『リバース・ハート』

この作品は過去モノです。
ハッキリ言ってありえない設定ですので、
そういうのが容認できない方は読まないほうが無難です。




第二話



恭也は客間へと通された。
部屋のすぐ外に2人の監視役がいる。
気配を探ると遠巻きに更に10人くらいがいるのがわかる。
逃げるつもりがない恭也ではあったが、
万が一に備えておく習慣で逃走ルートのシミュレーションはしていた。
ここで犬死にしても何も変わりはしない。
またあの悲劇を生むだけなのだから。
もし信じてもらえず軟禁なり殺されるようなパターンになれば一時撤退は止むを得ない手段である。
何か別の材料を揃えて信じてもらうしかないのだ。
だが、同時にそういう材料を揃える時間が無い事もわかっていた。
最終手段は青森まで1日以内で行き、父である士郎を説得するしかない。
当時の記憶は曖昧ではあるがいくつか立ち寄った場所は覚えている。
最悪の場合それに賭けるしかない。

このような事を考えていると3つの気配が部屋に近づいてくる。

「入らせてもらうよ」
そう言って客間に入ってきたのは静馬と美沙斗に琴絵だった。
それを見て恭也は
「信じていただけましたか?」
とだけ聞いた。
それに静馬は難しい顔をして
「私個人としては君を信じたい。美沙斗も琴絵も同意見だ。
だが、君が不破であるならば理解できると思うが......」
静馬が言い終わる前に恭也は
「そうですね。確たる証拠もなしに主観だけで判断は出来ませんね。当主であれば尚更」
と、言った。
その答えに静馬は苦笑いし、
「そう言ってくれると助かるね。
まぁ君が言っていた爆弾が見つかれば一応それが証拠となる。
だが、それだけでは囮という可能性も否定できない。
我ながら考えすぎだとは思うが、当主の責任もあるので許して欲しい」
恭也にとってこの受け答えは満足できるものだった。
静馬自身は既に自分を信じてくれていると感じる事が出来たからだ。

だから恭也は少し安堵した表情をみせた。
それを見て静馬が言葉を続ける。
「そこでなんだが、君を信じるもう一つの材料が欲しい。
君は未来から来たと言っている。
それならば士郎義兄さんが今どこにいるのかもわかるね?
もちろん、士郎義兄さんが今の君を見てわかるとは思っていないが、
君が言うテロが本当ならば士郎義兄さんの力も借りたいからね。
正直私たちに中々連絡もよこさないし、こっちでも探しているんだが
ほとほと困っているんだよ」

心底困り果てた表情をする静馬。
それを見て恭也は苦笑し、当時を思い浮かべる。
武者修行と称して全国を回り、確かに修行にもなった。
しかし、父の無謀ともいえる行動の数々に散々困らされた日々だった。
だが、それが非常に楽しくもあった。
そんな事を思い浮かべながら当時の行動をしっかり思い出し答える。

「青森にいる事はお教えしましたよね?
細かい行動は記憶が曖昧ですが、元々は北海道にいたんです。
そこで結婚式に出るために戻ろうという話になったのが式の2日前でした。
てっきり飛行機を使うと思っていたんですが、どうせだから青函連絡船を使うと言い出しました。
それが大きな間違いであり、自分たちがテロに遭わずに済んだ要因でもあります。
本来なら青函連絡船で青森に出て、そこから寝台列車で向かうはずでした。
ところが、その船で父は事もあろうに仲良くなった人たちと賭け事をして大損したんです。
そして、青森についたときには殆ど文無しでした。
そこで仕方なく戻れないという連絡をしたわけです。
ですから、今なら青函連絡船のつく港で捕まえられると思います」

この話に静馬だけでなく、美沙斗も琴絵も呆れていた。
だがそれは、話自体にではなく、士郎の行動に呆れているのだった。
5秒くらい3人は固まっていたが、琴絵が急に怪しい光を瞳に浮かべて、
「そうとわかれば早速港へ人をやらないとね」
と言いながら席を離れた。

琴絵からは殺気という言葉すら生温い怨念が感じられ、
恭也だけでなく、静馬と美沙斗まで動けなくなっていた。


1分くらい放心状態だった3人だが、
なんとか正気を取り戻した静馬が口を開いて、
「ま、まあ、これで士郎義兄さんが見つかれば多分君を疑う人間はいないと思うよ。
士郎義兄さんからは恨まれるかもしれないけど......」
と話を続けた。

それに対して恭也は、
「当時は仕方なくというのを素直に信じていたんですが、
今考えると賭けに負けたのはわざとだったんじゃないかと思います」
と答えた。

静馬はその答えに興味を持ったようで、
「なんでそう思う?」
と、聞いてきた。

それに恭也は少し困った顔をして、
「当時を思い出すと、父は美影さんから逃げてるようでしたし、
琴絵さんの結婚自体は凄く祝福してたんですが、
その為に屋敷に戻って美影さんに捕まるのを恐れていた節があります」
と、答えた。

すると、静馬も美沙斗も苦笑しながら、
「なるほどね」
とだけ言った。



その後は当時の思い出話とかをしながら過ごしていた。
静馬は全国放浪の旅に興味があったらしく、どこで何をしたかを聞いた。
恭也も色々思い出しながら時に困り、時に楽しかった思い出を語った。
そうこうしているうちに1時間近くが経った頃、
廊下を走って一臣がやってきた。

一臣はかなり興奮しているようで、部屋に入るなり
「爆弾が見つかったよ。しかも総数12個だ」
と、吐き捨てるように言った。

それに対し、静馬は無言で頷き、恭也の方を見て
「君のおかげで助かった。礼を言わせて貰うよ」
と言って、席を立った。
そして部屋を出るときに、
「美沙斗はここに残って恭也くんの話し相手にでもなってやってくれ。
俺は一臣たちと爆弾の処理をして今後の対策を図る。
それと、爆弾を処理された事を知って相手が攻めてくる可能性もある。
万が一に備えて武装だけはしておけ」
と言った。
その顔は先程までの人の良い静馬ではなく、御神当主の顔になっていた。

美沙斗もそれに対し、
「わかりました。恭也くん少し待っててくれ」
とだけ言って部屋を出て行った。

そうして1分も経たないうちに屋敷は慌しくなる。
無論人が駆けずり回るとか普通の慌しさではない。
一般の人たちから見ればいつも通りか少し急いでるように見えるくらいだろう。
その上、結婚式前ということを考えればまったく違和感は感じない。
しかし、恭也のような実戦に身を置いたものならばわかる。
わずかな気の乱れ、普段は完全に消されている殺気などが皆からわずかに漏れている。
だが、それも中にいるからわかるだけだ。
もし、敵に別働隊がいるならば遠くから観察しているだろう。
少なくとも監視役はいるだろう。
そういう相手には悟られないレベルでの動き。
こういったリスク管理は流石御神宗家の屋敷である。


5分ほどして美沙斗が戻ってきた。
手にはスポーツバックが握られている。
「この中に一通り武装が入っている。
恭也くんも独学とはいえ一応鍛えているのだろう?
万が一に備えて武装しておきなさい」
と、美沙斗はバックを渡して言った。

これは美沙斗が恭也を信じているのと同時に過小評価をしている証拠であった。
もし恭也が刺客であったとしても、武装を渡したところで美沙斗は難なく勝てると思っていたのだ。
未来で恭也は美由希とともに美沙斗と戦い勝ったとは言っていたが、
自分が既に何らかの傷を負っていたか、復讐のため平常心を欠いていたせいだと思っていた。
そうでもなければ負けるはずが無いと確信していた。
そして、通常なら美沙斗の考えは当然でもあった。
美沙斗の実力は御神と不破両家の中でもトップクラスである。
美沙斗相手に現在確実に勝てるのは、静馬と一臣と士郎くらいであった。
もちろん互角に近い人物は美影や琴絵、他に御神と不破の当主直属で警備についている人物の中で数人いるが、
目の前にいる恭也はそうは思えなかったのだ。
独学で極められるほど御神や不破の技は安っぽくは無い。
付け焼刃の技に負けるなどありえないと美沙斗は考えていた。
これは美沙斗に限らず静馬や一臣、そして美影と琴絵も同じ考えだったろう。
いや、御神、不破両家全員が恭也の話を聞いた場合同様に思うはずだ。

だが、未来で恭也は事実として美沙斗と一騎打ちで互角の勝負を演じている。
この場にはいない美由希も同様である。
無謀ともいえる士郎との旅ではあったが、恭也の剣士としての下地を築き、
同時に御神、不破としての形も示してくれていた。
それに加え士郎のノートを独学で昇華し、自らだけでなく美由希をも鍛えた恭也の剣才は
御神と不破の常識を凌駕していたのだ。


しかし恭也はそんな事を考える事も無く、
信じてもらえた事だけを純粋に喜び、美沙斗から武装を受け取り
「ありがとうございます」
とだけ答えた。
それに対し美沙斗も笑顔を浮かべ頷くだけだった。


それから暫く恭也と美沙斗は雑談をしていた。
もちろん、最低限の警戒は怠らずにではあるが。

そうしているうちに静馬と一臣がもう一度話を聞きたいので応接間に来るように言ってきたのだった。












<ミカミ道場>
弟子一号:今日もミカミ道場の時間がやって来ました。
衛門:なんか前回の最後の記憶が無いんだけど?
弟子一号:どうせ寝ぼけてたんでしょ?
衛門:ぐっ。そうかもしれんな。
弟子一号:(本当に馬鹿な男ね。)
衛門:なんかよからぬ事を考えてなかったか?弟子一号。
弟子一号;いえいえ〜♪(なんか今日は珍しく鋭いわね)
衛門:まぁ、可愛い弟子一号が俺に嘘をつくはずないもんな。
弟子一号:そう思うなら早く私のSSを...って、そうじゃなくて、やっと恭也が信じてもらえたのね?
衛門:そうだな。100%ではないけどな。
弟子一号:これからやっぱりバトルになるの?
衛門:次で一応バトルかもしれないけど、解決は先の話。
弟子一号:そういえば恭也ってどうして過去にきちゃったの?
衛門:それは内緒だよ。ネタバレになっちゃうし。
弟子一号:何も考えてないだけじゃ?
衛門:いや、考えてるぞ。ただ、候補がいくつかあってどれを採用するか迷ってる段階。
弟子一号:要するに計画性が無い行き当たりばったりで話を作ってる...と?
衛門:そんなわけではないんだが......。
弟子一号:そういえば、メインヒロインを前回教えてもらってないんだけど?
衛門:これも候補が何人かいるんだよ。もう少し待ってくれ。
弟子一号:まあいいけど。噂によると美沙斗さんが結構好きらしいじゃない。
衛門:いや、否定はせんが、今回は静馬さんラブなんで無理(汗
弟子一号:じゃあ残ってるのは美影さんと琴絵さんだけよ?
衛門:美影さんはお若いですけど、今回は話的に無理だし、琴絵さんは一臣さんいるし。
弟子一号:(また飛針の餌にしようと思ったのに♪)
衛門:不穏当な事を考えてないか?
弟子一号:そんな事ないよ♪でも、そうなるとヒロインはオリキャラ?それとも未来から引っ張ってくる?
衛門:だから内緒だって(汗
弟子一号:(本当は何も考えてないだけみたいね)
衛門:とにかく、その辺は少しずつ判明するから待ってくれ。
弟子一号:はいはい。次もさっさと書くのよ?
衛門:へ〜い。


恭也の言葉に信憑性が出てきて、これで事態は進んで行く〜。
美姫 「面白いわ〜。早く、続きを〜」
ああ〜、次回が気になる〜〜。
美姫 「次回が待ち遠しい〜」
うんうん、同感だぞ。
それに、ヒロインも気になるし。
美姫 「色々と気になりつつ、次回まで待ちましょう」
そうしましょう、そうしましょう。



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