『剣士は花と……』




     〜プロローグ3〜



「そんなところで何をしている」

声のした方へ顔を向け、青年の姿をみた女性二人はその顔に見惚れていた。

「(うわ〜、すごい綺麗な顔だな〜)」

「(まままぁ)←トリップ中」

だが女性たちとは反対に男たちはその青年を見た瞬間、顔を青くした。
その男たちをみた青年は思い出したように言う。

「お前たちか、また何か楽しそうな事をしているな」

そんな事を言われた男たちは以前青年に会った時の事を思い返していた。
その時も今と似たような状況であり、目の前の青年が口出しして来たのにムカついたのか
追い払おうと拳を振上げたのだが、返り討ちにあい病院のベッドで一ヶ月過ごす
という経験をしたのだ。

「以前の経験で理解してくれていると思っていたのだが……」

青年はそう言うと少々殺気を込めた目で男たちを睨み付ける。
男たちは既にどうやって逃げるかを考え始めていた。

「ならばお前たちに選択肢を与える。その中からこれからの未来を選べ」

そう言われた男たちはすごい勢いで頷く。

「1.もう二度とこのような事をしないと誓い、この場を去る。
2.以前よりも長い病院生活を行う。
3.警察に連れて行かれる。
さあ、どれにする?」

これを聞けば逃げたいと思ってる連中は当然1を選ぶだろう。
そこに青年がトドメの一言とばかりに

「1を選んだ場合、この場で誓って次に同じ事をしていれば強制的に2と3が行われるからな」

と言う脅しを付け加えるのだった。
男たちは涙目で土下座までして、青年と女性たちに誓いを立てその場を立ち去った。
世界陸上の短距離選手顔負けのスピードで。



ひと段落つくと青年は女性たちに声を掛けるのであった。

「あの、大丈夫ですか?」

「うぇ!あっ大丈夫です!!」

「ありがとうございます」

二人の回答に大丈夫だと判断した青年は

「気をつけてくださいね。お二方ともお綺麗なのですから」

そんなことを言われた女性たちは

「……///」

「まままぁ///」

そんなやり取りをしていると、

「おにいちゃん」

「ん?」

青年が振り返ると、青年の妹が

「お姉さんたちを家の喫茶店にご招待したらどうかな?」

という提案をしてきた。
青年はしばし考えると、女性たちにその提案を立てると

「あっ、はい」

「よろしくお願いしますわ」

二人の了承を得ると、青年と妹さんが先導するように歩き始めた。



しばらく歩いていると青年の妹が思い出したように言う。

「そういえば自己紹介していませんでした」

それを聞くと、全員確かにと思い顔を見合わせた。

「じゃあ私から。私は八重桜といいます。
ストレリチア女学院の2年生です」

黒髪の小柄な女性がまず自己紹介を始めた。

「趣味はぬいぐるみ集めで、夢はぬいぐるみを作る人です!」

夢まではっきりしている桜に青年は感心していた。
続いて一緒にいた金髪の女性が自己紹介を始める。

「カレハと申します。バーベナ学園の3年生で見ての通り神族ですわ」

カレハの耳を見てみると確かに人よりもとがった耳をしている。

「将来の夢はまだ決めかねてますの」

少々気落ちしたように言うと

「それは仕方ないことだと思います。慌てずゆっくり決めていけばいいですよ」

という青年のフォローにどこかホッとするカレハであった。
つづいて青年の妹が自己紹介を始めた。

「高町なのはです。聖祥大学付属小学校2年生です。
将来の夢はお母さんのお店を継ぐことです」

満面の笑みで自己紹介をするのであった。
そして最後に

「高町恭也です。風芽丘学園の3年生です。よろしくお願いします」

と当たり障りのない自己紹介をする恭也であった。



自己紹介を終え、二人がどうして海鳴に来たのかという話になり
カレハの目的が翠屋でのシュークリームである事を話したとき

「そういえば今から行く喫茶店って?」

桜が高町兄妹に確認を取ると

「今話のあった翠屋です」

となのはは嬉々として答えた。
その回答にカレハは

「まあ、そうなんですの?
と言う事は私たちは翠屋さんの次期店長さんとお話をしているという事になるのですわね」

「でもカレハ先輩。年齢から言えば恭也さんの方が継ぐのは早いんじゃないですか?」

「確かにそうですわね。恭也さんが翠屋さんの店長さん……。まままぁ///」

二人が恭也を下の名前で呼んでいるのはなのはと混同しない為である。
どちらも高町だと言う事で。
恭也は二人の意見に

「いえ、自分は甘いものはちょっと…。それにまだ将来の事はカレハさんと同じでまだ……」

と言葉を濁すのであった。
実際恭也は将来ボディーガードになる事を一番に考えている。
だが会って間もない二人にいう事ではないと思い、将来については触れないようにしていたのである。

そんな話をしながら歩いていると、目的地である翠屋に到着した。
中に入るとランチタイム時のラッシュは過ぎたのか、店内は落ち着いた状態であった。
バイトの女の子に恭也は

「4人用のテーブル席は空いてるだろうか」

と確認を取ると4人を案内する。
席に案内するとバイトの女の子は離れていったのだが
そこに違う女性が近づいてきた。

「いらっしゃいませ〜」

見た目には20代前半の女性が嬉々として挨拶してきた。
その顔をみたなのはは嬉しそうに、恭也は一気に疲れたような顔を浮かべた。

「この翠屋の店長で、この子たちの母の高町桃子です」

「「……」」

桜とカレハは黙ってしまった。
見た目と年齢の計算がどうしても合わないのだ。
ちょっとパニック状態の二人をフォローするべく恭也は二人に

「なのはとは血が繋がってるのですが、自分とは義理の母子なんです」

という説明に納得する二人であった。
翠屋の店長は二人の美女をみると恭也に対し、溜息をついた。
結構毎度の事なので諦めているのだが……。

「あんたは〜。またこんな可愛い子たち連れて来て!
そんなに母さんをおちょくって楽しいの!?」

「何を言ってるんだ?」

何の事かまったく理解出来ない恭也に、それを聞いていたなのはは苦笑いを浮かべていた。

「どうでもいいが注文を取りに来たんじゃないのか」

「あっそうだった。ではご注文をどうぞ♪」

「では私はシュークリームセットでお願いいたします」

「私も同じものを」

「は〜い、なのはは?」

「わたしはおかあさんの作ったものならなんでもおいしいから、おかあさんにお任せです」

「あ〜ん、なんていい娘なの〜」

ぎゅ〜っと力強く抱きしめた後、じゃあ任せてと厨房に戻って行ってしまった。

「俺の注文はいいのか、母よ…」

小声で囁くが、桜とカレハにはそのつぶやきがしっかり聞こえていたのか苦笑いであった。



注文したものが運ばれてくる中、恭也はアイスコーヒーを受け取った。
注文を聞いていないだろうと桃子に言った所

「どうせあんた、アイス宇治茶とか訳わかんない事言うつもりだったんでしょ!
それがないの知ってるからアイスコーヒー頼むじゃない」

という事らしい。
それを聞いた恭也は

「(くそ、今度からは違うパターンを考えねば)」

などとあまりにもくだらない事を考えていたらしい。

シュークリームを食した二人は満面の笑みを浮かべた。

「うわ〜、今まで食べたシュークリームの中でも段違いに美味しい」

「本当ですわ〜。これほどのシュークリームは中々作れませんね。
桃子さん作り方教えていただけませんか?」

「ごめんね〜。企業秘密なの」

それを聞いて肩を落とすカレハ。
そんなカレハに桃子はとんでもない一言を放った。

「でも〜恭也のお嫁さんになってくれるなら教えてあげてもいいかな〜」

「ぶっ!」

そんな言葉にコーヒーを噴出す恭也。
苦笑いを浮かべるなのはと桜。

「恭也さんのお嫁さん……まぁ///」

「カレハちゃんが恭也のお嫁さんなら桃子さん、すごく嬉しいな〜w」

「まままぁ〜///」

その情景を思い浮かべて遥か彼方に意識を飛ばすカレハ。

「なんて事言ってるんだ!」

「何よ、カレハちゃんじゃ不満なの?」

「違う!カレハさんに失礼だろう。俺なんかが相手では!!」

「ぶーーー。だったら桜ちゃん、恭也もらってくれない?」

「えっと…あの…///」

「だから!!」

「子供が生まれたら……恋人が出来て……恭也さんも泣くのですね…」←どんな妄想してるんだ?

「もう硬いわね、いいじゃない。恋人の一人や二人作ったって」

「普通は二人もいない」

「あんたは考えが古いのよ。神界で結婚しちゃえば一夫多妻OKなんだから」

そんな言い合いをしていると、高町家最強の娘は声を上げた。

「おかあさんもおにいちゃんもやめなさーい。カレハさんと桜さんも困ってるでしょ!!」

確かに桜は戸惑っていたが、カレハは困っていたのだろうか…?
なのはに言われたので、言い合いをやめ仕事に戻っていく桃子であった。

「なのは、すまん。お二人も申し訳ありません。」

「あ、あははははは…すごく賑やかなお母さんだね…(汗)」

「いいお母様ですわ〜」

そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていくのであった。



そろそろ光陽町に帰ると言う事で、駅まで二人を恭也が送っていく事になった。
駅へ向かう道中

「恭也さん、今度光陽町に来ませんか?今日のお礼に案内しますよ」

という桜にカレハも便乗するように

「その時は私がアルバイトしている喫茶店にもお出でくださいませね。
恭也さんだけにサービス致しますわ///」

と誘うのであった。

「(カレハ先輩もしかして……)」

「ええ、その時は是非」

そして二人は恭也に自分の連絡先を教え、駅に着くと恭也と別れた。

「カレハ先輩、いい人でしたね」

「そうですわね」

「また会えるといいですね」

「はい///」

偶然が重なった出会い。
果たしてこれから運命の歯車はどう回るのか。
それはこれからのお話。








-おまけ-

今日翠屋であったことを桃子は高町家の夕食の時喋ってしまった。
恭也は夕食後から次の日の朝まで家人に睨まれ続けたらしい。

「俺は何か皆を怒らす事をしたのだろうか?」

と一日中悩む恭也であった。



<おわり>



三人、じゃなかった。なのはも入れて四人が知り合ったお話かな。
美姫 「桃子さんも知り合った形だけれどね」
まあまあ。離れた地に居た恭也たちを不思議な縁が出会わせた。
今度はひょっとして恭也が行くんだろうか。
美姫 「なのはにお願いされて行きそうよね」
うーん、どんな形で再会するんだろう。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
待ってます。



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