「ではフィアッセ、よろしく頼む」

空港のメインゲートで、恭也はフィアッセに言う。

「うん、こっちは任せて二人でゆっくりしてきてね」

それに、フィアッセは満面の笑顔で答えた。

その腕の中には、フィーアがいる。

「フィーア、私達が迎えに来るまで良い子にしていてね」

「うん、お母さん!」

フィリスの言葉に、フィーアは元気一杯に答える。

「そろそろだな、ではいってくる」

「御土産、楽しみにしててね」

二人はそう言ってゲートの向こうへと消えていった。

「さてと、私達もいこっか、フィーア」

「うん!」

フィアッセとフィーアは手をつないで、空港を出て行った。

 

 

 

 

 

 

声を合わせて歌いましょ

 

 

 

 

 

これは、私が書いた【戦う大人達】の一ヵ月後のお話です。

フィーアは皆に可愛がられています。

フィリスと恭也は、高町家の近くに一軒家を買っていて、そこに3人で暮らしています。

これはオリキャラがメインです。

ではでは〜〜

 

 

 

 

二人は空港を出たところに止めてあった車に乗り込む。

「フィアッセ、その娘?」

中には、金髪のポニーテイルをした少女が座っていた。

「うんエリス、この娘が恭也とフィリスの子供」

そう言ってフィアッセは隣に座っているフィーアをエリスに紹介する。

「そうか……恭也が結婚したときは驚いたけど、もう子供が出来たなんてね……」

エリスは対面の席で、感慨深いように頷いている。

「私も最初聞いたときは驚いちゃったよ、子供が出来たって……いくらなんでも早すぎだよ」

苦笑しながらフィアッセは言う。

フィーアは車に備え付けられていたジュースを飲みながら、外を見ている。

その眼はとっても輝いていて、見るもの全てが新しい発見なのだろう。

「恭也がこっちの仕事をやめてもう2年か……できればもう一度一緒に護衛の仕事をやってみたかったんだけどね」

「エリス、何だかんだいっても恭也の事好きだもんねー」

フィアッセの何気ない一言に、エリスが咳き込む。

「フィアッセ!!」

「あはははー」

咎める様なエリスにも、フィアッセは笑いながら答える。

「ねぇ、お姉ちゃん」

そんなエリスに、フィーアが声をかける。

「それって、不倫ってことなの?」

何も知らないフィーアから出た言葉に、エリスは勿論のこと、フィアッセも固まる。

「フィーア……だっけか、どこで……そんな言葉を聞いたんだい?」

引きつった笑みを浮かべながらエリスがたずねる。

「うん、忍お姉ちゃんが教えてくれたんだ! お父さんと私は不倫してるって。 でも、お父さんに聞いたら違うっていってた」

忍、と言う名前を聞いてフィアッセは納得がいったようである。

「忍の入れ知恵かぁ……」

「余計なことを吹き込まないで欲しいな……」

フィアッセは苦笑しながら、エリスは脱力しながら言う。

「違うの?」

「違うっ!!」

首を傾げながら聞くフィーアに、エリスは真っ赤になって否定する。

「半分ぐらいはあってるんじゃないの?」

そこに、悪戯っ子な目をしながらフィアッセが言う。

その眼は、あのティオレさんを思わせる眼だ。

「フィアッセ……誤解を招くような発言は控えてよ……」

頭を押さえ、ため息をつきながらエリスは答えた。

「納まる場所に恭也は納まったんだ……それを今更どうこう言うつもりはないよ」

窓から外を見て、エリスは遠い眼をする。

エリスも確かに恭也に恋心を抱いていた……けど、それは尊敬だとか、肉親に対する感情に近いと言うのがエリスの見解である。

親愛の情とでも言おうか……そういうものなのである。

だから、後悔なんてしないし……心からおめでとうと言ったあの時の感情に、嘘はないから。

しかし、こうも好きなように言われては面白くない……なので、反撃に移る。

「でも、恭也の事が忘れられないのはフィアッセの方じゃないか?」

エリスは含み笑いのような表情で、フィアッセに言う。

「校長室の机の中に恭也の写真が入ってるとか、フィアッセのベッドの側にも、恭也の写真があるとか」

「なっ、なんで知ってるのっ!!?」

「………………」

エリスの言葉に、フィアッセはかなり狼狽しながら尋ねる。

「ホント、だったのか?」

「えっ……?」

少し驚きながら尋ねるエリスに、フィアッセはそんな素っ頓狂な声を上げる。

「冗談だったんだけど、まさか本当とはね……」

意地の悪い笑みを浮かべ、エリスは言う。

「エ〜〜リ〜〜ス〜〜〜〜!!!」

綺麗なソプラノヴォイスが、まるで地獄からの響に聞こえる。

「エリスお姉ちゃん、フィアッセお姉ちゃんをいじめちゃ駄目だよぉ〜〜〜」

それを見ていたフィーアは、フィアッセがエリスにいじめられていると思い、エリスにそういう。

「いや、別にいじめてるわけじゃ……」

「そうなのよフィーア。 エリスがいじめるのよ〜〜〜」

否定しようと声を上げようとするエリスの声を遮って、フィアッセはフィーアに抱きつきながら言う。

「エリスお姉ちゃん、フィアッセお姉ちゃんに謝ろうよ。 喧嘩はよくないよ」

少しムスッと、頬を膨らませながらフィーアはエリスに言う。

「あう……」

そのフィーアの顔を見たエリスは、顔を赤くして眼をそらす。

(可愛すぎだろう……)

別にエリスにそんな趣味はないが、この時のフィーアの表情の破壊力はかなり強い。

桃子もリスティも滅多に見たことのない顔だからだ。

「ふふ〜ん、フィーアはこっちの味方だからねぇ、エリス……謝ってくれないと、私かなしいな〜〜〜」

フィーアに抱きつきながら、フィアッセは楽しそうにエリスに言う。

「ぐっ……ごめん、フィアッセ」

フルフルと震えながら、エリスはそういう。

さしものエリスも、フィーアのあの顔には勝てなかったらしい。

不承不承と言った感じである。

「うん、許してあげる」

してやったりといった感じで、フィアッセは笑いながら言う。

それから、フィアッセはまたフィーアと一緒に笑いながら話をする。

(もしフィーアに男が出来たら……恭也はそいつを刺しかねないな……)

エリスはそんな無さそうでありそうな事を考えつつ、二人の話に加わった。

 

 

それから暫くして、3人はフィアッセ達が滞在しているホテルに到着する。

「フィアッセ、フィーアの部屋はどうするの?」

辺りを警戒しつつ、エリスはフィアッセに尋ねる。

「勿論一緒の部屋だよ、ねー、フィーア?」

「うん!!」

手を繋ぎ、二人は笑いながら答える。

「判った、皆にもそう言ってくるよ」

エリスはそう答え、会社の人間が集まっている部屋へといく。

「じゃぁ早速私の部屋にいこっか」

フィアッセはそう言って歩き出す。

「おっ、フィアッセ〜〜〜」

そこに、元気な声が響く。

「あっ、ゆうひにアイリーン……どうしたの?」

声の主を見て、フィアッセは少し驚く。

そこにはフィアッセの親友である【天使のソプラノ】の名を持つSEENAこと椎名ゆうひと【若き天才】の二つ名を持つアイリーン・ノアがいた。

ちなみに、二人とも今は別の場所で違うコンサートをしている、はずである。

「なんや恭也くんとフィリスの娘が来てるって聞いてな、会いにきたんよ」

「私も同じ」

それに対して、ゆうひとアイリーンは笑いながら答える。

「はぁ……それで、二人ともコンサートをほってきたの?」

少し呆れながらフィアッセは言う。

「そこんところは大丈夫やで、ちゃんとフィアッセとの合同コンサートに変わったって言っといたさかい」

「私も、フィーと一緒のコンサートにするって言っておいた」

示し合わしたかのような二人の答えに、フィアッセは盛大にため息をついた。

「フィアッセ!! さっき部下から連絡が……って、もう来てたか……」

そこにエリスが急いでやってくるが、ゆうひとアイリーンの姿を確認して減速する。

「ごめんなーエリス、でもうちもフィーアちゃんに会いたかったんや」

そんなエリスに、ゆうひは悪びれずに言う。

「それに、恭也とフィリスの娘って言われたら気になるじゃない」

アイリーンも同じようにして言う。

そして、二人はフィーアの方を向く。

「うちは椎名 ゆうひっていうねん、よろしゅうな」

「私はアイリーン・ノアよ。 よろしくね、フィーア」

二人は笑いながらフィーアに手を差し出す。

「うん、よろしくね! ゆうひお姉ちゃんにアイリーンお姉ちゃん!!」

極上の笑みを浮かべ、フィーアは答える。

「くぁぁぁぁぁっ!!!」

その笑みを見たゆうひは……奇怪な声を上げ、フィーアを抱きしめる。

「めちゃめちゃ可愛いやん〜〜〜〜!!!」

更に頬擦りしながら言う。

「ゆうひっ!! 私にも抱っこさせて!!」

そして、アイリーンもフィーアの魔性の魅力の虜になったようだ。

ゆうひがフィーアを離すと、アイリーンもすぐに抱きしめる。

「はややややややっ!!?」

抱きしめられたフィーアはなのはと同じような驚き方をする。

「なぁフィアッセ、いっその事フィーアちゃんもコンサートで一緒に歌おうや」

「あっ、それいいね!!」

ゆうひの提案に、アイリーンが賛成する。

「そっ、そんなことしても大丈夫かな……」

ちょっと困ったような表情をしてフィアッセが言う。

「かまへんて、こんなけフィーアちゃん可愛いんやし……きっと見に来た人歌そっちのけでフィーアちゃんに見惚れるで」

「なんか、本当にそうなりそうで恐いな……」

ゆうひの意見に、エリスが苦笑しながら言う。

「じゃぁ、今からフィーアちゃんの服をコーディネートするでー!!」

「「おおーー!!」」

ゆうひが拳を突き上げて高らかに宣言すると、アイリーンとフィアッセも一緒になって叫んだ。

「はぁ……先が思いやられる……」

それを見たエリスはこっそりとため息をつくのであった……

 

 

そして、コンサート当日……

「大変長らくお待たせしました……これより、フィアッセ・クリステラ SEENA アイリーン・ノア3人の合同コンサートを開始します」

司会の言葉に、観客から大きな拍手が響き渡る。

そして、静に歌が流れ始める。

まるで透き通るようなフィアッセの声が響き渡る。

 

長い間悩んだ 寂しさと 人の心

短い詩を君に送るよ 胸に書いた言葉を

君が語りかけた 優しさに

気付かないでいたころ

もう一度戻れるなら

抱き締めて 笑ってあげたい

 

そこで、今度は違う声が聞こえてきた。

SEENAでもアイリーンでもないその歌声の持ち主に、会場からは小さなざわめきが起こる。

しかし、この心が篭った歌声に、批判的な意見を出す人は一人もいなかった。

 

だから…

広げた手を青い空に振りながら

そっと涙をぬぐっている

 

そこで、初めてフィアッセが現れる。

そして、その隣には手を繋ぎ、フィアッセとお揃いのドレスのような服を着たフィーアが一緒に現れる。

 

そして…

巡り会えた君との日々

いつまでもずっと 忘れないからと

笑顔で見送る

 

二人一緒に声をそろえて歌いだす。

さながら姉妹のような二人の声に、観客も警備をしていたエリスも聞き惚れる。

そしてだんだんと盛り上がりを見せていき、最後のところに入る。

 

広げた手を青い空に

振りながらそっと涙をぬぐっている

そして…

巡り会えた君との日々

いつまでもずっと

いつまでもずっと

忘れずに行くから

 

そこまで歌うと、SEENAとアイリーンも出てくる。

そして、最後は4人で一緒に歌い終えた。

歌が終わった瞬間、溢れんばかりの拍手が会場を包む。

「ほれ、フィーアちゃん言いや」

ゆうひに言われ、フィーアはおずおずと前に出る。

「皆様、本日はご来場いただき真にありがとうございます。 今日歌うこの歌が、全ての人の心に届きますように、精一杯私達も歌いますので、最後までごゆっくりとお楽しみください」

たどたどしく挨拶をするフィーアを見て、観客は再び大きな拍手を送る。

それを見たフィーアは、笑顔で手を振るのだった。

 

 

ちなみに、これはテレビで全国放送されていた。

 

高町家

「そう言えば今日よね、フィアッセのコンサートって」

桃子がそう言って、テレビのチャンネルを回す。

皆も覚えていたようで、リビングのテレビの前には桃子、なのは、晶、レンが揃っていた。

そして、テレビから歌が流れてくる。

「あっ、これフィアッセさんの声だー」

まず、なのはがフィアッセの声を聞いて反応する。

「相変わらずそうで良かったわ、テレビ越しでもフィアッセの気持ちが伝わってくるもの」

桃子も、眼を閉じてその歌に聞き惚れる。

だが、次に聞こえてきた声に眼を見開く。

「おいカメ……この声って……」

「もしかしなくてもそうやろな、おサル」

「フィーアちゃんの声だー」

なのはが驚いたように言う。

そして次の瞬間には、手を繋いだフィアッセとフィーアが出てきた。

「フィーアちゃん、まさか出てくるなんて思わなかったわね……」

驚いているが、それよりも画面に映っているフィーアの可愛さに笑みを浮かべている桃子が言う。

「フィーアちゃん、何だか雰囲気が違うね……とっても綺麗」

なのはの言葉に3人は頷き、再び画面に集中する。

 

 

亡国某所の客室の一つ

「フィリス、フィアッセのコンサートが始まるぞ」

ソファに座って、恭也が洗面所で髪を乾かしているフィリスに言う。

「ああ、先に見ててください」

フィリスはそう答え、髪を梳かし始める。

そして、テレビからフィアッセの歌声が響きだす。

「フィアッセ、また上手くなってるわね」

「ああ、更に磨きが掛かったというのか、そんな感じだな」

フィリスの言葉に相槌を打ちつつ、恭也は歌声に耳を済ませる……が。

突然、とっても身近で聞いていた声が聞こえ始め、テレビを凝視する。

「恭也、この声って……」

フィリスもその声に驚いたのだろう、洗面所から出てくる。

「間違いない……」

「「フィーアの声だ(よ)」」

二人して、同じ事を言う。

暫くすると、フィアッセと手を繋いだフィーアが現れる。

「フィアッセったら……何を考えてるのかしら……」

呆れつつも、その歌声に聞き入るフィリス。

「確かにそうだが、フィーアも嬉しそうだしな……これはこれで良いじゃないか……」

恭也はそう言って、フィリスを抱き寄せて一緒に聞き入った。

 

 

 

 

このコンサートの事は、翌日凄まじい反響を得た。

ちなみに、新聞の一面を飾ったのはこの言葉……

新しい歌姫の誕生!! その名は【幼き歌姫】……と。

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

え〜、斜陽シリーズ第5弾です。

フィーア「前回のお話の後って設定ね、今回は」

フィアッセ達との絡みも書きたかったからね、これはこれで一つのお話さ。

フィーア「でも、ゆうひやアイリーンがコンサートをほっぽりだしたのって実際拙いんじゃないの?」

確かに……まぁ、そこは黙認してもらうと言う事で。

フィーア「あと、最後が表現力不足ね」

うぅ、そこは反省してます。

フィーア「ちなみに、なんでさざなみ寮が出てこなかったの?」

ああ、あれは単に知らなかっただけだよ、フィアッセのコンサートのことは知ってたけど見てなかったってこと。

フィーア「ふ〜ん。 で、次回は?」

とりあえず、番外編を書くかな。

フィーア「本編は?」

ちょっと路線が変わるよ、シリアスモードに。

フィーア「ではでは、また次回で〜〜〜」

お会いしましょう〜〜〜。




幼い歌姫が誕生〜。
美姫 「可愛い〜」
いや、まあ、そうなんだが、とりあえずは落ち着け。
美姫 「コホン。さて、次回は番外編の予定みたいね」
だな。そして、本編はシリアスな内容になるらしいぞ。
美姫 「ふふふ♪」
何だ、その不気味な笑みは!
美姫 「べつに〜」
……(触らぬ神に祟りなしだな、うん)
えっと、それじゃあ、次回も待ってますね。
美姫 「楽しみにしてま〜す」



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