恭也のハーレム伝説(in神咲家編)




第6話 他流試合








 俺の目の前に立っているのは美由希と同い年の北斗君
 何故か、俺を睨んでいる……試合前だからかもしれない
 少し殺気を帯びた目にちょっと驚きを覚えてしまうが……
 まぁ、殺されはしないし、殺しもしないので大丈夫だろう
 ただ、打ち所が悪かったら影響がでるし……

「恭也さん、よろしくお願いします」
「ああ」

 剣道の構えだ
 赤星と似ている……剛という感じだな

「ふむ、婿殿の剣技か……」
「げほげほ……誰が婿ですか!?」
「違うのかえ?」
「違います!!」
「じゃが、孫たちは本気みたいぞえ」

 和音さんの言葉に俺は過剰に反応する
 そして、和音さんの孫たち……もとい、那美さん、薫さんを見る
 赤くなっていた
 普段大人びている薫さんのその表情は可愛らしいと思えるものだった

「では、始めるか……丁度一時間だ」

 一樹さんの声で俺は試合へと集中を引き戻される
 北斗君からは剣気という闘気が出ている
 うっすらと汗をかきながらも動きに支障が無い程度に動いてきたのか?
 体を温めるという動作だ……
 御神流には無い事だな……確かにあるにはあるのだが
 走っていたりすると大体、それで温まるし……

「制限時間無制限一本勝負、礼」

 お互い礼をする
 俺は持っていた小太刀をいつもの構えで見る
 いざとなればいつでも抜ける体勢
 普段美由希と相対する時にする……最近、あいつも強くなったからな
 あまり見てやれないけど美沙斗さんが居るから大丈夫だろう

「初め〜!!」

 一樹さんの声とともに試合が始まった
 北斗君は俺が間合いを計る前に一足飛びで自分の間合いを作る
 まさか、いきなり仕掛けてくるとは……何気に頭から叩き落すような木刀が襲ってくる
 体を捻ってかわすと、北斗君は横薙ぎへと変える
 ふむ、この辺は一刀流の戦い方だろう
 なるほど……

「せぇぇぇぇ〜〜〜〜〜い!!」

 北斗君は剣に力を込めている
 その一刀一刀が重たいものとなっている
 だけど……それだけでは足りない
 もう少し速さと走り込みをしていたらどうなっていただろうか?
 いい勝負にはなるだろう……
 俺のスピード落ちたかな?

「撒き切れよ」

 小さく呟くと小太刀を抜いた
 相手に打ち身を与える程度の打撃
 行ける!!
 神速に入らずに一気に小太刀を走らせる
 右を抜刀して北斗君の木刀を俺に当たらないようにしたら
 左の木刀を北斗君の脇腹にあてて、滑らせる
 そして、木刀が泳いだ隙に俺の間合いへと入ると拳打を当てる
 胸へと吸い込まれた打撃は北斗君を飛ばすのに十分だった

「ぐはっ!!」

 北斗君は床に伸びていた
 大丈夫かな?

「大丈夫かい?」
「うっ、負けました……」

 大の字になりながら、北斗君はそう言って軽く笑うと

「大丈夫です……一応、急所を外してくれましたし」
「ああ」
「大丈夫、北斗ちゃん」
「ああ、姉貴、大丈夫だよ」
「ん〜十六夜、恭也君の膝を……楓は北斗診てくれん?」
「構わんよ……北斗君ちょっと失礼」

 がばっと服を開けて当てられた箇所を見ていく
 楓さんってそういう知識をもっているのかな?

「ん、打ち身だけで済んでるわ……凄いね
 しかも急所をすべてギリギリで外したみたいや」
「そうやね……これだけ打ち込まれてても体を捌いて、その後から小太刀と拳に寄る打か」
「ふむ、いい使い手じゃな」
「全くですね」
「ばあちゃんは、恭也君の打見えてたの?」
「なんじゃ、那美は見えんかったのか?」
「うう〜、私だけ見えてなかったんだ〜」

 ん、そう言えば、一樹さんの声が無いな
 近くに居るのだが……何か汗をかいてる
 どうかしたのだろうか?

「一樹さん、どうかしました?」
「思い出しただけだ……神咲とは違った意味で強いとされているところ
 御神流だったかな……確か、その太刀筋と似ている
 そう、俺は一度だけしか見てないから分からないが」
「あれ、お父さん、言ってなかったっけ?」
「何をだ? 那美」
「えっとね、恭也さん……そこの師範代」
「は!?」
「だから、御神流師範代」
「まだ、続いてたのか? 確か龍とかいう組織に襲われて壊滅させられたって」
「確かにその事件はありました……でも、御神流は残ってますよ」
「そうか……ならいい戦いができそうだ
 純粋に……」

 一樹さんの目は輝いていた
 純粋に楽しむつもりらしい……俺が相手で不足は無いだろうか?
 そんな考えが浮かんでくる
 と、薫さんと那美さんが話していると

「今回の神咲一樹と高町恭也の試合については、神咲一灯流当代が立会い人となります
 双方ともそれでいいですね」
「はい」
「いいぞ」
「では、試合場の方へ」

 薫さんの声は朗々としている
 本気なんだろうな……木刀でも真剣のように……
 御神流には手加減なんて許されないだろう
 最強とされている過去
 もう過去の事だ……俺が振るうかぎりは負ける時もあるだろう
 俺はまだまだ未熟な上に未完成な剣士なのだから……
 一樹さんと俺は見合う
 その目にはお互いの真意なんていらない
 ただ……闘うと決めたから

「神咲一樹対高町恭也、初め!!」

 しばらく小太刀を構えておく
 父さんと同じ構え
 ただ、俺は時間を多くはかけられない
 だから……相手を観察している余裕も本来ならない

「恭也君、私はこれでも一介の剣士としては君の腕を過小評価していたみたいだ
 君は強い……日本で君に勝てる剣士はほぼ居ないだろう
 だが、私にも意地はある……だから、限界を超えてみせる」
「『己の限界を知りうるかぎりは負け
 己の限界を作らない者が勝つ
 己に勝て』
 ですか?」
「よく知っている……行くぞ!!」

 横から「なんですか? 今の」とか「剣士たちが歌った剣歌だよ」とか
 色々聞こえてくるが、今は試合に集中する

「神咲一刀流 神咲一樹 参る!!!」

 気迫十分、間合いを詰めて横合いからの胴に木刀を走らせる
 っく、速い!!
 多分、北斗君より更に洗練されている研ぎ澄まされている
 と、恭也が避けた方向に体を秘めるとそのまま

「追の太刀」

 そう言ってきた……まだある!!
 今度は突き!!!
 避けるか、弾くか……駄目だ、避けないと
 まだあると思う

「ちぃ、閃の太刀!!」

 また横合いからの剣
 左から右からと綺麗に来る木刀
 俺はどうしたらいいんだ……避けるのは出来る
 目も慣れてきた……なら、することは1つだ!!

「はぁぁぁ〜〜」

 一閃で木刀にひびを入れる

「な!!」

 先ほど手加減している御神流の初歩の剣技 徹を入れていく
 相手の内側にダメージを与える……

「くっ!! まだだ」

 俺は再度小太刀と木刀を当てる
 木刀が砕けた……

「せいっ!!」
「なっ!!」

 しまった油断した……一樹さんは俺の小太刀より短くなった木刀で
 俺を刺すような体勢になっていた
 これは……迎撃しかない!!

「はぁぁ〜〜!!
 御神流 奥義之六 旋薙」

 神速に入ると一気に小太刀を抜ききる
 そして、四撃を入れてしまった
 木刀で容赦なくというわけではなく、何とか力は抜けたが……すべて入った

「っく、これまでか……さすが最強といわれてた剣術」
「すみません……」
「いや、手加減してくれてありがとう……何とか打ち身で済みそうだよ」

 一樹さんは頷くと気を失った

「父さん!?」
「お父さん」

 北斗君と和真さんが近寄ってくる
 那美さんたちも俺の方に来ると十六夜さんが俺の膝に癒しをかける
 そして、打ち身のところにはお札を貼っていく楓さん
 薫さんは目を見開いていた
 葉弓さんはちょっと困った顔をしていた

「あの、どうかしたんですか? 薫さん、葉弓さん」
「ん……あ〜すまんね、動きが見えんかったから
 最後の斬撃が」
「私もですね……目はいいほうだと思ってるんですけど
 まさか見えないとは思いませんでした」
「そういえば、うちも見えんかったで」
「確かに……俺も見えなかった」
「俺も」

 和音さんと雪乃さん以外が分からないみたいだ
 和音さんは笑っているし雪乃さんは微笑みを浮かべている

「あれは、確か神速という御神流の奥義の1つじゃな
 見せてもらったことがあるからのう……一度だけじゃが」
「そうなの!?」
「私も見たことはありますよ……それに、恭也君の小さな頃も知ってるわ
 士郎さんが連れてきてくださいましたから」
「で、どうして父さんはそのこと知らないの?」
「私に近づく男を片っ端から追い払ってましたから
 で、私は旅行と称して一度だけ恭也君と士郎さんと会ってたの」

 それは知らなかった
 多分、旅にでるときだろう……あの時はたくさんの人とあったからなぁ
 何処の流派とかあって、もう分からないくらいだった
 流派の名前を全部覚えてるのは、無理だし
 一応半分くらいまで覚えてたのだけどな……

「じゃあ、恭也君が誰か母さんは知ってたの?」
「うふふ……知らなかったわよ
 ただ、御神の剣士だと知って、あの子しかいないって思ったのよ
 で、一樹さんは大丈夫かしら?」
「はい……打ち身だけで済んでます
 本当に凄い剣の腕前ですよ」
「確かに剣だけの勝負ならうちらならまず勝てん」
「そうやね」

 楓さんと薫さんがなにやら話しこんでいる

「でもいい経験にはなりましたよ……本当に」
「俺も初めて、見たけど……もっと上が居ると思えると考え方変わるよ」
「和真も北斗もいい経験になったようですね」
「母さんはもう剣を振らないんでしょ」
「そうね……体が弱かったから」
「今もだけどね……あまり無理したら駄目だよ」
「そうね……和真と薫と那美ちゃんと北斗ちゃんの結婚式が見れたら
 嬉しいのだけど、和真に至ってはまだそういう相手も見たことないし」
「それを言うなら薫姉だって」
「薫はここにいるじゃない」
「む!! でも、それは……」

 何故か和真さんが必死になって言い訳してる
 何気に楽しそうに話している雪乃さん
 薫さんはまた真っ赤になっている
 どうかしたのだろうか?
 ちょっと心配だ

「で、和真はここに来ている小太刀の護身の方の女の子に目をつけてるのよね〜♪」
「母さん!!」
「へ〜、和真兄が……意外だ!!」
「北斗〜〜〜!!」
「確かに驚きね」
「葉弓さんまで」
「うちも知らんかったわ、今日お相手できるやろか♪」
「楓さ〜ん、殺さないで下さいね〜」
「へ〜和真がね〜うちの知らん間に女性と仲良く……
 あまり手出しすぎたらあかんよ」
「それは恭也君に言うものだ!!」
「え? 俺ですか?」
「駄目だ……この人気づいてない」
「恭也さんですから……」

 なにやら賑やかに過ごすのだった
 と、膝のあたりが暖かい……十六夜さんの癒しが効いてきた
 ちょっと遅いけど、少し嬉しくなってくるな
 こう足も軽いし……

「恭也さん、膝どうですか?」
「えっと、いい感じです」
「そうですか……もっと力があれば治せそうなものでしょうけど
 今日だけでは無理そうですね……」
「いえ、いいですよ……」
「いえいえ、大丈夫ですよ……一ヶ月毎日でもやれば治るはずです」
「本当ですか!?」
「ええ、ですが、絶対とは言い切れないのが実情ですから」

 十六夜さんに説明されながら、足の治療と逃亡生活からの脱出に繋がらないかと必死に考える
 やはり足は治療したいし……でもでも、1ヵ月ごまかせるだろうか?
 そんなことを少し考えるのだった







 つづく〜







 あとがき
 ども、今回は足がかりです
 シオン「どういうこと?」
 過去へと行きましょう
 ゆうひ「意味分からないし」
 ま、ここからが神咲家編だろうからね〜
 シオン「大体のメンバー出てきてるしね」
 そういうことだ
 ゆうひ「そう言えば、夏織さん出てきてないね」
 そのうちだ……この人だけは何時でるのか分からないし
 シオン「恭也君が気づいたらだからね」
 そういうこと
 ゆうひ「でわ、感想などは掲示板かメールでどうぞ〜」
 お願いします感想♪
 シオン「でわ、また〜」
 ゆうひ「ほなね〜」
 でわです〜


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