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祐巳と由乃は玄関先で瞳子達と別れると、お互い時計を確認していた。
「十五分前か」
「全然余裕ね」
いつもの事とは言え、朝の時間には良く由乃さんとは出会うのだ、由乃さんいわく『だいたい学園につく時間が一緒なら、どちらかが時間を代えない限り会うでしょうが・・・』と、確かにその通りなのだ。
それに祐巳も別に瞳子達とは約束などしてないのだが、いつも校門に入る頃には一緒に歩いている事が日常となっていた。
「でも、志摩子さんはもう教室に着いてる時間だね」
由乃さんは目線を上げると。
「白薔薇姉妹は朝が早いからねぇ」
少し飽きれたような表情をしながら、祐巳の問いに答えていた。
そうなのだ、白薔薇姉妹事、藤堂志摩子さんと「つぼみ」である二条乃梨子ちゃんは、いつも一時間も前から学園に来て薔薇の館で一緒に過ごしているのだ。
上履きに履き替えると、同級生からの挨拶に答えながらも二人は階段を上がっていった。
教室に着くまでに多くの下級生たちの「ごきげんよう、紅薔薇さま、黄薔薇さま」と言う挨拶に「ごきげんよう」と微笑を称えながら歩くものだから、挨拶を交わした多くの生徒達から「きゃ〜」だの「はぁ」だの声が聞こえるのだが、いつもの事だから気にしないで由乃さんは歩いて行くが、祐巳はそのつど降り返っていた。
祐巳と目線が合った生徒たちは、頬を染めながらもそそくさと自分達の教室に向かって行くのが朝の日課となっていた。
「まったく、祐巳さんはいつも降り返るわね」
「いや、だって、気になるから」
「まぁ、祐巳さんらしいから良いんだけど」
そう言いながら扉を開けて由乃さんは入って行った。
それに続くように祐巳も入ると、読書をしている志摩子さんを見つけ「ごきげんよう、志摩子さん」と二人は挨拶を交わした。
「あら、祐巳さんに由乃さん、ごきげんよう」
「相変わらず早い時間に来てるんだね」
由乃さんは軽く挨拶を志摩子さんと挨拶を交わすと自分の席に荷物を置きに行ってしまった、祐巳は由乃さんより志摩子さんの席に近い事もありカバンを置くと、すぐさま志摩子さんの所に来ていた。
「そう言う祐巳さんだって十分早いと思うけど」
祐巳は、今一度壁に掛かっている時計を見ると、始業時間まで十分しかないのにそれでも祐巳は早いと言う志摩子さんに『まてまて、後十分しかないのに早いって・・・』と激しく突っ込みを入れたい祐巳であった。
困り顔の祐巳に気が付いた志摩子さんは、激しく手を振ると。
「違う違う、そうじゃなくて、私が教室に着いた時に窓から外を見たら、偶然祐巳さん達が銀杏並木の所でふざけあってる所を拝見したから」
と言って、慌てて取り繕う志摩子さんを見て祐巳は。
「はいはい、あの漫才を見ていらっしゃったのですか」
と、大げさに溜息を付きながら志摩子さんを上目使いで見てると。
「おいおい、私達は漫才師じゃないぞ、せめてコンビと言ってもらいたいね」
由乃さんは、自分の席から祐巳達に聞こえるように反論するものだから、それを聞いていたクラスメイト達は「クスクス」と笑いを堪えている友達もいれば、声を出して笑っている友達もいた。
その反応を確かめると、由乃さんは満足そうな表情をして近くのクラスメイトと話し始めていた。
祐巳と志摩子さんは二人して見詰め合うと「由乃さんらしいね」と言って笑いあった。
そうそう、何故紅・白・黄の薔薇さまが一つのクラスに固まっているかと言うと、これは信じられない事なのだが、クラス発表の時偶然と言うか奇跡と言うか一緒のクラスのなってしまったのだ。
教師やシスターもこの事態「リリアン女学園初三薔薇が一つのクラスの揃った事」に慌てていたが、学園長の「これも神が与えた奇跡なのだから受け入れましょう」と言うと、教師達も納得してしまい今に至る訳なのだが、祐巳達は密かに『これは学園長の仕業だよね』と話していた事は、あえて内緒にしておこうと心に止めていたのだ。
しかし、薔薇さまが揃うのも凄い事なのだが、実はこのクラスには後三人有名人が揃っているのだ。
それは、「新聞部部長」の山口真美さんと「写真部部長」の武嶋蔦子さん、そして由乃さんの永遠のライバル「剣道部部長」田沼ちさとさんがいるのだ。
かなりのキャラクターが揃っている祐巳のクラスは休み時間になる度、多くの下級生達が廊下側の開いている窓から覗いて見ていたりしていた。
「ここは動物園か何かか?」
と、かなり前に由乃さんが呟いていたのを祐巳は聞いていて「せめて美術館にして欲しいな」と思ってしまう祐巳であるが、いつも何かと騒がしいこのクラスを見ていると、「動物園だよなぁ」と由乃さんの意見に同意してしまう祐巳であった。
第一章 第二話お送りしました。
ようやくこの話しで三薔薇揃い踏みですね〜♪
しかし・・・この話しのメインはあくまで『祐巳』達紅薔薇姉妹なんで何処まで由乃達が絡むかは内緒で〜す♪
『時流さん』感想ありがとうございました♪
美姫 「三薔薇さまが揃い踏み〜」
でも、今回はちーちゃんの出番なし(泣)
美姫 「はいはい、よちよち。大丈夫よ。だって、卯月東雲さんもいってるでしょ。紅薔薇姉妹がメインだって。
なんだから、そのうち出てくるわよ」
だね。
祐巳たち三人の会話は楽しいね♪
美姫 「本当よね。今後、どのぐらい絡んでくるのかも楽しみです」
次回も楽しみにしてますよ〜。
美姫 「じゃあね♪」