『An unexpected excuse』

  〜沖田総詩編〜


「俺が、好きなのは…………」


「にゃ〜 (こんにちは)」


その緊迫した場に似つかわしくない鳴き声が聞こえ、そちらを振り向くと頭に猫を載せ
刀を携えた少女が笑顔を浮かべて立っていた。


「あははははは、恭也先輩大変そうですね〜w」


「にゃ〜にゃ〜 (そうだね〜)」


少女の頭に載っている猫も同意するように頷いていたが、そんな事よりも
彼女たちがなぜここにいるか理解できない恭也であったが、楽しそうなので気にしない事にした。


「どうして海鳴に?」


「恭也先輩行ってたじゃないですか。海鳴はのんびりするには最適だってv」


「そうか」


そんなワケのわからない理由でも納得してしまうのが恭也の凄いところである。
だが彼女の笑顔を見て照れ臭くなったのか、少女の頭に載っている猫を自分の肩に載せ直した。
その時の恭也の表情は普段よりも柔らかいものであった。


「ゲンちゃん、よく来たな」


「にゃ〜 (うん)」


普段他人には見せない表情に、家族や友人・FCのメンバーは見惚れていた。
だが唯一ある少女だけは少々不満そうな顔を恭也に向けるのであった。


「む〜、恭也先輩はゲンちゃんに逢えてうれしそうですね?」


「総詩もよく来たな」


「そんなオマケみたいな挨拶、僕はいりませんよ〜」


「そんなつもりはないんだが?」


総詩と呼ばれた少女は拗ねてそっぽを向いてしまったが、恭也はなぜ拗ねてしまったのか
分からず首を傾げていた。
なぜなら、この二人(一人と一匹)は恭也にとって大事なお客人である為
優先順位など考えていなかったのだから。
そのやり取りを見ていて二人の仲に気づいた忍たちは恭也をフォローした。


「恭也、あの子は自分よりも先に猫ちゃんを歓迎したから拗ねてるのよ」


「まあ恭ちゃんがそんな事気づくわけないよね。鈍感で、朴念仁で、若年寄りで……」


「師匠はあの方に逢えてうれしくないんですか?」


そんな事はないとわかっりきっている質問をわざと恭也にぶつける晶。


「そんな事はあるはずがない」


きっぱり言い切る恭也を後押しするように


「恭也さん、そういう事ははっきりと口にしないと駄目ですよ〜」


「そうですよ、お師匠」


「そういうものなのか」


「「「「そういうものよ(です)」」」」


忍・那美・晶・レンからそう言われ、そういうものかと納得する恭也であった。
まあ若干一名は先ほどから失礼な事を口走っているので、あとで粛正してやろうと
考えながらも、未だ拗ねている少女へ声をかけるのであった。


「総詩」


「つーん」


「悪かった」


「別に謝ってくれなくてもいいですよ〜だ」


そんな総詩を見て、苦笑いしながらも後ろから優しく少女を恭也は抱きしめた。
周りには結構な数の人がいるのだが、そんな事よりも今は目の前の少女に気持ちを
伝える方が大事だと思ったからである。


「すまない、許してくれ」


「……謝って欲しいわけじゃないですから」


「久々に逢えたから、照れ臭くてどういう態度をとれば良いのかわからなかったんだ」


恭也の嘘のない言葉に、恭也の方へ向き直る総詩に素直な気持ちをぶつけた。


「また逢えて嬉しいよ、総詩……」


「僕もです……」


今度は総詩が正面から、恭也にしっかり抱きつくのであった。






しばらく抱きあっていたが、ふと周りに気づきおずおずと離れる二人。
お互いに顔を真っ赤にしながら、隣同士に腰を下ろした。
だが恭也のそんな表情を目の当たりにし、自分たちでは間に入る事さえできないと判断したFCの面々は
何も言わずその場を立ち去っていった。

未だに顔を真っ赤にしたままの二人であったが、恭也が無理やり思い出したような感じで口を開いた。


「そ、そういえば、まだ紹介していなかったな」


それを聞き、皆もそういえばという感じで恭也の方へ顔を向ける。


「彼女の名前は、沖田総詩だ」


「はい〜v」


「それでこっちがゲンちゃんだ」


「にゃ〜 (よろしく)」


「それで総詩とは……その……///」


「……/// (笑顔のまま真っ赤)」


そんな初々しいやり取りを微笑ましく見ていた面々だが、ここで文学バカみたいな義妹が口を挟んだ。


「恭ちゃん、いくらなんでも二人で結託してそんな冗談言わないでよ〜」


まあ普通の人はその名を聞けば、某有名な歴史上の人物を思い浮かべるだろう。
よって真顔で嘘をついている恭也に、彼女が便乗して嘘を言っているのだろうと考えたようだ。


「いや、そんなつもりはないんだが?」


「いくらなんでもこんな可愛い人に、そんな名前をつけるのは失礼だよ!
すみません、家の兄に付き合ってもらっちゃって。
本名を教えてください」


美由希としては善意でそのように促す。
だが本人の口からは


「確かに僕の名前は、沖田総詩なんですけどね〜v」


という回答が帰ってくる為、半分泣きそうになりながら


「もう本当に冗談はやめてくださいよ〜」


美由希は泣きそうになりながらも呆れていた。
真顔で嘘をつくのは兄だけだと思っていたのに兄の恋人までこんな嘘をつくなんてと。


さすがにこのままでは拉致が明かないと思った忍は何か学生証を見せてくれとお願いした。
苦笑いしながら自分の学生証を皆に見せ確認をとらせた。
学生証にはしっかり記述されていた。


”氏名 沖田 総詩”


と。


それをみた美由希は冷や汗をかきながら恭也を見てみると、
冷ややかな殺気をこめた目で睨みつけていた。
今日の夜の鍛錬が悲惨なものになるのが確定した瞬間であった。






忍たちはその学生証を見ながら、違う事で驚愕の声をあげた。


「「えーーー、総詩(さん)ってあの愛津女学園の生徒なの(なんですか)ーーーーー!?」」


「「しかもあの新選組の1番隊組長ーーーーー!?」」


そんな驚愕の声を上げるもの達に対し恭也と総詩は


「どうやら、新選組は有名らしいな」


「そうみたいですね〜」


という会話をしながら日向ぼっこをしていた。
ゲンちゃんは、暖かい日差しのおかげか恭也のひざの上で既に寝息を立てていた。


まあ実際有名な理由が、共学化するかしないかの揉め事に刀で決着をつけるという学校についてというもの。
そしてその女学園で最強と言われる組織が新選組なのだ。
そんな組織の組長が現れれば驚くと言うものである。


だが二人はそんな事には我関せずといった感じでのんびり寛いでいた。
そんな平和そうな二人の顔をみた忍たちは


「恭也、もう今日は帰って翠屋にでも行けば?どうせ自主登校なんだし」


「そうだよ恭ちゃん。かーさんに紹介してあげれば喜ぶんじゃない?」


かーさんに紹介という事でしばし考えた恭也だが


「そうする、というわけでカバンは任せたぞ。美由希」


「なんでわたし!?」


そんな美由希の悲しい言葉は綺麗にスルーされた。
だが恭也が小声でこんな一言を付け加えた。


「今日の夜はあんまり無茶な事はしない方がいいかもな」


それを聞いた時、これは断ったらいけないと判断した美由希が


「わかったよ、恭ちゃん!」


と力強く承諾した。
それを聞いた恭也は満足し総詩を立ち上がらせた。


「行こうか、総詩…」


「はい〜v」


「恭也さん、今度二人の出会いとか教えてくださいね」


考えておきますと軽く答えた後、恭也はゲンちゃんを総詩の頭に載せてから
総詩と共に翠屋へ向かうのだった。
しばらく歩いていると


「恭也先輩、鍛錬軽くしてあげるつもりないんですよね〜w」


「軽くするとはいってないからな」


「ひどい人ですね〜w」


そんな事を言いながらも二人でのんびり散歩出来る事に総詩は終始ご機嫌な
笑顔を恭也に向けるのであった。





<おわり>








〜おまけ〜

翠屋で桃子に総詩を紹介した後、二人は高町家の縁側でくつろいでいた。




それは翠屋での出来事。
翠屋で総詩を紹介された桃子は、将来の娘(嫁)が出来た事に大変喜んだ。
その時しっかりと自分の願望を要求するのも忘れない。


「私の事はお義母さんって呼ばないとだめよ〜。あと孫は私が30代のうちにねw」


それを聞き、恭也は母に対し顔を赤くしながら文句を言うが口で桃子に勝てるはずもない。
だがそれでもというようなやりとりを続けていると


「あははは、僕も恭也先輩もまだ学生ですからね〜。
せめて僕が愛津女学園を卒業するまでは待ってくださいね。お義母さんv」


お義母さん発言に感無量の高町母であったが、厨房から出てきた副店長に
連行され悲鳴だけがその場に残ったという。




そんなやり取りの後、二人はのんびりする為高町家に戻っていた。
元々騒がしいのは嫌いではないが、のんびりする方が好きな二人である。
無理に出かたりしなくてもいいと考えているのである。


「は〜あ〜、平和ですね〜」


「そうだな」


「にゃ〜 (ZZZ…)」


日向ぼっこをしている二人(と昼寝中の猫一匹)の背中は長年連れ添った老夫婦みたいである。


「ふわぁ〜〜〜」


そんな中、総詩は眠たそうに大きなあくびをする。


「眠いか?」


「そうですね〜」


「布団敷いてやろう」


立ち上がろうとする恭也を総詩は引き止めた。


「そんなことしなくてもいいですよ〜。
それよりも〜、膝枕してください」


恭也が了承を出す前に、頭を恭也の膝に載せる総詩は


「僕、恭也先輩の膝枕大好きなんです……///」


照れながらもそう言ってくる総詩の頭を撫でてやると、その手の感触と心地よい風のおかげですぐに深い眠りについた。


「すやすや……」


「相変わらず、よく寝る子だな」


優しい笑顔で幸せそうに寝ている恋人の髪を撫でる。
そんな二人にやさしい風が吹く。
その風を受けながら恭也もまたのんびりした一日を過ごすのであった。



異識つみきさんから投稿作品頂きました〜。
美姫 「学園☆新選組!から総詩ね」
みたいだな。残念ながら、学園☆新選組!はプレイしてないけれど。
美姫 「でも、可愛らしい感じの子よね」
うんうん。ちょっと原作に興味が出てくる。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ございました〜。



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