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キーンコーンカーンコーン♪
四時限目の終業ベルが鳴ると共にクラスメイト達は各々の仲の良い友達と食堂や中庭に行って食事を楽しむのが何時もの風景なのだけど、今日はちょっと・・・いえ、かなり違っていた。
それは・・・
(どうしてこの方が教室にいらっしゃるの〜〜なぜ?なぜ?なぜ?)
頭の中は既にパニック状態で何を考えていいのかさえ冷静に考えられなかったのです。
わたしは目線を泳がせると、横に座っている美弥さんに気付き『助けて〜』っと心の中で叫んでいたものの、当の美弥さんはニコニコ笑うだけで助けてくれる気配がまったく感じられなかった。
「どこを見てらっしゃるの、こっちをちゃんと見なさい」
「はい!」
わたしは美弥さんに向けていた目線を素早くあの方『ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン』である松平瞳子さまに戻したのだ。
何故、瞳子さまが一年のクラス・・・つまり、わたしのクラスにいるのか、と言うのは終業ベルが鳴ってから数分が経過しようとしていた時、わたしはお弁当派なのでいつもの様に美弥さんと食事を教室で取ろうと包みを解きかけていた時、廊下側が異常に騒がしくなりそれが教室の前まで続き聞き取りづらかったけどはっきりと『ここの教室に千鶴はいるのね?』・・・と、聞き覚えのある声が響いたのだ。
ドキン、ドキンっと何故だか心臓が破裂するんじゃないかと思うくらいに鳴っていてわたしは扉から瞳を離す事が出来なくなっていた。
勢い良く扉が開くと『あの方』は素早くわたしを見つけスタスタと近付き『ここいいかしら?』とわたしの前の席に座っていた聖歌さんにお願い?して席を譲ってもらいわたしの前に座ったのだ。
そして今の状況になったのですが・・・
「あの、瞳子さまご用件は・・・」
「ご用件も無いんじゃなくて?わたしは朝の返事を聞きに来ただけよ」
「返事と言われましても、まだ、決心が付きませんし瞳子さまとお話ししたのも今朝が初めてでどう答えて良いか分からなくて、つまりその・・・」
答えに詰まっているわたしを見て瞳子さまは一人納得したかのように頷くと、持参して来た手提げ袋からお弁当を取り出したのだ。
「えっと、瞳子さまそれは?」
「えっ、お弁当よ?何に見えるのかしら」
「そうじゃなくてですね、どうしてお弁当を持って来ているんですか?」
「勿論食べる為に決まってるでしょ?お昼休みなんて短いんだから千鶴と話してから自分の教室に戻って食事なんかしてたら時間足りないでしょ」
「それもそうかもしれませんが、瞳子さまはロサ・キネンシスと食事をなさるのではないかと・・・」
「お姉さまには朝の内に今日はご一緒出来ない事はお話し済みだから千鶴は気にしなくても良いのよ」
「はぁ、そうでしたか・・・」
「だから早く頂きましょう」
瞳子さまのマリア様に祈りを捧げている姿を見て、わたしと美弥さんも慌てて手を組むと同じように祈りを捧げたのだ。
実はこの時クラスに残っていた生徒達も既に祈りを捧げて食事をしていたにもかかわらず、何故だか全員瞳子さまと一緒に再度祈りを捧げていたのは、後で聞いて知った事なのはお約束って言う事で・・・
「あら、千鶴が食べているコロッケ美味しそうね」
「えっ」
突然瞳子さまがわたしのお弁当に顔を近づけると、一度わたしの顔を見て「ひと口頂いてもよろしくて?」と聞いてきたのに驚き食べようとしていたご飯を落としそうになってしまったのだ。
「えっと、このコロッケですか?」
「ええ、そうよ」
「でも、これは母が料理したコロッケで瞳子さまが食べてらっしゃる高級なコロッケとは違って美味しいとは・・・」
「あら、わたしだって『笹倉屋のコロッケ』も頂いてるわよ?」
「えっ!!瞳子さまも笹倉屋ご存知なんですか?」
「ええ、よくお姉さまに連れて行って頂いてますわよ」
「ロサ・キネンシスもですか!!」
「そうよ、お姉さまはよく黄薔薇さまと白薔薇さまも連れて行ってますわよ」
「白薔薇さまもですか!!瞳子さま!!」
突然美弥さんが立ち上がると、瞳子さまに詰め寄って行った為、驚いた瞳子さまは勿論わたしもだが、持っていた箸を落としそうになってしまったのだ。
「そ、そうよ、白薔薇さまも大変気に入ったらしくて乃梨子さんと一緒に週に二回くらいは行ってらっしゃるわよ」
「乃梨子さまもですか!!」
ますますテンションが上がっていく美弥さんに、瞳子さまは顔を引きつらせながら「所であなたのお名前聞いていなかったわね」と美弥さんに聞くと、ここぞとばかりに「わたくし千鶴さんとは中等部からのお付き合いをさせて頂いています、香月美弥と申します」と美弥さんは答えたのだ。
そうそう、先程から出てくる『笹倉屋』とは、リリアン女学園からとても近い場所で開店しているコロッケ専門店なのですが、高級で値段が高い訳ではなく、お母さんが作ってくれるようなコロッケなので、サラリーマンやOLさんにも安くて美味しいと評判のコロッケ屋さんなのだ。
「なんだか、千鶴とは違った面白みのある子ね・・・」
ぼそっと小声で囁いた瞳子さまの呟きを聞き思わず苦笑いを浮かべた千鶴であった。
第三話ようやくお贈りする事が出来てホッとしている卯月です。
しかし、前回UPしてから約一ヶ月近く離れてしまっているとは・・・やばいやばい・・・orz
今度こそ早く・・・約束出来ないのが痛いのですが、UP出来るよう頑張りますね〜〜♪
早速、ちーちゃんにアプローチを掛けまくりの瞳子ちゃんと、それに狼狽えるちーちゃんが良いね〜。
この調子で瞳子はちーちゃんを振り回していくんだろうな。
美姫 「この後、どんな展開が待っているのか楽しみね」
兎も角、ちーちゃんの出番が覆いこの三章は毎回、毎回いつも以上に楽しみなのだよ〜。
美姫 「二人がどんな風に儀式をするのか、今からとっても楽しみね」
続きにワクワクしつつ、今回はこの辺で。
美姫 「卯月さん、次回も楽しみにしてますね〜」
ではでは〜。