An unexpected excuse

   〜蔦子編〜






「俺が好きなのは・・・」

恭也が言おうとした時・・・生徒の奥で何かが光った。

それを恭也が見逃すはずもなく・・・。

「誰だっ!!!?」

その光のほうへと走っていった。

「「あっ・・・」」

見事に声は重なっていた。

「あはははは・・・」

「蔦子さん・・・?」

それは同時に発せられた。

恭也の前にはカメラを持ちメガネをかけた少女が立っていた。

「どうしてここに・・・?」

恭也は判らないといった感じで聞く。

今恭也の前にいる少女は武嶋 蔦子という少女。

私立リリアン女学園2年にして写真部のエース。

その人柄から妹にと求める姉の声はやまず、また姉にという下級生の声も然り。

だが、それらをことごとく袖にしているとか何とか・・・。

「恭也さんの突撃取材・・・」

ボソッと、蔦子は呟く。

「自分の・・・ですか?」

恭也はそれを聞いて驚きの声を出す。

「恭ちゃん・・・誰?」

美由希達が恭也に尋ねる。

中にはあきらかに殺気丸出しの少女達もいるが・・・。

恭也がそれに気付くはずもなく・・・。

「ああ・・・こちら武嶋 蔦子さんといってな・・・少し前リスティさんと一緒に行った護衛先で知り合ったんだ」

その言葉の後、蔦子は頭を下げる。

「う〜ん・・・良い写真なんですけど、喜んでいいやら悲しんでいいやら、複雑ですよ」

少し控えめな笑顔で蔦子は言う。

「恭也さんが沢山の女性に囲まれて喜んでいるような困っているような顔をしている写真」

カメラを見せて蔦子は言う。

「別に喜んではいませんが・・・」

恭也がそれを聞いて言う。

「恭ちゃん・・・」

後で、美由希が恭也を呼ぶ。

「結局、その人と恭ちゃんの関係は!?」

美由希の後にいるFCの女の子達もうんうんと頷いている。

「あ〜・・・なんだ・・その・・・」

恭也は困ったような顔をし、蔦子は俯いている。

「もしかして・・・蔦子さんと付き合ってるんじゃ・・・」

忍が冗談めかして言うが・・・。

「・・・・・・」

二人は黙ったままだった。

「・・・・・・マジ?」

忍が確認するかのように聞く。

「ああ・・・」

恭也も観念したように言う。

それを聞いてFCの少女達は次々と退散していく。

「やれやれ、やっと解放されたか」

恭也は深くため息をつく。

「でも・・・恭也、いつ蔦子さんと知り合ったの?」

忍が興味しんしんに聞いてくる。

「さっき話さなかったか?リスティさんと行った護衛先で知り合ったんだ」

恭也は先ほどと同じように答える。

「じゃなくて、その護衛先はどこって聞いてるんだけど?」

忍が質問を変えて聞く。

「ああ、小笠原グループのパーティーだ」

恭也が答えたとき、辺りが静まる。

「どうした?」

急に静かになった辺りを見て、恭也は尋ねる。

「「「「小笠原グループゥゥゥゥッ!!!!!!!!?」」」」

「おわっ」

「きゃ」

急に大声を上げ叫ぶ皆に驚く恭也と蔦子。

「蔦子さん、大丈夫ですか?」

先ほどの叫び声で驚いて倒れそうになる蔦子を恭也はとっさに抱き締める。

「あっ・・・はい・・・」

蔦子は嬉しそうに答える。

「しかし、お前たち、もう少し静かにしろ」

恭也は叫び声を上げた皆に注意する。

「そんなことより!!恭ちゃん、何で小笠原グループのパーティーに護衛で出席したの!!!?」

「いや、リスティさんの所へ護衛の依頼が来てな、優秀な人材が欲しいとの事でリスティさんが俺なんかを誘ってくれたわけだ」

事の経緯をかいつまんで話す恭也。

「じゃあ、ここにいる蔦子さんは小笠原グループの関係者なんですか?」

「いや、蔦子さんは直接関係あるわけじゃない」

那美の質問に恭也はすぐに答える。

「小笠原グループ社長の娘の小笠原 祥子さんの妹の福沢 祐巳さんの友達で蔦子さんも呼ばれていた、と言う訳だ」

「おししょー、その祐巳さんは妹なのに苗字がちゃうんですか?」

レンが思ったことを口にする。

「ああ、蔦子さんも通っている私立リリアン女学園というところには姉妹(スール)制というのがあってな、それで妹、と言う訳だ」

レンの質問に恭也は詳しく答える。

「はぁー、えらいスケールの話ですなぁ・・・」

恭也の答えを聞き、レンは驚きの声を上げる。

「しかし、蔦子さん・・・学校のほうは大丈夫なんですか?」

「あっ、いま修学旅行でこっちに来てるんです。だから夕方くらいまでなら大丈夫です」

なるほど、と恭也は納得する。

「では、こちらの街を案内しますよ」

恭也が蔦子に提案する。

「えっと、迷惑じゃないですか?」

蔦子は遠慮がちに言うが・・・。

「大丈夫ですよ。忍、俺の鞄を頼んだ」

そう言って恭也は蔦子を連れて学校を出て行った。

 

 

「そういえば、恭也さんのお母さんがやっているって言っていた喫茶店を見てみたいんですけど」

蔦子はカメラを握り、街をそのフレームにおさめながら恭也に尋ねる。

「ええ、構いませんよ。この近くですし」

恭也も快く返事をし、二人は翠屋へと歩き出す。

「あっ、あの・・・恭也さん」

「何でしょうか?」

歩いている途中、蔦子が恭也を呼ぶ。

「写真・・・一枚撮らせてもらっていいですか?」

蔦子はカメラを見せ言う。

「判りました。じゃ、臨海公園に行きましょう。それからでも行けますし」

返事をして、行き先を臨海公園へとかえる。

 

 

「じゃあ、いきます」

そう言って蔦子は何枚か恭也の写真をとる。

海をバックに・・・時には自然をバックに・・・。

「ふぅ・・・」

蔦子は一通り写真をとってから、小さなため息をつく。

「如何しました?」

それに気付いた恭也が声をかける。

「いえ・・・ちょっと・・・」

そう言って蔦子は俯く。

「蔦子さん・・・?」

恭也は何か違和感を感じ、蔦子に近づく。

「恭也さん・・・」

顔を上げた時、蔦子は泣いていた。

「如何して・・・如何して恭也さんは・・・こんなに優しいんですか?」

ずっと見つめあい、蔦子は恭也に尋ねる。

「えっ・・・?」

突然のことで、恭也も頭の思考が働かなかったのか・・・聞き返す。

「恭也さん・・・学校で楽しそうでした・・・それにあんなにも綺麗な人たちがいっぱいいたのに・・・如何して私を選んだんですか?」

いつしか・・・蔦子の声は大きくなっていた。

「私は・・・っ!!あの人達みたいな綺麗じゃない・・・それに・・・とりえなんて・・・写真ぐらいで・・・」

今にも消え入りそうな声・・・だけど、恭也にはっきりと聞こえていた。

「なのに・・・如何して・・・」

最後まで言い切る前に・・・恭也が蔦子を抱き締めていた。

「俺は・・・そんな事を思ってはいません・・・貴女で良いなんて事はない・・・貴女じゃないと・・・駄目なんです」

抱き締める腕に恭也はちからを込める。

「蔦子さん・・・貴女は綺麗ですよ・・・あいつ等に負けないくらい・・・それに、俺は貴女の笑顔が好きなんです」

だから、といって恭也は蔦子を見つめる。

「貴女は笑顔でいてください俺は貴女の笑顔を守ります・・・これから・・・決して、貴女の笑顔を曇らせたりしません」

そう言って恭也は蔦子に口づけをする。

「恭也さんは・・・ずるい人ですね・・・何も言わなくても・・・私が欲しい言葉をくれるんですから・・・」

そう言って蔦子は恭也に凭れる。

「すみません・・・昔から不器用でして」

恭也がそう言うと、蔦子は小さく笑う。

「じゃあ、行きましょうか」

蔦子は顔を上げ言う。

「ええ、行きましょう」

恭也も出きる限りの笑顔で言う。

「次の写真は親子でとらせて下さいね」

「母さんですから、喜んで取らせてくれますよ」

二人は手を繋ぎ・・・楽しそうな会話をしながら歩き出した。

明日へと続く・・・その一歩を・・・・

 

 

 

 

 

終わり

 

 


あとがき

如何も、アハトです。

An unexpected excuse〜蔦子編〜如何だったでしょうか。

今回は私風に恭也と蔦子の性格が変わっているので、ご了承を・・・。

これは、PAINWEST30万ヒットとして、おくらせて頂きます。

ではでは、皆様また次の作品で。





アハトさん、ありがとうございます!

美姫 「そうか〜、もう30万なのね」

うーん、感慨深いな。(しみじみ)

美姫 「まあ、そんな事は兎も角」

そ、そんな事なのか。

美姫 「まあまあ。それよりも、蔦子さんが可愛い!」

うんうん。あの公園での台詞はいいな〜。
この後、笑顔の桃子と照れながら憮然とした顔の恭也のツーショット写真が撮影されるんだろうな。

美姫 「何か、面白そうね。桃子の事だから、蔦子とも撮ろうとか言い出して」

私は撮られるのは……とか言うと泣き落とししそうだね。
それで困った蔦子を恭也が庇うと。

美姫 「桃子さんはそれを見てニヤリって?」

そうそう。それで、私から息子を獲ったのに、蔦子さんは撮らせてくれないんだ〜とか言うんだろうな。

美姫 「で、後日翠屋に、引き伸ばされた写真が飾られてある」

タイトルは、未来の店長とその嫁とか?

美姫 「浩、妄想しすぎ」

反省……。

美姫 「と、言った所で、今回はここまで」

おいおい。

美姫 「(無視)アハトさん本当にありがとうね〜」

お〜い。



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