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 その日の授業も何事も無く進み、昼休みに入ろうとしていた。
 
 「ねぇ、祐巳さん、お昼はどこで取るの?」
 
 隣で志摩子さんが、回りに聞こえないよう小声で祐巳に話し掛けてきた。
 
 「う〜ん、一応お弁当持って来てるし、多分瞳子ちゃん達が向かいに来ると思うから、お昼は薔薇の館で取ろうと思ってるんだけど」
 
 「あっそうなんだ」
 
 「志摩子さんはどうするの?」
 
 志摩子さんは暫らく外を見詰めてると、何か思い付いた様にニッコリ微笑むと。
 
 「今日は晴れてるし暖かいから、乃梨子と外で食べようと思ってるの」
 
 と答えた。
 
 「本当にこの白薔薇姉妹は、仲が良いなぁ」と、いつも祐巳は思うのだが、志摩子さんから言わせると、「祐巳さんの所だって、いつも笑い声があって羨ましいと思ってるわ」と言っていた。
 
 「そう言えば、二人のブゥトンにはまだスール候補はいないの?」
 
 突然、祐巳が質問したもんだから志摩子さんは驚いた顔をしていた。
 
 「由乃さんの所は分からないけど、うちの乃梨子はまだいないみたいね」
 
 「ふ〜ん、そうなんだ・・・やっぱりこの時期にプティ・スールがいるのって珍しいんだよね」
 
 七月にもならない六月半ば、すでに「プティ・スール」がいるのは祐巳の紅薔薇姉妹とそれに続くように相次いでスール関係を結んだ数組の姉妹だけであった。
 どうやらこの数組の姉妹は、あの春頃に起きたリリアンかわら版での記事「紅薔薇のつぼみスール発言!!」が発端で、どうやら同じ時期につくりたい一身で頑張っていた姉妹達であった。
 
 「まぁ、珍しいと言えばそうかもしれないけど、千鶴ちゃん良い子だし瞳子ちゃんとも相性が良いみたいだから、おばあちゃんとしては嬉しい限りじゃないの?」
 
 「おばあちゃんか・・・この歳で孫の顔を見るとは」
 
 祐巳の大げさな溜息に志摩子さんは笑っていたが、「志摩子さんだって時期おばあちゃんですよ」と心の中で呟く祐巳であった。
 
 志摩子さんとのヒソヒソ話しも終業ベルが鳴り、お互いの妹達が来ると「では、お先に失礼するわ」と言って、志摩子さんは乃梨子ちゃんを連れ出て行こうとしたが、祐巳の視線に気付いた乃梨子ちゃんは、声には出さないで頭を下げると、先に行ってしまった志摩子さんを追いかけるように教室を後にしたのだ。
 
 祐巳の教室には、数組の姉妹が仲良くお弁当を食べて談笑している姿があり、その中には黄薔薇姉妹もいて、祐巳は簡単に挨拶を済ませると瞳子達を連れて教室を出ると、薔薇の館に向かって行った。
 
 「お姉さま、もうすぐ夏休みですけど何処か行楽地にでも行かれるのですか?」
 
 何気ない瞳子の質問に「う〜ん」と考え込んだ祐巳に、千鶴は何か思い出したように「紅薔薇さま、お話しがあるんですが」と千鶴には珍しく身を乗り出して話し始めた。
 千鶴の話しとは、夏休みに入って山百合会での仕事が終ったら二人は海辺の別荘に行って遊ぶ約束をしていたのだが、祐巳も誘おうと話していたのだ。
 
 「私も行っても良いの?」
 
 と、聞くと二人揃って「あたり前です!!」と答えたから祐巳は嬉しくなって二人に抱き付いていた。
 その後も祐巳達姉妹は、仲良く昼食をとるとそれぞれの教室に帰って行った。
 祐巳は。
 
 「早く夏休みにならないかなぁ」
 
 と、呟いた。



 



 取り合えず第一部完です。
 次からは祐巳と瞳子の話しになるんですが・・・あまり深く考えて読まないでサラッと読んでくれると卯月的には助かるかも・かも・かも(byカレイドスター・・・笑
 第二章 第一話は来月お送りしま〜す。

 では、「ごきげんよう」 



第一章完、お疲れ様〜。

美姫 「お疲れ様です」

次からは、祐巳と瞳子の話か〜。
何か、瞳子ちゃんが可愛いキャラになってるだけに、少し楽しみです。

美姫 「来月までの辛抱よ」

おう!
ちーちゃんの出番もあると良いな…。

美姫 「では、第二章も楽しみにしてます♪」

ではでは。




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