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 瞳子は、薔薇の館を出るとゆっくり歩きながら自分の教室に戻って行った。
 すると、瞳子の前に数人のクラスメートが歩み寄り「瞳子さん」と話しかけてきた。
 
 「瞳子さん、どこに行ってらしたの?」
 
 「えっ」
 
 「紅薔薇のつぼみさまが、今日もいらっしゃったのに」
 
 「だから」
 
 「とても残念そうに帰ってらしたわ」
 
 「うっ」
 
 矢継ぎ早に話しかけてくるクラスメートに、何も答えられなくなっていると。
 
 「皆さん、そろそろ次の授業の準備をしないと駄目だと思うんだけど」
 
 と、二条乃梨子さんが言うと「あっ、そうね」と言って、それぞれ席に戻って行った。
 
 「はぁ〜」
 
 瞳子は深い溜息をつくと、乃梨子さんは「大変だったね」と言って肩を落としている瞳子に優しく手をさし伸ばしてくれたのだ。
 
 「だけど、祐巳さまもあきもせず毎日来るわね」
 
 「そうね」
 
 と、言いながら瞳子は今先ほどまでいたであろう祐巳さまの姿を扉の外に思い描いていたのだ。
 その日の授業も淡々と何事も無く進み放課後を迎えようとしていた。
 瞳子は帰り支度を整えていると、廊下が騒がしくなってきたのだ。
 
 「どうしたのかしら?」
 
 カバンを持って廊下に出ようとした瞬間、目の前が急に真っ暗になり誰かと瞳子はぶつかっていたのだ。
 
 「くっ」
 
 意外と衝撃は少なかったのだが、鼻をぶつけてしまっていた。
 
 「何なのよ一体!!」
 
 鼻を押さえながら顔を上げるとそこには、祐巳さまが心配そうに見下ろしていたのだ。
 
 「祐巳さま!!」
 
 「ごめんね、大丈夫?」
 
 祐巳さまは瞳子の鼻を優しくさすったのだ。
 
 「だ、大丈夫ですわ、祐巳さま」
 
 頬を赤く染めたが、その顔を祐巳さまに見られまいと両手で頬を隠すと何とか冷静に対処したのだ。
 
 「何で瞳子がこんな目に会わないと行けないのよ」
 
 ブツブツと祐巳さまに聞こえぬよう小声で文句を言っていた。
 
 「?」
 
 祐巳さまは、不思議そうに瞳子の事を見詰め小首を傾けていた。
 
 「あの、それで祐巳さまはどうしてここに?」
 
 「ああ、そうそう、瞳子ちゃんに渡したい物があってね」
 
 「うっ」
 
 一瞬、嫌そうなそれでいて困ったような表情を浮かべた瞳子に、祐巳さまが寂しそうな瞳をしたのに気付き「あっ、えっと、渡したい物ってなんですか?」と、必死に言いつくろっている自分に「何でこうなるのよ〜」と、思ってしまう瞳子であった。
 
 「えっとね、瞳子ちゃん」
 
 祐巳さまが首元に手を持っていきながら話し始めてると、「きゃあ」だの「瞳子さんロザリオ受けるのかしら」だの「薔薇さまのロザリオなんて始めて見るわ」だのと騒然とし始めて来た事に、祐巳さまと瞳子が気付き、それまで気にしなかった周囲を見回すと、そこには大勢の生徒達の熱い視線が二人に向いていた。
 
 よく見ると、そこには何時の間にか武嶋蔦子さまと山口真美さまの姿がチラチラと見え隠れしていた。
 
 「あの方達はあきもしないで・・・」
 
 「あらら、皆さん見てらしたのね」
 
 祐巳さまは驚きながらもニッコリ微笑むと、頬を赤く染めて俯いてしまっている生徒達も多くいた。
 そんな生徒達を横目で見詰めながらも、何故だか瞳子は胸を締め付けられる気持ちに苛立ちを感じはじめていた。
 
 「紅薔薇のつぼみさま、お話しは向こうで伺いますわ」
 
 少し語尾を強めながら言うと、祐巳さまの手を握り歩き始めていた。





 



 第二章 第二話 お届けしました。
 少し遅いUPでした・・・(汗
 根本的に卯月は手(書き)が遅いので、迷惑しまくる可能性が・・・すみません^^;
 これからも頑張りますので、見捨てないでやって下さい(笑

 では、第二章 第三話へ・・・



卯月さん、ありがとうございます。

美姫 「遅くないですよ〜。全然、問題なしです」

祐巳ちゃんが大胆♪

美姫 「このまま素直にロザリオを受け取るのか。はたまた、もう一波乱あるのか」

非常に気になる所で、また次回なのです!

美姫 「卯月さん、続きを待ってます」

ではでは。


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