『壊れかけの剣士たち』




     〜第11話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ





前回のお話

谷さんが加わって新しい生活をスタートさせた恭也。
でもこの学園での生活は休まる暇がなくて……。
果てさてどうなる事やら……。




あれから恭也は大変な毎日を送っていた。
毎日のように佐学派と討学派の剣騒に巻き込まれたり、おばさんたちに挑んだり
局中法度違反者として切腹させられそうになったりと……。




ちなみにこの新選組の切腹とは腹をかっさばく事ではない。
自腹を切るという事らしい。
まあつまり早い話が奢れということらしい。
そもそもの原因は恭也の戦い方にあった。
恭也は今までのゴタゴタに巻き込まれたとき、相手の剣筋を見切っては避けるのみ攻撃を
加えたことがなかったのだ。
恭也が剣を抜くことなんて、それこそ黄色いUMAを叩っ斬るぐらいだったからだ。

「誰がUMA(未確認生物)や!!」

すいません……未確認飛行物体でしたっけ?

「ちゃう!ワテはUFOとチャウ!ワテは崇高な……」

まあ放って置いて、恭也の戦い方に佐学派の生徒たちは意義を唱えるのであった。
だが恭也は討学派に背中を見せて逃げたわけではないので、一応切腹は免れたのだ。
次の日から恭也は小太刀サイズの木刀を持ってきた。
これからは木刀を使うという意思表示を示したのだ。
これについては佐学派全員が認めたので事なきを得るのであった。




恭也が編入してから一週間が経っていた。
新選組のメンバーはいつものように生徒会室に集まっていた。

「よし、みんな揃っているな。これより新選組ではなく生徒会の会議を始める。議題は……」

土方が司会進行を行う。
がここでやっぱり茶々を入れるのが

「土方さんはなぜあんなにもカタブツなのか?」

いわずと知れた総詩であった。

「そうだ、それについてみんなの意見を……って違うわ!!学園祭についてだ!」

そう言うといつものようにじゃれ合う(?)二人であった。

「学園祭……?」

「……そう、愛津思魂祭のこと……」

「そういう名前なのか?」

「……うん……」

恭也の疑問に初音は答えるのであった。
恭也のひざの上に座りながら……。
実はあの日(タイムサービス日)から初音はゲンちゃんに負けず劣らずといった感じで恭也にべったりとなった。
男がいるとメンドイと考えている初音だが恭也は別らしい。
というよりも

「……初音は恭がいればそれでいい……」

という事らしい。
その姿をみた生徒はそれを"恭也依存症"と呼ぶらしい。
それに対し恭也も初音の事を気に入っているので何も言わない。
なのはに甘えられているようでシスコンぶりが全開になるようだ。

「愛津思魂祭の最中は学園が他校にも解放される為、新選組は校内の警備も行わなければならない」

いつの間にか総詩とのじゃれ合いも終わり説明を再開する土方。

「だが同時に生徒会としての仕事もこなす必要がある」

「なるほど」

初音の頭を撫でながら、説明に納得していく恭也。

「そうなのよ恭くん〜。学園祭の最中はお菓子を食べたり昼寝したりとかあんまり出来ないから気をつけてね〜♪」

その心配は言った張本人と総詩に言いなよ……。

「まあ警備や運営については、去年と同じで問題ないんじゃない?」

「そうだね。高町に運営は厳しいだろうから警備をメインにやって貰えばいいんじゃないか?」

「俺もそうして頂けるとありがたいです」

やちと紗乃の案に賛成する恭也であった。
実際面倒な仕事はしたくないようだ。

「私もそう考えていた。……問題はそれぞれの出し物だな」

その言葉を口にした土方はなぜかため息をつくのであった。

「……ではそれぞれの意見を聞こうか。何か案……」

「はーい、はーい、はーい!あたしの粋な意見を聞いてよ!この愛津女学園に風流の旋風を起こしてあげるよー!」

土方が言い切る前に勢いよくやちが発言する。
それに対抗するのが

「は〜い、は〜〜い♪わたしも〜みんながお腹一杯になってしあわせ〜な良い案があるの〜♪」

台詞でもうわかるであろう……。

「……ん……」

すると初音も無言でだがビシィーッと挙手していた。
まあ恭也の顔に当たらないように配慮しているが。

「それにしても皆興奮しているな……」

「年に一度のお祭り騒ぎですからねぇ」

「ですから皆さん必死なんです」

恭也の独り言に相槌を打つ総詩と芹栖であった。
土方はまだ意見を聞いていないのに疲れきった顔で進行を進めた。

「ハア……では意見を聞こうか。まずはやちから」

「はい!あたしは学園の裏庭を改造して、そこに築山や池を造って花鳥風月な空間を演出するのよ!」

「そんな予算どこから出す気だ!!」

やちの案を即効で一刀両断した土方。
だが

「そんなの、粋な気負いで何とかしますよ!」

あまりにも意味不明な反論をするやちであった。
新選組メンバーはやちの案には賛成できないようだ。
……一人を除いては

「……やちさん……素晴らしいです」

「「「「「えっ?」」」」」

やちも含めて予想外だったらしい声が……。

「そこには盆栽も飾るんですよね!」

「うぇっ!?そ、そりゃー飾るつもりだけど?」

「皆さん!是非やちさんの意見を推奨しましょう!!」

それは言わずと知れた恭也であった。
いつの間にかやちの事を名前で呼ぶほどである。

「恭、あんたはあたしの事分かってくれるんだね!」

「勿論です!こんな素晴らしい案以外認めません!!」

「恭!!」

「やちさん!!」

しっかり手を握り合っている恭也とやちであった。
その姿にむくれ気味なのが初音。
すぐに二人を引き剥がす。

「……その案はお金掛かりすぎる。それと恭はわたしの!……」

いつ初音のものになったんだ?……

「あはは、斉藤さんは恭也先輩LOVEですねぇ」

「これが三角関係ですね!……あああ、でも私が加われば更に四角関係に!!……」

総詩は面白がっている。
まあ内心ではちょっと面白くないと感じているようだが、それに気づくのはもう少し先のようだ。
芹栖はいつものように段々と変な考えに……。

「とりあえずやちの案は却下だ、次」

無理矢理その話を終わらせる土方に、やちと恭也は相当不満顔であったとか……。

「よーし、次はあたしね!学園祭の華といえば大食いコンテストしかないだろー!」

「……大食いはちょっと。お嬢様学園でそれは問題では?」

恭也の意見は最もだが、紗乃の強烈な一言が入る。

「ナニ言ってるんだ高町、ココにお嬢様なんて一人としていると思うか!?」

凄まじい一言に恭也は何も言い返せなかった。
最近では恭也も薄々感じていたことだけに……。

「……却下だ、次」

「は、はい!ええとですね、わたしはその、せっかくの学園祭ですし、ここはひとつですね、
フォークダンスなどはいかがでしょうか!ッ!」

凄くベタな提案をさも重大発表のように叫ぶ芹栖であった。

「仮にそれになったとしても全員女生徒同士で踊るのか……何とも言えない光景だ」

ボソッと独り言を言う恭也。
それに返事を返すのが

「……その時は恭とは初音が踊る……」

これまたボソッと返す初音に頭を撫でて答える恭也であった。

「……次」

芹栖が夢の世界に飛び立っているが無視して進める土方。
まあ確かに付き合ってたら時間がいくらあっても足りないだろう。

「……メイド蕎麦屋、これしかない……」

初音が案を出す。
初音は無類の蕎麦好きで有名である。
蕎麦屋でカレーなんかを食べているやつがいたら斬り刻むと常日頃から言っているくらいだ。

「蕎麦屋か……」

ちょっと想像してみる恭也。
まあ蕎麦屋にメイドというのは新鮮な発想だが……。

「……ご主人様、お食事は何になさいますか?もりそば、ざるそば、かけそば、月見そば、とろろそば、
納豆そば、たぬきそばと各種揃えておりますが……」

なんだか相手を小ばかにしたような表情で言う初音の姿が想像できる。
「各種」と言っているが蕎麦しかないじゃん!!
想像し終えた恭也は初音に言うのであった。

「初音これだけは言っておくぞ……」

「……ん?……」

「お客様には笑顔だ」

違う!
問題はそこじゃない、恭也!!

「……次」

疲れきっている土方が次の人物に意見を求める。

「あのですねぇ、ボクは遊戯施設なんかイイと思うんですよぉ。子供が喜ぶような」

珍しく総詩がまともな事を発言した。

「オニに玉をぶつける射的モノとかぁ」

恭也は嫌な予感を感じていた。
こんな事を言うとなれば

「それでオニ役はトーゼン土方さんなワケですよねぇ、これが本当のオニ退治ですよぉ」

「誰がオニだーーー!!」

そしてまたじゃれ合いが始まる。
このままではまた話が進まなくなりそうなので、恭也が進行を再開する。

「他に意見は?」

「はいは〜い♪あのねあのね、わたしすっごいアイデアがあるの〜♪もうみんながアワ吹いて
喜んじゃうような〜♪」

なんとなく予想っぽいものが立つ恭也と新選組メンバー(土方、総詩除く)。

「あのね〜、和菓子で作ったお家を建てるの〜♪そしてその中にはなんと甘味処になってる寸法なのよ〜♪」

確かに恭也にとってはアワを吹いて倒れるだろうが……。
イサミの案に対しいつ終わったのか土方が発言する。

「近藤さん、さすがにそれはちょっと……」

無理と言おうしたがイサミの上目使いのお願い攻撃に

「そ、そうですね、中々いい案だと思います」

あっという間に陥落してしまう土方であった。
まあそれに黙っていないのが他の皆だろう。

「えーっ、ちょっと待ってよ副長!局長の案が通るならあたしの案だって通るじゃないのさー!
いくら副長とはいえ、えこひいき反対ー!」

「そーだよ副長!要するに局長は和菓子をいっぱい食べたいだけだろー!だったらあたしと
大して変わらないじゃないかー!」

「そーだそーだぁ、土方さんのアフォー、オニィー、カタブツぅー、ツンデレー」

やちと紗乃は自分たちの案も可能なのではと批判。
総詩は面白そうに罵倒しているだけだが。
そもそも土方がツンデレってそんな事はありえないだろう……。

「ええぇーーい、やかましいっ!!お前たちの案は無茶ばかりじゃないか!!こうなったら
お前たちの案は後日、詳細をまとめて提出しろ!そして私が独断と偏見と常識を持って決めるからな!!」

周りからはブーイングの嵐であった。
土方はもう取り合わないといった感じでそのブーイングをスルーしていく。

「……独断と偏見ではダメな気がするのは俺だけか?」

「……恭、それは言ってはダメだ。新選組はこれくらいで丁度いい……」

妙に達観したことを説く初音であった。

「とにかく、今回はこれで解散だ!」

無理矢理締めくくる土方であったが、そこにイサミが

「あ、みんな解散する前にちょっと待ってね〜。何だか最近、討学派に不穏な動きが多かったの〜。
もしかしたら大きなことが起こるかもしれないから〜」

と発言するのであった。

「大きなことですか?」

「うん、そう〜。みんな気をつけてね〜。って言ってももう間に合わなかったりしちゃったりして〜♪」

笑い事ではないと思うぞ、イサミ……。

「……まあこれで本当に解散だ」

そう言って会議は終了するのであった。
本当に何も起こらなければいいが……。
ゲンちゃんが一言も喋らなかったが、いつものように恭也の頭で寝ていたようであった。




学園祭の話も全く進まない新選組。
そして討学派は何かを企んでいるのか!?
恭也たちに激動の未来が待っているのか!!??




<おわり>



学園祭の打ち合わせ……のはずだよな。
美姫 「何故か、途中から進行役が変わっていたり、局長の意見だけが採用になったり」
はちゃめちゃな感じがとても面白かったです。
でも、肝心な出し物はまだ決まっていない形なのかな。
美姫 「実際には何をする事になるんでしょうね」
それとは別に不穏な動きもあるみたいだけれど。
美姫 「本当にどうなるのかしら」
気になる次回は……。
美姫 「この後すぐ!」



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