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この世には決して曲げることの出来ない絶対の節理がある。
運命と言い換えてもよい。
生まれたものはいつか死に、形あるものはいつか壊れる。
ただ、そのいつかがいつになるのかは誰にも正確なところを知ることは出来ない。
存在というのは脆い。
ふとしたことで削られ、いつ終わるとも知れない。
だからこそ、この世に自らの存在を認めたとき、それは強く願うのだろう。
より良い刻に満たされることを。
―― 某大学病院勤務 Y医師の日記より抜粋 ――
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トライアングルハート〜天使の羽根の物語〜
間章
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――海鳴での椎名のコンサート襲撃から一週間。
魔物による組織的犯行という過去に例を見ない事件に当局は対応を決めかねていた。
本来なら悪霊等のケースと同様、専門家に依頼して滅ぼしてもらうのが妥当なところだろう。
現場において既に神咲の技が有効であると証明されている以上、実行は難しいことではない。
だが、匿名で提供されたある情報がそれをさせなかった。
問題視されたのは今回襲撃してきたのが知性を持たない最下級の魔物であるということだ。
だが、これと交戦したSPの話では、敵は統制された一個の集団として動いていたという。
そのことからその場により上位の魔物がいたか、さもなくば誰かに操られていたのだろう。
情報提供者は後者の可能性が高いと睨んでいるようだった。
腑に落ちないことはまだある。
押収された火器に込められていた弾はすべて殺傷能力のないラバーボールだったのだ。
仮に襲撃者に武器を与えた者がいるとして、その者は最初から誰も殺す気がなかったのか。
だが、場を混乱させてコンサートを妨害するだけなら、確かにそれでも事足りる。
そして、殺さないことを目的とした場合の犯人の狙いは……。
「連中は自分たちの存在を知らしめるつもりか」
紫煙を吐き出して、警備に当たったSPのリーダーは厳しい表情でそう言った。
神咲薫が確認したところ、提供された情報はいずれもかなり信憑性の高いものだった。
「宣戦布告のつもりでしょうかね」
「分からん。だが、人外が相手となると我々に出来ることは限られてくるな」
「ま、元々俺らは用心警護が仕事っすからね。後のことは一般の警察に任せましょうや」
軽薄そうな笑みを浮かべてそう言うと、男はさっさと部屋を出ていった。
「あれはああいう男でね。あまり気にしないでくれ」
「はぁ」
男の態度に眉を顰める薫に、リーダーの男がそう言って謝る。
「しかし、正直、君たちがいてくれて助かったよ。我々だけでは護りきれないところだった」
「いえ、退魔はうちらの領分ですから」
賛辞を述べる男に対して、薫は控え目にそうとだけ答えた。
その日の夜、襲撃犯を閉じ込めておいた施設で火災が発生し、全員が死滅した。
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あとがき
龍一「久しぶりのとらハSSです」
知佳「うわっ、短!」
龍一「しょうがないだろう。今回は事件の事後処理だけなんだから」
知佳「それにしたって、中途半端なんじゃない?」
龍一「ま、まあ、伏線も幾つか張ったからね」
知佳「それで、次回から第2章に入るわけだけど、何かイベントの予定はあるの?」
龍一「夏のイベントを一応モーらしてあるよ」
知佳「ってことは海だね。この次期だと忍ちゃんのとこかな」
龍一「前半は海と山に別れる。そして、後半は夏祭りだ」
知佳「オーソドックスなとこだけど、どうせただじゃ終わらないんだよね」
龍一「ま、まあ、そのあたりはおいおいということで」
知佳「それじゃ、今回はこのへんで」
龍一「次回も楽しみにしていただければ光栄です」
二人「ではでは」
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今回は第1章と第2章を繋ぐお話。
美姫 「いよいよ始まる第2章」
これからどんなお話が待っているのか。
美姫 「期待に胸を震わせて次回を待つわよ!」
おう! 次回も楽しみにしてます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」