『An unexpected excuse』

   〜ルーミア編〜





「俺が、好きなのは…………」



その場にいた全員が息を止めた。



「………………………………」

「………………………………」



恭也は黙したまま語らず、深く考え込む。

FC+αも黙したまま。

ただ時だけが流れていく…………。










「…………忍」

「えっ?!な、なに」



突如かけられた声にあわてる忍。

もしや自分か?!



「”あの事件”からどれくらい経つ」



と思いきや肩透かしを食らいつつも、忍は律儀に答えた。



「”あの事件”って恭也がふらっと出て行って行方不明だったやつだよね?」



あの事件。

それは恭也がふらっと出て行って行方不明になり、ふらっと戻ってきたことだ。

行方不明になっている期間は三日位だ。

しかし帰ってきた恭也は時折どこか上の空になったりするのだ。

それを心配した家族はどうした、と訊ねるが。

何でも無い、と言ってのらりくらりと質問を避けていた。



「大体三ヶ月くらいだと思うよ?」

「…………そうか」



それっきり恭也はまた黙ってしまった。





「ねえ、恭也」

「なんだ」

「えーと、好きな人、居るの?」

「………………………………」





「ああ、居る」



しばしの沈黙。

後に絶叫



「だ、誰なの、恭ちゃん!」



悲鳴を上げるかのように問い詰める美由希。

その質問に対し、答える恭也。



「鬼灯の様に紅い眼。
 太陽の様に輝く金の髪。
 闇の中に浮かぶ白い肌。
 太陽の様に明るく、無邪気な子だ。」



恭也の脳裏に浮かぶ、一人の少女。

滅多に有り得る事の無い出会い方で出会った少女。

その真剣に語る恭也の姿に、身の思いを諦めて行くFC+α。

彼女たちが去った後には恭也だけが立っていた。



「………………………………」



しばし思考の後に恭也もその場を立ち去った。


































                   高町家・リビング






「…………ねえ、恭也」

「なんだ」



高町家の(多分)大黒柱。

ここ最近は家の長男がその役回りな気がするが。

で、その大黒柱、桃子は家の長男、恭也に声をかけた。



「何か言いたいことあるんじゃない?」

「…………ふむ」



恭也は一拍おいて頷き、訊ねた。



「なんでそう思うんだ?」

「なんていうかね、士郎さんみたいなのよ」

「とーさん?」

「ちょうどあの人がプロポーズする時の空気と一緒だったから」

「…………あながち外れではないな」

「で、どうしたの?」

「………………………………」



暫し、間を置き。



「みんな、聞いてくれ」



招集をかけた。



「なに、恭ちゃん」

「どうしたの、おにーちゃん」

「どうかしましたか、師匠」

「このおサルがなんかしではりましたか?」

「んだと、このカメ!」

「どーせ盆栽割ったんとちゃうんか?」

「げ?!なんで知ってんだ?!」

「………………………………」

「………………………………」

「……………………晶、後で道場に来い」

「………………………………はい」

「まあ晶のことは置いといて、何か用でっか?お師匠」

「ああ、実はな―――」



そこで一拍区切り、



「三日後の晩、俺は家を出る」



爆弾発言をした。



「「「「「―――――――――」」」」」

「先手を打っていうが、落ち着け」

「「「「「………………………………」」」」」



爆弾発言しといてそれは無いんじゃないか?



「………それで、訳は訊いてもいいの?」

「うむ、まあ話すと長くなるので要約して言うと………」

「「「「「要約して言うと?」」」」」

「………一重に、愛だよ」



某オタク少女風に言う恭也。





ピシッ!





普段冗談の一つも言わない堅物が言った為、フリーズする一同。






                   ―――――しばらくお待ちください―――――





「…………で、本当の所は」

「…………まあ、彼女の都合だな」



復活した桃子は再び訊ねた。

恭也は幾分か言葉を濁しながら言った。



「………ところであの口調何?」

「忍がよく言っているので真似してみた、和ませようと思って言った、意味はそのままだ」

「彼女って、聞いてないんだけど」

「昼間、美由希には言ったがな」



僅かに視線が美由希に向いた。



「帰ってくるの?」

「…………わからない」

「何でわからないの?」

「向こうに行った状況によるからな」

「…………つまり三日で美由希の鍛錬を終わらせるのね」

「えっ!?」



行き成り上がった自分の名にビックリする美由希。

そして内容を理解して二重の意味で吃驚する。



「どういうことなの恭ちゃん!?」



悲鳴を上げるように訊ねる美由希。



「…………二日でお前の腕を皆を護れる腕に上げる」

「……………………」

「そして三日後の明朝、継承の儀を行う」

「……………………!」

「…………無理を承知で言う、美由希、頼む」



そう言って恭也は頭を下げた。



「………………………………」

「………………………………」

「………………………いいよ」

「………………………………」

「恭ちゃんは本当に出来なくても、出来ないって今まで言わなかったから」

「………………………………」

「その恭ちゃんが頼ってくれるんだもん、私、やるよ」

「……………………すまない」





そして時は流れ……………。










                   三日後の晩・高町家玄関







そして期日の日がやってきた。(そこ、手抜き言うな!)



「じゃあ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

「……………………なのは」

「ぐすっ………ぐすっ………うぅ………」



泣いている高町家末っ子、なのは。



「………すまない、なのは」

「ううん、おにーちゃんは何も悪くありません」



無理矢理泣き止み。



「絶対、絶対に帰ってきてください」



そして泣き腫らした顔で笑うなのは。



「………………ああ、約束しよう」



そう言ってなのはの頭を撫でる。




「………………………では、行ってくる」





























                          幻想郷・博霊神社






「………………………………」

「遅かったわね、恭也」



結界を通り越し、博霊神社に足をつける恭也。

そしてそこに声を掛ける女性の声。



「………………霊夢か」



そう言って恭也の目を向けた先には、先程恭也に声を掛けた女性、霊夢が立っていた。



「ま、時間通りと言えば時間道理だけどね」

「そうか、………ルーミアは?」

「何時も通り森にいるんじゃない?」



霊夢は下に広がる森を指差した。

その森は夜の暗さも相俟って、どこか不吉な感じがした。



「そうか………」

「一応、私は”何も見てない”からね」

「………すまない」



そう言い、恭也は森に向かい歩き出した。



「今後の宴会の後片付けは俺がしよう」

「約束よ?」

「ああ、紫に礼を言っといてくれ」

「はいはい」



そして恭也は霊夢の視界から消えた。



「………………だってさ、聞いてるんでしょ紫」





ニュッ♪





「ふふふ、やっぱり恭也はいい子ねえ、式に欲しいくらいだわ」



突如空間に裂け目が出来、そこからゴシック調の洋装に、柔らかいという印象を抱かせる金髪の女性が現れた。

空間の裂け目より出てきた女性、紫は妖艶に微笑みながらそう言った。



「無駄よ、恭也はその気、一切ないんだから」

「あら霊夢、焼き餅かしら?」



紫はクスクス笑いながら言った。



「そんなわけないでしょ」



霊夢はそう言った。

が、



「フフッ、顔真っ赤よ?」

「う、うるさいわねっ!」



そう言いながら顔を真っ赤にし、紫を追い払った。























                          博霊神社付近の森





「………………此処にいたか」



恭也は何処となく呟いた。

そこはよっぽど森の奥まで来たのか、辺りは真っ暗闇だった。



「…………ルーミア」



恭也はその闇に向かって声を掛けた。



「………………………………」



すると辺りに立ち篭っていた闇が晴れだした。

その中から一人の女性が現れた。



「………………きょうや」

「………………………」



恭也は闇の中から現れた女性、ルーミアを見つめいている。

ルーミアと呼ばれた女性は恭也の名前を呟くように呼んだ。



「………………ルーミア」

「………………………」

「人を………………殺したな」



恭也は斬り付ける様な視線でルーミアに言った。



「………………何故だ」

「………………………」

「何故なんだ………………何故殺した」



恭也は縋る様な思いで訊ねた。



「きょうや………」

「何だ」

「あたし………きょうやとの約束、護れなかった」

「………………」

「きょうやと居られるように我慢したよ?」

「………………」

「でもダメ、我慢出来なかった」

「………………」

「食べちゃった、すごくお腹減ったから」

「………………」

「殺しちゃった、だって、………だって」

「………………………」





「だって憎かったんだもん!!!」





「………………」

「ねぇ、なんで?」

「………………」

「なんで殺されなきゃいけないの?!」

「………………」

「なんで封印されなきゃいけないの?!」

「………………」

「あたしはきょうやと居たいだけ、それがどうして駄目なの?!」

「………………」

「ねぇ、教えてよ………」

「………………」

「教えてよ、きょうやぁ………………」

「………………」



恭也は黙ってままだった。

そして、



「………ルーミア」

「………………」



迷わず、決意した。



「………あの時、決めたように」

「………………」

「ルーミアが人を殺した時………」

「………………」

「悲しみが広がらぬように………」

「………………」

「俺が………………ルーミアを殺す」



恭也は宣言した。



「………………うん、わかった」

「………………」

「でも、ね」

「あたしもきょうやを、殺したい」

「………………」

「きょうやを、食べたいの」



ルーミアの身体から溢れ出る狂気と妖気。

それがルーミアの身体を覆った。



「ねえ恭也、アナタに私を殺せるの?」

「………………」

「タダの人間のアナタが」

「………………知らないのか?ルーミア」

「………………何?」

「妖怪を殺すのは何時だって――――――」



そう言いながら八景を構え、



「――――――人間なんだ」



そう言って斬り掛かった。





























                        恭也が出て行ってからの数日後の夜






ぴんぽーん




高町家を尋ねる一人の人影が。



「はーい」



そう言って来客を迎えたのは美由希だった。

今までならば恭也が迎えたのだが、戦力交代が起こったため現にこうして美由希が出て行くのだ。



「高町美由希様はいらっしゃいますか?」

「私がそうですけど………」



そう言う人影は良く見ると女性の姿をしていた。

長い金の髪で片目を隠し、黒いロングコートを着ずに羽織っており、袖が風になびいていた。



「高町恭也様からのお届けものです」

「恭ちゃんの!?」



思わず接客態度を忘れ大声を上げる美由希。



「これを………………」



そう言って女性は細長い木箱を美由希に手渡した。



「これは………」



そう言って中を見ると、そこには八景が入っていた。



「これっ!恭ちゃんは………!?」



そう言い、目の前の女性に訊ね様とするが、



「あれ?いない………」



女性は影も残さずに消えていた。

そこには黒い羽がフワリ、と舞っていた。






















「これで………いいんだよね」



先程高町家を訊ねた女性は背中に黒い羽を生やして空を飛んでいた。

風に煽られて髪で隠れていた片目が露になった。

その目は抉られており、見ることは一生適わないだろう。

羽織っていたコートも風に吹かれ脱げていた。

木箱を渡した手は千切れかけており、反対側の手においては既に無かった。



「これでいいんだよね、きょうや」



月明かりの元、限界が来たのか散り散りになっていく自分の身体。

不思議と恐怖は無かった。

寧ろ漸く終われるのだ。

月明かりに照らされながら、散り逝くなか思った。



「出来るならば、来世がるのならば、一緒にいたい、な………………」






(………………きょうや………………………)


























<おわり>




あとがき


よし、終わった。
どうも堕神刹那です。
本来お供としてアシが一緒に話するもんですが、相棒は骨折をして暫く現場復帰は無理です。
アイデアだけ採用してく形になります。
ふと思いついたので書いてみたパート…いくつだ?
相棒の手術や、受験やらで忙しくなるので執筆速度更にダウン。
てかダウンしまくりやな。
ピンチなると速度がアップしたりするですけど。
まあ、読んでくれる方、感想、指摘などなどお願いします。
今回のですが東方知る人でも、更に人が絞られるエクストラステージネタ。
まあ独自の解釈を入れたEXルーミア、自分は矢張りカリスマが出ていると思います。
恭也のメタな発言ですが、流してほしいなー。
リクなどがあれば言ってください。
では、今回はこの辺で、次回また読んで下されば幸いです。またお会いしましょう、さようなら。



おおう、これまた珍しいパターンだな。
美姫 「小太刀を渡すシーンはちょっと良いわね」
うんうん。投稿ありがとうございました。
美姫 「ました〜」



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