恭也のハーレム伝説(in神咲家編)










第13話 逢瀬(おうせ)









 俺は御飯を食べ終えると、ちょっとランニングと言って外へと出た
 本心としては1人になりたかったのだ……
 一応、気配を察知してからの対応のためにそれなりの準備をしている
 小太刀とかの武器を持っている
 雪乃さんと闘ったところまで来ていた……
 お互い本気で闘いたい
 その一言だろう……開けるとなれば、それは俺の体がそのままか?
 それとも……怪我が完治しているか
 御架月はどう思うのだろうか? あの重たい刀身をいくらか振りぬいたことがある
 それなりの重量とは思っていたが力まかせにではダメだと思い
 自分の力を抜いて、縦方向に切れると思った時に斬る
 それだけだった……しかし、その時、御架月は軽く感じた
 まぁ、御架月は振ってもらえて嬉しそうだったが……

『恭也さん、どうかしたのですか?』
「いや……御架月も楽しそうだな」
『まぁ、散歩は姉さんとしたいのですけど……それでも嬉しいことには変わりませんから
 それに、耕介さんとはあまり来れませんでしたので』
「そうか」

 まぁ、神咲の本家……剣を使うところとしては、そんな悠長な余裕もないのだろう
 俺も色々と考えることがあるが……

『あけるんですよね? あの箱』
「ああ……ただ、最後に此処を見て起きたかったから」
『雪乃様と闘うのですか?』
「わからん……ただ、俺と雪乃さんが闘うことに意味が出てくる」
『どういうことですか?」
「ただ、強い奴と闘いたいだなんて理由で俺は闘いたくないんだよ」
『でも、剣士としては上を目指したいのではないのですか?』
「御架月は詳しいな」
『耕介様の持ち物ですから……で、僕が言えるのは1つだけです
 ……恭也さまの思うがままに……』
「そうだな」

 頭の中に響く声
 御架月が話し掛けてきたのだ……最近姿を現すことなく話すのが増えた
 それは、独り言みたいで俺は好きではないのだけど……

「剣士としてチャンスがあるなら……再起のチャンスがあるんだもんな
 すぐ目の前に……試してみる価値はありか」

 地面を踏みしめる……鈍い痛みが発せられる膝
 そこが治れば、剣士としてまた戦う事ができるだろう
 それは……過去潰した膝を関係なくして鍛えられるという意味をこめて……
 俺はその場を後にすると歩いていった
 神咲家へと向けて……






「恭也を出して!!」

 正門の方から懐かしい声が聞こえた
 懐かしいと思うのは今まで一緒に居た時間が多かったからだろう
 でも、いいのか? 仕事は?
 そんなことを思いながらも、昨日のHGSの事件が誰の物であるか分かった
 フィアッセがここまで来てるんだな……日本の全国公演の最中だろう
 全く有名人がこんなところで……

「今はいかんのじゃ……もし何かあったらこっちから連絡するけん!!」
「何で会ったらダメなの!?」
「恭也さんの膝が治るかもってときに私たちが何かしたら集中が乱れてしまいます
 だから……お願いします……フィアッセさん」

 那美さんと薫さんが出て、フィアッセを押さえてくれてるのか
 しかも、俺のために……
 そして、俺の意思に気づいてるのが雪乃さんだ
 最後に闘いたいと願うのも俺だろう
 宿地を使ってでも、俺と闘いたいのだろう
 雪乃さんの剣士生命がそこで途絶えることとなっても……
 ふぅ……正門の方では喧騒がまだ続いてる
 フィアッセ、今だけは俺をそっとしておいてくれ
 もし怪我が治ったら会ってやるから……
 俺は自分の部屋へと向かった
 そこに箱がおいてある……それは、誰もがわかりやすいように
 不破の治療箱という名をつけられた不破と神咲の仲を考えたもの
 不破の者はその実力を使い……神咲の当主たちも守ったといわれてる
 それは伝承という中に埋れていると和音さんが言っていた
 不破の本はすでになく、分からないことだらけだが……
 不破と神咲と御神はほぼ同時期に作られたとされているのだ
 起源が似ているのだ……それは元は同じものから分断されたものだと
 永全不動八門という名……その中に神咲という名もあるということだ……
 門の中には綺堂・神咲・御神という3つの名が原初とされるという文章が事細かに書いてるそうだ
 綺堂というのが気にはなる……もし、これが本当なら他の名前は一体ってこともある
 ただ、今は自分の膝を治して、剣士としての高みを目指してもみたい
 そこに何があるのか分からないけど

「これだな」

 箱を手に取る……その意味が何かも気づいてるし、どういうことかも分かっている
 そして……自分はどうなるのだろうか?
 周囲の空気を感じる……誰も居ない
 今が一番高揚して、集中力もある
 なら……

「頼む!」

 声を上げて、箱を開ける
 光が溢れた……







 ………………不破恭也
 お前は何を望み、この箱を開けたのかは分かる
 だが、お前は知らない……
 この箱の意味を……
 この箱が何故できたのかを……
 不破が何故この箱を必要としたのかを……
 不破恭也よ……汝の思い受け取っている
 分かるぞ……守りたいという想い
 自分の限界を壊したいという想い
 そして……大切だと思える人たちへの想い
 だから、問わせてもらう
 汝は何を望む

声が聞こえてる……そして、俺はそこには何も居ないが響く声が頭に響いている
そして……応えないといけないと感じた
だから、俺は……
「壊れた膝を治したい!! その身でもって助けられる人を助けたい!!」

 汝の願い分かった……それでいいなら我は何も言わぬ
 ただ、我が力ももうほぼ無いと言っていいだろう……
 雪乃という女性の意識は……大人のままだ
 我に知らぬことなぞない
 不破恭也よ……また会えたらよいな……でわ、さらばだ
 箱は汝に託す……他の者に託さないでくれ……頼むぞ





 光が無くなった……膝は痛くなかった
 そう、いつも不安定に痛くなっていた足が痛くないのだ
 多分、治ったと言う事だ
 そして……俺は箱を見た
 箱を閉じて紐を縛る……そして、俺の荷物の中に入れる
 これで何とかあるだろう……
 荷物の中から装備物を出す……全部装着するのだ
 本番はこれからだから
 あそこで話し合った人が誰か分からないが……
 これが普通の箱では無いというのが分かる
 パンドラの箱……最後の希望のための箱
 神話だけのものだと思っていたが……違うみたいだな
 まぁ、それは俺が知らずにもいいことだ……問題は……

「雪乃さん」

 名前を出していうと何となく分かった気がする
 あの人の本心を……そして……今の願いも……
 もうお昼という時間帯だ……外からはフィアッセが粘って言う声が聞こえるが……
 イリアさんの声も混じり始めた
 多分、連れ帰りにだろう……仕事がどうのこうのという話が聞こえている
 光は外へと漏れることがなかったのだろう
 ただ、気づいた人には気づいたかもしれない
 それがどういうことであるかも俺には分からないが……

「恭也さま♪」
「十六夜さん? どうかしたのですか?」

 声をかけて壁をすり抜けて入ってくる十六夜さん
 そして、御架月もついてきている
 十六夜さんは俺の頬に手を当てる……場所がわからないからだろう

「姉さま、さすがにそれはまずいと思いますが」
「大丈夫よ……恭也さまから霊気の波動が強くなりましたから」
「確かにそうですね……薫様や耕介様といい勝負ですね」
「箱を開けたのですね?」

 十六夜と御架月はそう言って俺を見る

「はい……足の方も大丈夫です……体も成長が終わったあとの状態ですね」
「恭也さま、どういうことですか?」

 御架月が不思議そうに聞いてくる
 そう、成長過程としては確かに大人の体と変わらないだろう
 でも、本来はどうなのだろうかという意見が出てくる
 それに……

「俺の体の筋力が高校卒業の時くらいにまで落ちてると言えばいいのかな
 ただ、それは平等性という考えで考えたら、嬉しくもあります」
「じゃあ、筋力が落ちていると?」
「バランスを考えたらこれくらいが丁度いいんで……」
「なら、問題ないですね」

 十六夜さんはすっと俺の体に触れる……指先が俺の体のいたるところを通り過ぎていく
 肩であり、腰であり、膝であり、胸であり、首筋であり、頬でありと……
 御架月はすっと目を閉じて、俺の額に手をあてる
 何をしているのだろうか?

「恭也さま、少し失礼します」

 御架月からうっすらと青白い光が出ている
 何かしているのだろう……十六夜さんも少し手を放して、感じているのだろう
 御架月から手が離れる

「恭也さま、ありがとうございます……ちょっと気になったので霊気がどれくらいあるのか確認しました
 ちょうど耕介様と同じくらいありますね」
「そうですか……」

 耕介さんってどれくらい強いのか分からないのだけど……
 十六夜さんはいつもの微笑みを浮かべている
 こちらに来る気配が分かる
 誰かが来る
 そして、その人が誰であるかも……ドアがノックされて開く

「恭也くん……」
「雪乃さん……」
「「剣士として、戦いませんか?」」

 俺と雪乃さんの言葉は同時だった……それが俺と雪乃さんの約束ともなるだろう

「場所は道場で……」
「時間は?」
「明日のお昼……」
「いいでしょう……雪乃さんはいいんですね?」
「構いません……真剣一本勝負
 飛び道具無し他はなんでもありで……」
「それでいいんですか?」
「霊技も使いますから」
「分かりました」

 真剣な顔つき
 もう剣士として決まっているから……やることが……
 十六夜さんも御架月も何も言わない
 それがどうしてかということが分かっているから

「恭也くんには不利かもしれないけど……」
「ええ……そうかもしれないですね……」
「じゃあ、私は先にご飯食べてるわ……十六夜も御架月も早くいらっしゃい」

 そう言って、歩いていく
 その空気は剣気をまとっているかのように見える
 高揚か……剣士として……
 明日の昼には俺と雪乃さんは真剣勝負をするだろう
 死闘という名の……
 そして、俺も考えを纏めると御飯を食べるためにダイニングへと行くのだった







 つづく







 あとがき
 逢瀬です
 シオン「逢瀬って何と?」
 何って……神様かな
 ゆうひ「神様っていいんかい!!」
 いいのいいの……それにここで会わないと話が合わなくなるから
 シオン「どういうこと?」
 まぁ、これで、HGSの人が恭也を見つけ出せなくなったって言うべきなのかな
 ゆうひ「へ〜」
 シオン「大体分かるけど、それって意味あるの?」
 あるよ……それに今回は霊気の発動も関係してるから
 ゆうひ「戦いの幅って事ね」
 飛び道具の無い恭也は神速に頼るしかないけど……実践は初だろうしね
 シオン「まぁ、その中で次はまだいいかもしれないけど……その次が問題だね」
 ずっと戦闘シーンかもしれないしね
 ゆうひ「そういえば、永全不動八門の意味とか書いてたけど、あれって何処から取ってきたの?」
 いや、すでにオリジナル設定だよ……でないと話が通じない部分が出てくるんだ
 シオン「へ〜知らなかった」
 って、まてや……お前ら人が作成してる最中ここが甘いとか言ってたくせに
 ゆうひ「知らないわ」
 シオン「そんなこと言ったかしら」
 ちっきしょ〜〜〜〜〜〜
 ゆうひ「でわ、次回に〜〜〜次が何時になるかは秘密ですよ♪」
 でわでわ〜(^^)ノシ



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