『An unexpected excuse』
〜十六夜咲夜編〜
「俺が、好きなのは…………」
その場にいた全員が息を止めた。
その光景はまるでその地一帯の時間が止まったかのように。
その時、
――――――時符「プライベートスクウェア」――――――
本当に時が止まり、再び動き出した時には、
「なっ!?」
恭也は神速を併用し全力で回避行動に移っていた。
そして恭也が今までいた場所には夥しいまでのナイフが刺さっていた。
「「「「「「………………………(ポカーン)」」」」」」
どうやら周りの方たちは急な事で思考が追いついていないようだ。
だが、皆が呆けている間、ナイフは無情にも恭也を狙い続けていた。
「なっ!っこ、このナイフは――――――咲夜か!?」
恭也が女性の名を呼んだ瞬間に、今まで恭也を襲い続けていたナイフの雨は降り止んだ――――――
「咲夜なのか!?だが何故こんな事をするんだ!?」
――――――のだがその一言により再びナイフの雨が降り出した。
「わっ、ま、待ってくれ何かお前の機嫌を損ねるような事をしたか!?」
更に激しくなるナイフの雨。
更に、
――――――「咲夜の世界」――――――
世界は完全に静止し、
――――――幻葬「夜霧の幻影殺人鬼」――――――
動き出した時には、先ほどのナイフの雨よりも遥かに多く、まるで霧の様に霞むまでのナイフが投げつけられた。
しかも行き成り、殆どのナイフが眼前に迫った状態で。
「くっ!?(止むを得ん――――――!)」
――――――神速「刹那」――――――
完全にではないが、世界は限りなく静止に近い状態になり、
――――――朧身「御神流正統奥義”鳴神”」――――――
その場を動かず、数えるのすらバカらしくなるほどに迫るナイフを、恭也は全て狂い無く叩き落とした。
「―――――――――其処だ!!」
ナイフを投げてくる大本を気配で探り当てた恭也。
”朧身”によって実態を持った残像を含めた、計千五百六十四に連なった恭也の手によって鋼糸が放たれた。
「―――――――――くっ!?」
幾つか避けられたがとうとう捕まえる事が出来たようだ。
因みにこの間一秒にも満たず、”他”とは違う忍や美由希でさえも何があったか見えていない。
通常時間に戻った頃には恭也は謎の瀟洒な女性を抱いていた。
「くっ!離しなさいッ!!」
僅かに息を切らせ、頬を染めたまま言った。
「いや、今話したら確実にまた襲うだろ………………」
こちらも僅かに息を切らせ、呆れを滲ませながら言った。
この後、暫く口論が続きます。
色々と話し合った結果取り敢えずは襲わないと言う事で決着が着きました。
「えーと、もういい?恭也」
「………………すまない、放って置いたままだったな」
「やー、覚えてくれてるみたいだからいいけど、と言うよりさっき何をやってたかさっぱりだったし」
うんうん、と頷くその他大勢。
気付いたら恭也が女性を抱いて口論をしているのだ。
その中で美由希は頷いてから、ハッと気付き、顔を青くしていた。
「………美由希」
「(ビクッ!)」
「安心しろ、今何が起こったのか分かれと言わん。お前より遥かに視える忍が分かっていないのだから、流石にそこまで無茶は言わん」
「(ホッ、とため息)」
「………………………………………まぁその内出来る様になって貰うが(ボソッ)」
「え?何か言った恭ちゃん」
「いや、なんでもないただの独り言だ」
「………………………相変わらずえげつないわね(ボソッ)」
「何か言ったか?」
「気にしないで、アナタと同じでただの独り言よ」
「そうか………所で咲夜、お前のことを紹介したいのだが」
「それもそうね………」
そう言い女性はまた時を止め(忍達は分からないが)身だしなみを整えた。
「初めましてお嬢様方、私の名は十六夜咲夜。紅魔館と言う屋敷のメイドの長を務めている者です、どうぞ宜しくお願いします」
実に瀟洒な姿で自己紹介をする女性、十六夜咲夜であった。
「「「「「「おお〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」」
その姿に見惚れ、感心する者たち。
「むむむ!やるね咲夜さん。でも家のメイドも負けないよ!!」
とか言い対抗心を燃やし、
「いくよ!ノエル!」
と呼べば――――――
「はい、忍お嬢様」
――――――すぐさま現れた。
――――――忍の影から。
「「「「「うおっ(きゃあっ)!!!」」」」」
「の、ノエルさん?一体何処から、それよりどうやって………」
「仕える者なら誰もが出来る事です」
「そうなんですか?」
「メイド(執事も可)は主のために出来ない、などと言う物は何一つとしてありません」
何時もの無表情なのだがどこか誇らしげな顔をして胸を張るノエル。
「ノエルっ!」
大きくも無く、だけどはっきりと聞こえる声でノエルの名を呼ぶ忍。
「承りました」
そう言ってノエルはエプロンドレスから―――――――――
―――――――――ソファーを。
「えっ?」
誰かが上げた声なのだろう。
だがそんなのは気に為らない。
寧ろ気が回らないのだ。
何故ならノエルはソファーだけじゃ留まらず。
―――――――――プラズマテレビ、スピーカー、ハンドテーブル、ゲーム機器数体。
全て何処からともなくエプロンドレスの中から全て取り出し。
「パーフェクトよ、ノエル」
「感謝の極み」
満面の笑みを浮かべたソファーに座る忍が出来上がった。
「………………………そんなアホな」
誰かが思わず漏らした言葉。
しかし皆の気持ちを最も表す言葉でもあった。
「さて、あなたにこれくらい芸当が出来るかしら?」
余裕の笑みを浮かべる忍。
だが帰ってきた反応は想像したものとは違う物だった。
「嘆かわしいわね………」
「む、どう言う意味よ?」
「そんなものが無いと喜べないの?」
そう言った彼女の顔は勝利を既に予感している顔だった。
「む〜、じゃあアナタはどうやるのよ」
「こうするのよ」
そう言って咲夜は自然な動作で恭也の隣に立ち。
――――――頬に手を添え。
――――――少しばかり頬を染め。
――――――少し上目使いで。
――――――お互いの眼を見つめあい。
―――――――――そして、
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はーい、こっからはあまちゃでかっぽりやきはまぐり、な展開があるためお見せ出来ませーん。
直正「いや、お前なにやってんの?」
いやね、やっと出来た咲夜さんの物語だからサービスシーン作ろうかと思ったが、此処じゃまずいだろ?
直正「いやいやいや、サービスシーンって何を書くつもりだったんだよ」
いやあ、何ってナニを?
直正「………………いっぺんマジで死ね」
ハハハハハハハ!まぁそこは流してくれ、それでは本編をどうぞ!
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さて、濡れ場一歩手前なシーンが有ったため中断してしまいましたが、話は進みます。
「―――ん、はぁ………………」
麗しげな声を上げる咲夜。
「ねぇ恭也、私………もう―――」
「あぁ、分かっているさ」
悩ましげな咲夜の声を優しく遮る恭也。
「だが、その前に………」
そして、(今まで放っていた)忍達に声をかける。
「さっきの(と言ってもだいぶ前だが)問いだが、まあ見て分かると思うが、コイツのことだ」
そう言って咲夜を(俗に言うお姫様)抱っこをする恭也。
「じゃあ、後は頼んだ」
そう言って咲夜と共に学校を後にする恭也。
「「「「「「………………………………」」」」」
矢張り先程の光景は皆には少しばかりきつかったようだ。
皆固まっているが、
「恭也ったら、何て激しい………」
「恭也様………」
経験のある(笑)忍とノエルだけが正確に状況を判断していた。
それから数ヵ月後、ある家の長男が皆の前から姿を消した。
駆け落ちしただの何だの噂があるのが。
ある郷の屋敷の執事をしていると言う噂があったとか無かったとか。
<おわり>
あとがき
さて、本編で区切りを入れたので漫談は無しです。
皆様方お久しぶりでございます、覚えてくれている方はいらっしゃいますでしょうか?堕神刹那です。
最近は身の回りが立て込んできているのでまともに筆を上げれません。
今年初めての更新となったので順序良く更新していきたいと思っています。
次回作は手塩を掛けている長編を書きたいところですが、リクがあるならばどんどん受け付けます。
こんな作品を読んでいただいたアナタ様に感謝。
では、今回はこの辺で、次回また読んで下されば幸いです。またお会いしましょう、さようなら。
いやー、最近のメイドさんって凄いな。
美姫 「あれを標準だと思わないでね」
勿論、思いませんよ。メイドさんは、ただそこに居るだけで良い。
美姫 「あー、はいはい。投稿ありがとうございました」
ました。それでは、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」