「L-C01とL-C02、L-C05とL-C09のタッグ戦を行う」
広い広場のような上に設置された司令塔のような所から、50代位の男の声が響く。
「勝利条件は相手の戦闘不能だ、死んだ場合もこれにみなす」
「「「「ラジャ」」」」
男の声に、4人がいっせいに答える。
「さぁ〜てと、軽くもんであげるわ、L-C05、L-C09」
大剣を抱えて、紫の髪に黒い瞳をした女性が言う。
「そうね……両手両足を砕き切れれば…勝てる…わ」
その隣で、寡黙そうな朱い髪と水色の瞳をした女性が言う。
その二人の目の前では、水色の髪に金の瞳をした少女と金の髪と黒い瞳をした少女が立っていた。
「ふん、返り討ちにしてあげるわよ……ねぇ、お姉様?」
金の髪の少女が、後ろにいる水色の髪の少女に尋ねる。
「ええ、私達を見くびった事を、後悔させてあげましょうL-C09」
水色の髪の少女、L-C05は口を吊り上げて、剣を構えた。
「今回は時間に制限はかけない。 思う存分殺しあえ」
司令塔から聞こえてくる声……正確に言うと脳内に聞こえてくる声に、四人は頷いた。
「Elder Prisonerァァァァッ!!!」
「Illusion…」
「immunity」
「Phantomッ!!!」
そして、四人は同時に己がフィンを解放する。
L-C01の背中には紫の10枚の羽が、L-C02の背中には揺らめく白い10枚の羽が現れる。
対して、L-C05の背中には紫の昆虫のような3対6枚の羽が、L-C09の背中には透き通る4枚2対の羽が現れる。
「では、はじめろ」
声と共に、四人は一斉に駆け出した。
堕ちる、天使
これは私が書いた斜陽シリーズの番外編です。
時間的には【斜陽の剣士】と同時期です。
これはオリキャラメインで、既存キャラは出来ません。
それでもよろしいという方、どうぞ。
「白き……草原を這う言の葉…」
L-C02が呟くと、L-C02の目の前に幾重にも白き剣が現れる。
「L-C02はL-C05を止めろ、L-C09は私の能力でどうにでもなる」
頭の中でL-C01はL-C02を思い描き、伝えたい事を伝え、L-C01はそのままL-C09目掛けて走りだす。
彼女らは特殊なリンクがしかれており、L-C01はL-C02と、L-C05はL-C09と思考が繋がっているのである。
「L-C09、私が牽制をかけるわ……たぶんL-C01はあなたを狙って来るでしょうから、タイミングを合わせて」
「了解よ、お姉様」
「今はナンバーで呼びなさい、L-C09」
「……ラジャ、L-C05」
L-C05は剣を構えたまま走り、その後ろを影のように少し顔をしかめたL-C09が駆ける。
「ブレイクッ!!!!」
L-C01の突き出した剣先から、強大な雷がL-C05とL-C09に襲い掛かる。
「…………分析完了、別にたいした病原体もないわ……切り裂けッ!!!」
呟いて、L-C05は己が剣にも雷を纏わせ、襲い掛かるL-C01の雷を切り裂く。
「L-C02ッ!!」
その刹那、L-C01が叫んだ後に先ほどL-C02が作り出した白き剣がL-C09目掛けて飛んでいく。
「ッ、L-C09!!」
L-C05の叫びを聞き、L-C09は剣目掛けて手を翳す。
すると、L-C09の目の前で白き剣は全て塵へと消え去っていった。
「L-C02、次の攻撃は私のタイミングに合わせろ」
「ラジャ」
L-C02はL-C01の声に頷き、剣を作り上げる。
「L-C09、L-C01の攻撃は私が防ぎきるわ、L-C02の作り出す幻想は全て消し去りなさい」
「ラジャ」
L-C05はL-C09にそう伝え、剣を構えたままL-C01目掛けて一気に詰め寄る。
「覚悟、L-C01!!」
刀身に雷を纏わせてL-C05はL-C01に斬りかかる。
「甘いわよ、L-C05」
L-C01はそう言って、自分の剣をL-C05の剣とぶつからせ、その前へ行く反動を利用してL-C05の上を通り過ぎる。
「ブレイクッ!!!」
L-C05の後ろに立った瞬間、L-C01はL-C05には目もくれずL-C09目掛けて雷を放つ。
「ッ、L-C09避けなさい!!! 即効性の毒が混じっているわッ!!!」
一瞬にしてその雷に含まれる成分を読み、L-C05はL-C09目掛けて叫び、そのままL-C09の方へと走って行こうとする。
「行かせない…わ」
しかし、L-C02が作り上げた剣が、後ろを向いたL-C05の両足に突き刺さる。
「ぐっ……」
両足に剣が突き刺さり、ふらつくがL-C05はL-C09のほうへと走る。
「しつこ…い」
しかし、そのような足では満足に走れるはずもなく、追いつくL-C02がL-C05の頭を地面に叩きつける。
「くっっぅ!!」
襲い掛かる雷を、L-C09は紙一重の所で避けていく。
「なってないわね、L-C09!! 私達の相性は最悪だ、お互いね。 だからこそ、自分に有利になるように作戦を立てろっ」
一瞬にしてL-C01がL-C09の後ろに回りこみ、襲いかかる雷目掛けてL-C09を蹴り飛ばす。
「ぐぁっ!!!」
背骨に強大な衝撃を受け、L-C09は血を吐き出しながら吹き飛ぶ。
「ちぃっ!!!」
痛みを精神で捻じ伏せ、L-C09は剣を地面に突き刺し雷を避ける。
「L-C05、機能は生きてるの!?」
「…L-C09、両足の動きに誤差修正−25よ。 それ以外は、支障はない」
L-C09から来る声に、L-C05は自分の状態を答える。
「だったら、私がそっちに行くから、L-C01は任せるわ」
L-C09はL-C05にそう言って、L-C02目掛けて走って行く。
「観念し…ろ」
L-C02は向かってくるL-C09に向かっていくつもの武器を作り出し、放つ。
「誰がっ!!」
叫んで、L-C09は飛んでくる武器を消し去っていく。
正確には、飛んでくる武器が持つ熱量を奪い、消滅させているのである。
L-C09のフィン【Phantom】は大量の熱量を必要とする。
故に、こうやってそこらじゅうにあるものから熱量を奪っていかなければ運用できないのである。
「はぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
そして、大きく振りかぶり、L-C09はL-C02に斬りかかる。
「甘いわね」
しかし、L-C02とL-C09の間にL-C01が割り込んでくる。
「消し飛べ」
一瞬の出来事だった。
L-C05の思考リンクに、あらんばかり叫び声が響いた。
「ッ、L-C09!」
L-C05は叫び、L-C09のほうを見る。
視線の先には痙攣し続けて、蹲っているL-C09がいた。
「即効性の痺れ効果を持つ毒を、さっきの雷に仕込んどいたのよ。 これで、3日ぐらいは動けないわ。 私がお前に解毒を教えない限りはね」
L-C05のフィンであるimmunityはあらゆる病原体に対する抗体を持つが、L-C01が作り出す毒だけは解毒不能なものが多い。
ありとあらゆる病原体を内包したL-C01のフィンであるElder Prisonerが作り出す毒は、L-C01の意思一つでその性質を変えるのである。
「これでL-C09は死んだも同然、後はお前を倒すだけだね」
L-C01は構え、L-C02も幾つもの武器を作り出す。
「それと、解毒を教えて欲しければ勝つ事よ。 負ければ、L-C09は死ぬわよ……このまま培養行きって可能性もあるからね」
「ッ、L-C01ッ!!!!!!!!!」
あらん限りの声で、L-C05は叫ぶ。
「ふん、見せてみなさい……お前の、擦れた朱を」
嘲る様に、L-C01はL-C05に向かって言う。
「いつかの戦いのとき、お前は私に見せたな……その羽が10枚の漆黒に変わり、貴様の眼も擦れた朱色に変わる様を」
「ッ!!」
L-C01の言葉に、L-C05は驚きで後ろに下がる。
「今のままのお前では100%私達には勝てない……勝てるとすれば、お前の力を解放することだ……もっとも、それでも貴様の勝ちは50%を下回るだろうがな」
見下すように、L-C01は言う。
「見せないまま死んで行くのもいいかもしれないわね……あんたも、L-C08の後を追うといいわ……あんたが殺した、あの出来損ないと共にね」
そのL-C01の言葉が、引き金だった。
「ああアあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
体を自分で抱きしめるようにして、L-C05は叫ぶ。
血管等も浮かび上がり、目も危ないくらいに見開かれる。
「くくくっ、そうだ……怒りに身を任せてしまうといいわ……L-C02、手加減はするなよ」
「ラジャ……かける理由も、ない……わ」
L-C01とL-C02は構えながら、L-C05を見続ける。
すると、3対6枚のL-C05のフィンが、黒色に変色しだす。
正確には、かなりの濃さの紫色である。
そして、そのフィンが……10枚の、漆黒の羽に変幻した。
「ハァ…ハァ…うぐっ」
少しよろめきながら、L-C05は目の前にいるL-C01とL-C02を見る。
その瞳の色は、先程の金色の瞳ではなく、擦れた朱色へと変わっていた。
「それが、お前の本当の姿と言うわけか……」
肌にまとわりつくような威圧感を感じながら、L-C01は目の前のL-C05に向かって言う。
「L-C02、牽制に剣の一つや二つを放ってみろ」
「ラジャ」
L-C02は頷き、L-C05に向かって作り出した剣を投げつける。
しかし、L-C05はその剣を睨みつけると、突如空中で剣が燃え始める。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
そして、雄叫びを上げながらL-C05は物凄い速さでL-C02へと詰め寄る。
「っ!!」
その余りの速さに、L-C02は反応が遅れる。
「づぁっ!!!」
L-C05は掌に光をためて、それをL-C02の腹に押し当てて、L-C02を吹き飛ばす。
「L-C02っ、大丈夫か!?」
その動きは、L-C01の予想を大きく超えていたのであろう、焦ってL-C02に尋ねる。
「がぁぁ・・ぁ・ぁぁ・・ああ・・」
L-C02は自分の体を抱きしめるようにして蹲りならが、声を出そうとするが、でない。
(なんだ……これは……)
そのL-C02を見て、L-C01はL-C05を見る。
(私と戦ったときよりも、遥かに力が増しているというのか……あり得ん!)
L-C01はL-C02の症状を見て、現存する毒を照合していくが、どれ一つ当てはまらない事に驚く。
「あぁぁぁぁっ!!!!」
L-C05は剣を構えたまま、高速でL-C01目掛けて詰め寄る。
「ちぃっ!!!」
斬り上げる様に振るわれた剣を、L-C01は剣を振り下ろす事で何とか防ぐ。
「だぁぁぁっ!!」
防がれたと同時に、L-C05は遠心力を加えてL-C01に回し蹴りを喰らわせる。
「ごふっ!!」
脇腹を強烈に蹴られ、L-C01は血を吐き出すが、L-C05の足を何とか掴む。
「随分、攻撃的じゃないか……L-C05」
言って、L-C01は掴んだL-C05の足を強く握り締める。
「しっ!!」
しかし、L-C01の腕に力が入った瞬間、L-C05は空いている片方の手でL-C01の顔を思いっきり殴りつける。
「がっ!!!」
強烈な一撃を顔に喰らい、L-C01は手を離す。
「でぇぇぇぇぇい!!!」
そして、L-C01が怯んだ瞬間――――――――――――――――――――――――、一閃。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
L-C01の右手が……宙を舞う。
痛みで、L-C01は雄叫びを上げる。
「ふっ!!!」
雄叫びを上げるL-C01の脇腹めがけて、L-C05は強烈な拳を喰らわせる。
「がっ……」
骨が砕ける音と、何かに鋭いものが刺さる音がした。
そして、L-C01は血を吐き出し、それがL-C05の全身にかかる。
L-C01は全身を細かく振るわせた後、動かなくなった。
ドサッと、L-C01が地面に落ちる。
「ハァ…ハァ……ハァ」
そんなL-C01を見つめていたL-C05の眼が擦れた朱色から元の金色に戻る。
背中のフィンも、もとの3対6枚の金色のフィンへと元に戻る。
「そこまでだ、L-C05」
L-C05の頭の中に、声が響く。
「おわ……り………?」
呆然とした表情で、L-C05は上にある司令塔を見る。
「そうだ、L-C01とL-C02は沈黙した……お前一人の力でな」
そう言われ、L-C05は目の前を見る。
そこには右腕を斬られ、血を流しながら動かないL-C01といまだに全身を小さく震わせるが、殆ど動かなくなったL-C02がいた。
「あ・あ・あぁぁぁぁぁ……」
カタカタと、奥歯が震える。
「こっ、これを……私が、やったん……ですか……?」
震える口で、何とかL-C05は言う。
「そうだ、貴様が何の迷いもなく、行った結果だ」
否定していた言葉が、L-C05の頭に響く。
「ああぁぁあぁぁああぁあああぁぁぁぁああ」
ガタガタと、L-C05の体中が震えだす。
その場に座り込み、体を抱きしめるように手を回すが、震えは止まらない。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!」
L-C05の絶叫が、響く。
それは、自責の念から来る叫びなのか、形だけとはいえ姉を殺してしまった事に対する叫びか。
L-C05は叫び続ける。
恭也とフィリスと出会う……5年前の事であった。
あとがき
今更になって、斜陽の続編を書いてみる。
フィーア「本当に今更ね、完結したって言ってたくせに」
いやぁ、知り合いに見せたらフィーアの施設にいた頃の話を見てみたといわれてね。
フィーア「確かに、あんまりそこら辺は触れてなかったわね」
うん、だから書いてみよっかなと思って。
フィーア「で、これからフィーアは施設を抜け出すの?」
まぁ、簡単な調整を受けてね。 姉妹の事は殆ど記憶の奥底に封印されてね。
フィーア「それが、あの最初の頃の性格に変わる要因ってわけ?」
間接的にはね。 調整途中で施設から脱走したから、いろいろと記憶も曖昧になったんだよ。
フィーア「それで、まだ斜陽シリーズは書くの?」
まぁ、クリスマスを書いてみようかと、完璧なIFものだけどね。
フィーア「じゃクリスマスまで時間ないし、きびきび書きなさい」
ヤー
フィーア「じゃあね」
ではでは〜〜
久しぶりの斜陽〜。
美姫 「今回はフィーアが恭也たちと出会う前のお話ね」
うんうん。
しかし、酷いことを…。
美姫 「でも、今は恭也とフィリスと一緒だからね」
さて、次はIFものらしいけれど…。
美姫 「楽しみよね♪」
おう! 次も楽しみにしてます〜。
美姫 「それじゃあ、またね〜」