた羽の一部をそいつの周囲に向けてはなった。放たれた羽は巨大なアレの周りに刺さった。それを確認するとクルスはある魔法を発動させた。
「ゲイザー、発動！」
その言葉と共に地面に刺さったいくつもの羽から光の棒が出現した。現在この光の棒には殺傷能力はなく、光で出来たただの棒である。分かりづらいが一応これでも拘束魔法である。それに囲まれて黒いアレが動けなくなったのを確認すると呆然としているなのはの側に降り立ち、声を掛けた。
「大丈夫かい？」
「えっ……あっ、はい。何とか……」
（今のセリフどこかで聞いたような……）
なのははクルスの声に反応してそう返事をした。
「立てる？」
「えっと、立てます」
「そう、なら早く立って。アレに憑いてるやつ封印するんでしょ？ そろそろ拘束が解けそうだから早くしたほうがいいよ」
「そ、そうだよなのは！ 早く封印した方がいいよ。じゃないと、また追いかけられるよ」
クルスがそう言うと近くにいたユーノも同じようなことを言った。その言葉を聞き、先ほどの出来事を思い出したのか血の気が引いた顔でなのはは首をこくこく動かして頷き、素早く立ち上がった。そして、杖―レイジングハートをシーリングモードにして足をカサカサ動かして今にも拘束が解けそうな巨大なアレに向けて構えた。
≪Stand by Ready≫
「リ、リリカルマジカル。ジュエルシード・シリアル２０。封印！」
≪Sealing≫
レイジングハートからピンク色の光のリボンの様な物がいくつも伸び、拘束から逃れようとしていたアレに絡みつき動きを封じた。そして、動きを封じられたアレは光に包まれ、そして元の小さな――
「や、やっぱり元の大きさでもダメェ〜！！」
「…ふっ！」
――ジュッ…
なのはの悲鳴を聞いて、クルスは思わず左手の人差し指と中指で挟んで持っていた魔力の篭った羽を投げつけて消滅させてしまった。
「む、しまった。つい反射的にやってしまった」
（に、兄様……）
そんな事をしている内に、ジュエルシードはなのはのレイジングハートの前までやってきて、その赤い宝石の中に光となって取り込まれた。
≪Receipt No.XX≫
「え、えと、助けてくれてありがとうございます」
「僕からもお礼を言わせてください」
「別にいいよ。ちょうど通りかかっただけだし」
「いや、それ嘘でしょ」
「……やっぱりばれた？」
「どう考えたって無理でしょ、通りかかったなんて」
ユーノにそう言われて首を捻りあからさまに困った顔をして考えるクルス（顔は二人には見えないが…）。と、そこへなのはが話しかけた。
「あ、あの名前は何て言うんですか？」
「ん？……それは秘密♪」
「秘密、ですか……」
クルスの返答にちょっと困惑するなのは。そのなのはに今度はクルスが問いかけた。
「それよりも、君に質問したいんだが……」
「な、何ですか？」
「君は何のためにジュエルシードを回収しているんだい？」
あとがき
ふぅ…やっと書けた
アイリス「ずいぶんと時間が掛かったわね」
いや、何か調子悪くてね
アイリス「いつものことでしょ？」
うっ……
アイリス「まっ、それは良いとして……」
（いいのか？）
アイリス「今回は確かナイトウィザードについて説明するんじゃなかったの？」
それは次回予告の後で。と、言うわけで次回予告
次回予告
白騎士さんからの問い掛け。あれは一体どういう意味なんだろう？
その答えを考えているうちに今度は町に被害が出るほどの事件が……
そして、この世界に新たな魔法少女さんが現れます。
次回、魔法少女リリカルなのは 〜The Great One of White Wings〜
Ａｃｔ．３ 私の決意なの
に、ドライブ・イグニッション！
さて、それではナイトウィザードについて簡単に説明しようかな
題して、「なぜなにナイトウィザード ＩＮ ＰＡＩＮＷＥＳＴ」
アイリス「……何これ？」
いや、やっぱ解説するならこうじゃなくっちゃね。ま、気分の問題なんだけど……ついでに言うとこれ、同じタイトルのがナイトウィザードのルールブックにもあるから
アイリス「まあ、いいけど……それで、何から説明してくれるの？」
今回は基本的なところから行ってみようかと思ってる
アイリス「基本的なところ？」
そ、基本的なところ
この作品でクロスさせてる『ナイトウィザード』って言うのはＴＲＰＧの一つなんだ
アイリス「ＴＲＰＧって何？」
「Talking Role Praying Game」の略で自分達で物語とキャラクターを作って遊ぶ物なんだ。まず、「ＧＭ（ゲームマスター）」と呼ばれる人が物語の大まかなところを作って、それからシナリオハンドアウト―一般的にハンドアウトって呼ばれるんだけどそれをプレイヤーの数だけ作って渡すんだ
アイリス「ハンドアウト？」
これはプレイヤーの演じるキャラクターのその物語に関わる経緯みたいなのが書かれていたりするんだ。そうだね、例えば……「あなたはフリーの魔術師。あなたの依頼達成率はほぼ１００％で大物から仕事を依頼されることも多い。そんなあなたの元に今日も依頼が入る。今回の仕事の行き先は輝明学園秋葉原校……。何でもこの学校にエミュレイターが生徒として紛れ込んだらしい。そして、そのエミュレイターを見つけ出すために教師として潜入してほしいとのこと。あなたは教師をすることに少し戸惑いながらも、仕度を整えて現地に向かった。そこであなたにとって忘れがたい出来事があるのを知らずに……」とまあこんなところかな？ ちなみに終わりに「推奨サンプルキャラクター」を指定することも出来るんだ
アイリス「この場合は魔術師ね」
その通り。クラス以外は自分で全部作っても良いんだけどね。キャラを一から作るのが苦手な人はナイトウィザードのルールブックの初めのところにサンプルキャラクターって言うのが載っているからそこからキャラの能力値とかを写して、細かい設定は自分で考えたりして作っても良いんだ。こうやって作ったキャラクターをプレイヤーが演じて、他のプレイヤーやＧＭと話しながら話を作っていくんだ
アイリス「それだとＧＭが初めに考えていたものと違ってきたりするんじゃない？」
それでもかまわないんだよ。と言うよりそれがＴＲＰＧの醍醐味と言っても過言じゃないと思うんだけどね。まあ、あまりずれ過ぎると大変なんだけど、そこはＧＭの腕の見せ所。いいシナリオに仕上げて皆を楽しませないとね
アイリス「なるほどね……ＴＲＰＧについては大体分かったわ」
と、そんなところで今回の解説はお仕舞い。結構長くなったからね。続きはまた次回にでも。それ――
アイリス「それじゃあまた次回でね♪」
セリフ取らないでよ
アイリス「うるさい！」（ゲシッ）
ぐぇ……
無事に宿は確保〜。
美姫 「そして、白騎士として登場」
問い掛けられた言葉に、なのははどう返すのか。
美姫 「これからどんな展開を見せるのか、楽しみね♪」
次回も楽しみに待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」