『剣士は花と……』




     〜プロローグ2〜



青年はその日、暇を持て余していた。
この青年はこの家の長男である。
趣味が盆栽・釣り・昼寝という若者らしくないものばかり。
普段の彼なら暇さえあれば鍛錬をしたりするのだが恐ろしいお医者様より
鍛錬禁止を言い渡されているのである。
約束を破らないのは破ると自分の未来はないと確信しているからである。
そうなるとやる事は趣味に当てられるのだが、時間が昼過ぎなだけに釣りにはいけない。
盆栽の手入れも既に終わっている。
ならば昼寝をすればいいのかもしれないが、する気にならない。
実家でやっている喫茶店でも手伝おうかとも考えたのだが一家の大黒柱より
手伝いはいらないからゆっくりしていろと言われてしまったのだ。
そうなると彼はやる事がないのだ。

ならば折角なので彼女とデートでもすればいいのだが、相手がいないので無理なのである。
別に彼がモテないわけではない。
いやむしろモテる。
なのに相手はいない。

それは彼の性格に問題があった。
彼は他人からの好意にあまりにも鈍感なのである。
しかも彼の口からは

「俺なんかを好きになってくれる女性などいないだろう」

などと言うのである。
それを聞くと家人や友人は飽きれるだけである。

そんな彼はやる事がないという事で、結局家の縁側で茶を啜っているのであった。



しばらくそうしていると、家の末っ子が彼に近づいてきて

「お兄ちゃん、暇なら一緒にどこか行こう?」

と上目遣いでお願いしてきた。
本人はそれほどでもないと思っているのだが、周りから言わせれば十分にシスコンの彼は
仕方ないと言いながらもそのお願いを受け入れるのであった。

久しぶりに兄とお出かけと言うことで終始笑顔の末っ子。
その顔に満更でも無さそうな青年の耳に

「痛っ!」

「……っ!」

「いいから付き合えばいいんだよ!!」

というやり取りが聞こえてきた。
声のした方を向き、そのやり取りを見た青年の顔は厳しいものになった。
そんな兄の顔を見た妹は

「お兄ちゃん、行ってあげて?」

笑顔で言ったのだ。
青年も妹に断ってから行くつもりだったのだが、妹にお願いされた後の行動は早かった。

「すまんな、すぐに戻ってくる」

と言い、頭を撫でてからそのやり取りをしている方へ駆けていった。

「そんなところで何をしている」

と声を出すと、全員が青年の方へ顔を向けるのだった。



<おわり>



今度は違う視点からのプロローグ。
美姫 「まだはっきりと書かれていないけれど、恐らくは彼かな」
だと思うが。さてさて、ひょんな事から出会うことになったみたいだけれど。
美姫 「果たして、これがどうなっていくのかしら」
次回を待っています。
美姫 「待ってますね〜」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る