恭也のハーレム伝説(in神咲家編)




第15話 剣士たちの舞








〜恭也視点〜

 確りと見える……そして、膝に手を当てる
 治っている膝……自分のキャパシティーが分からない
 でも、闘える……そう、闘えるはずだ

「逃げようとは思わないけど、勝てるか負けるかとも考えられないな」

 お互い全力を出し切って……それで勝つか負けるか……
 もう、庇うものも無い体で、全力で動く
 ただ、その結果が最悪なものを予期しつつも……

「軽く体をほぐすか……」

 言葉に出して言うと心が軽くなる
 誰かがそう言っていた……かあさんだったかな?
 とりあえず実行してみる……少しでも重たいことを考えないで
 ちらつく負けてしまう象を追い払うように
 俺は……立ち上がる

「御神の剣士が負けたなどと言われては困るな……
 それに、美由希に笑われたら、癪だ」

 多分、美由希のことだから笑いを堪えるだろう
 うむ、やはり負けたくないな……それに、最強と詠われる御神だ
 俺だって、それに基いたものを受け継いでるのだ
 なら、負けることなど考えてはダメだな
 俺はそっと気配を殺して外へと出る
 まだ、廊下で十六夜さんたちが徹夜で話していたようだ
 俺の膝を治すとかどうのということらしい……俺はそれを右から左へと流して
 すぐに目の前に集中する

「おはようございます」
「おはようございます……恭也くん」
「雪乃さん、いいんですか? 舞を踊っていて」

 そう、剣舞をしている雪乃さん

「戦いの儀式みたいなものだけどね……神咲一刀流に伝わる剣舞」
「そうですか……なら、俺もやってみますか」
「御神流にもあるの?」
「まぁ、一応」

 そして、お互い呼吸を合わせると剣を抜く
 練習用のものを使っているとはいえ、やはり、先は鋭く斬れるもの
 キンッと音が鳴り、幾つかの剣閃が雪乃さんとの間に生まれる
 目を閉じながら舞を舞う、雪乃さん
 俺は呼吸を合わせて、小太刀を振るう
 双舞(そうぶ)と言われるらしいが、俺は詳しく知らない

「ふぅ〜」

 雪乃さんの舞が終わる……俺はそっと小太刀を一閃させる
 そして、派生で腕に巻きつけている鋼糸を使って誰かに巻きつける

「きゃっ!!」
「誰ですか?」
「わ、私です、私」

 すっかり忘れてた……夏織母さんの存在

「橘さん?」
「そうですよ〜、朝になって来たら、楽しそうに舞を舞っていたみたいなので
 拝見してたんですよ」

 そう言って、鋼糸を手に当てている……
 解かないと俺に冷たい視線を送られそうだ
 それに、誰かがこちらにきてる気配もあるしな

「すみません、賊かと思いまして……隠れてましたし」
「酷いですよ〜」
「まぁまぁ、隠れてるからそう言う事になるんだよ
 ほら、橘さんも立って」
「はい」

 そう言って立ち上がる

「私はお風呂入ってくるから……恭也くん、覗いたらダメだぞ♪
 そう言うときは堂々と入ってくるように」
「しませんって」
「そんなに魅力ない?」
「そういうんじゃなくて、ただ、俺はそういうのしたくないだけです」
「そ……ま、いいや……じゃあね」

 そう言って歩いていく
 俺はそっと橘つばめ、母さんを見る

「で、何の用だ?」
「私も立会いたいなぁって」
「多分、雪乃さんと俺が闘ったら、周囲なんて目に入らない上に……
 命が見物代になるやもしれんぞ」
「へ?」
「神速の領域なんかだと壁や天井も地面と変わらないからな」
「ま、まさか……吹っ飛ばしたりして私たちに突き刺さるとか?」
「考えられなくも無いだろう……」
「そうね」

 頬に一筋の汗を流し、母さんはなにやら考える

「無理と無茶だけはしないでね……士郎が残したモノ受け取りたいでしょ」
「まぁな」
「コレが終わったら教えてあげる……私と士郎が編み出した御神流の奥義の極みに近い技を」
「ふむ……随分魅力的だが何で俺にそれを教えるんだ?」
「恭也だから……体治ったんでしょ?」
「ああ」
「だからよ……それに、恭也には強くあって欲しい
 私と士郎との息子だから……たった一人のね」
「……」

 母さんはそういうと微笑みを浮かべる
 もう、大分年齢を重ねてるはずなのに、変装術の前ではそれすらも嘘に思えるようで
 ただ、俺との間には確実に親子としての盟約が出来始めている

「恭也、負けたら教えないからね」
「分かってる」

 俺はそう言って部屋に戻る……御架月を取りに……

「御架月……」
『はい?』
「耕介さんとこ戻りたいか?」
『そうですね……戻りたいですね』
「そうか……今日のことが終わって、俺が動けるようになったら
 戻ろうな……海鳴に」
『はい』
「だから、少しだけ待っていてくれな
 俺は勝つから」
『恭也さま?』
「大丈夫だ……ただ、満身創痍という感じだとは思うが」
『なら、言いません……本来なら言う事ではないですけど
 御武運を……お祈りしてます』
「ああ、ありがとう」

 俺は御架月を持つと、しばし会話をして立ち上がる
 道場へと歩いていく
 時間的には早い……でも、先に着いていたいから
 そして、昼は食べない……
 昼からという約束そして最後の戦いになるであろう雪乃さん
 俺は剣士としての約束を全身全霊をかけて答える




 道場に着くと誰も居らず静けさが漂っていた
 俺は座禅を組むとしばし周囲と同調する
 気配を極限まで殺してるのだ……自分のできる精一杯を……





 時間にして1時間ほどして気配を感じて目を開き、すぐに立ち上がると半歩ほど右へと避ける

「っち、ばれてたか」
「上からは驚きましたけどね」
「まぁ、これで倒れられても困るけどね」

 降って来たのは雪乃さんだ
 俺はそっと小太刀を腰につけていく
 鋼糸は使って良いとのことなので使わせてもらう
 ただ……相手も鋼糸は使えるみたいだ
 多分霊力で強度も増してるだろから怖いことにはなるだろう

「さ、そろそろ準備しおわったかな?」
「そちらも終わってるようで」
「まぁね……上からは元々、壁伝いしただけだから」
「言っていいのですか?」
「ま、これくらいはね……それに、今初めて闘う感じだよね」
「お互いの本気は」

 そう、試合の中でお互いが出し尽くして闘うのは初めてになる
 それは力を抑えて闘っていたわけじゃない
 抱えてる爆弾があったから……

「後、箱、開けさせてもらいました」
「全力で来なかったら、どんな手段使っても恭也くんを困らしてた所だよ」
「そうですか?」
「うん……で、何か分かったのかな?」
「雪乃さんが、雪乃さんだってことが……」
「そっか」

 お互い一時的に黙ると、軽く腕などをストレッチする
 と言っても必要ないが……
 双方とも急な襲撃にも耐えるような鍛錬をしているから

「じゃあ、始めようか……御架月くんだっけ? 合図お願い」
『分かりました……』

 御架月が出てきて、腕を俺と雪乃さんとの間に入れる

『神咲一刀流・当代・神咲雪乃 対 御神流・師範代・高町恭也の試合を始めます
 では、始め!!』

 鋭くも強い声がお互いを刺激する
 俺と雪乃さんは視線だけをあわせ
 俺は小太刀を片方抜いて構える
 雪乃さんも正眼の構えで十六夜を抜き放っていた

「後悔無きよう」
「全力を出すことを」
「「誓います」」

 お互いに剣を一度あわせる
 そして、戦いが始まる……








 つづく









 あとがき
 シリアスだな
 シオン「というか、戦闘久々だね」
 本当だよ
 ゆうひ「というか、遊び人が一番眠そうだけどなぁ
 そういだよね〜
 シオン「で、いけるの?」
 微妙だよ……
 ゆうひ「でも、次で決着はつけるんでしょ?」
 当たり前……
 シオン「その後どうなるの?」
 ま、それはお楽しみってことで
 ゆうひ「適当ね〜、でわでわまたね〜


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